ニセコビザ申請サポートセンター代表、申請取次行政書士の明山崇です。北海道で唯一の、ビザ申請と観光業に特化した行政書士として、主に、ニセコ・小樽・札幌市内を中心に北海道で生活する、外国籍の方々の在留許可申請、いわゆる就労ビザや配偶者ビザ等の、新規取得や更新手続きのお手伝いをしています。
日本で仕事をする外国人の方で、滞在期間が長くなるにつれて結婚をして子供が生まれるなど、生活環境の変化に伴い、このまま日本で生活したいと感じる方もたくさんいらっしゃいます。外国籍の方が、外国籍のままで在留資格の更新など煩雑な手続きをせずに、日本に居住する方法は、「永住」の在留資格を取得するという方法があります。永住の在留資格を取得するために、別の記事で解説した①「住居要件」、②「素行要件」をクリアしている人は、次に「生計要件」を確認する必要があります。今回は、「生計要件」について解説していきます。
「永住」の在留資格申請に必要な生計要件
生計要件とは?
出入国在留管理庁のホームページには、「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」という記載があります。これも、他の要件同様に、非常に抽象的でわかりづらい記載になっています。永住の在留資格が許可されると、就労先や職務内容の制限が一切なくなり、法律の範囲内で自由に仕事や経済活動を行うことが出来るようになるのですが、申請前からも申請者自身が自立して経済活動を行い、安定した生活が行える収入を得られているかどうかが審査のポイントになっています。年収が低く生活が立ちいかなくなり、生活保護を受ける状態になってしまいそうな人は、「永住」の在留資格の趣旨に反するところとなるため、許可を得ることは難しくなります。
永住申請に必要とされる年収は?
会社勤めでお給料をもらっている人は年収300万円以上かどうかが目安となっています。個人事業主や会社を経営している方は、ご自身の役員報酬額が年間300万円以上であることが重要です。日本国籍を取得する帰化申請では、具体的な年収額の目安はなく、ご自身と家族の生活が維持できるだけの収入が定期的に安定してあればよいということだったのに対して、永住申請においては具体的な数値の指標として300万円が一つの目安になっています。
この年収300万円以上という目安は、「住居要件」の中の、就労系在留資格で滞在することが必要とされている「直近5年間」、全ての期間で連続して年収300万円以上を満たしていなければならないのです。もし、途中で1年でも300万円を下回る年があった場合は、そこで連続カウントが一回中断して、再度新たに5年間連続するまでは要件を満たすことができないということになります。
「経営・管理」の在留資格で会社を経営されている人が「永住」の在留資格に変更をする場合には、申請者本人の役員報酬だけでなく、経営する会社の財務状況も審査の対象となります。申請をする直近の5年間は、基本的に黒字決算が続いている必要があり、赤字決算になったり、債務超過の年度があったりする場合には、そこで連続カウントが一回中断して、再度新たに5年間連続するまでは、申請をしても許可になる可能性は低くなります。
なお、生計要件に関しては、申請者本人が就労系在留資格(「技術・人文知識・国際業務」や「技能」)であったり、「経営・管理」の在留資格で会社を経営している場合に適用されます。申請者が、「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」からの「永住」への変更申請の場合にも、もちろん申請者自身の年収が300万円以上あるに越したことはないです。しかし、世帯主(扶養してくれている日本人や永住者)が、年収300万円以上ある場合に関しては、申請が許可されることもあります。
扶養家族がいる場合には?
前述の年収300万円以上という目安は、あくまでも申請人1人の場合で、扶養家族がいることを想定していません。例えば、配偶者や子供等、扶養家族が日本にいる場合には、1人追加につき40万円の年収追加が必要になります。よって、申請者が、奥様と子供2人の4人家族の場合、300万円+(40万円×3人)=420万円以上の年収が必要であり、更にこれが申請の直近5年間、継続していなければならないのです。
転職は影響するのか?
終身雇用制度が根強く残っている日本社会で、どうしても転職は不安定なイメージを審査官に与えかねないです。
各種提出書類から、転職後の企業カテゴリーが上がったり、年収が大幅に増えるなど、キャリアアップしたことが容易にわかる場合、審査に大きな影響を与えることはありません。しかし、年収が変わらなかったり、ましてや減ってしまうような場合には、目安の年収300万円以上あったとしても、生活が安定していないという印象を持たれることで、申請が不許可になる危険があります。よって、少なくとも転職から1年以上経過した後に永住申請をした方が、許可になりやすいと言われています。
また、もともと「技術・人文知識・国際業務」等、別の在留資格を持って会社勤めをしていた人が、「経営・管理」の在留資格に変更し、独立起業をしたような場合にも似たようなことが言えます。開業後、経営が軌道に乗るまでは、いきなり黒字化できることは少なく、どうしても経営が不安定だというイメージを審査官に持たれてしまいます。よって、会社勤めの方の転職の場合と同様、起業後1年程度たってから、若しくは黒字決算が続き会社経営が安定してからの申請の方が、許可になる可能性が高いと言えます。
まとめ
在留資格「永住」申請に必要とされる生計要件には、具体的な年収の目安金額も指標としてあり、扶養人数によっても変わってきます。日本国籍を取得する帰化申請とは異なり、外国籍のまま日本に永住する権利を与えることとなるため、生計を維持する要件に関してはより厳しい条件が設定されています。特に、生計の安定性も求められるため、申請の直近1年分だけ年収をクリアしていればよいということではなく、住居要件の年数分、年収の条件をクリアしなければならないなど、より高い基準を求められています。
行政書士あけやま事務所は、言葉や文化、そして国境の壁を乗り越えて、日本社会の一員として生きていこうとする、外国人の方々を全力で応援し、サポートします。この記事に関するご質問、お問い合わせや、在留資格「永住」の取得に関しての条件面、手続き面に関するお問い合わせは、お電話か、ホームページの「無料相談フォーム」からお気軽にお問合せください。