ニセコビザ申請サポートセンター代表、申請取次行政書士の明山崇です。

北海道で唯一の、ビザ申請と観光業に特化した行政書士として、主に、ニセコ・札幌市内を中心に北海道で生活する、外国籍の方々の在留許可申請、いわゆる就労ビザや配偶者ビザ等の、新規取得や更新手続きのお手伝いをしています。

今回は、ホテルや旅館等の宿泊業のフロント業務で、外国人従業員を雇用できるか?について解説していきます。

はじめに

コロナ前の2019年、日本を訪れる外国人の数は約3188万人と過去最高を記録しました。ここ2年は新型コロナウィルスの影響により、訪日外国人の数は激減していますが、2022年冬以降、各国政府の出入国規制緩和策によって、訪日外国人の数は回復し、再び増加に転じると見込まれています。インバウンドブームの前は、外国人観光客は大都市の外資系ホテルに宿泊をするということが多かったようですが、2015年以後の訪日外国人の急激な増加によって、大都市以外の観光地にも訪日外国人が訪れるようになり、地方の温泉地の旅館や、駅前の個人経営のビジネスホテルでも、外国人宿泊客の予約を受けたことがないところは、ほぼ皆無であると言っても過言ではないでしょう。宿泊業者にとっては、インバウンド客の増加はチャンスである反面、24時間営業や不規則勤務等、その労働条件によって慢性的な人材不足もあり、更に、外国語対応だけでなく文化的な要素も含めて、外国人客に対応する人材不足の問題は深刻になっています。その解決策の一つとして、外国人従業員を採用しようという考えもあります。特に、外国語を使っての接客業務が発生するフロント業務で外国人を採用出来たら…と考える施設も多いようです。では、実際のところ、宿泊施設のフロント業務では、外国人の雇用はできるのでしょうか?

「技術・人文知識・国際業務」のビザを取得するには?

基本的に、宿泊施設のフロント業務は単純労働と見做されていることから、「技術・人文知識・国際業務(=技人国)」のビザで定められている職種には該当していません。なので、原則として、すべての宿泊施設で技人国ビザで外国人を雇用することはできませんが、例外的に許可になるケースもあります。その典型的な例が、宿泊客の中で外国人客の割合が高く、外国語を使った通訳・接客業務が多い宿泊施設では、「通訳・翻訳」業務を行うということで、外国人従業員をフロントで勤務をさせることが出来ます。では、外国人客の割合が多いということを、どのように証明したらよいのでしょうか?ビザ申請の際に、出入国在留管理庁に提出する書類の中に「雇用理由書」があります。この理由書では、「外国人従業員を雇い入れる必要性」を説明するのですが、そこで、外国人宿泊客の数や割合について記載することになります。ただ単に、宿泊者数や割合だけを記載するだけでなく、外国の旅行代理店からの予約比率、外資系宿泊予約サイトの利用率なども記載することで、ただ実数として多いという現状を伝えるだけでなく、その宿泊施設が営業戦略として、外国人宿泊客の獲得の取組を行っていることなどを記載できると、より具体的で信ぴょう性が増すでしょう。このような説明は、ヒルトンホテルやマリオットホテル等、一見で外資系ホテルと思われる宿泊施設だけでなく、観光地の旅館やビジネスホテルであっても、外国人宿泊客の多い施設においては、外国人従業員を雇用する理由・必要性として有用なものとなります。

なお、あくまでも技人国ビザで雇用をすることになるので、採用予定の外国人従業員の方が、大学など高等教育機関を卒業しており、そこでの専攻内容が宿泊施設での職務内容と一致していることを、「雇用理由書」でしっかりと説明する必要があるのは言うまでもありません。また、技人国ビザでは、現場労働や単純作業に就くことは想定していませんので、人手不足だからと言って、客室清掃や施設内レストランでのウェイター等の業務を一時的であったとしても担当させることはできません。

特定技能ビザの活用

宿泊施設で外国人従業員を雇用する2つ目の方法ですが、2019年4月に新たに作られた「特定技能」ビザがあります。これは、特に人手不足が深刻な12業種が特定されており、その中の一つに「宿泊業」も入っています。宿泊業で雇用できる職務としては、「フロント」「企画・広報」、「接客」、「レストランサービス等の宿泊サービス提供」といったものがあります。

このビザで採用できる外国人従業員は、①従事しようとする業務の技能試験に合格すること、②「日本語能力試験N4」、または、「国際交流基金日本語基礎テスト」に合格している必要があります。つまり、従事しようとしている業務に関して、最低限度の基礎知識を持っていることと、職場での基本的なコミュニケーションを日本語で行うことが出来る、という2つの能力があることを、試験に合格することで証明する必要があります。

一方、「特定技能」の外国人従業員を受け入れた企業側は、外国人従業員に対する支援が義務付けられていることが、「技人国」等他の在留資格を持つ従業員とは異なるところです。例えば、①事前のガイダンス、②出入国の際の空港送迎、③住居確保や契約の支援、④生活オリエンテーション、⑤役場など公的手続等への同行、⑥日本語学習機会の提供、⑦相談・苦情への対応、⑧日本人との交流機会づくり、⑨転職支援、⑩3か月に1回以上の定期面談、といった10種類の支援を行うことが義務となっており、企業側の負担は決して小さくはないとも言えます。これらの支援は、雇い入れ企業が独自に行っても構いませんし、それが困難な場合には「登録支援機関」に支援を委託すことも可能です。

資格外活動を取得したアルバイトの活用

最後、宿泊施設で外国人を雇用する3つ目の方法として、「留学」や「家族滞在」の在留資格を持つ外国人を週28時間以内のアルバイトで雇用する方法です。この場合は、フロント業務だけでなく、レストランや客室清掃などの業務としても雇用することが出来るため、職種の制限はなくなります。一方で、就業時間は週28時間と上限が決められているため、これを超えてしまうと不法就労となりますので、労働時間の管理は厳密に行う必要があります。

まとめ

宿泊施設でのフロント業務に関しては、外国人宿泊客が多いことが証明できれば、「技人国」のビザでも雇用は可能ですが、そうでない場合でも、留学生の活用や、企業側に支援の義務が生じますが「特定技能」での採用も可能です。アフターコロナの外国人観光客の受入れ再開に合わせた急場しのぎの対策ではなく、中長期的な人事戦略を立てたうえで、それぞれの企業にとって一番良い在留資格で外国人従業員の採用をすることが必要となります。

ニセコビザ申請サポートセンターは、言葉や文化、そして国境の壁を乗り越えて、日本社会の一員として働こうとしている、外国人の方々を全力で応援し、サポートします。この記事に関するご質問、お問い合わせや、就労ビザ取得に関しての条件面、手続き面に関するお問い合わせは、お電話か、ホームページの「無料相談フォーム」からお気軽にお問合せください。