ニセコビザ申請サポートセンター代表、申請取次行政書士の明山崇です。北海道で唯一の、ビザ申請と観光業に特化した行政書士として、主に、ニセコ・小樽・札幌市内を中心に北海道で生活する、外国籍の方々の在留許可申請、いわゆる就労ビザや配偶者ビザ等の、新規取得や更新手続きのお手伝いをしています。

はじめに 10年の壁を越えて日本で活躍する!技能ビザの基本を知ろう

日本で外国人調理師として働くための第一歩、それは「技能ビザ」の取得です。このビザは、外国料理の専門的な技術を持つ調理師が日本で働くために必要な在留資格であり、多くの夢を叶えるための重要な鍵となります。しかし、技能ビザの取得には厳しい条件があり、その中でも「10年間の実務経験」という要件が最も重要で、かつ多くの人がつまずきやすいポイントです。

技能ビザの条件を理解し、的確に準備することが成功の近道です。外国料理専門店で働くことが前提であるため、ラーメンやカレーライスといった日本の日常食の調理では対象外となります。また、雇用先の飲食店が本格的な外国料理を提供し、特殊な技術を必要とする店舗であることも求められます。このように、申請者の経験だけでなく、雇用環境の証明も大切です。

今回は、技能ビザ取得の条件を丁寧に解説するとともに、10年間の実務経験をどのように証明すべきかを詳しくご紹介します。これから日本で働くことを目指す外国人調理師の方や、外国人を雇用しようと考えている飲食店経営者の方に役立つ情報をお届けします。夢の実現に向けて、ぜひ参考にしてください。

背景説明 なぜ10年の経験が求められるのか?技能ビザの意義とは

技能ビザは、日本の社会や産業において高度な専門性や技能を必要とする分野で活躍する外国人に発給される在留資格です。特に調理師の場合、このビザが目指すのは、日本の飲食業界において外国料理の本場の味や技術を伝えることで、料理文化の多様性を広げ、消費者に新たな価値を提供することです。このため、技能ビザの基準は単なる「働くための資格」ではなく、高い専門性を備えた「即戦力」の調理師を対象としています。そして、その専門性を裏付けるための基準が、「10年間の実務経験」という条件なのです。

10年の経験が求められる理由とは?

技能ビザにおいて10年という長期間の経験が求められる背景には、主に以下の3つの要因があります。

  1. 高度な技術を有することの証明
     調理師の技能ビザは、単に外国料理を作れるだけではなく、本場の技術や経験を持ち、日本においても価値を発揮できる人材を対象としています。10年間の実務経験を通じて培われた技術やノウハウは、その人が「単なる料理人」ではなく、高度な技能を持ったプロフェッショナルであることの証明となります。例えば、フランス料理であれば前菜からメインディッシュ、デザートまで一通りの調理技術を習得し、現場で応用できる水準であることが求められるのです。
  2. 文化的価値の提供
     技能ビザの目的の一つに、外国料理を通じて日本の飲食文化を豊かにするという役割があります。これを実現するためには、その料理がただの模倣でなく、本場の味や技術を正確に再現できることが重要です。そのためには、単に料理を作るだけでなく、料理の背景にある文化や伝統も深く理解し、それを日本に持ち込む能力が必要です。10年間の経験は、料理そのものの技術だけでなく、その国の食文化を体得するための十分な期間と見なされています。
  3. 雇用の公正性と質の向上
     日本の技能ビザ政策は、特定分野における人材不足を補うと同時に、低賃金労働者を安易に受け入れることで社会的問題が生じることを防ぐ役割も果たしています。10年間の経験を条件とすることで、特定技能などの他の在留資格とは異なり、明確に「高度な専門職」としての線引きを行っています。これにより、調理師が技能ビザを取得して日本で働く場合でも、日本人の従業員と同等以上の報酬が支払われることが要件化されており、雇用者と従業者双方の公平性が保たれています。

実務経験以外では証明できない理由

技能ビザにおいて、学歴や資格ではなく実務経験が最重視されるのも、このビザの特徴です。調理の分野では、学校で得られる知識や資格以上に、現場での経験によって技術が磨かれることが多いからです。例えば、調理のスピードや段取り、各国料理における食材の扱い方などは、現場での反復的な経験がなければ習得できません。また、実務経験が長ければ長いほど、その人が現場でのトラブルや予期せぬ状況にも柔軟に対応できるスキルを持っていると判断されます。

技能ビザの意義と10年経験の重要性

10年間の実務経験という条件は、単にハードルを上げるためのものではありません。それは、申請者が本当に高度な技能を持っているかどうかを評価する客観的な基準であり、日本の飲食業界にとって「価値のある外国人調理師」を選別するための大切な指標なのです。この基準をクリアした調理師は、日本においてただ働くだけでなく、本場の料理を通じて新しい文化や価値をもたらし、日本の飲食業界の発展に貢献する存在となります。技能ビザ取得を目指す方にとって、この10年間の経験をどのように証明し準備するかが成功への鍵となります。日本での活躍を目指す調理師として、この条件をクリアすることが自信と誇りにつながるでしょう。

具体例 技能ビザを取得するための具体的な条件とポイント

技能ビザを取得するためには、いくつかの厳格な条件をクリアしなければなりません。特に調理師の技能ビザの場合は、申請者本人の経験や技能に加え、働く飲食店の条件も審査される点が特徴です。ここでは「料理の種類」「勤務する飲食店の条件」「実務経験の証明」という3つのポイントについて、具体的に解説していきます。

料理の調理又は食品の製造に係る技能で外国において考案され我が国において特殊なものを要する業務に従事する者

1. 料理の種類

技能ビザの取得において最も基本となるのが「料理の種類」です。技能ビザの対象となるのは「外国料理」に限定されており、以下の要件を満たしている必要があります。

1.外国で考案された料理であること
申請者が調理する料理は、必ず外国で生まれた料理でなければなりません。例えば、タイ料理、フランス料理、イタリア料理、インド料理など、その国特有の伝統や技術が反映されている料理が対象です。一方で、日本料理や、外国料理が起源でありながら日本で独自に発展したもの(例: カレーライス、ラーメン、チャーハンなど)は対象外です。

2.「特殊な技能」を要する料理であること
外国料理であれば何でも良いわけではなく、その料理を調理するために「特殊な技能」が必要であることが条件です。例えば、単にハンバーガーを焼いたり、冷凍食品を温めて提供するだけでは技能ビザの対象外となります。これらの作業は高度な技術が不要であるため、技能ビザの趣旨に合わないからです。

日常食やファストフードは対象外
一般的に日本で広く普及し、日常的に食べられている料理や、調理技術を必要としないファストフードは、技能ビザの要件を満たしません。例えば、ピザやスパゲッティも、一般的なチェーン店での提供を想定している場合は認められないケースが多くあります。

具体例】

例えば、「タイ料理専門店」の場合、本格的なタイ料理を提供し、現地の調理技術が求められる料理であれば対象になります。しかし、日常的に日本で食べられている「ナシゴレン」や「パッタイ」を単に温めて提供するような飲食店では対象になりません。重要なのは、その料理に本場の調理技術が必要であることです。

2. 勤務する飲食店の条件

技能ビザの取得要件では、申請者本人の技能だけでなく、雇用主である飲食店の条件も重要になります。特に以下の点が審査されるため、飲食店側も条件をクリアしている必要があります。

1.「コースメニュー」があること
技能ビザが認められやすい飲食店の特徴の一つが「コースメニュー」を提供していることです。コースメニューとは、前菜からメインディッシュ、デザートまで、料理が一連の流れで提供される形式のメニューを指します。このようなメニューは通常、特殊な調理技術や高度なスキルが求められるため、技能ビザの審査でも有利になります。

2.本格的な外国料理専門店であること
本格的な外国料理を提供していることが重要です。例えば、イタリア料理店であれば、パスタやリゾットだけでなく、本場の技術を活かした前菜、メインディッシュ、デザートまでを手掛けることが求められます。一方で、チェーン店やファストフード店のように調理技術がほとんど必要ない店舗では技能ビザの対象外とされます。

3.特殊な調理技術が求められる料理を提供すること
店舗の料理が単なる加熱や盛り付けで完結するような場合は対象外です。例えば、ミシュランガイドに掲載されるような本格的な外国料理専門店では、申請が認められやすい傾向があります。

具体例

例えば、「本格イタリアンレストラン」が外国人シェフを雇う場合、メニューとしてコース料理を提供し、前菜、パスタ、メイン、デザートまで一通りを調理するスキルが求められる場合は、技能ビザ取得の可能性が高いです。しかし、ファミレスのように大量生産で提供する場合や、レトルト食品を活用する場合は、特殊な技能が必要とされないため申請は難しくなります。

当該技能について十年以上の実務経験を有するもの

技能ビザにおける最も重要なポイントは「10年間の実務経験」の証明です。この経験が申請者の高度な技能を裏付けるものであるため、確実に証明できる書類を揃えることが必須です。

  • 在職証明書の必要事項
    実務経験を証明するために必要なのが「在職証明書」です。在職証明書には、以下の内容が明記されている必要があります。
    • 申請者の氏名、生年月日、性別などの個人情報
    • 勤務先の名称、所在地、電話番号などの情報
    • 勤務開始日と終了日が記載された在職期間
    • 職務内容(調理師として従事していたこと)
  • 複数店舗での合算も可能
    10年間の実務経験は、1つの店舗で継続していなければならないわけではありません。複数の店舗での経験を合算してカウントすることも認められています。ただし、それぞれの店舗から在職証明書を取得する必要があります。
  • 廃業した店舗での経験
    過去に勤務していた店舗が廃業している場合、在職証明書を取得するのは非常に難しくなります。残念ながら、この期間は実務経験としてカウントされません。そのため、できるだけ早めに過去の勤務先から証明書を取得しておくことが重要です。
  • タイ料理の特例
    タイ料理の場合、10年ではなく5年間の実務経験で技能ビザを申請できます。ただし、その場合はタイ政府が認定する「初級以上のタイ料理人資格」を取得していることが条件です。

具体例】

例えば、インド料理の調理師が技能ビザを取得する場合、現地のレストランで8年間勤務し、その前に調理師専門学校に2年間通っていた場合、合計10年間の実務経験として認められます。ただし、勤務証明書が取得できない場合や、勤務期間が短い場合は、要件を満たさない可能性があります。

技能ビザの取得には「外国料理」「雇用先の条件」「10年間の実務経験」の3つのポイントをクリアする必要があります。特に実務経験の証明は重要であり、在職証明書を確実に取得することが求められます。また、雇用する店舗が本格的な外国料理専門店であることも条件となるため、申請準備はしっかりと進めることが成功の鍵です。

解決策 実務経験を証明するための具体的な準備方法

技能ビザの取得において最も重要なポイントは「10年間の実務経験の証明」です。しかし、経験があっても正確な証明書が取得できなければ申請は認められません。また、タイ料理の調理師に関しては特例があるため、これを活用することでチャンスが広がります。さらに、雇用主である飲食店側も要件をクリアする必要があるため、店舗選びも重要です。ここでは、技能ビザ取得を目指す外国人調理師や飲食店経営者に向けた3つの具体的な解決策を解説します。

在職証明書の発行を依頼するコツ

「10年間の実務経験」を証明するためには、過去の勤務先から「在職証明書」を取得する必要があります。在職証明書は公的な書類ではなく、勤務先が独自に発行するものです。そのため、内容が不十分だと「10年間の証明」として認められない可能性があります。

在職証明書に必要な項目

  • 申請者の個人情報
    氏名、性別、生年月日など、申請者を特定できる情報が必須です。
  • 勤務先の情報
    レストランや飲食店の名称、所在地、電話番号、責任者の氏名(署名)を明記してもらいます。これにより、証明書の信憑性が高まります。
  • 在職期間
    勤務開始日と終了日を「年・月・日」まで明確に記載してもらうことが重要です。特に途中で無職期間がある場合、期間が途切れないようにしっかりと記載してもらいましょう。
  • 職務内容
    「調理師」として働いていたことがわかる具体的な内容(例: イタリア料理専門調理師としてパスタ、メイン料理を担当)を明記してもらいます。

依頼時のポイント

廃業している場合の対処法
勤務先が廃業してしまっている場合、元同僚や上司からの「陳述書」や「推薦状」を用意する方法も検討します。ただし、あくまで補足的な資料であり、正式な証明書としては認められない可能性があるため、早めの手続きが重要です。

■事前にテンプレートを用意する
勤務先が在職証明書を作成した経験がない場合、書式が不十分になることがあります。テンプレートを事前に用意し、必要な項目を指示することでスムーズに依頼できます。

発行依頼は丁寧かつ具体的に行う
在職証明書の発行を依頼する際は、文書で丁寧にお願いし、具体的に必要な内容を説明します。可能であれば、電話やメールなどで補足説明も加えましょう。

タイ料理の特例を活用

技能ビザの「10年間の実務経験」の条件には例外が存在します。タイ人のタイ料理の調理師の場合、実務経験が「5年間」あれば技能ビザの申請が可能です。この特例は、日本とタイが経済協定(EPA)を締結したことによります。

タイ料理の特例条件

  1. 5年間の実務経験
    他国の料理人と異なり、5年間の実務経験で技能ビザが申請できます。ただし、勤務先の在職証明書が必要なのは他国と同様です。
  2. タイ料理人資格の取得
    タイ国籍を持つ料理人に限り、5年間の実務経験に加えて「初級以上のタイ料理人資格」を取得していることが条件となります。この資格は、タイ政府が認定するものであり、専門技術を有している証明となります。
  3. 渡航前1年間は料理人として活動していること

特例の活用方法

  • 資格取得を計画的に進める
    タイ料理人資格はタイ国内で取得できます。これから技能ビザの取得を目指す方は、早い段階で資格取得を目指すことが有効です。
  • 経験期間の短縮でチャンスを広げる
    他の国籍の料理人が10年間必要なところ、5年間で申請が可能なため、特例を活用することで日本で働くチャンスが広がります。

ビザ要件に合う店舗を選ぶ

技能ビザの取得には、雇用する飲食店が一定の条件を満たしている必要があります。特に、以下のポイントが審査において重要視されます。

コースメニューの提供

技能ビザを申請する飲食店では、「コースメニュー」を提供していることがポイントです。コースメニューは前菜、スープ、メインディッシュ、デザートと一連の流れで料理を提供する形式であり、これにより特殊な技能が必要であることを証明できます。

  • 証明書類の準備
    飲食店側は、コースメニューを提供していることを示す書類(例: メニュー表のコピー)を提出する必要があります。審査の際には「本格的な外国料理を提供している店舗」として認定されるための重要な資料となります。

本格的な外国料理専門店であること

  • 高度な調理技術が必要な料理
    店舗が「本場の味」を提供し、特殊な調理技術を必要とする料理であることがポイントです。チェーン店やファストフード店のように、単に盛り付けや簡単な調理作業のみでは技能ビザは認められません。
  • レストランの経営状態
    技能ビザ申請時には、店舗の経営状態が安定していることも重要です。雇用契約書や給与支払い証明書を提出し、日本人と同等額以上の給与を支払うことを示す必要があります。

技能ビザの取得に向けた準備として、「在職証明書」の取得、「タイ料理の特例」の活用、そして「ビザ要件を満たす店舗選び」の3つのポイントが欠かせません。申請者本人だけでなく、雇用主となる飲食店側も適切な証明書類を準備する必要があります。特に10年間の実務経験の証明は、技能ビザ取得の成否を左右する最重要ポイントです。早い段階で勤務先と連絡を取り、証明書の発行を依頼することが重要です。また、タイ料理の特例を活用することで、条件が緩和され、より早く技能ビザ取得のチャンスを掴むことができます。日本で本格的な外国料理を提供し、調理師としてキャリアを築きたい方は、これらの準備を進めることで、技能ビザ取得の成功率を高めることができます。飲食店経営者の方も、外国人シェフの雇用を検討している場合は、要件を満たす環境を整え、申請者とともにしっかりと準備を進めましょう。

まとめ まずは10年の経験証明をチェックしよう!

外国人調理師が日本で技能ビザを取得し、本場の技術を活かして活躍するためには、「10年間の実務経験の証明」と「飲食店側の条件」がしっかり揃っていることが絶対条件です。ここまで解説してきたように、ビザ申請には多くの書類と細かな要件が求められ、準備不足や証明書の不備があると許可が下りないことも少なくありません。

経験証明の確認が成功の第一歩

まず、調理師としての10年間の実務経験を証明するための「在職証明書」を確実に揃えることが最優先です。勤務先が廃業している場合や、証明書の発行に時間がかかるケースもあるため、準備は早ければ早いほど安心です。また、タイ料理の調理師に限っては「5年間の経験」で申請できる特例もあるため、自分の条件がどこに当てはまるのかを正確に把握しましょう。

飲食店側も早めの準備が肝心

雇用する飲食店側も、技能ビザの申請要件を満たしているか確認が必要です。本格的な外国料理を提供し、コースメニューがある店舗であることを示す書類(メニュー表や契約書類など)を揃え、調理師に対して日本人と同等以上の待遇を約束することが求められます。店舗側の理解と協力があって初めて、技能ビザの申請がスムーズに進みます。

早めの相談で確実な許可を得よう

ビザ申請には時間がかかることも多く、準備に不安や疑問を感じる方もいるでしょう。「10年の経験を証明できるか心配…」「どの書類を準備すればいいのかわからない…」「店舗としてどう動けば良いのか…」そんなお悩みがある場合は、早めに専門家に相談することが何よりの近道です。

当事務所では、外国人調理師飲食店経営者の双方が安心してビザ申請を進められるよう、的確かつ丁寧なサポートを提供しています。経験証明書の確認から申請書類の準備、飲食店の条件整備まで、技能ビザ取得に向けた手続きを全面的にサポートいたします。

「これで大丈夫だろうか…」と不安を抱えたままでは、時間も労力も無駄になりかねません。まずはご相談いただき、一緒に確実に許可を得るための第一歩を踏み出しましょう!早めの準備と正確な手続きで、あなたの「日本での活躍」という夢を現実にするお手伝いをさせていただきます。

ニセコビザ申請サポートセンターは、言葉や文化、そして国境の壁を乗り越えて、日本社会の一員として働こうとしている、外国人の方々を全力で応援し、サポートします。この記事に関するご質問、お問い合わせや、就労ビザ取得に関しての条件面、手続き面に関するお問い合わせは、お電話か、ホームページの「無料相談フォーム」からお気軽にお問合せください。