ニセコビザ申請サポートセンター代表、申請取次行政書士の明山崇です。

北海道で唯一の、ビザ申請と観光業に特化した行政書士として、主に、ニセコ・小樽・札幌市内を中心に北海道で生活する、外国籍の方々の在留許可申請、いわゆる就労ビザや配偶者ビザ等の、新規取得や更新手続きのお手伝いをしています。

今回は、ホテルや旅館等の宿泊業で「特定技能」のビザを持った外国人の方を雇う際のポイントについて解説していきます。

特定技能ビザを持つ外国人を雇用できる宿泊施設

まず、特定技能ビザを持つ外国人の方を雇用できる宿泊施設について解説していきます。特定技能ビザの外国人の方を雇用できる宿泊施設には「旅館業法の許可」が必要とされています。つまり「旅館業許可証」(旅館・ホテル営業許可証)を取得した宿泊施設になります。これらの施設には、「簡易宿泊営業」「下宿営業」「民泊営業」は対象外となっており、更に、風営法の施設、いわゆる「ラブホテル」も対象外となっています。なお、特定技能の外国人を雇用することになってから4か月以内に、国土交通省が設置する「宿泊分野に係る特定技能外国人の受け入れに関する協議会」の構成員になることも求められています。

どのような業務に従事させられるのか

特定技能の外国人を雇用する際には、分野別に従事する業務が定められています。これを定めた「分野別運用方針」では、宿泊業で従事できる業務に関して以下のように定めています。

従事させて良い業務

「宿泊施設におけるフロント,企画・広報,接客及びレストランサービス等の宿泊サービスの提供に係る業務」。これに加えて、「当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務(例: 館内販売,館内備品の点検・交換等)に付随的に従事することは差し支えない。」と規定されています。フロントでのチェックイン、案内業務や、レストランでの配膳、サービス業務といった宿泊客に直接サービスをする業務から、企画・広報といったバックオフィス業務まで、幅広い業務に従事できます。これらの業務をまんべんなく従事することもできますし、一つの業務に専従させることも問題ないとされています。そして、これらに付随して、日本人従業員が通常行っている関連業務もやって良いことになっています。例としては、宿泊施設内の売店でお土産を販売したり、館内の部品の点検や交換を行う業務も行うことができます。

ただし、この関連業務の従事に関しては注意が必要で、関連業務だけに従事することは認められていません。これは、売店でのお土産品の販売だけであったり、館内設備のメンテナンスだけを行うということであれば、宿泊業本来の業務を行うための雇用という意味をなさないからです。宿泊業での特定技能の業務内容から考えると、フロントやレストランなど、1つの部門で大人数のスタッフを雇用している大規模な施設だけでなく、中小規模のホテルや旅館で、少人数のスタッフが館内全ての業務を担当しているような、マルチタスク型の勤務体制をとっている施設でも、この在留資格を使えば特定技能の外国人従業員を雇用しやすいと言えます。

従事させてはいけない業務

「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」(=風営法第2条第3項で規定)は、してはいけないことになっています。レストランでのウエイターや接客に関しては従事させて良い業務になっていましたが、宿泊施設内にあるのカラオケスナックやバーなどで、お客様の隣に座って談笑したり、カラオケを一緒に歌う等の接待は、従事させてはいけない業務に該当します。

特定技能で採用できる外国人の方の条件

特定技能で採用できる外国人の方には、いくつかの条件が定められており、これらを満たさないと、在留資格の取得や、現存の在留資格からの変更はできません。その条件は以下の通りです。

  • 年齢が18歳以上であること
  • 従事しようとする業務の技能試験に合格していること。宿泊業では「宿泊分野技能測定試験」
  • 「日本語能力試験N4」、または、「国際交流基金日本語基礎テスト」に合格していること
  • 健康状態が良好であること。所定の内容の健康診断書の提出が必要とされています。

となっています。他の就労ビザとは異なり、学歴や実務経験年数の規定はありません。つまり、健康な18歳以上の外国人の方で、従事しようとしている宿泊業の業務に関して基礎知識を持っていることと、職場での基本的なコミュニケーションを日本語で行うことが出来る、という2つの能力があることを、試験に合格することで証明できれば、特定技能ビザを取得できる可能性があります。

「技術・人文知識・国際業務」ビザで雇用する場合との違い

前述の通り、宿泊業で特定技能ビザで従事できる業務内容、と外国人の方の学歴・経歴等の採用条件の違いといった観点から、「技術・人文知識・国際業務」ビザで採用する場合の違いを見ていきます。

業務内容の違い

「技術・人文知識・国際業務」のビザでは、いわゆるホワイトカラーの知識労働を行うということを想定しており、現場労働や単純作業に従事することは、在留資格で規定される活動に該当しない「不法就労」にあたるとしています。例えば、一般的なフロント業務、レストランでの配線や接客、お土産物の販売、備品点検や交換といった、特定技能では認められている業務内容のほぼ全ては、「技術・人文知識・国際業務」では資格外活動にあたり従事できないことになっています。また、「技術・人文知識・国際業務」のビザで一部認められているフロント業務であっても、外国人宿泊客が多く、外国語での対応や通訳翻訳が必要といった専門的な業務に従事するケースがほとんどです。さらに、この業務に専従で外国人従業員を勤務させるほどの業務量があることが証明できないと、その他の認められていない業務に従事させるのではないかという嫌疑を持たれ、「技術・人文知識・国際業務」のビザでは不許可になることがあります。

外国人の方の経歴・学歴等の採用条件の違い

「技術・人文知識・国際業務」のビザを取得するためには、短期大学・大学・大学院、若しくは日本国内の専門学校を卒業していること、といった学歴が要件となっています。さらに、これらの高等教育機関での専攻や履修科目が、従事しようとする職務内容との一致や関連性があることが求められます。もしくは、従事する職務内容で10年以上の実務経験が必要とされています。一方、「特定技能」であれば、学歴や専攻内容、実務経験は求められず、18歳以上で、専門分野の技能試験と日本語試験に合格することがビザ申請の要件となっています。

まとめ

日本国内の観光地では、アフターコロナの外国人入国再開に向けて、外国人観光客の受入れ体制の再構築を進めていると思われます。急場しのぎの対策ではなく、中長期的な人事戦略を立てたうえで、それぞれの企業にとって一番良い在留資格で外国人従業員の採用をすることが必要となります。

ニセコビザ申請サポートセンターは、言葉や文化、そして国境の壁を乗り越えて、日本社会の一員として働こうとしている、外国人の方々を全力で応援し、サポートします。この記事に関するご質問、お問い合わせや、就労ビザ取得に関しての条件面、手続き面に関するお問い合わせは、お電話か、ホームページの「無料相談フォーム」からお気軽にお問合せください。