ニセコビザ申請サポートセンター代表、申請取次行政書士の明山崇です。北海道で唯一の、ビザ申請と観光業に特化した行政書士として、主に、ニセコ・小樽・札幌市内を中心に北海道で生活する、外国籍の方々の在留許可申請、いわゆる就労ビザや配偶者ビザ等の、新規取得や更新手続きのお手伝いをしています。

日本で仕事をする外国人の方で、滞在期間が長くなるにつれて結婚をして子供が生まれるなど、生活環境の変化に伴い、このまま日本で生活したいと感じる方もたくさんいらっしゃいます。外国籍の方が、外国籍のままで在留資格の更新など煩雑な手続きをせずに、日本に居住する方法は、「永住」の在留資格を取得するという方法があります。永住の在留資格を取得するために、申請人や家族の収入基準である、「生計要件」を満たしている必要があることはお伝えしました。この生計基準は、家族構成や世帯人数によっても異なってきます。今回は、「生計要件」に必要な具体的な年収に関して、家族構成などに応じて目安となる額を解説をしていきます。

「永住」申請に必要な年収の基本的な考え方

まず、「永住」の申請要件を満たす生計の要件としては、「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」という記載が、出入国在留管理庁のホームページに記載されています。これだけですと非常に抽象的で、いったいいくら必要なのかが全く分からないのですが、過去の事例などで目安となる金額としての指針は以下の通りとなります。

   申請人の年収=300万円以上、扶養家族1人追加につき40万円程度の加算が必要。

この金額が生計要件を満たしているかどうかを判断する、具体的な目安となっています。なお、この扶養家族一人当たりの金額は諸説あり、他の行政書士事務所等のホームページには、30万円~70万円程度と記載されているところもあります。さらにこの40万円という金額は、日本で同居していることを前提としており、海外に住んでいる親族を扶養している場合、金額はもう少し高くなります。

具体的には、

・独身の申請人が1人で永住を申請する場合、年収が300万円以上あれば要件を満たしているといえます。

・申請人と外国籍の配偶者と子供2人で永住申請をする場合、申請人300万円+(40万円×3人)の420万円以上あれば、要件を満たしているといえます。

応用編①;日本人と結婚している外国人の方が永住申請する場合

前述の申請人300万円+扶養家族1人につき40万円追加、というのは原則論であり、夫婦の資格や在留資格などにより、必要とされる年収額が異なってきます。以下にいくつかの具体例を見ながら確認していきましょう。なお、例に挙げた夫婦に関しては、子供がいないという想定で試算をしていきます。

日本人側の年収が340万円以上ある場合

外国人配偶者の年収額や在留資格に係わらす、生計要件を満たしているといえます。

例えば、外国人配偶者が主婦で年収が0円であったとしても、また、アルバイトで年収80万円だったとしても、日本人世帯主の年収が目安となる金額をクリアしているため、永住申請は許可になる可能性が高いです。

日本人側の年収が280万円だった場合

A)外国人配偶者が主婦で、年収が0円の場合(在留資格は「日本人の配偶者等」)

世帯収入が280万円と、夫婦世帯の目安となる金額を下回っており、永住申請は不許可になる可能性があります。

B)外国人配偶者がパート従業員で、年収が100万円の場合(在留資格は「日本人の配偶者等」)

2人の年収を合算すると380万円となり、目安とされる金額をクリアしているために、許可になる可能性が高い。

C)外国人配偶者が正社員で、年収が300万円の場合(在留資格は「技術・人文知識・国際業務」)

この場合も2人の年収を合算でき、合計580万円となるため、目安となる金額をクリアしており、許可になる可能性が高い。

このように、日本人の配偶者がいる外国人の方の場合は、夫婦の年収を合算することが出来ることから、2人の合計で目安とされている年収額をクリアできれば、永住申請が許可になる可能性は高くなります。

応用編②;外国人夫婦が永住申請する場合

外国人夫婦が永住申請を行う場合、世帯主側の年収や、配偶者の方の在留資格によって、年収を合算することが可能な場合、不可能な場合があります。この場合は、世帯主側の外国人の方は、就労系在留資格をもって正社員として働いていると想定して試算します。

外国人世帯主の年収が340万円以上ある場合

配偶者の年収額や在留資格に係わらす、生計要件を満たしているといえます。例えば、外国人配偶者が主婦で年収が0円であったとしても、また、アルバイトで年収80万円だったとしても、世帯主の年収が340万円と目安となる金額をクリアしているため、永住申請は許可になる可能性が高いです。

外国人世帯主の年収が280万円だった場合

A)配偶者が主婦で、年収が0円の場合(在留資格は「家族滞在」)

世帯収入が280万円と、夫婦世帯の目安となる年収340万円を下回っており、永住申請は不許可になる可能性が高いです。

B)外国人配偶者がパート従業員で、年収が100万円の場合(在留資格は「家族滞在」)

2人の年収を合算すると380万円となり、目安とされる金額をクリアしています。しかし、「家族滞在」の在留資格は就労が保証されているものではないため、生計要件の年収を計算する際に、「家族滞在」の方の年収を合算することはできません。よって、この家庭の場合は、年収が280万円ということとなり、夫婦世帯の目安となる年収額を下回っており、永住申請は不許可になる可能性が高いです。

C)外国人配偶者が正社員で、年収が280万円の場合(在留資格は「技術・人文知識・国際業務」)

配偶者が就労系の在留資格を持って働いている場合には、配偶者の収入も合算することが可能です。よって、この家族の年収は合計560万円となるため、指針となる金額をクリアしており、許可になる可能性が高いです。

このように、夫婦の所得が合算できるのは、双方とも就労系の在留資格を持って働いている場合となり、家族滞在のアルバイト収入は、生計要件を判断する年収額には合算できませんので注意が必要です。

生計要件はいつ満たしていれば良いのか?

永住申請に必要な年収の目安に関して、いくつかの例を見ながら解説をしていきましたが、この基本となる「300万円+40万円×扶養人数」という目安の額は、どの時点でクリアしていたら良いのでしょうか?

一般の外国人の方の場合

永住申請の住居要件が、「引き続き10年以上日本に居住し、直近5年以上就労系在留資格を取得」、に該当する方に関しては、直近5年間全ての年で、生計要件をクリアし続ける必要があります。この基準を満たしているかどうかは、「住民税の課税(納税)証明書」を提出することで証明をします。万が一、途中で1年でも300万円を下回る年があった場合は、そこで連続カウントが一回中断してしまい、翌年から再度新たにカウントをして、5年間連続するまでは要件を満たすことができないとされています。

住居期間の特例が適用される場合

例えば、「高度専門職」の方は3年か1年、日本人と結婚した方は1年から3年といったように、在留資格によっては必要とされる住居要件が短縮されている場合があります。その場合は、必要とされている住居期間分の「住民税の課税(納税)証明書」を提出することによって、生計要件をクリアし続けていることを証明します。よって、申請直近の1年から3年間、連続して目安とされる年収額をクリアしていないと、生計要件を満たしていないこととなります。

まとめ

在留資格「永住」申請に必要とされる生計要件には、「300万円+扶養家族×40万円」という基本となる目安金額がありますが、同居家族や扶養人数、扶養家族の在留資格によって、計算方法が変わってきます。また、申請直前の1年間だけでなく、長い場合で5年間、連続してこの金額をクリアし続けないと生計要件を満たさないため、要件としてはかなり難しい基準が要求されています。生計要件を満たす年収や居住期間に関しては、個人の状況によって算出方法が異なりますので、ご自身の状況を正確に把握されたい場合には、在留資格やビザ申請を専門に扱う申請取次行政書士に相談されることをお勧めいたします。

行政書士あけやま事務所は、言葉や文化、そして国境の壁を乗り越えて、日本社会の一員として生きていこうとする、外国人の方々を全力で応援し、サポートします。この記事に関するご質問、お問い合わせや、在留資格「永住」の取得に関しての条件面、手続き面に関するお問い合わせは、お電話か、ホームページの「無料相談フォーム」からお気軽にお問合せください。