ニセコビザ申請サポートセンター代表、申請取次行政書士の明山崇です。北海道で唯一の、ビザ申請と観光業に特化した行政書士として、主に、ニセコ・小樽・札幌市内を中心に北海道で生活する、外国籍の方々の在留許可申請、いわゆる就労ビザや配偶者ビザ等の、新規取得や更新手続きのお手伝いをしています。

最初は会社勤めのサラリーマンだったけど、日本でビジネスを立ち上げたいと考える方もたくさんいらっしゃり、外国人の方からの会社設立や、「経営・管理」の在留資格への変更に関するお問い合わせもたくさんいただいております。

外国人の方が起業をしてご自身でビジネスを始める場合、「経理・管理」の在留資格を取得します。この在留資格を申請する前に、会社を設立し、開業の準備を完了させ、ビジネスが開始できる状態にしておかなくてはならないのです。その設立する会社は、どんな会社でもよいというわけではなく、「経営・管理」の在留資格を取得するためには、様々な規則や制限があります。会社を設立するためには、最初にその所在地、つまり事務所を決めなくてはならないのですが、この事務所の選び方によって、「経営・管理」の在留資格の許可/不許可が分かれるといっても過言ではありません。今回は、どのような事務所を選んだらよいのか?事務所選びのポイントを解説していきます。

初めに;「経営・管理」の仕事内容は?

「経営・管理」の在留資格を持つ外国人の方は、「経営」と「管理」をすることが主な活動内容(職務内容)になっています。日本人が経営する企業や個人事業主の場合、社長が一人何役もこなしているかと思います。例えば、すし職人兼経営者として、オーナーがカウンターでお寿司を握って接客やお会計もするようなお店は珍しくないです。しかし、外国人の方が「経営・管理」の在留資格を取ってご自身でビジネスを始めた場合、そのようなことは可能なのでしょうか?例えば、中国人料理人の方が、中華料理店を経営し、ご自身も厨房に立って調理をする、ということは、「経営・管理」の在留資格では許されていません。経営者の職務内容は「経営」と「管理」であり、調理や接客といった店舗での現場労働は職務内容に含まれていません。これ以外にも、マッサージ店の施術士、美容室の美容師、ネイルサロンのネイリスト、など接客やサービスなども、原則としてこの在留資格ではできないことになっています。

そのために、「経営・管理」の在留資格の許可を得るためには、「経営」と「管理」の仕事をするための場所が、必ず必要となります。

事務所は必要?

「経営」と「管理」をする場所、それが事務所です。専用のデスクやパソコンなどが用意されていて、経営や管理に関する業務を行うスペースと機器がない限り、そのような仕事はできないと考えられています。よって、この在留資格の許可を得るためには、事務所を用意することは必須条件になります。

自宅兼事務所で大丈夫?

自宅兼事務所は原則として不可です。例外としては、「一戸建て」で「2階建て以上」あり、住居スペースと、事務所スペースが完全に分かれていれば、例外的に許可になります。それ以外、3LDKのマンションの1室を使うとか、平屋の一戸建ての半分を事務所に使う、という方法だと、会社は設立できたとしても、「経営・管理」の在留資格の要件は満たしていないため、許可になることはありません。特に、起業当初は出費を抑えるために、自宅兼事務所や、店舗兼事務所にしたいと思いがちですが、これだと、会社は設立できても「経営・管理」の在留資格を取得することはできません。よって、現在、マンションやアパート住まいの方は、どんなに広い物件であったとしても、自宅とは別に事務所を用意することは必須条件になります。

店舗兼事務所で大丈夫?

店舗内に専用の事務スペースがない場合は不可です。きちんと壁とドアがあり、事務所スペースが独立して確保されている必要があります。レストランの客席の一角に、ノートパソコンを持ち込んで事務作業をし、繁忙時間帯は撤去して客席にする、といった店舗を事務所として使用するのでは、「経営・管理」の在留資格の要件を満たすことはできず、許可を得るのは難しいです。

レンタルオフィスで大丈夫?

個室になっていれば独立した事務所とみなされ、「経営・管理」の在留資格の要件を満たすことができます。一方、専用スペースのないフリーデスクプランや、電話取次だけのバーチャルオフィスでは、要件を満たすこと経出来ず、許可を得るのは難しいです。

事務所を借りる際の契約書の名義は?

契約書の名義は、これから設立する法人名(会社名)で契約をすることが必須です。個人名では許可にはなりません。通常、法人名義で不動産を借りる場合、法人の印鑑証明書や登記簿の提示が求められます。しかし、在留資格「経営・管理」を取得するための会社設立の場合、まだ会社ができていないことから、印鑑証明書や登記簿を提示することができません。それでは、一体どのようにして法人名義で契約をすることができるのでしょうか?一般的に行われる方法としては、契約の際には個人名で契約を行なうが、会社が設立できた段階で、必要書類を提出して法人名義に変更する、ということを、不動産屋さんと所有者の方にあらかじめ伝えておき、書面などで了承を取っておく。そして、会社設立後、速やかに名義を変更する、という方法をとっているようです。

物件の使用目的は?

事務所や店舗として使用するために物件を借りる場合、その契約書に記載される使用目的は、「事務所」や「店舗」であることは必須です。「住宅」では「経営・管理」の在留資格の許可を得ることができません。住居用として借りた物件でビジネスをやるということに関して、出入国在留管理庁の審査官は、「この場所で、本当にビジネスができるのか?」といった嫌疑を持ち、在留資格の申請を不許可にされてしまいます。契約書を締結する際には、必ず物件の使用目的を確認してください。

自己所有物件の場合は?

既に不動産を持っていて、これを使ってビジネスを始めようとする方もいます。その場合、経営者個人と会社法人は別人格と考えられますので、会社の経営者所有物件であったとしても、経営している会社が勝手に使うことはできません。書類上の手続きにはなりますが、経営者個人が会社法人に物件を貸す、という契約書作成して締結すれば、自己物件を会社の事業に使用することが可能になります。

まとめ

事業を開始するための最初のステップとなる、事務所の選び方に関してお伝えしてきました。ポイントは、①独立した事務所を確保する ②店舗兼事務所、自宅兼事務所は不可、③契約名義は法人、④利用目的は「店舗」や「事務所」等、といった4点を確実に抑えてください。特に、起業当初は出費を抑えるために、自宅兼事務所や、店舗兼事務所にしたいと思いがちですが、これだと、会社は設立できても「経営・管理」の在留資格を取得することはできません。これ以外にも、クリアしなければならない細かい要件がたくさんあることから、手続きに不安のある方は、会社設立の段階から行政書士事務所に依頼をして、「経営・管理」の在留資格取得を見据えた、包括的な手続きを依頼することをお勧めします。

ニセコビザ申請サポートセンターは、言葉や文化、そして国境の壁を乗り越えて、日本社会で起業し新たなチャレンジを行おうとする、外国人の方々を全力で応援し、サポートします。この記事に関するご質問、お問い合わせや、会社設立や在留資格「経営管理」に関しての条件面、手続き面に関するお問い合わせは、お電話か、ホームページの「無料相談フォーム」からお気軽にお問合せください。