北海道で唯一、観光業界専門の行政書士、明山崇です。

私は主に、宿泊業や観光業で働く、外国人従業員の方の在留許可申請、いわゆる就労ビザの、新規取得や更新を行っています。近年の、日本社会のグローバル化に伴い、日本の企業で働く外国人の方の数は増えています。外国人の方が日本の職場で働き、出会いが増えれば、日本人従業員の方との社内恋愛·そして結婚をされる方も増えてきております。そんなわけで、当事務所では、国際結婚の手続き、「日本人の配偶者等」の在留資格(ビザ)の取得に関するお問い合わせも、たくさんいただいております。

今回は、「日本人の配偶者等」の在留資格を申請する際に、必要書類となっている「質問書」の項目から読み取れる、出入国在留管理庁の審査官がどのような観点で審査をしているか、重要な点だと思われるポイントを解説していきます。

質問書は事実通りに正確に!

「日本人の配偶者等」の在留資格の審査にあたっては、結婚の信ぴょう性の確認、つまり、この結婚は実体のある本物なのか?偽装結婚ではないのか?といったことが、一番重要なポイントになると思われます。そのためにも、まずはこの質問書自体を偽りなく正確に記入することが強く求められています。

例えば、「事実に反する記入をしたことが判明した場合には申請人に係る審査上不利益な扱いを受ける場合や罪に問われる場合がありますので、提出前に、記載内容に間違いがないことを確認し、ご自身で署名してください」と、冒頭に、太字で波下線付きで強調して書かれています。そして、質問書の最後のページ、署名の後にも(注)事実に反する記入をしたことが判明した場合には申請人に係る審査上不利益な扱いを受ける場合や罪に問われる場合がありますので、提出前に、記載内容に間違いがないことを確認し、ご自身で署名してください」と、全く同じ文書が太字で波下線付きで強調して書かれているので、まずは、事実通り正確に記入をさせることで、偽装結婚や虚偽申請を排除したいという、出入国在留管理庁の強い意図が感じられます。

出会いから結婚までの経緯で、実体のある結婚かどうかを確認

項目2では、「結婚に至った経緯(いきさつ)」について確認されます。

①夫婦が初めて会った年月日と場所を具体的に記載します。
怪しい仲介人やブローカーが引き合わせたということでないのは勿論のこと、実際に会ってから結婚までの期間が短いかどうかなど、不審な点がないかを確認していると思われます。そして、

②初めて会ってから(紹介により知り会われた方は、紹介されたいきさつ)から結婚届を出されるまでのいきさつを、年月日を示しながら、出来るだけ詳しく記載します。
出会いから入籍まで、意思疎通を重ねてお互いの信頼関係を築き上げているか、夫婦としての関係が本物であるのかを確認していると思われます。ここでは、交際の経緯や事実を時系列でまとめるのは当然のこと、それ以外に、お互いの印象や気持ちなども併せて記載することでより信ぴょう性が高まります。また、結婚は家と家とのお付き合いともいわれていますので、交際の経緯の中で、お互いの両親や親族と会っていれば、その年月日やその時の状況なども記載します。この経緯は文書で書くだけでなく、その時の写真などを添付することで、事実であることを客観的に証明していきます。

紹介者を確認することで、怪しい仲介人やブローカーが関与していないか確認

そして(2)では紹介者の有無を確認されます。人物だけでなく、結婚相談所の場合は会社名を記載するよう指示があります。この項目では、偽装結婚ブローカーや仲介人からの紹介ではないか、ということだけでなく、紹介者や結婚紹介所が、過去に偽装結婚のトラブルが多くないか、つまり、いわゆるブラックリストに載っているような人(会社)からの紹介ではないか?ということを確認されていると推測できます。もし、紹介者がそうでない場合であっても、「紹介者と申請人との関係」「紹介者と配偶者との関係」の双方に関して、どのような関係か詳しく記載を求められます。簡単に知人や友人だけだと、もしかしたら虚偽の内容を書く人もいることを想定し、より具体的な記入を求めているのでしょう。

夫婦間の言語と日本語能力を確認し、意思疎通し人間関係が構築できているかを確認

次に、項目3では、夫婦間の会話に使用されている言語について尋ねられます。そして、お互いの母国語がどの程度理解できるのかといった理解度を4段階の選択肢からチェックをさせられます。これは、2人が夫婦としての人間関係を築けるだけの、意思疎通·コミュニケーション能力があるかが確認されています。言葉が通じずに会話も出来なければ、夫婦の関係を築くのは難しく、そんな状態で結婚をするのは偽装結婚なのではないか?と疑っていることが想定されます。

更に外国人配偶者の日本語に関しては、(5)でいつ、どのように学んだのか、具体的に記載してください、と日本語を使っているということの裏付けとして、学習歴まで確認することで、安易な嘘を排除したいという意図が感じられます。さらに、(6)お互いの言葉が通じない場合、どのような方法で、意思の疎通を図っていますか? と、言語能力が不十分なことを想定した質問も用意されています。この質問からも、夫婦間の言葉を使った意思疎通による関係性の構築を、結婚の信ぴょう性を確かめる上で重要視していることがわかります。ここで夫婦間の会話に通訳者がいた場合、氏名や国籍、住所までも列記させることで、より具体的で信ぴょう性の高い記載内容が求められています。

結婚の証人と結婚式実施の有無を確認し、親族に祝福される本当の結婚かを確認

項目4では、結婚届出時の証人2名を記入し、続いて項目5では、結婚式(披露宴)を行った方は、その年月日と場所を記入します。さらに、結婚式に関しては日本人側、配偶者側で、それぞれ誰が参加して、合計の出席者が何名だったかも記入します。これらの項目で、今回の結婚は2人だけで内密に行われたのではなく、親兄弟親類を招いて公正明大に行われているかどうかを確認します。犯罪行為である偽装結婚では、なるべく人に知られたくないだろうし、本当の結婚ではないので、わざわざ結婚式をする必要はなく、ましてや、親兄弟や友人を招いて嘘を公表する必要もないからです。結婚披露宴の実施は、目に見えない本物の結婚を、目に見える形にできる数少ないチャンスだと言えますので、結婚式は簡単なものであったとしても、やらないよりはやった方が良いと言えます。

結婚回数を確認し、偽装結婚を繰り返す常習犯でないかを確認

項目6では、双方の結婚歴に関して尋ねられます。再婚の場合は回数と、前回の結婚の期間離婚か死別かもチェックをさせられます。この項目では、結婚回数が多い場合、不自然な結婚·再婚を繰り返していないかを確認されます。特に、日本人が外国人と、外国人が日本人と結婚·再婚を繰り返していた場合、日本人はお金をもらって偽装結婚を、外国人は就労ビザ目的で、偽装結婚を繰り返し行っているのではないか?という疑いの目でチェックされます。

お互いの母国の訪問回数を確認し、書類手続きだけの偽装結婚でないかを確認

項目7では、外国人配偶者が来日した回数と時期、項目8では、日本人が外国人配偶者の母国にいった回数と時期を確認されます。この項目では、お互いがきちんと実際に会い、人間関係を築いたうえでの結婚、つまり実体のある本物の結婚かを確かめる材料として、双方の国を行き来した回数が聞かれています。さらに、日本人が外国人配偶者の母国にいった回数に関しては、知り会ってから結婚までの間、と、結婚後、に分けて確認がされています。お互い好きで愛し合ってする本当の結婚であれば、離れていてもお互い会いたいという気持ちがあり、それを行動に移すのは当然だから、結婚まで、そして結婚してからも複数回以上、会いに行っているはずだ。逆に、偽装結婚は、なるべく低コストで簡単に形式的な手続きを済ませたいだろうし、そもそも夫婦2人の人間関係の構築は不要だと思うだろうから、会う回数も極端にすくないはずだ、というのが出入国在留管理庁側の考えだと思われます。

過去の在留状況を確認し、過去の不法滞在や犯罪歴を確認

項目9、10では、出国命令を含む退去強制歴が確認されます。その回数や、違反の内容、退去強制の年月日、出国空港も記載する必要はあります。これは当然のことながら、過去の在留状況や法令違反の状況を申告させることで、偽装結婚により不法滞在歴のある外国人を再度入国させたり、ビザを与えたりすることを避けたいという意図がうかがえます。もちろん、出入国在留管理庁側には、過去のデータはすべて残っているため、調べれば必ずわかることだと思われますが、あえて、この質問書で自己申告させることで、過去を偽ってまで入国したいという悪意ある入国者を排除したいという思いが感じられます。また、退去強制されるまでの間に夫婦で同居した事実がある方は、その期間と住所を記入します。同居の事実がある方は、申請後の追加質問·書類提出依頼で、前回の不法滞在に関しては、日本人配偶者がどの程度知っていたのか、不法滞在を隠匿した共謀性があるのかも確認され、外国人配偶者側の遵法意識だけでなく日本人側の遵法意識が問われるはずです。夫婦揃って遵法意識に欠け再犯の可能性が高いと審査官に判断された場合、今回の申請は不許可になる可能性が高いです。

親族間での結婚の認知度を確認し、公に祝福される本当の結婚かを確認

最後、項目12では、親族で今回のご結婚を知っている方に関して確認されます。夫側·妻側それぞれ、「父·母·兄·弟·姉·妹·子」に〇を付ける形で申告します。この項目は、承認や結婚式の実施に関する質問と同様に、本当の結婚であれば、親族にも真っ先に知らせて祝福してもらいたいはず。逆に、犯罪行為である偽装結婚であれば、親兄弟には嘘はつきたくないのでなるべく知られず、内密に行いたいと思うはず、という審査官の考えが反映されています。よって、この項目はご存命の親族は、たとえ離れて暮らしていても、全ての方に〇が付くよう、申請までにお知らせしておくと良いでしょう。

まとめ

在留資格「日本人の配偶者等」の質問書は、全てこの結婚が本当のものかどうか、偽装結婚ではないか?という、結婚の信ぴょう性を、出入国在留管理庁が様々な角度から確認する質問内容になっています。もちろん、事実を偽りなく正確に記載するということを大前提に、より具体的に丁寧に記載していくとともに、この質問書の記載内容を補完する証拠資料として、写真やその他事実を証明する記録を提出することで、結婚の信ぴょう性を高め、本当の結婚であることを証明していくことが、許可を得るために非常に重要なポイントとなります。

行政書士あけやま事務所は、言葉や文化、そして国境の壁を乗り越えて愛し合い、幸せな家庭を気づきたいと思うご夫婦を、全力で応援し、サポートします。この記事に関するご質問、お問い合わせや、私たちは国際結婚できるの?といった条件面、手続き面に関するお問い合わせは、お電話か、ホームページの「無料相談フォーム」からお気軽にお問合せください。