ニセコビザ申請サポートセンター代表、申請取次行政書士の明山崇です。

私は主に、北海道の宿泊業や観光業で働く、外国籍従業員の方の在留許可申請、いわゆる就労ビザの、新規取得や更新手続きのお手伝いを行っています。

今回は、在留資格「技術・人文知識・国際業務」(以下、技人国ビザ)で採用した外国人社員に、現場研修をさせたい場合にはどうしたらよいか?について解説していきます。

技人国ビザの職務内容と現場での業務

技人国ビザを持つ人の職務内容としては、事務職や営業職などの、いわゆるホワイトカラーの知識労働が対象になっています。そしてその職務内容は、大学など高等教育機関での専攻内容や履修科目との関連性が必要とされています。しかし、製造業やサービス業で新入社員を採用した場合に、新入社員の方を入社後すぐに、営業や事務に配属することは稀ではないかと思われます。自社の製品やサービスだけでなく、お客様を知ることで職務遂行能力を高めるために、入社後に研修の一環として、現場に配属されることはよくあることです。しかし、製造現場の工場で組み立て作業を行ったり、店舗で接客を行うことは、そもそも、技人国ビザでは想定されておらず、資格外の活動として厳密に言えば不法就労の状態であるとも言えます。会社にとっては、不可欠な現場での研修を外国人新入社員にも行うために、どのような点に気を付けたらよいのか、ポイントを解説していきます。

新入社員に現場研修を行う場合の注意点

では、外国人新入社員が現場研修を行う場合、雇用者が注意しなければならないのは、以下の4点となります。

ほかの新入社員も同じ現場研修を行うここと

まず、現場研修は外国人新入社員だけの特別プログラムでなく、日本人新入社員も同様の研修を行う必要があります。外国人社員だけを特別扱いせず、他の新入社員と同等の扱いをし、国籍を問わず、会社としての社員育成プログラムの一環として、全新入社員が現場での研修を行うことを、雇用理由書などに明記しておく必要があります。

研修計画を決めておくこと

現場での研修を兼ねて勤務を行う場合には、いつ・どこで・具体的な業務を・いつまで担当するか、といった計画を定めて、それに従って配属をし、勤務をさせる必要があります。これも、「技人国」の在留資格を申請する際に、雇用理由書と一緒に添付資料として提出すると良いでしょう。

終了の期限を明確に決めること

現場での勤務が終了する時期を、明確に定めておく必要があります。つまり、在留資格の範囲外の現場労働は期間限定であることを明確にすることです。「本人が〇〇できるようになるまで」とか、「期間は半年から1年程度」といった漠然としたものであったり、明確な時期が定められていないものは不可です。特に、現場研修の期間で注意したいのは、雇用期間との兼ね合いです。当初の雇用予定期間が1年の場合に、現場研修の期間が1年としてしまうと、本来の「技人国」の仕事を全くしないうちに雇用期間が終わってしまうこととなります。このような場合は、技人国ビザはもはや意味をなさないことになるため、申請が不許可になる可能性は高くなります。雇用期間が1年の場合は3か月、5年の場合は1年など、現場での研修よりも、本来の「技人国」の業務を行う期間のほうが長く設定されていないと、「技人国」ビザの許可を得るのは難しいと言えます。

研修期間が終わったら本来の「技人国」の業務を担当すること

現場での研修は期間限定であり、その期間が終了したら、速やかに「技人国」本来の仕事に従事させることを、明確にする必要があります。そもそも、「技人国」ビザを持っている人が現場労働をすることは、いわば「不法就労」の状態になります。これが一時的な特例であることを企業側も理解をしたうえで、現場研修を行なっているということを示すためにも、研修期間終了後は「技人国」の仕事を担当させることを、雇用契約書や雇用理由書などに明記することです。そうすることにとって、現場労働のために外国人を採用したのではないか?といった疑念を出入国在留管理庁の審査官に持たれないようにするポイントとなります。

現場労働を伴う職場で外国人を雇うには?

外国人の方を採用するにあたっての在留資格は、「技人国」だけではありません。現場での作業や単純労働が含まれているような場合には、在留資格「特定技能」を使ったほうが申請は許可になりやすいケースもあります。また、日本の大学を卒業していて、日本語能力検定N1を持っている場合には、在留資格「特定活動46号」を取得できるケースもあります。特に、日本語でのコミュニケーションを伴う現場作業があるような職場では、この在留資格のほうが許可を得やすいです。「特定活動46号」に関しては、こちらの記事で詳細をご紹介しています。興味のある方は併せてご覧ください。

まとめ

特に、新卒の外国人の方を採用する場合、「技人国」ビザを取得することがほとんどでしたが、業種や職務内容によっては、「特定活動46号」や「特定技能」といった在留資格のほうがより実情に合致していて、許可を得やすい場合もあります。入社後の育成計画や従事させる予定の業務によっても変わってきますので、外国人社員それぞれに合わせた在留資格を選択されると良いでしょう。どの在留資格を選べば許可が得やすいか、申請にあたっての書類作成のポイントや、追加で提出する任意提出書類に関しては、ビザや在留資格を専門に扱う申請取次行政書士にご相談されることをお勧めいたします。

ニセコビザ申請サポートセンターは、言葉や文化、そして国境の壁を乗り越えて、日本社会の一員として生活しようとしている、外国人の方々を全力で応援し、サポートします。この記事に関するご質問、お問い合わせや、在留資格の取得や変更に関しての条件面、手続き面に関するお問い合わせは、お電話か、ホームページの「無料相談フォーム」からお気軽にお問合せください。