ニセコビザ申請サポートセンター代表、申請取次行政書士の明山崇です。北海道で唯一の、ビザ申請と観光業に特化した行政書士として、主に、ニセコ・小樽・札幌市内を中心に北海道で生活する、外国籍の方々の在留許可申請、いわゆる就労ビザや配偶者ビザ等の、新規取得や更新手続きのお手伝いをしています。
今回は、在留資格「永住」とは異なる、日本国籍を取得する帰化申請のメリットについて解説をしていきます。
はじめに
日本で仕事をしている中で、滞在期間が長くなるにつれて結婚をして子供が生まれるなど、生活環境の変化に伴い、このまま日本で生活したいと感がる外国籍の方もたくさんいらっしゃいます。外国籍の方が、在留資格の更新など煩雑な手続きをせずに、日本に居住する方法は、「永住」の在留資格の取得と、「日本国籍」の取得、いわゆる帰化をするという2つの方法があります。「永住」と「帰化」を比較しながら、それぞれのメリット・デメリットに関して解説していきます。
「永住」と「帰化」の相違点
国籍と名前、戸籍に関して
「永住」と「帰化」の一番の大きな違いは国籍になります。「永住」がもともとの外国籍のままであるのに対して、「帰化」では日本国籍を取得します。国籍は原則として2つもつことができないため、日本国籍を取得すると同時に、もともとの外国籍を喪失することとなります。
名前に関しても、「帰化」をした場合には変更することができます。おおよそ、以下の3タイプの中からご自身で決めることができます。
- 帰化する以前から使っていた名前をそのまま使い続けること。
- 通称として使てきた名前を正式名称とすること。
- 帰化を契機に、自分で定めた名前を新たに名乗ること。
日本人が一般的に使っている「氏」と「名」に分かれている名前を付けることができます。戸籍に関しては、「帰化」が完了してから1か月以内に「帰化届」を住所地を管轄する市町村役場に提出することで、新たに作成されます。夫婦の形態によっても異なりますが、夫婦同時に帰化した場合は、新たな戸籍が作成され、外国人配偶者が帰化をした場合は、日本人配偶者の戸籍に入る形になります。
在留期限と在留カードに関して
「帰化」をした場合には、日本人になりますので在留期限という概念はなくなります。そして、在留カードの携帯義務もなくなります。一方、「永住」の場合には、国籍自体は外国籍のままですが、在留期限はなくなるため、在留資格の更新手続きは不要になります。ただし、在留カードの携帯義務は引き続きあり、法令では、7年ごとに在留カードを更新することになっています。在留資格の更新のような煩雑な手続きではなく、在留カード自体を更新するということになりますので、その手続きはかなり簡素化されています。
就労制限に関して
「帰化」をすると、就労に関しては日本人と同様に、一切の制限がなくなります。これは、「永住」の在留資格を取得するのと同様です。どちらも、一般的な日本人と同じように、就労先の会社や職務内容に関して、自由に選択し、変更することが可能です。「留学」や「家族滞在」の在留資格を持つ外国人の方が従事することができない、風俗営業関連の仕事にも従事することができます。また、週28時間以内といった就労時間の制限もなくなります。更に、永住の在留資格を持つ外国人の方は、就業制限がないだけでなく、退職をして無職になっても、引き続き日本に在留をすることは可能です。一方、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ外国人の方が、60歳を迎えて、勤務している会社を定年退職した場合には、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で定められた職務内容に従事できる他の会社に再就職しない限り、この在留資格で日本に引き続き滞在することはできません。こういったことからも、日本を終の棲家と考えている外国人の方は、条件が整った段階で、永住の在留資格を取得するか、若しくは帰化申請をして日本国籍を取得することがおススメです。
社会生活に関して
「帰化」をして日本国籍を取得した場合、公民権は日本人と同じように行使可能になることから、選挙権・被選挙権を持つことができます。これも、「帰化」と「永住」の大きな違いでもあります。地方自治体の議員、首長だけでなく、国会議員選挙にも立候補することができることから、総理大臣になることも可能です。
また、一部の地方自治体では、「永住」の在留資格を持つ外国人の方は、地方公務員試験を受け合格すれば採用され、地方公務員になることも可能です。国家公務員に関しては、永住の在留資格を持っていても外国人の方は採用試験を受験することすらできないのですが、市町村・都道府県レベルではチャレンジすることが可能です。
なお、公立学校の教員採用試験に関しては、平成3年3月に文部省が「日本国籍を有しない者にも公立学校教員採用試験の受験を認め、専攻に合格した者については任用の期限を附さない常勤講師として任用するための措置を講ずるよう各教育委員会を指導」したことにより、全ての都道府県・指定都市で平成4年度教員採用試験から、日本国籍を有しない者にも受験・採用の道が開かれています。
退去強制処分に関して
「永住」の在留資格は、在留期限の定めがなくなっただけで、外国人として在留していることには変わらないことから、薬物犯罪や売春犯罪など重大な犯罪に関わったり、1年以上の懲役や禁固刑となった場合には、退去強制処分がとられ、強制的に日本国外に退去・送還されることになります。「帰化」をした場合は、日本人として法の裁きを受けますが、日本人である以上、日本国外への退去・送還の処分はありません。
まとめ
上記の文書は以下の表にまとめることができます。
「帰化」をして日本国籍を取得することで、法的地位は日本人と同様となり、社会活動や経済活動をより自由に行うことができます。「帰化」申請には、様々な要件がありますが、まずは「5年以上引き続き日本に居住している」という「住居要件」を満たしていることが第一となります。「帰化」を希望される方は、まず、ご自身が来日してから現在までの日本滞在や出入国の記録を確認するとともに、住居要件を頭に入れておき、出国期間が規定を超えないように早い段階から意識をしておく必要があります。
行政書士あけやま事務所は、言葉や文化、そして国境の壁を乗り越えて、日本社会の一員として生きていこうとする、外国人の方々を全力で応援し、サポートします。この記事に関するご質問、お問い合わせや、日本国籍取得に関しての条件面、手続き面に関するお問い合わせは、お電話か、ホームページの「無料相談フォーム」からお気軽にお問合せください。