ニセコビザ申請サポートセンター代表、申請取次行政書士の明山崇です。

私は主に、北海道の宿泊業や観光業で働く、外国籍従業員の方の在留許可申請、いわゆる就労ビザの、新規取得や更新手続きのお手伝いを行っています。

今回は、技能ビザの申請する際、一番重要な要件である実務経験が証明できないときはどうしたら良いか?について解説をしていきます。

はじめに;技能ビザの申請人に必要な要件

技能ビザは、調理師や建築士、ソムリエなど9つの職種に限定されており、どれも「熟練した技能」と相当年数の「実務経験」が求められています。それゆえに、この在留資格を申請する場合には、申請人に必要とされる要件は、申請をしようとする技能分野での職歴となります。職歴として有効な在職期間は、原則として10年のものが多いのですが、ワイン鑑定(ソムリエ)は5年、スポーツ指導者は3年と短いものがあります。また、パイロットは250時間以上の飛行経歴といったように、年数ではなく具体的な実務担当時間を求められているものがあります。よって、それぞれの分野で指定されている実務経験年数をクリアしていることを証明することが、技能ビザを取得する際の重要なポイントとなります。では、そのような職務経歴はどのように証明するのでしょうか?

実務経験の証明方法

出入国在留管理庁のホームページによると、実務経験を証明するための書類は次の2点ということがわかります。

①「申請に係る技能を要する業務に従事した機関及び内容並びに期間を明示した履歴書」

②「所属していた機関からの在職証明書(所属機関の名称、所在地及び電話番号が記載されているものに限る。)等で、申請に係る技能を要する業務に従事した期間を証明する文書(外国の教育機関において当該業務に係る科目を専攻した期間を含む。)」 

の2点となります。つまり、全申請人の提出が必須とされている履歴書に、「勤務先の企業名」「従事していた職務内容」「勤務していた期間」を明記して提出すること。そしてカテゴリー3と4の企業に就職する場合には、勤務していた会社から在職証明を取得し、この在職証明書には「会社名」住所」「電話番号」が書かれていて、「申請に関する業務に従事していた期間」を証明する内容になっていることが求められます。なお、この在職証明書は、カテゴリー1と2の企業に就職する場合は提出不要とホームページには記載されていますが、実務上では、途中で追加の書類提出依頼が来ることを避けるためにも、この在留資格を申請するすべての場合で提出した方が良いというのは言うまでもありません。また、企業での勤務経験では要件年数に満たない場合は、外国の教育機関で学んだ期間も実務経験年数に入れることが可能で、その場合には在学証明書や単位履修証明書などを併せて提出します。

在職証明書を取得する際の注意点

まずは、出入国在留管理庁のホームページに記載されているすべての内容が網羅されていることが重要です。これ以外にも、申請人の名前や性別、生年月日やパスポート番号など、個人を特定できる情報を記載していないと、誰の職歴を証明するものなのかがわからなくなってしまいます。

また、通常在職証明書は一般企業が発行するもので、役所など公的機関が発行するものではありません。そのため、この証明書の信ぴょう性、つまり本当に事実を証明されているものかどうか? に関しては、審査の際に常に疑念が持たれているといってもよいでしょう。現地の大使館/領事館でビザ(査証)の審査を行う際には、証明書に記載された電話番号に電話をかけてみたり、所在地を訪問するなど実在しているかを確かめることもあるようです。よって、在職証明書に書かれた住所地に店舗がなかったり、電話をかけても誰も出ないということになれば、偽の企業が作成した在職証明書、つまり偽装されたものとみなされ、ビザの申請が不許可になり日本への渡航ができなくなります。

なお、在職証明書に関しては、1社で10年以上勤務していた場合は1枚のみとなりますが、2年ごとに転職をしていて5社で10年という場合は、5社分を提出することになります。また、10年間は連続している必要はなく、5年勤務して、3年間休職し、また5年間勤務したといった形の通算で10年以上ということでも問題はありません。

在職証明書が取れない場合はどうするか?

前述のとおり、在職証明書は公的機関が発行するものではないことから、在職証明書の取得が不可能なケースがあります。一番多いのは、以前勤務していた会社やお店が倒産や廃業をしていて、存在自体がなくなってしまうことです。こうなってしまうと、書類自体の発行はできないのはもちろん、在職証明書を適当に作成して提出したとしても、現地調査ですぐにその嘘が判明してしまいます。

では、このような場合はどうしたら良いのでしょうか?残念ながら、物理的に在職証明書の発行が不可能な以上、その職務経験を証明することはできないため、在留資格申請要件に参入することはできません。別の会社での勤務で、その不足分を補って要件年数を満たさない限り、申請をしても不許可になってしまいます。

若しくは、高等教育機関で該当する技能に関する教育を受けたことがあれば、その期間も実務経験年数に算入することができますので、過去の履修科目などを再度確認し、該当するものがあれば、在籍証明書や単位履修証明書を提出します。

まとめ

技能ビザの申請に関しては、学歴の証明は不要で、規定年数以上の実務経験によって可否が決まります。非常にシンプルなのですが、実務経験を証明する在職証明書は一般企業が発行するがゆえに、その証明書自体の信ぴょう性に疑義が生じやすいだけでなく、物理的に発行が不可能なこともあり、遡る年数が長くなる場合には証明が非常に難しくなるケースもあります。

ニセコビザ申請サポートセンターは、言葉や文化、そして国境の壁を乗り越えて、日本社会の一員として働こうとしている、外国人の方々を全力で応援し、サポートします。この記事に関するご質問、お問い合わせや、就労ビザ取得に関しての条件面、手続き面に関するお問い合わせは、お電話か、ホームページの「無料相談フォーム」からお気軽にお問合せください。