ニセコビザ申請サポートセンター代表、申請取次行政書士の明山崇です。

北海道で唯一の、観光業・宿泊業等のサービス業界と、ビザ申請に特化した行政書士として、主に北海道のサービス業界で働く、外国籍従業員の方の在留許可申請、いわゆる就労ビザの、新規取得や更新手続きのお手伝いをしています。

私の事務所が国際的なスノーリゾートのニセコ町にあり、世界各国から多くの観光客が訪問してくることから、新規に会社を設立して民泊事業を行いたい、という外国人のお客様から、お問合せをいただくことが多いです。ニセコ・倶知安エリアは、外資系ホテルや高級コンドミニアムの建設が相次ぎ、宿泊の収容人数は毎年増えていますが、まだまだ宿泊施設が不足しています。特に12月中旬から2月末までは、満室で予約が取れないことも多く、宿泊費用も1室2万円以上とかなり高騰しています。海外からの比較的若い世代の旅行者が、スキーを楽しむために中長期間滞在できるような宿泊施設は、今後益々需要が高まることが想定されます。この記事では、経営管理ビザを取得して民泊事業を行う際に、気を付けた方が良いことやポイントとなることを解説していきます。宿泊施設運営のビジネスに興味のある方は、ぜひ最後までお読みください。

民泊事業に必要なもの

まず、民泊事業を行うためには、宿泊施設として提供するお部屋やそれに付随する、トイレやお風呂など水回りの施設設備が必要です。これは、自己物件として購入した不動産を使用してもよいし、少し大きめの不動産を賃貸して、余った部屋を民泊に使うということも考えられます。

※賃貸住宅を民泊に使う場合は、契約を結ぶ際に大家さんの許可と了承を事前に取っておくことが必要です。

※マンションやアパートは、自己物件であっても管理組合の規約で民泊が禁止されていることがあります。

いずれにせよ、民泊事業をやりたい物件で、民泊の営業ができるかどうかは、必ず事前に確認をしてください。

民泊事業の種類

民泊といっても、法律や運営方法によって3つのタイプに分けられます。これは、ご自身でどのタイプで営業するかを決められるわけではなく、主に、民泊事業を行う場所が、「都道府県・市町村等の特区として定められているところに該当するか?」や、「都市計画法、建築基準法などで旅館業ができると定められた地域か?」によって異なります。このようなことから、民泊事業を行う物件(不動産)選びの前に、どの地域・場所で民泊事業を始めるかを考えることが大事です。

そのうえで、年間を通して営業をしたい場合は、

A:旅館業としての民泊

B:特区として認められた地域での民泊

の2つが考えられます。そして、この2つに該当しない場合には、営業日数が年間180日未満に限られる

C:届出のみで始められる一般的な民泊

としての営業形態をとる必要があります。

A:旅館業としての民泊

Aの場合は、民泊というよりも簡易宿泊所として営業をすることになります。そのために、旅館業の許可を取得することが前提になりますので、この3つの中で開業に向けての準備や要件が一番厳しいです。営業できる地域も、都市計画法や建築基準法で定められている用途地域で、旅館業ができる地域でなければ許可を取ることができません。民泊用物件を準備する際には、まずは大前提となる絶対条件として、旅館業の営業ができる場所を選ばなければならないのです。

このように、開業に向けての準備や要件が厳しいのですが、営業日数に制限はなく365日間営業が可能ですので、高い売上げと収益を上げることも期待でき、また、通年を通して業務があるので、従業員の採用がしやすいというメリットもあり、本格的に収益事業として運営をする場合には、この形式が一番のお勧めの方法になります。

B:特区として認められた地域での民泊

Bの特区民泊の場合は、国家戦略特区に指定された都道府県や市町村に限定されています。東京都や神奈川県、大阪府、沖縄県など12の都道府県や市町村、地域が指定されています。残念ながら、私の事務所のある北海道は、この特区に指定されていませんので、この制度を利用しての民泊営業はできません。該当する地域で、特区制度を用いて民泊事業を行いたい場合には、その地域の市町村・都道府県で、特区民泊に関する条例が定められているかどうかを確認し、この条例に沿った施設の条件や営業方法などの要件を満たすことで、自治体から認定を受けることができます。そのため、事業を行う物件の確保や事業計画を立案する前に、まずは、この要件を満たせるかどうかを確認します。HPで確認をするだけでなく、自治体の担当する窓口に直接出向き、担当職員の方と相談することをお勧めしています。

このタイプも、通年で営業することができますので、収益確保と事業の安定性という点ではメリットがあります。また、通年を通して利用者(観光客等)が多い地域を選んで営業することも、経営戦略上重要なポイントとなります。

C:届出のみで始められる一般的な民泊

Cの届出のみで始められる民泊は、住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)で定められた、新しい宿泊施設の運営方法です。この方法の民泊は、旅館業法の適用は受けず、あくまでも住宅の延長として宿泊事業を行うという形になります。定められた要件を満たして都道府県に届出をすれば、営業が開始できるため、3つの中で一番手軽に始めることができます。しかし、年間営業日数は180日未満と定められていることが大きなデメリットになるポイントとなります。つまり、年間の半分の日数しか営業することができないため、せっかく民泊事業用に不動産を用意しても、稼働する期間は半分だけ、残り半分は営業することができない、つまり収益を上げられない、ということになります。年間180日営業のみで収益を確保できるだけの売上を上げる事業計画を策定するのはかなり難しいと言えます。また、民泊業として営業し、業務(仕事)が発生するのは、年間約半分の日数のみになるので、それ以外の期間、従業員の雇用はどうするのか?も考えなくてはならないです。

このようなことから、外国人の方が民泊事業を行って経営管理ビザを取得する場合には、Aの旅館業としての民泊、もしくは、Bの特区制度を利用した民泊を行えることが理想です。事業を行いたい地域が、残念ながらこの2つに該当しない場合は、Cの民泊新法による民泊を行うことになりますが、その場合は、どのようなことに気を付けなくてはならないのでしょうか? 経営・管理ビザ取得の観点から解説をしていきます。

経営・管理ビザ(在留資格)に関して

事業計画に関して

民泊事業を運営する会社の代表者(社長)は、経営・管理ビザを取得することとなります。このビザは、起業して会社を経営したり、企業の役員として働くために必要なものです。外国人の方が、民泊事業を目的とした会社を設立することは可能です。この会社で経営・管理ビザの取得を考えた場合、前述のAとBの方法で民泊事業を行う場合は、民泊事業のみで事業計画を策定し、問題なくビザの取得ができると想定されます。

しかし、Cの形式で民泊事業を行う場合は、民泊営業をしない6か月間に、どのような事業活動を行い、収益を上げていくかも重要なポイントとなります。例えば、12月から6月のスキーシーズンの繁忙期180日間のみ民泊事業を行い、それ以外の185日間は一切事業活動を行わない、ということであれば、1年間の経営管理ビザを取得するのは難しいと思われます。営業していない間、日本にいる代表者には経営・管理の仕事が発生しないので、「この期間は何をしているのですか?」と入管から指摘されることが想定されます。また、そもそも180日間の民泊営業だけで、代表者や従業員の人件費、家賃等会社維持のための経費を捻出できるかも疑問です。別のコラムでも解説をしていますが、決算が赤字になってしまった会社で、経営・管理ビザの更新をするのは難しいことから、会社を維持することが出来る一定以上の収益を、通年で上げられるような事業活動を行い、事業計画・収支計画を行うことが求められます。

民泊新法に基づく民泊(Cの方法)で、新規で会社を立ち上げて民泊事業を行う場合には、通年を通して継続的に行える事業やをあらかじめ決めておき、事業計画に盛り込んでおく必要があります。例えば、通年で行う事業として、飲食店や旅行会社を経営したり、レンタカーの貸し出しを行う、もしくは、通訳・翻訳業や輸出入・貿易事業を行うといったことです。このように、通年で行うベースとなる事業があると、経営・管理ビザの取得や従業員の雇用という観点でもメリットがありますし、定期的に売上が計上して事業を安定させるという点でも非常に良いと思われます。民泊以外の事業内容でも、許認可や登録、届出が必要な事業もあります。例えば、レンタカーであれば「自家用自動車貸渡事業許可」、旅行代理店であれば「旅行業登録」、中古用品販売やレンタル事業であれば「古物商」等になります。これらの手続には、複雑な提出書類や審査機関のかかるものもあります。また、経営・管理ビザの申請前に、予定される事業の許認可や登録、届出をすべて完了させる必要がありますので、会社設立から許認可の取得完了までの時間を想定したうえで、計画的に余裕をもって準備を進める必要があります。

職務内容・業務内容に関して

経営・管理ビザは、経営と管理をすることが職務内容となっているため、このビザを取得した民泊事業の経営者(社長)は、自ら宿泊部屋の掃除やベッドメイク、施設のメンテナンスを行うことはできません。予約管理やチェックイン/チェックアウト時の対応、宿泊費用の清算など、簡単な接客を伴う事務作業はこのビザの職務内容の範囲内と言えるでしょう。しかし、それ以上の作業に関しては、経営・管理業務ではないため、清掃やメンテナンス要員として別の従業員を雇用するか、もしくはこれらの業務を提携先の企業に外注し外部の人材の力を借りて行う必要があります。

まとめ

民泊事業を行うための会社設立と経営・管理ビザ等に関して解説してきました。ポイントとなるのは、

  • 場所:民泊事業が通年でできるのか?それとも180日間しか営業できないのか?
  • 建物:民泊営業ができる建物か? 所有者に民泊営業の許可を得られるか?
  • 事業計画:180日間しか営業できない場合、残りの期間に何をやって収益を確保するのか?
  • 経営者の仕事:清掃やベッドメイクは経営管理ビザの業務範囲外。別の人が担当しなければならない。
  • 従業員の確保:年間を通して外国人従業員を採用する場合、その職務内容とビザに要注意。

の5点になります。民泊事業だけでなく、他の事業内容と併せて、通年を通して収益を上げ健全な経営が出来る事業計画が立案できるか? また、各種法令の基準を満たした安全で衛生的な宿泊環境を準備できるか? この状態を維持するための清掃・メンテナンス要員を確保できるか? これら3点を事業計画段階で綿密に立てることが、会社設立・ビザの取得だけでなく、民泊を事業として成功させるための重要なポイントとなります。

行政書士あけやま事務所は、言葉や文化、そして国境の壁を乗り越えて、日本社会で起業し新たなチャレンジを行おうとする、外国人の方々を全力で応援し、サポートします。この記事に関するご質問、お問い合わせや、会社設立や在留資格「経営管理」に関しての条件面、手続き面に関するお問い合わせは、お電話か、ホームページの「無料相談フォーム」からお気軽にお問合せください。