ニセコビザ申請サポートセンター代表、申請取次行政書士の明山崇です。北海道で唯一の、ビザ申請と観光業に特化した行政書士として、主に、ニセコ・小樽・札幌市内を中心に北海道で生活する、外国籍の方々の在留許可申請、いわゆる就労ビザや配偶者ビザ等の、新規取得や更新手続きのお手伝いをしています。

今回は、「特定技能」のビザを持つ外国人の方を雇う場合、雇用する企業にはどのようなことが求められているか?について解説をしていきます。「特定技能外国人受入れに関する運用要領」では、特定技能の外国人の方を雇い入れる企業に関して、「特定技能所属機関は、特定技能雇用契約の適正な履行が確保されるものとして特定技能基準省令で定める基準に適合するものでなければなりません」と規定しています。具体的に、16の項目に関して、細かい基準を設けています。今回はその中の11番目に記載されている、「支援に要する費用の負担に関する欠格事由がないこと」が求められています。どのような行為が欠格事由に該当するのか、受入れに関する運用要領をもとに解説をしていきます。

はじめに;支援に要する費用を負担させてはダメなのか?

特定技能外国人を雇用する企業は、法令に基づいて事前に支援計画書を策定し、それに沿って適切な支援を提供しなければならないこととなっています。この支援は、雇用する企業が直接行ってもよいし、登録支援機関にその一部、または全部を委託しても構わないとされています。この支援の内容に関しては、法令で9つのことが、受け入れ企業側の義務として行わなければならないと定められています。

具体的には、「1.事前ガイダンスの提供」、「2.出入国する際の送迎」、「3.適切な住居の確保に係る支援・生活に必要な契約に係る支援」、「4.生活オリエンテーションの実施」、「5.日本語学習機会の提供」、「6.相談または苦情への対応」、「7.日本人との交流促進に係る支援」、「8.外国人の責めに帰すべき事由によらないで特定技能雇用契約を解除される場合の転職支援」、「9.定期的な面談の実施、行政機関への通報」の9項目となります。それぞれの内容で、「義務的支援」「任意的支援」に分かれており、「義務的支援」の項目に関しては、受入企業もしくは登録支援機関が必ず行わなければならない支援とされています。支援に関する詳細は、別の記事で解説しておりますので、興味のある方はこちらも併せてご覧ください。

一般的に、特定技能外国人の日本語能力や年齢、学歴などその他の要件が、他の就労のビザと比べると低い水準になっていることから、どうしても弱い立場に立たざるを得なくなる彼らを法的にも適切に保護し、適切な労働環境を提供する必要があります。それゆえに、このような支援を十分かつ適切に行い、日本での労働環境や生活環境に適合できるような措置を企業側に義務付けることは、日本社会全体の人手不足の問題を解消するために必要なことではないかと思われます。

どのような費用を負担させてはならないのか?

前述の1~9の具体的支援項目のうち、「義務的支援」に定められているものに関しては、直接だけでなく、間接的にも費用を負担させてはならないことになっています。例えば、「出入国する際の送迎」に含まれる到着空港から勤務をする事業所までの交通費の実費を負担させることや、言語支援の必要な定期面談の実施の際、通訳費用を特定技能外国人に請求することはできません。また、受入企業が行うべき支援を登録支援機関に委託した場合の委託費用に関しても、企業が負担することとなっており、これを特定技能外国人に負担させることはできません。

負担させても問題ない費用(一例)

受入に関する運用要領では、すべての費用を特定技能外国人に負担させてはいけない、とは規定されていません。あくまでも、「義務的支援」に定められているものに限定されており、「任意的支援」に関しては、企業側が実施をしなくても構わないし、その費用に関しても特定技能外国人の負担としても構わないとしています。

例えば、「出入国する際の送迎」に関しては、支援が義務付けられているのは、最初の来日時と勤務期間終了後の帰国時のみと定められており、途中の里帰りなど一時帰国の際の支援は不要とされています。よって、一時帰国時の空港往復の交通費は特定技能外国人負担としても構いません。また、「日本語学習機会の提供」に関しては、日本語学校やオンライン教材に関する情報提供をして、特定技能外国人に日本語学習の機会を与えることは義務とされています。しかし、その講座の受講料やテキストの購入費などの諸経費に関しては、特定技能外国人の負担としても構いません。

また、特定技能外国人の方の住居費用や食費などに関しては、あくまでも実費を必要な限度において負担させることは問題ないとされています。

確認の方法は?

特定技能所属機関が提出する書類としては、

  • 雇用の経緯に係る説明書の提出
  • 1号特定技能外国人支援計画書

  の2点を在留資格申請の際に提出をすることとなります。

また、日本への渡航前に実施する事前ガイダンスにおいても、「支援に要する費用を直接または間接的に負担させない」ということを、特定技能外国人に説明することが求められています。さらに、日本到着後の生活オリエンテーションにおいても、同様のことを再度説明することが求められているなど、念入りに説明する必要があります。

1号特定技能支援計画書は、特定技能外国人の方が十分に理解できる言語で作成し、その内容を十分に理解したうえで証明していることが求められることから、形式的な書面の取り交わしだけでなく、十分に理解できる言語でしっかりとした説明を、企業もしくは認定支援機関は行わなくてはならないのです。

まとめ

特定技能外国人受入に際して、支援に要する費用の負担に関する欠格事由がないことに関して解説をしてきました。支援費用の負担をさせないことは、特定技能外国人が、就労環境だけでなく日常生活上の不安を解消し、安心して日本で生活をするために、非常に重要なポイントとなっています。必要な支援を、無償で十分に受けられる体制を整えることは、この制度を適正に運営し、日本社会全体の課題としてある人手不足を解消するためには不可欠なことだといえます。

ニセコビザ申請サポートセンターは、言葉や文化、そして国境の壁を乗り越えて、日本社会の一員として働こうとしている、外国人の方々を全力で応援し、サポートします。この記事に関するご質問、お問い合わせや、特定技能外国人の方の受け入れに関しての条件面、手続き面に関するお問い合わせは、お電話か、ホームページの「無料相談フォーム」からお気軽にお問合せください。