ニセコビザ申請サポートセンター代表、申請取次行政書士の明山崇です。
北海道で唯一の、ビザ申請と観光業に特化した行政書士として、主に、ニセコ・小樽・札幌市内を中心に北海道で生活する、外国籍の方々の在留許可申請、いわゆる就労ビザや配偶者ビザ等の、新規取得や更新手続きのお手伝いをしています。
今回は、「特定技能」ビザを持つ外国人の方を雇う場合、雇用する企業にはどのようなことが求められているか?について解説をしていきます。「特定技能外国人受入れに関する運用要領」では、特定技能の外国人の方を雇い入れる企業に関して、「特定技能所属機関は、特定技能雇用契約の適正な履行が確保されるものとして特定技能基準省令で定める基準に適合するものでなければなりません」と規定しています。具体的に、16の項目に関して、細かい基準を設けています。今回はその中の2番目に記載されている、「非自発的離職者を発生していないこと」に関して、具体的に解説をしていきます。
はじめに;なぜ非自発的離職者を発生させてはいけないのか?
原則として、特定技能外国人に従事させる業務と同種の業務についていた労働者を、非自発的に離職させている企業は、特定技能外国人を新たに雇用することはできません。
その理由としては、そもそも、特定技能外国人の制度は、人手不足に対応するための人材確保という趣旨があります。よって、すでに雇用している国内の労働者(日本人・外国人を問わず)を解雇など、非自発的に離職させて、その補填という形で特定技能外国人を受け入れるということは、そもそもの制度の趣旨に合致しないものとなります。よって、特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を、非自発的に離職者を発生させていないということは、特定技能外国人を雇用する際の大前提となります。
非自発的離職者の対象者は?
日本人、外国人を問わず、雇用契約を締結してフルタイムで雇用されていた人が対象になります。外国人の場合は、就労資格を取得して中長期に雇用している人や、特別永住者、日本人の配偶者等の在留資格を持つ人も含まれます。
非自発的離職者に該当するケースは?
特定技能外国人と同種の業務に従事する従業員を
①人員整理を行うための希望退職の募集や退職勧奨を行った場合
②賃金低下や遅配、過度な時間外労働や採用条件との相違等、労働条件に係る重大な問題があったと労働者が判断した場合
③故意の排斥や嫌がらせなど、就業環境に係る重大な問題があった場合
④特定技能外国人の責めに帰すべき理由によらない有期労働契約の終了
といったことが該当します。これらのケースに該当することが、1名でも発生させている場合は、特定技能外国人を受け入れる基準に適合しないことになります。
特定技能外国人採用に影響する非自発的離職者発生の時期は?
特定技能雇用契約の締結の日の前1年以内、そして、特定技能雇用契約を締結した後も、非自発的離職者を発生させ発生させていないことが求められます。これは、特定技能外国人制度が、企業の人手不足を解消するためのせいどであるということが、大前提の理由となっています。
非自発的離職者の対象外となる場合は?
特定技能外国人雇用に影響を与える、非自発的離職者に該当しないのは次のような場合になります。
①特定技能外国人が従事する以外の業務に従事していた従業員を離職させた場合
※同じ企業であっても、特定技能外国人とは別の業務や部署の従業員の場合は対象外となります。
②定年などによって退職したもの
③自己の責めに帰すべき重大な理由で解雇されたもの
④有期労働契約の終了時に更新せずに終了した場合等
⑤パートタイムやアルバイト従業員の場合
⑥希望退職や退職勧奨の理由が、天候不順や自然災害の発生、または、新型コロナウィルス感染症等の影響で経営上の努力を尽くしても雇用を維持するのが困難な場合
あくまでもフルタイムの正社員が対象になっていること、そして、コロナや自然災害が理由の場合、経営上の努力を尽くしたことが証明できれば、対象外となる場合もあります。
まとめ
非自発的離職者を発生させた企業が、特定技能外国人を新たに雇用することができない、ということに関して解説をしてきました。コロナ禍、また円安など企業経営環境が厳しい中で、人手不足の企業にとっては、1人でも非自発的離職者を発生させたら特定技能外国人の採用ができない、というのはカナリ厳しいと思われるかもしれません。しかし、この特定技能制度ができたのは、慢性的な人手不足の状態が続いている12の業種を特別に限定して、その解消のために外国人材を登用するという目的で作られています。この趣旨に合わせて、制度を適正に運用することは、既存の日本人従業員の雇用と労働環境を守るためにも非常に重要なことだと考えられます。
現在、アフターコロナに向けて経済が動き出している中で、新たな採用計画に基づき事業活動を本格的に再開する企業も増えてきていると思われます。その中での人手不足を解消する手段として、特定技能外国人の採用は有効な手段の一つとなるでしょう。その場合に、コロナ禍での事業縮小や人員整理をした企業に関しては、「経営上の努力を尽くしても雇用を維持するのが困難な場合」であることを証明できれば、特定技能外国人の雇用ができるケースもあります。その詳細や立証・説明資料に関しては、ビザや在留資格を専門に扱う申請取次行政書士に、お気軽にご相談されることをお勧めいたします。
ニセコビザ申請サポートセンターは、言葉や文化、そして国境の壁を乗り越えて、日本社会の一員として働こうとしている、外国人の方々を全力で応援し、サポートします。この記事に関するご質問、お問い合わせや、特定技能外国人の方の受け入れに関しての条件面、手続き面に関するお問い合わせは、お電話か、ホームページの「無料相談フォーム」からお気軽にお問合せください。