ニセコビザ申請サポートセンター代表、申請取次行政書士の明山崇です。

私は主に、北海道の宿泊業や観光業で働く、外国籍従業員の方の在留許可申請、いわゆる就労ビザの、新規取得や更新手続きのお手伝いを行っています。

就労ビザの中で、事務職のホワイトカラーの方が取得するケースが多い、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格、いわゆる「技人国」ビザについて、今回は、雇い入れる企業側の、審査にあたって重要だと思われるポイントの3つ目、「職務内容の信ぴょう性」について解説していきます。

日本企業では、特に規模の大きな企業で新卒者を採用する場合、特定の職務内容を指定せずに、いわゆる「総合職」という形で入社させる企業が多いようです。そして、入社後、数年ごとに様々な部署や職種を経験し、時には転勤という形で勤務地を変えながら、1つの仕事を覚えるだけでなく、会社全体の機能や役割を知り、そして地方性やマーケットの違いも知ることで、長い時間をかけて企業人として成長していくことが期待されています。では、「技人国」の在留資格を取得した外国人労働者を採用した場合、このような形で仕事をさせながら、人材育成を行うことが出来るのでしょうか?

はじめに;「技人国」の在留資格と職務内容

まずは、出入国在留管理庁のホームページには、「技人国」の在留資格の仕事内容に関しては、「自然科学や人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務」、又は「外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務」に従事する活動であること、という要件が記載されています。これだけだとわかりずらいため、許可・不許可になった事例も紹介されているので、詳細はそちらをご確認いただきたいのですが、一例をあげると「オンラインゲーム開発のシステム設計」「ソフトウェアエンジニアとしてコンピューター関連サービスに従事」「CAD,CAEのシステム解析、テクニカルサポート」「語学学校での語学教師」「通訳翻訳業務」「マーケティング支援業務として市場・ユーザー・輸入動向調査」「弁護士補助業務」「土木建築における研究開発・解析・構造設計」といった職務が、外国人従業員の高等教育機関での専攻内容と共に記されています。つまり、入社後の職務内容が、単純労働や現場作業ではなく、こういった実例を挙げられているホワイトからの事務職のようなものや、それらに類する職務の範囲内でなくてはならないのです。例えば、工場での単純作業や工事現場での組み立て作業、コンビニエンスストアでのレジ打ちなどの職務内容が予定されている場合は、在留資格「技人国」の対象外となるため、申請が不許可になる可能性が高いです。

「技人国」でも職務内容を疑われやすいケース

ただし、企業側が「技人国ビザ」に規定されている職務内容で採用したとしても、出入国在留管理庁の審査官からは、本当にこの業務に従事させるのか?就労が認められていない、資格外の活動を行うのではないか?と疑いをもたれることが良くあります。この、職務内容の信ぴょう性に関しては、少なからず審査官の偏見もあるかもしれませんが、その会社の事業内容の性質から信ぴょう性の高い会社と、そうでない会社があるということは、申請をするにあたって覚えておくとよいことだと思われます。

例えば、「IT企業でシステムエンジニアが職務内容」だったり、「語学学校での語学教師」であれば、会社の事業内容と外国人従業員の職務内容の相違がなく、また、その会社のメインの業務がいわゆるホワイトカラーの仕事であるため、そのことに対する疑いの余地はないと思われます。一方で、「レストラン運営会社でマーケティング・広報が職務内容」だった場合、「本当に、マーケティングや広報の仕事しかやらないのか?忙しい時は、ウェイターをやったり調理補助をしたりしないのか?」といった具合に、現場労働・単純労働がメイン業務の会社の場合には、企業側が申告している職務内容ではなく、資格外の職務をやらせるのではないか、という疑惑の目で審査をされる可能性があります。特に後者の場合には、より丁寧かつ具体的に説明が出来る資料を揃えて証明をしていく必要があります。

「採用理由書」;職務内容の信ぴょう性を高めるために

このような疑いを晴らし在留資格の許可を得るためにも、「採用理由書(雇用理由書)」の中では、企業概要や業務内容でその企業自体の事をきちんと説明したうえで、採用される外国人の学歴や知識、経験なども説明し、これらが合致しているための採用であることを、丁寧に証明する必要があります。そして、とりあえず人手不足だからだれを採用しても良かった、ということではなく、「何をさせるためにこの外国人を採用したのか?そしてなぜこの人でなければならないのか?」を審査官が疑う余地なく理解できるような説明が不可欠となります。

「技人国」の職務内容を逸脱してしまうと…

また、この職務内容に関しては、採用時に在留資格「技人国」の職務内容に規定されているものであるのは勿論のこと、それ以降も、その範囲を超えてはいけないことになっています。例えば、入社後に、企業内での転勤や職種の変更があったとしても、「技人国」の在留資格で仕事をする以上、現場労働や単純労働はいつまでたっても従事することはできません。万が一、現場系の職務や単純労働の作業に従事させてしまった場合は、資格外活動であり、不法就労に該当することになります。この場合には、不法就労をしていた外国人は退去強制の処分対象になるだけでなく、雇用者側も「不法就労助長罪」で罰せられる可能性があります。この犯罪に関しては、「知らなかった」では済まされず、悪意が全くなかったとしても言い逃れが出来ず、罰せられることになりますので、企業側も十分に注意するようにしてください。

まとめ

今回までの3回は、外国人労働者受け入れ企業に求められる重要なポイントの3を解説してきました。「技・人・国」を申請する際には、ただ、出入国在留管理庁のホームページに記載されている書類を提出するだけではなく、どうやったら「企業経営の安定性」「外国人労働者を雇用する必要性」「外国人労働者に従事させる職務内容の信ぴょう性」の3点を明確に説明できるかを念頭に置いたうえで、「採用理由書(雇用理由書)」の作成や、添付書類の選定、収集を行う必要があります。

ニセコビザ申請サポートセンターは、言葉や文化、そして国境の壁を乗り越えて、日本社会の一員として働こうとしている、外国人の方々を全力で応援し、サポートします。この記事に関するご質問、お問い合わせや、「技人国」の在留資格取得に関しての条件面、手続き面に関するお問い合わせは、お電話か、ホームページの「無料相談フォーム」からお気軽にお問合せください。