ニセコビザ申請サポートセンター代表、申請取次行政書士の明山崇です。

北海道で唯一の、観光業・宿泊業等のサービス業界と、ビザ申請に特化した行政書士として、主に北海道のサービス業界で働く、外国籍従業員の方の在留許可申請、いわゆる就労ビザの、新規取得や更新手続きのお手伝いをしています。

私の事務所が国際的なスノーリゾートのニセコ町にあり、たくさんのスキー場が近隣にあるからか、新規に会社を設立してスキースクール事業を行いたい、という外国人のお客様から、お問合せをいただくことが多いです。ニセコ・倶知安エリアのスキー場では、外国人のお客様の数が非常に多く、コロナが明けた2022年のシーズンでは日本人よりも外国人のお客様の方が多いような感じがしました。このように国際色豊かなニセコエリアでは、外国人観光客向けのスキースクールやレンタルショップなどの数も多く、英語や中国語など他言語対応サービスも、他のスキー場に比べると充実していると言えます。このような環境下で、外国人観光客を対象としたスキースクールやレンタルショップなど関連事業は、今後さらに需要が増えることが想定されます。

この記事では、経営管理ビザを取得してスキー/スノーボードスクール事業を行う際に、気を付けた方が良いことやポイントとなることを解説していきます。ウインタースポーツ関連のビジネスに興味のある方は、ぜひ最後までお読みください。

スキー(スノーボード)スクールに関して

まずは、当たり前の話ですが、スキースクールは雪が無いとサービス提供(スキーの指導)ができません。毎年スキー場がオープンする12月から3月の間の、だいたい4か月から5カ月程度の営業になるはずです。つまり、スキースクールとして営業をして収益を上げられるのは、1年のうち半分以下の期間である4カ月程度になります。

経営・管理ビザ(在留資格)に関して

スキースクールを運営する会社の代表者(社長)は、経営・管理ビザを取得することとなります。このビザは、起業して会社を経営したり、企業の役員として働くために必要なものです。外国人の方が、スキースクール事業を目的とした会社を設立することは可能です。しかし、この会社で経営・管理ビザの取得を考えた場合、スキースクールの営業期間は前述の通り4か月程度なので、それ以外の期間、どのような事業活動を行い、収益を上げていくかも重要なポイントとなります。会社としての事業活動は12月から3月の4か月間のスキースクール事業のみで、それ以外の期間は一切事業活動を行わない、ということであれば、1年間の経営管理ビザを取得するのは難しいと思われます。グリーンシーズン中、日本にいる代表者には、経営・管理の仕事が発生しないので、「この期間は何をしているのですか?」と入管から指摘されることが想定されます。また、そもそもスキーシーズンの4か月間の稼働のみで、代表者や従業員の人件費、家賃等会社維持のための経費を捻出できるかも疑問です。別のコラムでも解説をしていますが、決算が赤字になってしまった会社で、経営・管理ビザの更新をするのは難しいことから、会社を維持することが出来る一定以上の収益を、通年で上げられるような事業活動を行い、事業計画・収支計画を行うことが求められます。

新規で会社を立ち上げてスキースクール事業を行う場合には、通年を通して継続的に行える事業や、グリーンシーズンに行う事業をあらかじめ決めておき、事業計画に盛り込んでおく必要があります。例えば、通年で行う事業として、飲食店やスポーツショップ、ホテルやペンションなどの宿泊施設を経営したり、通訳・翻訳業や輸出入・貿易事業をベースとして、ウインターシーズンにスキースクールを開校する、という事業展開だと、経営管理ビザの取得や従業員の雇用という観点でもメリットがありますし、定期的に売上を計上して事業を安定させるという点でも非常に良いと思われます。スキースクール以外の事業内容には、許認可や登録、届出が必要な事業もあります。例えば、レンタカーであれば「自家用自動車貸渡事業許可」、旅行代理店であれば「旅行業登録」、中古用品販売やレンタル事業であれば「古物商」等になります。これらの手続には、複雑な提出書類や審査時間が長くかかるものもあります。また、経営管理ビザの申請前に、予定される事業の許認可や登録、届出をすべて完了させる必要がありますので、会社設立から許認可の取得完了までの時間を計算したうえで、計画的に余裕をもって準備を進める必要があります。

ちなみに、経営・管理ビザは、経営と管理をすることが職務内容となっているため、このビザを取得したスキースクールの経営者が、自らゲレンデに出てスキーの指導をすることは出来ません。スキーの指導は当然のことながら、経営や管理業務ではなく、インストラクターとして別の従業員を雇用し、その人たちに指導を担当させることが求められます。

スキーインストラクターのビザ(在留資格)に関して

インストラクターを採用するにあたって、外国語を使ってスキーの指導ができる人を、就労ビザを取得して呼び寄せる場合、在留資格「特定活動50号スキーインストラクター」を取得する方が多いです。このビザで出来る活動(職務内容)は、名称の通りスキーの指導であり、他の仕事をすることは出来ません。似たようなウインタースポーツである、スノーボードの指導を行う場合には、在留資格「技能」のスポーツ指導者を取得する必要があります。また、このビザの在留期限は6か月間なので、通常、スキー場オープン前の11月中旬に来日して、シーズン終盤の4月中旬に帰国する方が多いです。

この、職務内容と在留期間の制約があることから、海外から呼び寄せるスキーインストラクターは、スキーシーズン中はスキーの指導を行い、グリーンシーズンは別の職務内容に就くということが出来ません。そもそも、在留期限が6か月間なので、スキーシーズン終了後、次のシーズンが始まるまで日本に滞在し続けることは難しく、一旦出国をしなければならない状況となっています。

グリーンシーズンの従業員とその職務内容に関して

グリーンシーズンの事業を行う従業員に関して、もし外国人の採用を検討する場合には、その担当する職務内容に合致したビザ(在留資格)を持った人を採用する必要があります。事務職や顧客対応を行うカスタマーサービス担当者は、スキーシーズン・グリーンシーズンの職務内容は大きく変わらないことが想定されるので、同じ人の通年雇用は比較的容易だと言えます。しかし、前述の通り、スキーインストラクターをグリーンシーズンに他職種に転用というのは、在留期限の問題や職務内容の制約から不可能になります。よって、スキーシーズンとは別の人材を新たに雇用すること、若しくは、スキーインストラクターの持つ「特定活動50号」ビザを、在留資格変更許可申請によって変更する必要があります。

例えば、スキーインストラクターの方がビジネス系の大学を卒業していて、グリーンシーズンに経理・会計担当者として勤務させる場合には、「技術・人文知識・国際業務」に変更申請をし、ビザの変更許可が出れば新たな職務内容で勤務をさせることが可能になります。もし、この従業員の方を、次のスキーシーズンに、再度インストラクターとして勤務させたい場合には、「技術・人文知識・国際業務」のビザのままではスキーの指導はできないため、再度「特定活動50号スキーインストラクター」ビザに変更をしなければならないのです。

スキースクール設置基準に関して

各スキー場やエリアによって、営利目的でスキーの指導を行う場合、スキー場の設置者・管理者に対しての届出や、スキースクールとしての登録が必要なところもあります。また、このような登録を行う場合には、スキースクールの要件が細かく定められていることもあります。例えば、GRAN HIRAFUやNISEKO HANAZONO, ANNUPURIなど、ニセコエリアのスキー場でスクール事業を行う場合には、「NISEKO UNITED」の登録スキースクールにならなければならない、といったことがあります。この登録条件としては、インストラクターは5名以上、日本語を話す人が常勤で在籍しなければならない、などといった、様々な細かな規定が定められています。このようなローカルルールは、地域によって状況や条件は大きく異なりますので、ご自身がスキースクールを始めたい地域や、レッスンを行うスキー場の状況を、会社設立段階で細かく調べて、その条件に合致した事業計画や人員体制を構築する必要があります。

まとめ

スキースクール運営事業を行うための会社設立と経営管理ビザ等に関して解説してきました。ポイントとなるのは、

 ①スキースクール事業以外、グリーンシーズンや通年でどのような事業を行ない収益を上げるのか?

 ②従業員をどのように確保し、その職務内容とビザをどうするのか?

 ③スキースクールが、それぞれの営業地域のルールや要件を満たしているかどうか?

の3点になります。スキースクール事業だけでなく、グリーンシーズンの事業内容と併せて、通年を通して収益を上げ健全な経営が出来る事業計画が立案できるか、また、安全で質の高い指導ができるインストラクターを必要な人数、毎年のスキーシーズンに継続して確保できるか、この2点を事業計画段階で綿密に立てることが、会社設立・ビザの取得だけでなく、事業として成功させるための重要なポイントとなります。

行政書士あけやま事務所は、言葉や文化、そして国境の壁を乗り越えて、日本社会で起業し新たなチャレンジを行おうとする、外国人の方々を全力で応援し、サポートします。この記事に関するご質問、お問い合わせや、会社設立や在留資格「経営管理」や、「特定活動50号 スキーインストラクター」に関しての条件面、手続き面に関するお問い合わせは、お電話か、ホームページの「無料相談フォーム」からお気軽にお問合せください。