ニセコビザ申請サポートセンター代表、申請取次行政書士の明山崇です。

北海道で唯一の、観光業界とビザ申請に特化した行政書士として、主に、北海道の宿泊業や観光業で働く、外国籍従業員の方の在留許可申請、いわゆる就労ビザの、新規取得や更新手続きのお手伝いをしています。

今回は、日本に29種類ある在留資格のうち、働けるもの、働けないものに関して解説をしていきます。

はじめに;在留資格(ビザ)とは?

日本に中長期で滞在する外国人の方は、法令で定められている29種類の在留資格の内、どれか一つ「だけ」を必ず持っています。この在留資格は、その外国人の方が日本でどのような活動を行うか、若しくは、どのような身分で滞在をしているのかによって、与えられるものが異なっています。活動によって与えられる在留資格は、主に、就労系と学習系に分けることが出来ます。就労系に関しては、職種や職務内容によって、学習系は、学校で学ぶのか、若しくは企業などで研修を行うのかによって在留資格が細かく区分されていきます。一方、身分によって与えられる在留資格は、結婚や家族、居住歴や出生によって与えられるもので、就労制限がないものが多いです。

在留資格が29種類にも分かれているということは、それぞれの在留資格によって、そもそも働くことが出来るか、だけでなく、やっていい仕事や職務内容まで細かく決められていたり、転職の制限があるもの、1週間の勤務時間の制限があるもの等、様々な規定が設けられています。

今回は在留資格を、「働けるもの」「働けないもの」の観点から、それぞれ確認をしていきます。

働ける在留資格

無制限で働けるもの

まずは、就労制限がなく、日本人と同じように無制限で働くことが出来る在留資格です。在留カードの就労制限の有無欄には「就労制限なし」と書かれています。このような在留資格は、次の4つが該当します。

1)永住:主に、日本に10年以上、若しくは日本人の配偶者と結婚して3年以上の方等が持つ在留資格

2)定住:主に、日本人の配偶者と離婚/死別された方、外国で生まれた永住者の子供等が持つ在留資格

3)日本人の配偶者等:主に日本人と結婚した外国人の方等が持つ在留資格

4)永住者の配偶者等:主に永住者と結婚した外国人の方等が持つ在留資格

これらは、結婚など法的身分の変更により、また、日本に長期間居住したことによって得られる在留資格です。転職も自由ですし、職種や職務内容も制限なく自由に選択することが出来ます。採用する企業に関しても、日本人と同じ感覚で雇用・使用することが出来ます。

制限があるが働けるもの

いわゆる就労を目的とした在留資格になります。各在留資格によって、就業できる職種や職務内容が定められており、その範囲内で働くことが可能です。在留カードの就労制限の有無欄には「在留資格に基づく就労活動のみ可」 と書かれています。これらは以下の19種類となります。

「外交」 「公用」 「教授」 「芸術」 「宗教」 「報道」 「経営・管理」 「法律・会計業務」 「医療」 「研究」「教育」 「介護」 「高度専門職」 「企業内転勤」 「興行」 「技能」 「技術・人文知識・国際業務」 「技能実習」 「特定技能」です。

このうち、「外交」や「公用」に関しては、一般の外国人の方が簡単に取得できるものではないため、実質的には17種類とも言えます。この19種類の在留資格に関しては、基本的に指定された職務内容、職種の範囲内で仕事をすることが可能です。一部、「技能実習」や「特定技能」、「高度専門職」のように、パスポートに貼付された指定書に、会社名が記載されているため、転職が出来ないもの、若しくは転職の際には在留資格の変更を要するものもありますが、それ以外は原則として転職をすることが可能です。また、「教授」「研究」「教育」等、職務内容は似ているけど、就業場所の種類によって在留資格が異なるものもあり、職務内容だけでなく、雇用される企業や機関の選択に際しても注意が必要です。例えば、英語の先生は、大学や短大で講義をする場合は「教授」、小学校・中学校・高校で教えれば「教育」、英会話学校の講師として働く場合は「技術・人文知識・国際業務」の在留資格が必要となります。なお、在留資格で指定された職務内容以外の業務に従事したり、別の職務内容のアルバイトをすることは、不法就労として処罰される対象となることもあります。例えば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ英会話講師が、空き時間にコンビニでアルバイトをすることはできません。このように、積極的に在留資格で定められている以外の就労活動を行うことは勿論違法なのですが、在留資格で定められている就労活動をしないことも違法になります。例えば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つITエンジニアの人が、会社を退職してしまい、転職活動も何もせずに3か月以上無職の状態でいることです。このように、正当な理由なく3か月以上、在留資格で指定された活動を行っていない場合は、在留資格を取り消される可能性があります。

働けない在留資格

全く働けないもの

日本国内で全く仕事をすることが出来ない在留資格は、「研修」、「文化活動」、「短期滞在」です。このうち、短期滞在は最大でも90日以内の滞在しか許可がされておらず、そもそも在留カードの発行がされません。

「研修」、「文化活動」の在留資格を持つ方の、在留カードの就労制限の有無欄には、「就労不可」と記載されています。日本国内で企業に雇用されたり、契約をして報酬を得て行う活動は一切できませんので、注意が必要です。

資格外活動許可を取得すれば働けるもの

在留資格「留学」と「家族滞在」が該当します。

どちらも、原則は就労が禁止されているのですが、資格外活動許可を取得することで、週28時間以内(「留学」の方は学校の指定する長期休暇期間中は週40時間以内)、アルバイトを行うことが出来ます。資格外活動許可を得ているかどうかは、在留カードの裏面の資格外活動許可欄に「許可:原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く」と記載されていますので、アルバイトをしようと考えている留学生は、必ず在留カードの裏面に前述のような文言が書かれているかどうかを確認してください。

ここで重要なのは、週28時間以内という時間制限のほかに、やってはいけない仕事、働いてはいけない職場が規定されています。これらは、いわゆる風俗営業に関わる仕事で、キャバクラやナイトクラブなど、お客さんを接待して飲食をさせるお店や、性的なサービスを提供する店舗などでの勤務は、たとえ週28時間以内であったとしても、勤務することはできません。

なお、週28時間以上のオーバーワークに関しても、在学中は発覚しないケースもありますが、卒業後、就職をして他の在留資格を取得しようとした場合や、結婚をして日本人の配偶者等の在留資格を取得しようとした場合に、過去の在留状況に関しても細かく調査され、審査の対象となります。その段階でオーバーワークが発覚し、留学ビザからの変更が不許可になるケースがあります。せっかく日本で勉強して、日本語や専門知識を身に着けて就職をしようとしたときに、就労の在留資格が取得できない、ということで母国に帰らざるを得なくなってしまうのは、非常にもったいないことです。このようなことにならないためにも、週28時間の時間制限を守ることは、将来のキャリアを考えるうえでも非常に重要なことだと、念頭に置いて行動をするとよいでしょう。

その人によって異なるもの

これは、在留資格「特定活動」が該当します。特定活動は、その範囲が非常に広く、さまざまな活動が対象になっています。例えば、「高度専門職の家事使用人」、「高度専門職の配偶者」、「高度専門職の両親」、「ワーキングホリデー」、「アマチュアスポーツ選手」、「大卒+日本語能力を活用した就労」、「スキーインストラクター」、「就職活動のための特定活動」等があります。

この「特定活動」の在留資格を持つ方の在留カードに関して、就労制限の有無の欄には「指定書により指定された就労活動のみ可」と記載されています。具体的にどのような就労活動を行うことができるかに関しては、パスポートに貼付された「指定書」に記載されている内容に限定されます。この特定活動の在留資格を持つ外国人を採用する場合、在留カードだけでなく、必ず指定書も確認し、就労可能な活動はどのようなものかを確認してください。

まとめ

日本働くことが出来るか/できないかに関しては、「在留資格」にこと細かく決められています。このようなことから、外国人の方を雇用したいと思っている企業側、若しくは、日本で仕事をしてみたいと思っている外国人の方は、まずは在留カードに記載された「在留資格」と「就労制限の有無」を確認してみましょう。自分がどの在留資格に該当するのか、そしてその在留資格では、どのような仕事が出来るのかを正確に理解し、その制限や規定を厳しく守って働くことは、日本に長期的に在留するためには、非常に重要なこととなってきます。

ニセコビザ申請サポートセンターは、言葉や文化、そして国境の壁を乗り越えて、日本社会の一員として働こうとしている、外国人の方々を全力で応援し、サポートします。この記事に関するご質問、お問い合わせや、就労系在留資格の取得に関しての条件面、手続き面に関するお問い合わせは、お電話か、ホームページの「無料相談フォーム」からお気軽にお問合せください。