ニセコビザ申請サポートセンター代表、申請取次行政書士の明山崇です。北海道で唯一の、ビザ申請と観光業に特化した行政書士として、主に、ニセコ・小樽・札幌市内を中心に北海道で生活する、外国籍の方々の在留許可申請、いわゆる就労ビザや配偶者ビザ等の、新規取得や更新手続きのお手伝いをしています。

今回は、就労系在留資格(就労ビザ)の「企業内転勤」を新規申請する際に必要な、提出書類に関して解説をしていきます。他の就労系在留資格と同様に、日本での勤務予定の企業は4つのカテゴリーに分けられています。このカテゴリー分けに関しては、「技術・人文知識・国際業務」や「技能」等と同じ分け方になりますので、詳しくはこちらの記事をご覧ください。また、企業内転勤ビザの条件などはこちらの記事に書かれています。これを踏まえて、今回は、ぞれぞれのカテゴリーの企業で企業内転筋ビザを新規に申請するためには、どのような必要書類が必要なのかを解説をしていきます。

企業内転勤ザを申請する際の、企業側の提出書類のポイント

そもそも出入国在留管理庁は、どのような観点で企業を4つのカテゴリーに区分しているかを、再度確認してみましょう。上場企業等をカテゴリー1として他の企業と区分していること、また、所得税の源泉徴収額が1000万円以上の従業員や納税額が大きい企業をカテゴリー2として他の企業と区分していること、また、新規開業から1年未満で税務申告を済ませていない企業をカテゴリー4としています。これらのことから、企業の規模・事業経営の安定性・外国人雇用の必要性・外国人従業員の職務内容の信ぴょう性、の4点が、審査における企業側のポイントになっていることが想定されます。逆を言えば、この4点を具体的、かつ客観的に証明し、合理的に説明できる書類を提出することで、ビザ申請の許可を得ることができると言えます。

それぞれのカテゴリーで、出入国在留管理庁はどのような書類を提出することを求めているのか。ホームページの記載をもとに、ポイントを解説していきます。

カテゴリー1の企業の提出書類

企業内転勤で人事異動をする会社は、多国籍で事業を展開している企業が多いと想定され、企業の規模などから、カテゴリー1か2に該当する会社が多いと思われます。まずは、カテゴリー1から見ていきます。

出入国在留管理庁のホームページには、

・四季報の写し又は日本の証券取引所に上場していることを証明する文書(写し)

・主務官庁から設立の許可を受けたことを証明する文書(写し)

・高度専門職省令第1条第1項各号の表の特別加算の項の中欄イ又はロの対象企業(イノベーション創出企業)であることを証明する文書(例えば、補助金交付決定通知書の写し)

・上記「一定の条件を満たす企業等」であることを証明する文書(例えば、認定証等の写し)

を提出することとされています。

カテゴリー1に関しては、原則として民間企業は約3,700社の上場企業と5社の相互保険会社に限られています。よって、このカテゴリーにあることを証明するためには、上場証明書の写しや、上場企業情報が掲載されている東洋経済新報社の「会社四季報」のなどコピーを提出します。社会的な信頼度もある上場企業という位置づけから、企業の規模・事業経営の安定性を証明することは比較的容易だと思われます。一方、外国人雇用の必要性・外国人従業員の職務内容の信ぴょう性に関しては、説明する書類の提出を求められていませんが、外国人従業員の方が従事する予定の職務内容や事業内容に関しては、別途採用理由書を作成して記載をしたり、補足説明書類を添付すると、よりスムーズに審査が行われるでしょう。

カテゴリー2の企業の提出書類

出入国在留管理庁のホームページには、

・前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し)

・在留申請オンラインシステムに係る利用申出の承認を受けていることを証明する文書(利用申出に係る承認のお知らせメール等)

を提出することとなっています。

カテゴリー2に関しては、前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表中、給与所得の源泉徴収合計表の源泉徴収税額が1,000万円以上ある団体・個人と規定されていますので、これを証明する書類の提出が求められています。出入国在留管理庁のホームページには、この法定調書合計表のみの提出でよいと記載されています。この書類からは、企業の事業規模を判断する基準として、従業員数と給与の支払いが一定程度あるかが判断できます。しかし、そもそもこの企業がどのような会社なのか、どのような商業活動を行い、どの程度の売り上げを上げているかが全く分かりません。よって、補足資料としては、ホームページや会社案内のコピー、登記事項証明書や決算書のコピーなどは、添付書類として一緒に提出することは言うまでもなく必要だと考えておいた方が良いでしょう。

また、カテゴリー1と2の企業に関しては、外国人雇用の必要性・外国人従業員の職務内容の信ぴょう性に関して説明する資料は、「原則不要」と書かれています。この言葉の実務上の意味は、「必要があれば提出させることがある、つまり、提出をしておいた方が良い」と理解すべきだと思われます。よって、外国人従業員の方が従事する予定の職務内容や事業内容に関しては、別途採用理由書を作成して記載をしたり、補足説明書類を添付すると、よりスムーズに審査が行われるでしょう。

カテゴリー3の企業の提出書類

出入国在留管理庁のホームページには、

●前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し

●申請人の活動の内容等を明らかにする次のいずれかの資料
(1)法人を異にしない転勤の場合 a.転勤命令書の写し 1通 b.辞令等の写し 1通

(2)法人を異にする転勤の場合
労働基準法15条1項及び同法施行規則5条に基づき、労働者に交付される労働条件を明示する文書 1通


(3)役員等労働者に該当しない者については次のとおりとする。

a.会社の場合は、役員報酬を定める定款の写し又は役員報酬を決議した株主総会の議事録(報酬委員会が設置されている会社にあっては同委員会の議事録)の写し 1通

b.会社以外の団体の場合は、地位(担当業務)、期間及び支払われる報酬額を明らかにする所属団体の文書 1通

★企業内転勤の場合には、同一法人内での異動と、異なる法人間での異動の2つのケースが想定されることから、それぞれの場合に応じて、提出する書類が異なります。同一法人内の異動であれば、転勤命令や辞令など社内の人事文書で対応が可能になります。一方、別法人になる場合は、日本国内で勤務する法人から「労働条件通知書」等の文書で、勤務条件などを再度通知する必要があります。また、従業員の異動だけでなく、役員の異動も想定されており、その場合は、従業員とは異なる報酬に関する定めが記載された書類を提出します。  

●転勤前に勤務していた事業所と転勤後の事業所の関係を示す次のいずれかの資料

(1)同一の法人内の転勤の場合 外国法人の支店の登記事項証明書等当該法人が日本に事業所を有することを明らかにする資料

(2)日本法人への出向の場合 当該日本法人と出向元の外国法人との出資関係を明らかにする資料 1通
 

(3)日本に事務所を有する外国法人への出向の場合

a.当該外国法人の支店の登記事項証明書等当該外国法人が日本に事務所を有することを明らかにする資料 1通

b.当該外国法人と出向元の法人との資本関係を明らかにする資料 1通

★これらの書類は、企業内転勤のビザが許可になるか否かのポイントとなる重要な書類の一つです。移動前の海外の企業(事業所)と日本で勤務をしようとしている企業との関係性が公的に証明できる書類の提出が求められています。これらの企業が、「親会社・子会社・孫会社」というった具体に、資本出資や持ち株の状態で関連性が明確に証明できる必要があります。この書類は、カテゴリー1、2の企業の場合でも補足資料として提出した方が良いと言えます。

●申請人の学歴及び職歴その他経歴等を証明する文書
(1)関連する業務に従事した機関及び内容並びに期間を明示した履歴書 1通
(2)過去1年間に従事した業務内容及び地位、報酬を明示した転勤の直前に勤務した外国の機関(転勤の直前1年以内に申請人が企業内転勤の在留資格をもって本邦に在留していた期間がある場合には、当該期間に勤務していた本邦の機関を含む。)の文書 1通    

★これらの書類も、企業内転勤のビザが許可になるか否かのポイントとなる重要な書類の一つです。日本に転勤する直前の1年間以上、海外の企業で従事した職務内容が、「技人国」の活動範囲内の業務であることが、申請人の要件になっています。よって、これを明確に証明できる書類を提出できないと、申請が不許可になる可能性があります。

●事業内容を明らかにする次のいずれかの資料
(1)勤務先等の沿革、役員、組織、事業内容(主要取引先と取引実績を含む。)等が詳細に記載された案内書 1通


(2)その他の勤務先等の作成した上記(1)に準ずる文書 1通

(3)登記事項証明書 1通

●直近の年度の決算文書の写し。新規事業の場合は事業計画書 1通

を提出することとなっています。

カテゴリー3の企業に関しては、前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表中、給与所得の源泉徴収合計表の源泉徴収税額が1,000万円未満の団体・個人と規定されていますので、これを証明する書類の提出が求められています。これに加えて、転勤前と転勤後の企業の関係性、転勤直前に海外の企業で具体的にどのような職務を担当していたか、そしてこれが在留資格に定められた要件を満たしていることを証明する書類の提出が求められています。

カテゴリー4の企業の提出書類

カテゴリー3の企業に求められている提出資料に併せて、

●前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表を提出できない理由を明らかにする次のいずれかの資料
(1)源泉徴収の免除を受ける機関の場合
 外国法人の源泉徴収に対する免除証明書その他の源泉徴収を要しないことを明らかにする資料
(2)上記(1)を除く機関の場合 

 a) 給与支払事務所等の開設届出書の写し 1通

   b) 次のいずれかの資料
   (ア) 直近3か月分の給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(領収日付印のあるものの写し) 

   (イ) 納期の特例を受けている場合は、その承認を受けていることを明らかにする資料

といった書類の提出が求められています。

カテゴリー4の企業は、前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表が提出されていない企業ということになります。「給与支払事務所等の開設届出書の写し」や、「直近3か月分の給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」を提出することにより、決算期は迎えてはいないけど、正規の届出を行い、従業員を雇用し、給与を支払い、実際に事業を行っていることを証明できる資料の提出が求められています。

まとめ

カテゴリー3、4の企業に関しては、「企業の規模・事業経営の安定性」・「海外の企業(事業所)と日本企業との関係性」・「外国人従業員の、来日前と来日後の職務内容の信ぴょう性」の3点をすべて証明する書類の提出が求められており、その種類や数はかなり多くなります。申請にあたっては、ただ単純に出入国在留管理庁のホームページに記載されたものだけを提出するのではなく、審査のポイントだと想定される、前述の3つのポイントをしっかりと踏まえたうえで、これらを具体的、客観的に証明できる書類を十分に揃えて提出することが、許可を得るための非常に重要な鍵となってきます。

具体的な申請書の記載方法に関しては、申請書の前半後半に分けて解説をしていますので、こちらもご参照ください。

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