ニセコビザ申請サポートセンター代表、申請取次行政書士の明山崇です。北海道で唯一の、ビザ申請と観光業に特化した行政書士として、主に、ニセコ・小樽・札幌市内を中心に北海道で生活する、外国籍の方々の在留許可申請、いわゆる就労ビザや配偶者ビザ等の、新規取得や更新手続きのお手伝いをしています。

日本で仕事をする外国人の方で、滞在期間が長くなるにつれて結婚をして子供が生まれるなど、生活環境の変化に伴い、このまま日本で生活したいと感じる方もたくさんいらっしゃいます。外国籍の方が、外国籍のままで在留資格の更新など煩雑な手続きをせずに、日本に居住する方法は、「永住」の在留資格を取得するという方法があります。「永住」の在留資格を取得するために、まずは①で解説をした「住居要件」をクリアしている人は、次に「素行要件」を確認する必要があります。今回は、「素行要件」について解説していきます。

「永住」の在留資格申請に必要な素行要件

素行要件とは?

出入国在留管理庁のホームページには、「素行が善良であること」という記載があります。これだけですと、漠然として非常に抽象的で、なにがどうだったら善良なのか、全くわからないと思います。様々な前例から具体的に説明をすると、

  1. 日本の法令違反を行い、懲役・禁固・罰金刑に処されたことがないこと
  2. 日常生活上・社会生活上、違法行為、違反行為や風紀を乱す行為を繰り返し行っていないこと
  3. 日本人としての公的義務(納税・年金の支払い)をきちんと果たしていること

といった3点がクリアできていれば「素行が善良である」と判断されるようです。在留資格「永住」では、日本国籍を取得する帰化申請とほとんど似たような観点で「素行要件」を満たしていると判断されています。では、一つ一つ具体的に見ていきましょう。

日本の法令違反を行い、懲役・禁固・罰金刑に処されたことがないこと

この項目に関しては読んだ通りです。法を犯して罰せられた人は、永住の在留資格を与えるのに相応しくないということです。ただし、服役や執行猶予期間終了後、ある一定期間が経過すれば、許可が得られる可能性があります。

ただし、懲役や禁固刑に処された場合には、刑務所から出所してから10年が経過することが、一つの目安になっています。

日常生活上・社会生活上、違法行為、違反行為や風紀を乱す行為を繰り返し行っていないこと

これに関しては②よりも軽微な違反行為などが該当します。一番身近なのは、自動車や自転車に乗っていての交通違反です。交通違反の中でも、罰金が伴わない「白切符」や、反則点数6点未満の「青切符」のような、比較的軽微な違反が該当します。これらは、5年間で5回以内、もしくは直近2年で3回以内であれば「繰り返し行っていない」と判断され、永住申請に影響を与えないようです。これを超える交通違反があると、申請は不許可になるケースが多いようです。交通違反の記録は、申請の際に「運転記録証明書」を提出することで証明をするのですが、この記録は直近の5年分のみが記載されます。よって、過去の違反が多い方は、違反記録の記載がなくなるまで、最大5年間、安全運転を続けながら待ったあとで申請をすると良いでしょう。

日本人としての公的義務(納税・年金の支払い)をきちんと果たしていること

ここでチェックされるのは、税金をきちんと支払っているか?と、年金をきちんと支払っているのか?の2点です。ひとつずつ見ていきましょう。

税金をきちんと支払っているか?

会社勤めの方は、永住申請の際に「住民税の課税証明書」「住民税の納税証明書」「源泉徴収票」を提出します。所得税は会社が給料から天引きをして支払いを行いますが、住民税も同じように給料から天引きをして支払われていれば(特別徴収)、まず問題になることはありません。

一方、個人事業主や会社を経営している方は、個人の住民税、所得税だけでなく、会社の法人税や消費税、事業税などの納税証明書を提出することで、個人・法人のどちらも納税の義務を果たしていることを証明します。提出時には全て支払いが完了しており、納税証明書上に未納額がない(期限未到来分を除く)ことが必要です。

年金をきちんと支払っているか?

会社勤めの方で、毎月のお給料から所得税、住民税とともに、厚生年金保険料が天引きされている場合には、特に問題はありません。

一方、会社経営者の方は、厚生年金保険に加入することになっているのですが、経営者本人だけでなく、社員の方も、厚生年金保険に加入させることは勿論、その保険料もきちんと支払われていなければならないのです。また、個人事業主の方は、厚生年金ではなく国民年金の保険料を支払う必要があります。

税金や年金の支払いに関して:「帰化申請」と異なる重要点

「永住」の在留資格を申請する場合には、税金や年金は「納付期限を守って支払われているか」も許可の要件になっています。納付期限を1日でも過ぎてしまった場合、永住申請は不許可になります。ここが帰化申請とは異なるところです。帰化申請は、納付期限を過ぎていても支払いがされていればよかったのですが、永住申請では、ただ支払うだけではなく、更に納付期限のといった定められた規則を守れる人物か、ということも審査されるということになります。

税金や年金の未納がある場合はどうしたらよいか?

税金や年金に未納や納付期限後の支払いがある場合、永住申請は不許可になってしまうのですが、これを回避するにはどうしたらよいでしょうか?

もちろん、国民年金に加入していなかった人は、すぐに年金事務所で加入手続きをして、支払いを開始してください。また、過去の履歴を訂正することはできないので、現時点から将来にわたって、未納や納付期限後の支払いにならないよう、きちんと期限内に支払いを行い、実績を積み上げてください。申請直近の2年以上、納付期限を守って支払いを行っていれば、永住申請が許可になる可能性があります。一度でも納付期限を過ぎてしまうと、その時点でリセットされ、また、ゼロから実績を積み上げなくてはならなくなります。支払い方法に関しては、銀行口座からの自動引き落としを利用するのも、納付期限忘れを防ぐために有効な策になると思われます。

まとめ

在留資格「永住」の申請の際には、「素行要件」の中で、法律違反や交通違反だけでなく、税金や年金の支払いが厳しく審査されます。ただ、支払っていればよいというだけでなく、納付期限内に支払いを完了していなければならず、1回でも納付期限後の支払いがあると、それがたとえうっかりミスであったとしても、申請が不許可になってしまいます。これが、日本国籍取得の「帰化申請」と大きく異なり注意が必要な点となります。

行政書士あけやま事務所は、言葉や文化、そして国境の壁を乗り越えて、日本社会の一員として生きていこうとする、外国人の方々を全力で応援し、サポートします。この記事に関するご質問、お問い合わせや、在留資格「永住」の取得に関しての条件面、手続き面に関するお問い合わせは、お電話か、ホームページの「無料相談フォーム」からお気軽にお問合せください。