ニセコビザ申請サポートセンター代表、申請取次行政書士の明山崇です。

北海道で唯一の、観光業界とビザ申請に特化した行政書士として、主に、北海道の宿泊業や観光業で働く、外国籍従業員の方の在留許可申請、いわゆる就労ビザの、新規取得や更新手続きのお手伝いをしています。

今回は、新卒の外国人留学生が、在留資格を「留学」から「技術・人文知識・国際業務」に変更できない場合に関して解説をしていきます。

はじめに

日本国内にある、日本語学校、専門学校、短期大学、大学で学ぶ外国人留学生は、在学中は「留学」の在留資格を持っています。これらの学校を卒業後、企業に就職するためには、就労系の在留資格に変更するために、「在留資格変更許可申請」をし、許可が得られなければ働くことはできません。新卒の学生が変更する就労系の在留資格は、大学や専門学校を卒業した学生の場合は、主に「技術・人文知識・国際業務」(以下、技人国)になるかと思われます。これらの在留資格への変更申請ができないケースに関して、1つずつ解説をしていきます。

そもそも就職先から内定がもらえていない

留学生が就労系の在留資格に変更するためには、就職予定の企業から内定をもらえていないといけません。「在留資格変更許可申請」の際に、出入国在留管理庁に提出する必要書類には、企業の存在や財務状況を証明する書類が含まれています。例えば、給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計票、決算書や登記事項証明書等を提出したり、労働条件が記載された雇用契約書や内定書といった書類になり、これらは、留学生が内定を得ていない場合には入手することが困難です。よって、就職先が決まっていない留学生は、変更申請の手続きを行うことができません。

対処法

在学中から就職活動を頑張ったけど、3月31日までに内定が1つももらえず、学校を卒業してしまうこともあります。就職先が決まらなかった学生に関しては、半年間、就職活動の為の「特定活動」の在留資格を取得することが出来ます。この特定活動は1回だけ更新が出来ますので、卒業から1年間は、日本に残って就職活動を行うことが出来ます。「特定活動」の在留資格で就職活動を行っていた学生は、内定が出た段階で、就労系の在留資格への変更手続きを行い、変更が完了した段階で勤務が可能となります。

卒業した学校が就労系在留資格の申請要件を満たしていない

例えば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、短期大学か大学を卒業していること、若しくは、日本国内の専門学校を卒業していることが学歴の要件になっています。よって、日本語学校卒業のみや、母国の専門学校卒業が最終学歴になる留学生は、この在留資格は申請することが出来ません。日本語学校を卒業した留学生の場合は、来日前に母国で短期大学以上の高等教育機関を卒業していれば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に変更申請を行うことができます。よって、日本での最終学歴という意味ではなく、その留学生の生涯での最高学歴が何であるかを確認してください。

在学中の専攻内容や履修科目と、内定先の企業での職務内容に関連性がない

在学中に学んだ専攻内容や履修科目と、就職予定先の会社での職務内容に関連性や一致点がないと、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格への変更許可を得ることが難しくなります。

例えば、

工業大学の建築学科を卒業した留学生が、建築設計会社でCADを使った建築デザインを行う場合、

経済系の大学で経営学科を卒業した留学生が、コンサル会社で母国の企業を対象にしたマーケティングを行う場合、

理系の大学で情報処理を専攻した留学生が、IT企業でシステムエンジニアとして働く場合、

など、専攻内容と職務内容が明らかに関連しているとわかる場合は、在留資格変更の審査上、まず問題がないと言えます。

しかし、日本文学部を卒業した留学生が、食品メーカーの営業職として働く場合、

経済学部を卒業した留学生が、WEB制作会社のデザイナーとして働く場合、等では、

一見して専攻内容と職務内容の関連性がわかりにくく、不許可にされてしまう可能性もあります。

申請時の対処法に関して

このように、一見して専攻内容と職務内容の関連性がわかりづらい場合や、新しく設置された学部学科に多い、「コミュニティデザイン学科」「国際コミュニケーション学部」「ライフデザイン学科」 など、特にカタカナや横文字の入っている学部学科のように、企業内の職種や業務内容がすぐに結びつかないような場合は、どのようにしたら許可を得やすくなるのでしょうか?

そのような場合には、申請書類では「卒業見込証明書」だけでなく、「単位履修証明書」を提出することで、どのような科目で何単位取得したものが分かると、学校での専攻内容と職務内容のつながりがより明確になります。さらに、各大学のシラバス(講義内容)や履修要綱も添付できると、審査官もより具体的かつ明確に、専攻内容を把握することが出来るため、職務内容との合致を証明しやすくなるはずです。このように、審査に有利になるような補足資料は、出入国在留管理庁のホームページに必要書類として記載されていなくても、補足資料として積極的に出すことは、許可を得るためのポイントにもなります。

在学中の在留状況が不良だった

在学中の在留状況が良くなかった場合、具体的に次の①・②のような場合は、「留学」から「技術・人文知識・国際業務」の在留資格への変更は不許可になってしまうことがあります。

在学中の出席・成績が良くなかった

出席率が低く、また、成績もよくなく、卒業単位ギリギリで何とか卒業できたような場合です。留学生本人が真面目に通学して一生懸命勉強した結果、そのような成績になってしまったのであればやむを得ないのですが、出入国在留管理庁での審査中、審査官から「追加書類提出依頼」を求められることがあります。その際には、そのほかの在留状況に違反がなかったかどうかを、具体的な書類を提出して証明することが求められます。

資格外活動のアルバイトでオーバーワーク等不法就労状態であった

①の追加書類提出で発覚してしまうことがほとんどなのですが、「住民税の課税(納税)証明書」「アルバイト先の源泉徴収票」等を提出することによって、1年間の収入額がわかってしまいます。留学生でアルバイトをしている方は、資格外活動許可を取得し、週28時間、長期休暇中は最大40時間のアルバイトを行うことができます。納税証明書に記載された所得額が、極端に多い場合は、週28時間以上アルバイトをしていたと見なされてしまいます。例えば、時給1000円×週28時間×4週間×12か月=1,344,000円という額が単純計算で出てきます。深夜割増などを考慮しても、年収200万円以上ある場合は、合理的な説明ができない限り、オーバーワークがあったと判断されて、申請が不許可になることがあります。

資格外活動違反(オーバーワーク)で変更申請が不許可になった場合には?

留学の在留資格から「技術・人文知識・国際業務」への変更が不許可になり、その理由が資格外活動違(オーバーワーク)であった場合、次のような対処方法をとることが一般的です。留学の在留期限前に一旦出国し、内定企業に「在留資格認定証明書交付申請」をしてもらい、「在留資格認定証明書」を使って母国で査証(ビザ)を取得したうえで日本に再入国をする。ただし、この方法でも、100%確実に在留資格認定証明書が発行される保証はなく、その他在留状況の不良や違反行為があった場合、在留資格認定証明書の交付がされないこともあります。

まとめ

外国人留学生の採用に慣れている企業では、内定を出す留学生が在留資格の変更ができるか、ということも重要なポイントとしているため、学歴や専攻内容、職務内容の不一致が問題になるケースは多くはありません。それよりも、留学生の過去の在留状況が問題となるケースの方が多いです。せっかく内定が出ても、在留資格の変更が出来なければ、一生懸命頑張って勉強し、卒業した甲斐がなくなってしまいます。そのようなことにならないためにも、在学中の資格外活動、アルバイトは法律の範囲内で適切に行う必要があります。

ニセコビザ申請サポートセンターは、言葉や文化、そして国境の壁を乗り越えて、日本社会の一員として働こうとしている、外国人の方々を全力で応援し、サポートします。この記事に関するご質問、お問い合わせや、就労系在留資格(ビザ)取得に関しての条件面、手続き面に関するお問い合わせは、お電話か、ホームページの「無料相談フォーム」からお気軽にお問合せください。