ニセコビザ申請サポートセンター代表、申請取次行政書士の明山崇です。北海道で唯一の、ビザ申請と観光業に特化した行政書士として、主に、ニセコ・小樽・札幌市内を中心に北海道で生活する、外国籍の方々の在留許可申請、いわゆる就労ビザや配偶者ビザ等の、新規取得や更新手続きのお手伝いをしています。

今回は、どのような人が、調理師で技能ビザを取得できるのか?に関して解説をしていきます。

どのような人が調理の分野で技能ビザを取得できるのか?

現在日本にある29種類のビザ(在留資格)では、基準適合性、つまり、ビザを申請する人が適合していなければならない基準、が定められています。これらをひとつずつ確認していきます。

日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。

これに関しては、「技人国」や「教育」、特定活動46号」等、他の就労系ビザの基準適合性にも書かれている、重要な要件です。日本人が同等の業務に従事した場合の報酬と、同額以上である必要があります。外国人であることを理由に、低い報酬や待遇面での差別的な扱いをしている場合にはビザを取得することはできません。

料理の調理又は食品の製造に係る技能で外国において考案され我が国において特殊なものを要する業務に従事する者

調理師で技能ビザを取得するためには、その担当する調理・料理に関しては、何でもよいということではありません。外国人調理師を雇用する以上、外国で考案された料理であることは大前提で、さらに、特殊な技能を要する調理に従事することを証明する必要があります。よって、伝統的な和食の調理師ではこのビザを取得できないのはもちろんのこと、外国料理が起源になっているけど、一般的な日本の日常食になっているもの、例えば、カレーライスやラーメン・チャーハン、スパゲッティー、ハンバーガー等を調理するような場合に関しても、技能ビザを取得することは難しいと言われています。さらに、イタリア料理やインド料理のお店であっても、チェーン店やファストフード等、調理や製造に特殊な技術が必要とされない店舗に関しても、技能ビザの取得対象外となっています。実務上、技能ビザの申請要件を満たす外国料理店の一つの基準としては、「コースメニュー」が提供されているかがポイントになっているようです。前菜からデザートまで、外国で考案された料理で構成され、特殊な調理技術が必要とされるコースメニューを提供しているような店舗であれば、調理ビザの申請要件を満たしていると言われます。

当該技能について十年以上の実務経験を有するもの

これは、日本に渡航する前に、現地で調理師として10年以上の実務経験を積んでいる必要があります。この10年には、外国の教育機関において当該料理の調理又は食品の製造に係る科目を専攻した期間を含めることができます。例えば、2年間調理師専門学校に通い、調理技術を習得したのちに、8年間調理師として現地のレストランに勤務したような方が該当します。この10年間の実務経験に関しては、1つの店舗で10年以上の勤務でも、複数の店舗での勤務を合算して10年間というカウントでも構いません。また、途中無職期間があり、キャリアが中断しているばあいであっても、合計して在職期間が10年以上になる在職証明書が取得できれば問題ありません。 この実務経験機関に関しては、唯一の例外がタイ料理の調理師です。タイに関しては実務経験が他の国の半分の5年間でよいとされていますが、初級以上のタイ料理人資格を有することが必須となっています。タイ以外の国に関しては、10年以上の実務経験のみで、出身国の調理師免許取得は必須条件にはなっていません。

実務経験の証明方法に関して

他の就労系ビザと異なり、調理師で技能ビザを取得するためには、学歴や年齢制限、その他資格など申請人に関する条件はなく、唯一最も重要な申請人の条件は「10年間の調理師としての実務経験」のみとなります。これをどのように証明するかが、調理師の技能ビザの取得可否を決める重要なポイントとなります。

過去に在籍していた勤務先から発行される在職証明書によって実務経験を証明します。通常、調理師として勤務する飲食店やレストランは一般企業なので、在職証明書は結婚証明書や出生証明書等のように、その国の役所が公的に発行するものではありません。よって提携の書式が決まっているわけではなく、ビザ申請に必要な情報が網羅されていないと、実務経験が正しく証明できなくなってしまいます。具体的には、「名前」「性別」「生年月日」といった勤務者の個人を特定できる情報と、勤務先を特定するための情報として、「勤務先(レストラン)の名前」「住所」「電話番号」と、そして最も重要な在職期間は、勤務開始日と勤務終了日の2つの年月日が記載されている必要があります。

なお、飲食店やレストランは一般企業であるが故に、既に廃業してしまっていたり、経営者が変わってしまい、過去の在職証明書が発行できない場合もよくあります。残念ながら、このように在職証明書を提出できない期間に関しては、実務経験の10年にカウントすることはできず、これによって、証明できる実務経験が10年を下回る場合に関しては、技能ビザの要件を満たしていないこととなってしまいます。

まとめ

どのような人が調理師で技能ビザを取得できるのか?について解説をしてきました。申請人と雇用するお店で、申請の要件として重要なポイントは、それぞれ1つずつあります。

申請人に関しては、調理師として10年以上の実務経験があり、これを在職証明書によって証明できること。

雇用する飲食店に関しては、外国料理専門店で、コース料理をメニューとして提供しているような本格的な飲食店であることを、メニューのコピーを提出するなどして証明できること。

となります。

なお、これ以外の一般的な飲食店、外食産業で外国人従業員の雇用を検討する場合には、外食分野の特定技能ビザを持つ人を採用するという方法もあります。詳しくは、こちらの記事で解説をしていますので、興味のある方は合わせてご確認ください。

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