ニセコビザ申請サポートセンター代表、申請取次行政書士の明山崇です。北海道で唯一の、ビザ申請と観光業に特化した行政書士として、主に、ニセコ・小樽・札幌市内を中心に北海道で生活する、外国籍の方々の在留許可申請、いわゆる就労ビザや配偶者ビザ等の、新規取得や更新手続きのお手伝いをしています。

外国人のビザ申請において、みなし高度専門職は「高度専門職」の要件を満たしながらも、
別の在留資格で滞在する方が、永住権申請の際に特別な利便性を得られる制度です。

「永住権を取りたい」「短期間で永住権を取得できないか」
とお考えの外国人の方にとっては大きな利点があるため、
「みなし高度専門職」となる条件やポイント基準を詳しく知ることが大切です。

はじめに; 「高度専門職」と「みなし高度専門職」の違いとは?

まずは、「高度専門職」と「みなし高度専門職」の基本的な違いについて確認します。

高度専門職とは?

高度専門職は、日本政府が外国から高度な知識やスキルを持つ人材を
積極的に受け入れるため、2012年に導入したポイント制の在留資格です。
「学歴」「職務経験」「年収」「年齢」などの項目に基づくポイントが
一定以上であれば、高度専門職の在留資格を得られ、
日本での生活における各種優遇措置を受けられる制度です。
高度専門職には、主に次の3つのカテゴリーが設けられています。

  • 高度専門職(i)-1:学術研究、教育などの分野で活動する者(例:大学教授)
  • 高度専門職(i)-2:高度な専門的・技術的分野で活動する者(例:ITエンジニア)
  • 高度専門職(i)-3:企業経営に従事する者(例:事業経営者)

みなし高度専門職とは?

みなし高度専門職とは、高度専門職の在留資格を取得していないものの、
「高度専門職ポイント計算表」による点数が一定の基準を満たすことで、
永住権申請の際に「高度専門職」と同等に扱われる制度です。
高度専門職としての資格がない場合でも、「永住」申請時に限り、
高度専門職同様の短縮された居住要件が適用されるのが特徴です。

みなし高度専門職に該当する要件とは?

みなし高度専門職の対象となるためには、次のポイント要件をクリアする必要があります。

ポイント基準

  1. ポイントが70点以上80点未満
     過去3年以上にわたり70点以上の基準をクリアしている必要があります。
  2. ポイントが80点以上
     過去1年以上にわたり80点以上の基準をクリアしている必要があります。

たとえば、「技術・人文知識・国際業務」や「教授」「研究」などの
就労系在留資格を持つ方で、このポイント要件をクリアしている場合は、
みなし高度専門職として永住申請の対象になります。

「みなし高度専門職」のメリットは?

みなし高度専門職の大きなメリットは、永住権申請における居住要件の短縮です。
通常、永住権申請には「10年以上の居住期間、うち5年以上の就労期間」が必要ですが、
みなし高度専門職の場合、次のように居住期間の条件が緩和されます。

  • ポイント70~79点の方:3年以上70点を維持していれば申請可能
  • ポイント80点以上の方:1年以上80点を維持していれば申請可能

これにより、一般的には長期に及ぶ永住権の申請が、
条件次第で早期に可能になる点が、みなし高度専門職の大きな特徴です。

例:高度専門職とみなし高度専門職での永住申請の違い

  • 高度専門職(i)-1としてポイント70点で3年在留
     → 永住申請可能
  • 技術・人文知識・国際業務でポイント70点を3年維持
     → みなし高度専門職として永住申請可能

このように、みなし高度専門職であれば、高度専門職の在留資格への変更手続きが不要で、
現在の在留資格のまま永住権申請に挑むことが可能です。

 制度利用における注意点

「みなし高度専門職」は、永住権申請における居住要件の緩和のみが適用され、
他の高度専門職に認められた特典は適用されない点に注意が必要です。

みなし高度専門職ではされない高度専門職の優遇措置

配偶者の就労許可
 高度専門職の配偶者は就労が可能ですが、みなし高度専門職には認められません。

複合的な在留活動の許可
 高度専門職であれば、複数の職務活動を柔軟に行うことが可能ですが、
 みなし高度専門職には適用されません。

5年間の在留期間
 高度専門職の在留資格を取得すると「5年間」の在留期間が付与されますが、
 みなし高度専門職の場合は従来通りの在留期間が適用されます。

親の帯同許容(一定条件下)

家事使用人の帯同許容(一定条件下)

これらは「高度専門職」の在留資格を持つ方のみに適用されるため、
「みなし高度専門職」の方には適用されません。
永住権申請の住居要件が緩和される以外には、現行の在留資格の制約が適用される点に留意してください。

具体例:みなし高度専門職に該当するケース

より具体的な例を挙げながら、みなし高度専門職の条件やポイント計算について解説します。

具体例1:ITエンジニアとして働くAさんの場合

Aさんは、IT企業に就職している外国人で、在留資格は「技術・人文知識・国際業務」です。
彼の学歴、職務経験、年収、年齢の合計ポイントは「75点」。

Aさんのポイント条件

  • 学歴(理系の修士号):20点
  • 職務経験(同業界5年以上):10点
  • 年収(520万円):15点
  • 年齢(30歳以下):15点
  • 日本語検定N1合格:15点

この場合、Aさんは75点を保持しており、3年以上連続してこの基準を満たしていれば、
「みなし高度専門職」としての条件をクリアするため、
永住権申請の際には3年間の在留要件を満たしたとして申請可能です。

具体例2:研究者として働くBさんの場合

Bさんは日本の大学で研究者として働き、在留資格は「研究」です。
彼の学歴、職務経験、年収、年齢に基づく合計ポイントは「85点」。

Bさんのポイント条件

  • 学歴(博士号):30点
  • 北海道大学で博士号取得 :10点
  • 職務経験(同分野5年以上):10点
  • 年収(830万円以上):30点
  • 年齢(34歳):10点

この場合、Bさんは90点を保持しており、1年以上連続で80点以上を維持していれば、
「みなし高度専門職」として永住権申請の要件を満たします。
申請においては、研究の在留資格のままで申請可能です。

なお、ポイント計算表に関しては、入管のHPの「高度人材ポイント計算表」をご参照ください。

まとめと今後の準備について

今回は、「みなし高度専門職」に解説をしてきました。ある一定期間、「高度専門職」に該当するポイントをクリアしている方は、わざわざ在留資格を「高度専門職」に変更しなくても、「高度専門職」の在留資格を持っていると見なして、「永住」の申請を行うことができる制度です。「高度専門職」の在留資格に関しては、前述のようにメリットが大きい反面、転職の際に「在留資格変更許可申請」が義務になっているなど、「技術・人文知識・国際業務」に比べるとデメリットになる部分もあります。「高度専門職」に在留資格を変更するか否かは別として、現在、「教授」、「研究」、「技術・人文知識・国際業務」、「経営・管理」などホワイトカラー系の在留資格を保有している方は、是非一度、出入国在留管理庁のホームページの「高度専門職ポイント表」を確認し、ご自身が何点取得できている状態かを確認されると良いでしょう。ご自身で気が付かないうちに、既に「永住」の申請要件をクリアしていることもありますので、中長期的に日本での在留を希望している方、いつか「永住」を取りたいと思っている方は、早い段階でチェックをされることをお勧めします。

ニセコビザ申請サポートセンターは、言葉や文化、そして国境の壁を乗り越えて、日本社会の一員として生きていこうとする、外国人の方々を全力で応援し、サポートします。この記事に関するご質問、お問い合わせや、高度専門職への在留資格変更に関しての条件面、手続き面、ポイント計算に関するお問い合わせは、お電話か、ホームページの「無料相談フォーム」からお気軽にお問合せください。

なお、この記事は動画でも解説をしています。動画でご覧になられたい方は、こちらも併せてご確認ください。