ニセコビザ申請サポートセンター代表、申請取次行政書士の明山崇です。北海道で唯一の、観光業・宿泊業等のサービス業界と、ビザ申請に特化した行政書士として、主に北海道のサービス業界で働く、外国籍従業員の方の在留許可申請、いわゆる就労ビザの、新規取得や更新手続きのお手伝いをしています。

この記事では、新規に経営・管理ビザを取得する際の必要書類である「事業計画書」には、どのようなことを記載したらよいのか、に関して解説していきます。事業計画書作成にあたっての方向性や、記載した方が良いことをまとめていきます。ご自身で会社を起業して、経営・管理ビザへの変更や、新規にこのビザを申請しようとしている方は、ぜひ最後までお読みください。

経営・管理ビザと事業計画書に関して

出入国在留管理庁のホームページでは、経営管理ビザの新規取得、他のビザからの変更申請の場合には、「事業計画書」が必要書類として挙げられています。経営・管理ビザでも、既存の上場企業や比較的規模の大きな会社の会社の役員に就任する場合、つまり、企業カテゴリーが1や2の場合、事業計画書の提出は不要ですが、企業カテゴリーが3や4の場合は必須書類となっています。

事業計画書の方向性に関して

まず、この事業計画書はどのような方向性で作成したらよいのでしょうか?事業計画書は、ビジネスの様々な場面で作成されており、それぞれの目的によって、作成の意図や方向性が異なります。例えば、融資を受けるために銀行に提出する事業計画書では、事業の計画性と共に借入予定の金額が、きちんと返せるだけのお金の動きがあることを、丁寧に説明する必要があります。今回のテーマである、経営・管理ビザを申請する際の事業計画書の方向性(ポイント)は、「お金・場所・設備・人といった、事業に必要な準備が出来ていること。そして、これらを適切に活用して事業を開始し、収益があげられるかどうか?」を明確にすることだと言えます。

ビザの許可をする入管側の観点で考えると、せっかくビザを許可したのに、事業を開始しない(できない)、もしくは事業を開始しても収益があげられず、すぐに廃業してしまう、といったことは出来る限り避けたいと考えているのではないか…ということが想定されます。なので、事業計画書を作成するにあたっては、この点を念頭に置いたうえで、事業の準備が整っていること、また、事業を継続するための、設備・お金・人といった資源が十分にあり、継続・安定的に収益を上げられることを、どのように説明していくかを考えて、内容を構成していきます。

事業計画書の内容に関して

ここからは事業計画書の内容に関して解説していきます。この事業計画書には、様々な書き方がり、内容やその順番に関しても、それぞれの事業主によって異なります。今回は、私の事務所で事業計画書を作成する場合は、どのような項目を入れているかを参考に、記載した方が良い項目とその理由をお伝えしていきます。

①会社概要

まずは、設立した会社がどのような会社であるかをまとめます。具体的には、「法人名・法人番号・代表者名・本店所在地・ホームページURL・法人設立年月日・事業年度・資本金・従業員数・事業内容・沿革」等、表を使ってまとめることで、入管の審査官が、いつ・だれが作った・どのような会社で、どんなことを事業目的としているのか、会社の全体像が一目でわかるようにまとめます。ここでは、事務所の写真を貼付しています。具体的には、事務所建物の外観、入口(会社名の表札付き)、郵便受け(会社名の表札があり、郵便物が届くようになっている)、事務所の内部、執務スペース、応接スペースなど。事務所として確保した不動産が、きちんと事業が開始できるよう準備が出来ていることを写真で証明します。また、代表者の住居とは異なる独立した事務所であること、また、店舗やレストランとは独立して事務所を設置したことを証明するためにも、写真の貼付は必須だと言えます。更に、事務所の平面図(事務所の賃貸や売買の時に不動産屋さんにもらったもの)と、家具や備品を入れたレイアウト図面も貼付できるとよいでしょう。

②代表者経歴

代表者がどのような人物で、そして何より重要なのは、事業計画書に書かれている事業をきちんと行い、収益をあげられる能力があるかどうかを、学歴・職歴・保有資格を記載することで証明していきます。具体的には、名前・国籍・生年月日・学歴・職歴・資格や語学力等を記載します。これも、表を使った方がわかりやすいです。また、資本金500万円を大業者が用意した場合は、その準備方法に関してもここで記載しています。いつ、どのような方法で、お金を貯めたのか、また、本国から送金をした場合は、いつ・どの銀行経由で入金したのか、借りた場合は、いつ・誰から借りたのか(もらったのか)、また、金銭消費貸借契約(贈与契約)はあるのかどうかも記載します。代表者のスナップ写真も貼付します。これは、普通のスーツ・ネクタイ姿でも結構ですし、その仕事に携わっていることがわかるような服装で写真を撮っても構いません。

③事業内容

この会社が何をやって収益を上げていくかをまとめます。複数の事業を行う予定の場合は、それぞれの事業ごとにまとめていきます。ポイントは、誰に=サービスの対象者、何を=サービスや商品、どのように=販売・提供方法、いくらで=販売予定金額、どれくらい=販売・提供予定個数、が具体的に分かるようにまとめます。これによって、月/年間の売上金額とこれによる利益はどの程度あるのか、つまりこの事業で収益を上げ、ビジネスとして成立することを具体的に説明します。

④広告宣伝方法=集客方法

会社がサービスを提供したり、商品を販売するにああって、どのように集客をするか、広告宣伝をどのように行うかをまとめます。実は、この広告宣伝方法は非常に重要なポイントで、③の事業内容よりも大事だともいえます。なぜならば、いくら良い商品やスタッフをそろえたとしても、お客さんを集めることが出来なければ、売上を上げることは出来ず、事業として成立しないからです。具体的には、自社公式ホームページや、SNS(インスタグラム等)のページを制作し、そのURLや画面スクリーンショットを貼付する。広告を掲載した雑誌やポータルサイト名と、その広告のコピー等を貼付する。もしくは、日本国内や母国のエージェントと業務委託契約や販売代理契約を締結するといった方法があげられます。これらの契約先に関しては、具体的な名称・担当者連絡先と共に、契約書のコピーを添付することで信ぴょう性を高めます。

⑤今後の人員計画

開業当初は代表者1名の場合であっても、事業の成長とともにどのような人員体制で運営していくのか、創業段階での計画を記載します。特に、レストランやマッサージ店など、調理や施術などの現場労働が含まれる場合は、経営管理ビザを取得した代表者はその職務を行うことが出来ませんので、必ず誰か従業員を採用し、その者が実務を行うことを明記する必要があります。それが無い場合は、違法な資格外活動の予兆が見られると判断され、申請不許可の原因にもなります。なお、事業計画の段階では、雇用契約を結ぶ必要はなく、経営管理ビザの取得が完了し営業開始準備が整った段階で、従業員(アルバイト)の採用を行う、という記載でも構いません。

⑥今後の収支計画

各事業の売上と原価、経費はどの程度かかるのか、そして利益はどの程度見込まれるのかの試算表を作成します。これは、少なくとも事業開始から3年先までの分を作ります。それぞれ、月毎の売上と原価・経費を試算して表を作成します。適正な事業活動で適正な収益があげられる見込みがあるかどうか、資金がショートしないかどうか、に関しても注意しながらお金の流れの計画を立てていきます。売上や経費に関しては、なんとなくの金額を書くのではなく、その根拠も併せて記載します。例えば、月間100万円の利益を上げるために、5万円の商品を20人に売る、商品の仕入れ価格は1万円で、販売に必要な家賃や光熱費、人件費は…と細分化して具体的な試算をしながら表を作っていきます。この収支計画ですが、営業利益がマイナス(赤字)決算の場合、1年後のビザの更新が難しくなります。よって、起業時に収支計画を立案する場合には、必ず営業利益が+(黒字)になるように作成しましょう。初年度だから赤字でも…という考えだと、事業計画の再検討を求められることもあります。

まとめ

経営・管理ビザ申請時に提出する、事業計画書作成の方向性と記載事項に関して解説していきました。大前提として、「お金・場所・設備・人といった、事業に必要な準備が出来ていること。そして、これらを適切に活用して事業を開始し、収益があげられるかどうか?」を、文書で説明しその証拠として写真を添付すること。また、適正な売上と利益を上げ、企業として持続的な成長が可能なことを、3年分の収支計画を添付することで、数字の面から証明すること。これらのポイントを抑えることが出来れば、経営管理ビザの事業計画として十分な内容だと言えるでしょう。

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