はじめに|「1人社長で経営管理ビザを持っている」あなたへ

経営管理ビザ(在留資格「経営・管理」)を保有し、自分1人で会社を切り盛りしている外国人経営者の方々に、今すぐ知っておいていただきたい重大な制度変更があります。

2028年10月以降、常勤従業員を1名も雇用していない「1人社長」の状態では、経営管理ビザの更新が認められなくなる見込みです。

「まだ2年以上先の話だから」と後回しにしていると、気づいたときには手遅れになる可能性があります。採用・雇用契約・社会保険加入・実績の積み上げには相応の時間がかかるため、今から動き始めることが最大のリスク回避策です。

本記事では、この新要件の具体的な内容、誰が影響を受けるのか、何を準備すべきかを、実務の観点から詳しく解説します。


第1章|新要件の具体的内容

何が変わるのか

現行制度では、経営管理ビザの更新要件として明示的な「従業員の雇用義務」はありません。もちろん、事業実態の証明として売上・取引・事務所の実在が確認されますが、代表取締役1人の会社でも更新は可能でした。

しかし2028年10月以降は、以下の要件が加わります。

「日本人または永住資格・特別永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等の在留資格を有する者のうち、常勤で雇用している者が1名以上いること」

これは、単に誰かを雇えばよいという話ではありません。「常勤」かつ「一定の在留資格を持つ者」という2つの条件を同時に満たす必要があります。


「常勤従業員」として認められる人とは

この要件で重要なのが「常勤従業員」の定義です。以下の条件を満たす必要があります。

在留資格の条件(以下のいずれかに該当する者):

該当する在留資格・身分
日本国籍を有する者(日本人)
永住者
特別永住者
日本人の配偶者等
永住者の配偶者等
定住者

つまり、就労ビザ(技術・人文知識・国際業務等)で働いている外国人従業員は、この要件の「カウント対象外」となります。採用する従業員の在留資格に注意が必要です。

「常勤」の条件:

  • 週所定労働時間が概ね30時間以上(フルタイム相当)
  • 雇用保険の被保険者として適用される水準
  • 継続的な雇用関係であること(短期・アルバイト・業務委託は不可)

パートタイムや業務委託では要件を満たさない可能性が高く、正社員または正社員相当のフルタイム雇用が実務上の基準となります。


第2章|なぜこの制度変更が行われるのか

政策的背景:「実態のある経営」への絞り込み

この要件変更は、入管行政における長年の課題解消を目的としています。

経営管理ビザは、日本で事業を営む外国人に与えられるビザですが、過去には「会社は存在するが実態がほとんどない」「取引も従業員もない名目上の経営者」といったケースが問題視されてきました。

入管当局は、「本当に日本経済に貢献している経営者」を支援し、形式的な要件充足だけを目的とした申請を排除する方向で審査を強化しています。

常勤従業員の雇用を義務付けることは、以下のことを意味します。

  • 会社が人件費を負担できるだけの収益を上げていること
  • 雇用関係に伴う法令(労働基準法・社会保険法等)を遵守していること
  • 経営者として「マネジメント」する対象が実在すること

これは単なる書類上の要件ではなく、「あなたの会社は、日本社会に根ざした事業体として機能しているか」 を問う実質的な審査です。


第3章|誰が影響を受けるのか

現在の状況別・影響度チェック

現在の状況2028年以降の影響
日本人または永住者等の常勤従業員がすでに1名以上いる影響なし(要件を満たしている)
就労ビザ外国人のみを雇用している要件を満たさない(対象外の在留資格)
従業員が誰もいない(1人社長)最も深刻(早急な対応が必要)
家族のみを雇用(配偶者・子ども等)配偶者の在留資格による(要個別確認)

第4章|具体的な対応策と準備スケジュール

ステップ1:現状の確認(今すぐ)

まず、自社の現在の雇用状況を正確に把握してください。

  • 従業員は何名いるか
  • 各従業員の在留資格・雇用形態・所定労働時間はどうか
  • 社会保険・雇用保険に適正加入しているか

ステップ2:採用計画の立案(2026年中)

常勤従業員を雇用していない場合、採用活動を始める必要があります。ただし、採用は「決めた翌月から雇える」というものではありません。

採用にかかる現実的な時間:

フェーズ所要期間の目安
求人掲載・応募受付1〜3か月
面接・内定・入社準備1〜2か月
雇用保険・社会保険加入手続き入社後すみやかに(数週間)
雇用実績の積み上げ(審査で評価される期間)最低3〜6か月以上

つまり、採用から審査で「実績がある」と評価されるまでに、最短でも半年〜1年程度が必要です。2028年10月の更新に向けて、遅くとも2027年初頭には採用を開始していることが望ましいと考えます。


ステップ3:雇用に伴う社会保険・労働保険の手続き(採用後すぐ)

従業員を雇用した場合、以下の手続きが法的に義務付けられます。これを怠ると、保険料の未払い問題に加え、更新審査でのマイナス評価にもつながります。

手続き届出先
雇用保険適用事業所設置届ハローワーク
雇用保険被保険者資格取得届ハローワーク
保険関係成立届(労災保険)労働基準監督署
健康保険・厚生年金新規適用届年金事務所
健康保険・厚生年金被保険者資格取得届年金事務所

これらの手続きは、行政書士の業務範囲外です。当事務所では、英語対応可能な社会保険労務士(社労士)をご紹介できますので、雇用に伴う手続きはプロに任せることをお勧めします。


ステップ4:経営管理ビザ更新申請の準備(更新6か月前〜)

常勤従業員の雇用が整ったら、次は更新申請の準備です。2025年10月16日以降の改正により、以下の書類が新たに必要となっています。

  • 労働保険料等納付証明書(労働局)
  • 社会保険料納入確認書(年金事務所)
  • 納税証明書一式(税務署)

当事務所では、これらの証明書の取得代行をビザ更新申請とセットでご提供しています。


第5章|よくある疑問(Q&A)

Q. 妻(日本人)を役員にすれば要件を満たせますか?

A. 役員は「常勤従業員」に含まれません。役員報酬を受け取る役員ではなく、雇用契約に基づく労働者(従業員)として雇用していることが必要です。ただし、実態に応じた個別判断が必要なケースもありますので、専門家にご相談ください。

Q. パートタイムの日本人スタッフを雇えば大丈夫ですか?

A. 週30時間未満のパートタイム雇用は「常勤」とは認められない可能性が高いです。フルタイム(正社員相当)での雇用が実務上の基準です。

Q. 2028年10月の更新まで時間があるから、2027年に採用すれば間に合いますか?

A. ギリギリになる可能性があります。採用・入社・保険加入・実績積み上げを含めると、最低でも半年〜1年の準備期間が必要です。2026年〜2027年初頭には採用活動を開始することを強く推奨します。

Q. 外国人(就労ビザ)の従業員を雇っていますが、要件を満たせますか?

A. 就労ビザ(技術・人文知識・国際業務等)の外国人従業員は、この要件の対象外です。日本人・永住者・特別永住者等に限定されますので、対象外の在留資格の方しか雇用していない場合は、新たに対象者を採用する必要があります。


まとめ|今、行動することが将来の在留を守る

2028年10月の施行まで、まだ時間はあります。しかし、その時間は「待てる時間」ではなく「準備に使うべき時間」です。

今すぐ確認・対応すべき事項:

① 自社の従業員の在留資格・雇用形態を確認する

② 常勤従業員要件を満たしていない場合は、採用計画を立てる

③ 採用後は速やかに社会保険・労働保険の加入手続きを行う(社労士に依頼)

④ 2025年10月以降の新書類要件(証明書)にも対応する

⑤ 更新の6か月前には専門家(行政書士)に相談を開始する

当事務所では、現在の雇用状況の確認から、社労士紹介による保険加入手続き、証明書取得代行、そして経営管理ビザ更新申請まで、一貫したサポートを提供しています。

英語でのご相談も可能です。初回相談は無料ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。

「自分は2028年の要件を満たせているか?」——その確認から始めましょう。