ニセコビザ申請サポートセンター代表、申請取次行政書士の明山崇です。

私は主に、北海道の宿泊業や観光業で働く、外国籍従業員の方の在留許可申請、いわゆる就労ビザの、新規取得や更新手続きのお手伝いを行っています。

今回は、「技能」ビザ(在留資格)の中で、申請数の多い「調理師」に関して解説をしていきます。

はじめに;技能ビザとは?

いわゆるホワイトカラーの知識労働を行うためのビザが「技術・人文知識・国際業務」だったのに対して、熟練した技術を要する業務を行う外国人の方は、技能ビザを申請することになります。この「熟練した技術を要する業務」に関しては、法律では、以下の9つの職種を特定しています。「調理師」、「建築技術者」、「外国製品製造」、「宝石、貴金属、毛皮の加工」、「動物の調教」、「石油探査のための海底掘削」、「パイロット」、「スポーツ指導者」、「ソムリエ」が、技能ビザがカバーする職種になります。

調理師が技能ビザを取得するための要件

調理師で技能ビザを取得しようとした場合、申請者に必要となる要件は、調理師としての実務経験です。タイ料理であれば5年、それ以外の国の料理を専門とする調理師の場合は10年の実務経験が必要です。日本のように、調理師免許制度のある国も多いのですが、技能ビザを申請するにあたっては、出身国の調理師免許取得の有無は関係ありません。唯一の例外として、タイ料理に関しては実務経験が5年間と短いことから調理師免許の取得が必須条件となっています。

どのように実務経験を証明するのか?

では、調理師としての実務経験は、どのように証明したらよいのでしょうか?過去の勤務先から、在職証明書を発行してもらい、その在職期間が合計10年を超えていれば大丈夫です。1か所の勤務先で10年以上という実務経験がなくても、複数の勤務先を合算した在職期間が10年を超えていれば申請をすることが可能です。その場合は、在職証明書は複数枚、勤務先の数だけ出さなくてはならなくなります。また、期間は10年連続している必要はなく、途中で数年間ブランクがあっても、トータルで10年以上あれば問題ありません。ただ、在職証明書を取得することが困難な場合が多々あります。例えば、

①過去勤務していたお店がすでに倒産や廃業していて、在職証明書の発行が不可能な場合。

②過去勤務していたお店で、不義理を働いてしまったり、良い辞め方をしていなく、気まずくて顔を出すことが出来ず、いまさら在職証明書の発行を依頼できない場合。

といった2つケースです。

①の場合は、在職証明書の発行が物理的に不可能ですので、その期間の勤務を証明するものが一切ないため、残念ながら実務経験としてカウントすることはできません。

②の場合は、気持ちの問題なので、ビザ申請のために頑張って連絡を取り、在職証明書を発行してもらえるよう、依頼をするしかないです。

在職証明書の記載内容は?

在職証明書に関しては、役所のような公的機関が発行している書類ではないので、その書式は様々で、記載内容によっては技能ビザの申請要件を満たさないことがあります。職場に発行を依頼する際には、「名前」「性別」「生年月日」といった勤務者の個人を特定できる情報と、勤務先を特定するための情報として、「勤務先(レストラン)の名前」「住所」「電話番号」と、そして最も重要な在職期間は、勤務開始日と勤務終了日の2つの年月日が記載されている必要があります。ただし、これらの情報が記載されていたとしても、在職証明書は一民間企業が発行する書類であるため、その信ぴょう性、つまり偽造されたものではないか?という観点で、出入国在留管理庁の審査官は審査を行います。聞くところによると、過去の勤務先に電話をして、その飲食店の存在を確認することもあるようです。その時に、だれも電話に出なかったり、そもそもお店の電話番号が使われていなかったりした場合には、お店の存在がなく、在職証明書は偽造されたものだとみなされ、申請が不許可になってしまうこともあります。

技能ビザで雇用する飲食店の要件

一方、日本で外国人調理師を受け入れる飲食店側には、どのような要件が必要なのでしょうか?

まずは、提供する料理の種類ですが、法令には、「調理、または食品の製造にかかわる技能で、外国において考案され、我が国において特殊なものを要する業務」が、技能ビザの対象と規定されています。高度な調理技能とメニュー作りに幅広い専門知識が必要とされるコースメニューや、日本人向けにアレンジされていない、本場のスタイルの料理を提供する飲食店である必要があります。具体的な説明のために、コース料理や単品料理のメニューを提出することで、技能ビザが必要とされる料理を提供する飲食店であることを証明します。当然ですが、日本料理の飲食店や居酒屋で和食の調理を行うということでは、技能ビザは許可されないことになります。また、もともとは外国料理であったとしても、ラーメンや餃子、カレーライスやハンバーガー等、一般的な国民食になっているような料理を提供する飲食店やファストフードのチェーン店でも、技能ビザの許可を受けることは難しいです。

次に、外国人調理師を受け入れる飲食店が実際に存在していることを証明する必要があります。そのために、例えば、店舗の写真(外観だけでなく、看板、客席、調理場等)や店舗内部の見取り図を複数枚提出したり、ホームページや飲食店ポータルサイト(ぐるなびや食べログ等)のページのコピーやURLを添付書類として提出することで、書類上でしか存在しない架空のお店ではなく、実際の店舗で営業している事実を証明します。

更に、外国人調理師を新たに雇い入れても問題ない経営状態であることを証明するために、直近年度の決算文書を提出することで、経営の安定性を証明します。もし、その飲食店が開業間もなく、決算文書の提出ができない場合は、代わりに創業時の事業計画書や資金繰表を提出することで、経営状態に問題がないことを説明していきます。

まとめ

調理師を技能ビザで雇用する場合に関しては、外国人労働者側の実務経験をどのように証明するか、と、受け入れ側の飲食店が要件に適合していることをどのように証明するか、この2点が申請を許可にするポイントだと言えます。この2点を明確に証明できるかを念頭に置いたうえで、在職証明書の収集や「採用理由書(雇用理由書)」の作成、添付書類の選定、収集を行う必要があります。

ニセコビザ申請サポートセンターは、言葉や文化、そして国境の壁を乗り越えて、日本社会の一員として働こうとしている、外国人の方々を全力で応援し、サポートします。この記事に関するご質問、お問い合わせや、就労ビザ取得に関しての条件面、手続き面に関するお問い合わせは、お電話か、ホームページの「無料相談フォーム」からお気軽にお問合せください。