ニセコビザ申請サポートセンター代表、申請取次行政書士の明山崇です。北海道で唯一の、ビザ申請と観光業に特化した行政書士として、主に、ニセコ・小樽・札幌市内を中心に北海道で生活する、外国籍の方々の在留許可申請、いわゆる就労ビザや配偶者ビザ等の、新規取得や更新手続きのお手伝いをしています。
今回は、新卒の外国人留学生を採用する際のポイントについて解説をしていきます。
在留資格と学歴要件
日本国内にある、日本語学校、専門学校、短期大学、大学で学ぶ留学生は、在学中は「留学」の在留資格を持っています。これらの学校を卒業後、企業に就職するためには、就労系の在留資格に変更申請をし、許可が得られなければ働くことはできません。新卒の学生が変更する就労系の在留資格は、主に大学や短期大学卒業者は「技術・人文知識・国際業務」(以下、技人国)か、専門学校や日本語学校の卒業者は「特定技能」になることが多いかと思われます。
「技人国」の場合の学歴と専攻内容
まず、「技人国」の在留資格は、短期大学か大学を卒業していること、若しくは、日本国内の専門学校を卒業していることが学歴の要件になっています。よって、日本語学校卒業のみの留学生や、母国の専門学校卒業が最終学歴になる留学生は、「技人国」の在留資格は申請することが出来ません。そして、在学中に学んだ専攻内容と、就職予定先の会社での職務内容に関連性や一致点がないと、許可を得ることが出来ません。更に、この在留資格では、就業できる職務内容にも細かい規定があり、いわゆるホワイトカラーの知識労働に限定されており、工場での組み立て作業など現場労働や、コンビニのレジ打ち等の単純労働に関しては、一時的であったとしても携わることは認められていません。
「特定技能」の場合の学歴と専攻内容
次に、「特定技能」の在留資格に関しては、18歳以上で健康な方であれば、学歴や専攻内容などの要件はありません。日本語学校卒業の方も含め、高等教育機関を卒業していなくても申請をすることが可能です。ただし、日本語能力検定のN4以上と、就職したい産業分野の技能試験に合格をしないと、特定技能の在留資格を申請することが出来ません。この試験は、日本語分野と技能分野に分かれています。日本語分野の試験は、全分野共通のものと、介護分野に限定されたものの2種類があります。一方、技術分野に関しては、「介護」「ビルクリーニング」「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」「建設」「船舶・船舶工業」「自動車整備」「航空」「宿泊」「農業」「漁業」「飲食料品製造業」「外食」と、留学生が就職したい職種に応じた技能の試験を受験し、合格する必要があります。手続き的には、「特定技能」の在留資格を申請する際に、日本語試験と技能試験の合格証明書、健康診断書があればよいのですが、採用する企業側の観点からいうと、就職活動の選考中に既に合格証明書を持っている留学生の方が、より確実に在留資格が取れるために、企業側としては安心して内定を出すことが出来ます。試験に合格していない外国人でも、雇用契約を締結することはできますが、在留資格申請までに試験に合格しない場合は、正式に採用することはできません。
在留資格変更手続はいつ行えばよいのか?
現在では、明確な就職協定はないですが、凡そ10月1日には次年度4月1日入社の新卒学生の内定式が行われています。もちろん、夏の間に内々定をもらっている学生もいれば、10月1日を過ぎても内定が出ていない学生もいると思われますが、だいたい年内には内定をもらい、4月からの勤務先が決まっている学生がほとんどかと思われます。
では、留学生が「技人国」や「特定技能」の在留資格に変更をしようとした場合、いつから出入国在留管理庁で申請を行うことが出来るのでしょうか。新卒の学生の場合は、前年の12月1日から就労系ビザへの変更申請の受付が開始されます。ただし、この段階では未だ在学中で、翌年の3月の卒業まで時間があるため、卒業証書や学位認定書を申請書類として提出することが出来ません。その代わりとして、卒業見込証明書や学位取得見込証明書を提出することで、まずは申請を行います。日本では、3月卒業の学校、そして4月入社の企業がほとんどの為、出入国在留管理庁も1月~4月の年度末は非常に込み合う傾向にあります。通常、「留学」から就労系在留資格への変更手続きは、1ヶ月~1.5か月位かかるのですが、年度末の繁忙期はこれよりも時間が掛かることがありますので、書類の準備が出来た段階で、早めに申請を終わらせることをお勧めします。
そして、3月になり無事に卒業できた段階で、卒業証書の原本を出入国在留管理庁に提示して、新たな在留カードを受け取ることになります。早い段階で申請を行った場合で、既に審査が完了していても、実際に卒業できたことが確認されなければ、最終的に就労系在留資格への変更が許可され、新たな在留カードを受け取ることが出来ません。せっかく審査が終わっていたとしても、単位不足や出席日数不足で卒業が出来なかった場合には、新たな在留カードを受け取ることはできず、「留学」から就労系の在留資格への変更できなくなってしまいます。
もし万が一、内定の出る時期が遅くなってしまったり、書類の準備に時間が掛かってしまったりした場合には、内定式の4月1日に、就労系在留資格への変更手続きが完了しない場合もあります。その場合には、在留資格は「留学」のままですので正社員として雇用されることはできず、原則として在留資格の変更手続きが完了するまで、勤務をすることができなくなってしまいます。
就職先が決まらなかった場合
また、無事に学校を卒業できたけれど、3月31日まで就職活動を頑張ったにもかかわらず、内定が1つももらえず、就職先が決まらなかった学生に関しては、半年間、就職活動の為の「特定活動」の在留資格を取得することが出来ます。この特定活動の在留資格は1回だけ更新が出来ますので、卒業から1年間は、日本に残って就職活動を行うことが出来ます。「特定活動」の在留資格で就職活動を行っていた学生は、内定が出た段階で、就労系の在留資格への変更手続きを行い、変更が完了した段階で勤務が可能となります。一方、特定活動の在留資格を更新し、1年間就職活動をしたにも関わらず、就職できなかった学生に関しては、残念ですがその時点で帰国せざるを得ないということになってしまいます。
まとめ
新卒の学生の在留資格の変更手続きに関しての一番のポイントは、4月1日の入社日の段階で、就労系の在留資格への変更手続きを確実に完了させることです。気分良く入社式を迎え、新社会人としてスタートが出来るように、企業から内定をもらった段階で速やかに書類の準備を開始し、早い段階で出入国在留管理庁への申請を完了させることが必要です。
ニセコビザ申請サポートセンターは、言葉や文化、そして国境の壁を乗り越えて、日本社会の一員として働こうとしている、外国人の方々を全力で応援し、サポートします。この記事に関するご質問、お問い合わせや、就労系在留資格取得に関しての条件面、手続き面に関するお問い合わせは、お電話か、ホームページの「無料相談フォーム」からお気軽にお問合せください。