ニセコビザ申請サポートセンター代表、申請取次行政書士の明山崇です。
私は主に、北海道の宿泊業や観光業で働く、外国籍従業員の方の在留許可申請、いわゆる就労ビザの、新規取得や更新手続きのお手伝いを行っています。
就労ビザの中で、事務職のホワイトカラーの方が取得するケースが多い、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格、いわゆる「技人国」について、今回は、雇い入れる企業側の、審査にあたって重要だと思われるポイントの2つ目、「外国人を雇用する必要性」について解説していきます。
はじめに;雇用の必要性を説明する書類、「採用理由書」とは?
従業員を採用する際の基準として、必要な能力があれば、別に日本人でも外国人でも分け隔てなく、差別することなく平等に選考をして採用する企業も増えてきました。どの企業も、きちんとした書類審査や面接試験をやっていると思われるので、「なんとなくこの人が良いだろう」といった漠然としたものではなく、採用に当たっては明確な理由があるはずです。その理由を、具体的かつ明確に、出入国在留管理庁の審査官にも分かり易く説明する書類が、申請の必須提出書類となっている「採用理由書(雇用理由書)」です。採用側の企業が、この外国人を採用し働いてもらう必要があるので、是非在留資格の発給を許可して欲しい、ということをこの理由書を通して説明していきます。
では、どのような手順でこの理由書を作成すれば、企業がこの外国人の方を採用する必要性があることを、審査官に明確に伝えることが出来るのでしょうか?
外国人を雇用する企業の概要を説明
この会社がどの程度の規模の会社で、どのような事業展開をしているのか。そして、現在の会社の事業内容や経営状態はどのような感じになっていて、今後、どう事業を発展させていくのかを簡潔にまとめます。その中では、今回採用予定の外国人の方が携わるだろう業務が、今後、会社の事業展開の中で必要な分野であることもアピールできるとよいです。
例えば、「通訳・案内業務」の担当として、ホテルや免税店での採用を考えている場合には、外国人顧客数や売り上げの割合、近年の外国人客の増加率を表すなど、数字を使って事業の状況を説明することで、より説得力が高まります。逆に、外国人客が少ないお店で、「通訳・案内業務」の為に採用すると言っても、誰に対してどうやって通訳するのか?そもそも、外国人従業員の方の母国語を使う機会なんてないのでは…?と思われてしまいます。つまり、外国人を雇う必要性がないと判断されれば、「技人国」の在留資格の許可を得るのは難しくなります。
今回、その方を採用する必要性に関して説明
企業概要で説明をした事業を行うにあたって、今回追加増員(若しくは新規の)採用として、この外国人の方を雇用する必要性や理由を記載します。増員として採用することになったのであれば、前年比でどの程度その業務や取引が増えているのか、また、新規事業を立ち上げ、その要因としての採用を予定しているのであれば、なぜこの企業が新規事業を始める必要があるのか、これによって今後どのような事業展開を考えているのか、といったこと説明していきます。
なぜ、この人を採用するのかを説明
ここまで、企業側の状況や採用の必要性を説明してきましたが、ここで採用予定の外国人の方の説明をしていきます。このような状況において、なぜ今回内定を出した外国人の方を採用する必要があるのか、つまり採用予定者の適性や採用の妥当性を説明します。採用予定者の学歴や学生時代の専攻内容、若しくは前職で経験をしてきた職歴を例示し、入社後に担当する予定の職務内容と、学生時代の専攻内容が一致しており、「技人国」の要件を満たしていることを説明します。更に、資格や能力を示す合格証や修了証明書などがあれば、その能力を担保するものとして、説明の説得力が増します。ただ学歴や資格などを列記するだけでなく、書類選考や面接などでの印象や、企業として採用後に期待をしていることなども併せて書けるとよいでしょう。
雇用条件を説明
また、外国人の方の待遇・給与に関しても、前述の業務を遂行するに見合った金額であり、かつ同社の日本人従業員の方と遜色のない金額を払う予定であることも明記します。近年では、外国人の方が給料が安い、という理由で外国人を積極的に採用したがる企業は少なくなっていますが、「技人国」の在留資格申請において、日本人従業員と同等の賃金を支払うことは必須事項となっているため、企業側もこの点に関しては強く意識をしておく必要があります。
まとめ
国際結婚の際に配偶者の在留資格を申請する場合に、「質問書」で「なぜこの人と結婚するのか?」を、客観的な証拠と共に具体的に説明したのと同様に、「技人国」の在留資格申請においては、「理由書」で「なぜこの人を採用するのか?」を明確に説明する必要があります。これは、形式的に要件を満たして、必要書類を提出すれば在留資格の発給が受けられる、というものではなく、企業側の採用の必要性に関して、本当にその事業や業務のために外国人の方の採用が必要だということを、審査官に正しく理解してもらえるよう説明する義務は、申請者側にあります。この点が正しく説明できないと、人手不足だから、誰でもいいから採用して、とりあえず何でもやってもらおう、というように、会社側に都合のよい働き方、つまり、これが目的外就労、不法就労につながりかねない、という疑念を持たれてしまいます。特に、「技人国」の在留資格に関しては、現場労働や単純作業は一切許可されていないため、審査官には、採用目的以外の業務させるのではないか?という疑念を持たれないように、採用理由や必要性に関しては、事業内容に合わせてしっかり説明をする必要があります。
いかがでしたでしょうか?次回は、外国人労働者受け入れ企業に求められる重要なポイントの3つ目として、「外国人労働者に従事させる職務内容の信ぴょう性」について解説する予定です。
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