ニセコビザ申請サポートセンター代表、申請取次行政書士の明山崇です。北海道で唯一の、ビザ申請と観光業に特化した行政書士として、主に、ニセコ・小樽・札幌市内を中心に北海道で生活する、外国籍の方々の在留許可申請、いわゆる就労ビザや配偶者ビザ等の、新規取得や更新手続きのお手伝いをしています。

外国人の方の中にも、サラリーマンとして会社勤めをするだけでなく、独立起業をして自分のビジネスを立ち上げる方もいらっしゃいます。そのような場合には、「技術・人文知識・国際業務」や「技能」等、会社勤めを前提とした在留資格から、経営者として会社を経営することができる在留資格に変更する必要があります。外国人の方がご自身で会社を経営したり、事業を行うことを目的とした在留資格は、「経営・管理」と「高度専門職(ハ)」の2つがあります。今回は、これらはどのように異なるのかを、出入国在留管理庁のホームページを参照にしながら、比較・解説していきます。

はじめに;在留資格「経営・管理」と「高度専門職(ハ)」

在留資格「経営・管理」と「高度専門職(ハ)」、どちらも事業の経営を行ったり、管理をすることを目的とした在留資格です。「高度専門職(ハ)」の方が、従事できる活動内容が広いというメリットはあり、また、細かい違いなどはありますが、原則として、会社を経営し事業活動を行うという目的においてはほぼ同じだと考えてもよいでしょう。

活動内容

それぞれの在留資格の法令で定められている活動内容は、以下の通りとなります。

●経営・管理:本邦において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活

●高度専門職(ハ):法務大臣が指定する本邦の公私の機関において貿易その他の事業の経営を行い若しくは当該事業の管理に従事する活動又は当該活動と併せて当該活動と関連する事業を自ら経営する活動

法令に記載されている活動内容も、太字の部分が重複しており、ほぼ同じであることがわかります。「高度専門職(ハ)」に関しては、「経営・管理」の在留資格に加えて、「関連する事業を自ら経営する活動」ということが活動の内容に追加されている分、従事できる活動範囲が広くなります。

申請人の要件

学歴

どちらの在留資格でも、4年制大学卒業以上などの学歴要件や、高等教育機関で経営やビジネス           など、関連した科目を専攻していなければならないといった規定はありません。           ただし、「高度専門職ポイント計算表」を使ったポイント計算上、学歴が高くなれば獲得ポイントが高くなるため、高度専門職と認定されるためには、学歴が高い方が有利と言えます。

職務経験

どちらの在留資格でも、4年制大学卒業以上などの会社経営者としての職務経験年数が何年以上なければならない、といった規定はありません。ただし、「高度専門職ポイント計算表」を使ったポイント計算上、職務経験年数が長くなれば獲得ポイントが高くなるため、高度専門職と認定されるためには、経験年数が長い方が有利と言えます。

年齢

どちらの在留資格も、年齢制限はありません。

ただし、「経営・管理」においては、10台・20代前半と若い方や、60歳以上の高齢者に関しては、事業を実現する信憑性が低くなるため、審査上難しい場合が多く、不許可になるリスクが高くなります。

一方、「高度専門職(ハ)」では、高度専門職ポイント計算表を使った計算上、年齢が若いほど獲得ポイントが高くなり、40歳を超えると年齢項目で加点されなくなることから、高度専門職の許可を取るためには、若い方が有利だといえます。

年収

まず、「高度専門職(ハ)」の申請要件として、年収300万円以上が必要です。もちろん、高度専門職ポイント計算表を使った計算上、70点以上を獲得すると高度専門職の申請要件を満たすのですが、年収が300万円以上ない場合は、点数がいくら高かったとしても要件を満たすことができず不許可になってしまいます。

一方、「経営・管理」の在留資格では、年収に関しては具体的な数値で基準が示されていません。しかし、実務上では、月収18~20万以上、年収で300万円程度ないと、生計が成り立っているとは言えません。収入がこれ以下の場合には、ビジネスを健全に経営できている状態とは言えず、事業継続の信ぴょう性が低いことから、「経営・管理」の在留資格は不許可になる可能性が高いです。

事業開始年度に関しては、申請人である経営者の方の収入を300万円程度払ったとしても、収支が黒字になるような事業計画の立案が必要となります。よって、「経営・管理」では、具体的な金額の基準は示されていませんが、実質的には300万円程度の年収を得ることが、この在留資格の許可を得るための条件であるといえるでしょう。

経営する会社に関して

「経営・管理」、そして「高度専門職(ハ)」のどちらの場合でも、経営する会社の事業規模としては、資本金500万円以上の投資額、もしくは常勤で2人以上の従業員を雇用して行うレベルの事業規模であることが、これらの経営者としての在留資格を取得する際に求められます。

「高度専門職(ハ)」のメリット

ここまで、「経営・管理」と「高度専門職(ハ)」の2つの在留資格の違いを見てきましたが、活動内容や申請要件に関しては、ほとんど差がないことがお分かりいただけたかと思います。しかし、「高度専門職(ハ)」が取得できる、若年層の高学歴・高年収・実務経験豊富な外国人の方に対しては、国は様々な特典を付与しています。ここが、「経営・管理」との大きな違いとなっています。具体的なメリットとしては、以下の7項目があります。

1. 複合的な在留活動の許容

→許可される活動の範囲が、通常の在留資格よりも広範になります。

2. 在留期間「5年」の付与

→一般的な在留資格では、通常初回申請時の有効期間は1年なのですが、初回申請から5年間の有効期間が与えられます。

3. 在留歴に係る永住許可要件の緩和

→「経営・管理」を持つ一般の方は10年以上引き続き日本に居住していることが求められますが、「高度専門職」の在留資格を持つ方は、ポイントによって1年以上、もしくは3年以上の居住で、在留資格「永住」の申請が可能になります。

4. 配偶者の就労

→特定活動33号の在留資格を取得することで、配偶者の方の学歴や職務経験を問わず「研究」、「教育」、「技術・人文知識・国際業務」、「興行(井淵)」の在留資格で定められている就労活動を行う音ができます。

5.一定の条件の下で親の帯同

→一定の条件を満たすことで、ほかの在留資格では認められていない、親を呼び寄せることが可能です。

6. 一定の条件の下での家事使用人の帯同

→一定の条件を満たせば、お手伝いさんを本国から呼び寄せることができます。これも、外交官や領事など一部の特別な在留資格を持つ人にしか認められていません。

7. 入国・在留手続の優先処理

→手続きの種類にもよりますが、5日~10日程度で審査が終了し、許可/不許可の結果が通知されます。

まとめ

日本で起業し、会社経営を行うための在留資格である「経営・管理」と「高度専門職(ハ)」の違いを見てきました。「高度専門職(ハ)」に関しては、最低年収300万円以上という要件があることから、会社設立当初からこの在留資格の申請要件をクリアするのは難しいかもしれません。まずは、「経営・管理」の在留資格で事業をスタートし、ある程度売り上げが上がり、年収要件をクリアした時点で、高度専門職ポイント計算表のポイントが70点以上あるかどうかを確認し、早めに「高度専門職(ハ)」に変更申請することがお勧めです。実務経験年数や年齢とも兼ね合いもありますが、年齢が若い方が高いポイントが付与され、また、年齢によって年収のポイントも異なることから、なるべく若い時の方が、高度専門職への変更は有利だといえます。

ニセコビザ申請サポートセンターは、言葉や文化、そして国境の壁を乗り越えて、日本社会で起業し新たなチャレンジを行おうとする、外国人の方々を全力で応援し、サポートします。この記事に関するご質問、お問い合わせや、会社設立や在留資格「経営管理」・「高度専門職(ハ)」に関しての条件面、手続き面に関するお問い合わせは、お電話か、ホームページの「無料相談フォーム」からお気軽にお問合せください。