1. 導入:札幌で起きた不法就労事件の概要と衝撃

2025年9月、札幌市内で起きた一件の不法就労事件が波紋を呼んでいます。
逮捕されたのは、いずれもタイ国籍の女性3人。中でも1人は、自身が運営する接待を伴う飲食店で、他の2人を「ホステス」として働かせていた疑いで逮捕されました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/9ad9e8df1566e5a1485b8f4ebe589921710a5451

容疑者らの供述には、「遊びに来ていただけ」「グラスを洗ってもらったお礼にお金を渡した」「働くことが違法とは思わなかった」といった声が並びますが、こうした“軽い認識”が重大な違法行為につながっているのが現実です。

本記事では、企業経営者や人事担当者、さらには在日外国人本人がこのニュースから学ぶべき法的リスクと実務上の対応について、行政書士の視点から詳しく解説していきます。


2. そもそも「在留資格」とは何か?

外国人が日本で働くためには、まず「在留資格」の内容を正確に把握する必要があります。
在留資格とは、外国人がどのような活動を目的として日本に滞在しているかを国が定めたもので、全部で約30種類ほど存在します。

主に就労可能な在留資格としては、以下のようなものがあります:

  • 技術・人文知識・国際業務
  • 特定技能(介護・飲食料品製造・建設など)
  • 技能(調理師・職人等)
  • 永住者、日本人の配偶者等(就労制限なし)

一方で「留学」「家族滞在」などは、原則として就労不可です。
このような資格で働く場合は、別途「資格外活動許可」を取得しなければなりません。

雇用側も外国人本人も、この「就労可否」の確認を怠ると、思わぬ違法行為につながってしまいます。


3. 違法就労となるケースはこんなに身近

違法就労というと、「不法滞在者が裏で働いている」ような極端なイメージを持たれる方も多いかもしれません。
しかし、実際にはもっと身近なところで、意図せず違法就労が起きているのが現実です。

今回の事件でも、「働いていた女性」は正式な雇用契約を結んでいたわけではなく、飲食店で遊びに来ていた中で、グラスを洗ったり、お客にお酌をしたりといった“手伝い”に対して報酬を得ていたとされています。

ここで重要なのは、「雇用契約の有無」ではなく、「報酬性があるかどうか」と「事業主の指揮命令下での作業かどうか」です。
たとえ短時間であっても、金銭の授受があり、店の運営者からの指示によって業務を行っていた場合、それはれっきとした「就労」と見なされます。

また、雇用形態がアルバイトであっても、在留資格がそれを許可していなければ違法です。
特に留学生などは、資格外活動許可がなければ週1回の手伝いでも違反となり、強制退去のリスクを負うことになります。

多くの事業者が「うちは正社員じゃないから大丈夫」と思いがちですが、それは大きな誤解。
報酬の有無・業務の性質・就労の継続性など、広い観点から“働いた”と判断されれば、雇用主側にも重い責任が発生します。


4. 「知らなかった」「遊びに来てただけ」は通用しない

「在留カードは見たけど、詳しく確認していなかった」
「遊びに来ていた子がちょっと手伝っただけ」
「本人が“働ける”と言っていたから問題ないと思った」

こうした言い訳は、法的には一切通用しません。

企業や店舗の運営者には、「在留カードの確認義務」と「就労可否の判断責任」があります。
特に不特定多数の外国人が働く現場では、カードの真正性を確認するために、ICチップリーダーや法務省のオンライン照会サービスを活用すべきです。

また、在留カードがあっても、それが「就労可能」な資格と仕事内容かどうかまで見なければ意味がありません。
「技人国(技術・人文知識・国際業務)」の在留資格を持っていても、飲食店のホール業務などは対象外です。

つまり、カードを“なんとなく確認”しただけではリスクは回避できないということです。


5. 雇用主側が問われる責任とリスク

外国人の不法就労を“黙認”または“助長”した場合、雇用主には重い法的責任が課されます。

① 刑事罰

入管難民法第73条の2により、「不法就労助長罪」に該当した場合は、

  • 3年以下の懲役
  • または300万円以下の罰金
  • あるいはその両方

という重大な罰則があります。

② 社会的信用の失墜

仮に逮捕されずとも、報道や行政指導により会社名・店舗名が公表されれば、顧客や取引先からの信用は一気に失われます。
飲食店やサービス業では、売上に直結する重大なダメージになります。

③ 行政処分

特定業種(風俗・飲食業など)では、営業許可の取消・営業停止処分などが科されることもあります。

④ 労務管理リスク

不法就労者を雇ったことで、正規雇用者との間にトラブルが起きたり、社内規定違反として処分対象となる可能性もあります。

これらはすべて、「知らなかった」では済まされない責任です。

特に中小企業の場合、ひとたび問題が起きれば経営の根幹を揺るがすことにもなりかねません。


6. 「業種別に確認すべきポイント」一覧

不法就労が起こりやすい業種には一定の傾向があります。
以下は、特に注意が必要な業種とその就労可否のチェックポイントです。

飲食店・接客業(居酒屋・スナック・バーなど)

  • 「接客を伴う飲食」は、基本的に認められていません。
  • 留学生がホールでアルバイトをするには、資格外活動許可が必要。
  • 夜間営業・風俗営業の場合、そもそも外国人が働けないケースが多い。

コンビニ・小売業

  • 単純労働とみなされる業務(品出し・レジ業務)は、多くの在留資格で認められていません。
  • 留学生は週28時間以内での勤務制限あり。

ホテル・清掃業

  • 清掃・ベッドメイキングは「単純労働」扱いになるため、「特定技能」以外では就労不可の在留資格が多い。
  • フロント業務なら「技人国」で対応可能な場合もあり。

建設業・農業・介護

  • 特定技能、技能実習など「業種特定型」の在留資格が必要。
  • 在留期限や企業側の受入体制整備も問われる。

「外国人が働いている業界だから大丈夫」ではなく、その人の在留資格と業務内容が一致しているかが最重要です。


7. 在日外国人が自身で確認すべきこと

企業側だけでなく、在日外国人自身も、自らの在留資格でどこまでの就労が許可されているかを理解する責任があります。

特に以下のような方は要注意です:

  • 家族滞在や短期滞在で来日中の方
  • 留学生でアルバイトを始めたい方
  • 観光目的で入国し、友人の店を手伝おうとしている方

「資格外活動許可」の申請をせずに就労した場合、たとえ一度の手伝いであっても、強制退去や再入国禁止の対象になることもあります。

知らずに働いてしまった結果、将来的にビザの更新が難しくなるケースもあるため、本人にも正しい知識が求められます。


8. 入管法違反の罰則と実例

今回の札幌の事件のように、グラスを洗う程度の“手伝い”であっても、報酬が発生し、それが継続的であれば、捜査対象になります。

警察や入管は、通報や内部告発をきっかけに調査を行うことが多く、SNSでの写真や従業員間のトラブルがきっかけになることも珍しくありません。

一人の軽率な判断が、会社全体の信頼を損ねてしまう。
これが現実です。


9. トラブルを未然に防ぐためにできること

外国人雇用でトラブルを未然に防ぐには、次のような対策が有効です。

① 在留カードの精査

コピーではなく原本を確認し、ICチップリーダーや専用照会サイトで真偽をチェック。
これを採用時に必ず行う体制を構築することが重要です。

② 業務内容と資格の一致確認

「本人が働きたいと言っている」ではなく、就労可能な在留資格かどうかを企業側で判断する必要があります。

③ 定期的な社員研修

人事・採用担当だけでなく、現場責任者にも外国人雇用に関する基礎知識の共有が必要です。
ミスは現場から発生します。

④ 外部専門家との連携

行政書士など外国人雇用に精通した専門家に相談することで、制度設計から実務運用まで安心して対応できます。

これらを日常的に行っておけば、法的リスクを大幅に減らすことが可能です。


10. 外国人雇用に強い行政書士に相談するメリット

外国人雇用は、知識と手続きが必要不可欠な“制度運用型の人事戦略”です。
しかし、一般の企業がそれを自力で完璧に行うのは現実的ではありません。

私たち行政書士は、以下のような支援を行っています:

  • 在留資格の確認と分類
  • 資格外活動許可の申請代行
  • 就労内容と資格の適合性の判断
  • 採用フローへの法務的アドバイス
  • 監査・指導対応の事前準備

「この人を雇っても大丈夫か」
「業務内容をどう説明すれば適合するか」

そんな悩みがある企業様は、ぜひニセコビザ申請サポートセンターまで早めにご相談ください。

行政処分や社会的信用の失墜という“大きなリスク”が発生する前に、予防策を打つことこそが、経営者としての最大の責任です。