はじめに:減少傾向にある不法残留者数、しかし油断は禁物
2026年3月27日、出入国在留管理庁は令和8年1月1日時点における不法残留者数の最新統計を発表しました。その数は6万8,488人。前年同期と比較すると6,375人(8.5%)の減少となり、2年連続での減少傾向が確認されました。
一見すると明るい兆しのように思えますが、外国人のビザ申請・在留資格取得を専門とする行政書士として日々現場に携わる私たちの目には、依然として深刻な課題が横たわっていることが見えてきます。
本記事では、この最新統計データを詳しく分析しながら、在日外国人の方々、そして外国人を雇用する企業の経営者・人事担当者の皆さまに向けて、いま知っておくべき在留管理の重要ポイントと具体的な対策をお伝えします。
1. 統計データの全体像:どんな人が、どの在留資格で残留しているのか?
国籍・地域別トップ10
今回の統計で最も多かったのはベトナム国籍の1万1,601人(前年比-2,695人)。次いでタイ1万907人(-430人)、韓国1万20人(-580人)と続きます。
注目すべきは、上位10カ国・地域のうちスリランカだけが唯一増加(+48人)している点です。これは、母国の政治経済状況や日本国内での就労ニーズの変化など、複合的な要因が背景にあると考えられます。
また、トルコが新たに9位にランクインし、カンボジアに代わった点も見逃せません。国籍別の傾向変化は、今後の在留管理政策や雇用戦略にも影響を与える可能性があります。
在留資格別の内訳
在留資格別で見ると、以下のような構成になっています。
- 短期滞在:4万1,607人(-4,127人)
本来は観光・商用などの短期目的で付与される資格です。しかし実際には、そのまま滞在を続けて不法就労に至るケースが後を絶ちません。 - 技能実習:9,323人(-2,181人)
技能実習制度は本来、開発途上国への技能移転を目的としていますが、実習終了後の進路が不透明なまま放置されることで不法残留につながるケースが多発しています。 - 特定活動:7,306人(-263人)
多様な活動内容を含むこの資格ですが、期間管理が複雑であるため、うっかり期限切れになってしまうケースも少なくありません。 - 留学:2,173人(-72人)
学業を終えた後、就職活動や進路変更のタイミングで在留資格の切り替えに失敗するケースが典型例です。 - 日本人の配偶者等:1,724人(-26人)
家族関係の変化(離婚・死別など)に伴い、在留資格の要件を満たせなくなるケースがあります。
2. 不法残留が生まれる3つの構造的要因
(1) 在留期限管理の甘さ
多くの不法残留者は、当初から違法な滞在を意図していたわけではありません。むしろ「気づいたら期限が過ぎていた」「更新手続きが複雑で後回しにしてしまった」というケースが大半です。
特に短期滞在ビザでの残留が4万人を超えている現状は、入国時のチェック体制や雇用時の在留資格確認の不備を示唆しています。
(2) 技能実習制度の”出口”設計の欠如
技能実習制度は、修了後に母国へ帰国し学んだ技能を活かすことが前提です。しかし実際には、日本での収入や生活に魅力を感じ、そのまま残留を選択する実習生が少なくありません。
受入企業側も、実習修了後のフォローアップ体制が不十分であることが多く、結果として不法残留者を生む温床となっています。
(3) 情報不足と言語の壁
在留資格制度は非常に複雑であり、外国人本人が制度を正しく理解することは容易ではありません。また、相談先が分からない、日本語でのやり取りに不安があるといった理由で、適切な手続きを取れないまま期限を過ぎてしまうケースも多く見受けられます。
3. 不法残留がもたらす深刻なリスク
外国人本人へのリスク
- 強制退去処分:不法残留が発覚すると、入管法違反として退去強制手続きの対象となります。
- 再入国の制限:一度退去強制を受けると、一定期間(通常5年、場合により10年)は日本への再入国ができません。
- 刑事罰の可能性:悪質なケースでは刑事訴追され、前科がつくこともあります。
- 社会的信用の喪失:キャリア、家族関係、生活基盤すべてを失うリスクがあります。
雇用企業へのリスク
- 不法就労助長罪:知らずに不法残留者を雇用した場合でも、企業側が刑事罰(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)を科されることがあります。
- 行政処分:建設業許可や人材派遣業許可など、事業許可の取消しや停止処分を受ける可能性があります。
- 社会的信用の失墜:報道されれば企業イメージが大きく損なわれ、取引先や顧客の信頼を失います。
- 採用コストの損失:せっかく育てた人材を失い、再び採用活動をゼロからやり直すことになります。
4. 企業が今すぐ取り組むべき5つの実践的対策
(1) 在留カード確認の徹底と定期チェック体制の構築
採用時に在留カードの原本確認を行うことは当然ですが、それだけでは不十分です。在留期限の3ヶ月前には必ずアラートが出るよう、人事システムやカレンダーツールを活用しましょう。
また、在留カードの偽造も増えていますので、出入国在留管理庁の「在留カード等番号失効情報照会」を利用した真贋確認も推奨されます。
(2) 外国人社員向けオリエンテーションの実施
入社時に、在留資格制度の基本、更新手続きの流れ、相談窓口などを丁寧に説明する機会を設けましょう。多言語での資料提供や、必要に応じて通訳を手配することも重要です。
(3) 行政書士などの専門家との連携
在留資格の更新・変更手続きは、一見簡単そうに見えても、書類の不備や要件の誤解によって不許可になるケースが多々あります。顧問行政書士を置くことで、予防的なコンプライアンス体制を構築できます。
(4) 技能実習生・特定技能外国人のキャリアパス設計
技能実習修了後に特定技能への移行を希望する場合、事前の試験対策や在留資格変更のスケジュール管理が不可欠です。企業側が積極的にサポートすることで、優秀な人材の定着と不法残留の予防を同時に実現できます。
(5) 定期的な社内研修とコンプライアンス意識の向上
人事担当者だけでなく、現場の管理職や一般社員にも、外国人雇用のルールや不法就労助長罪のリスクについて理解してもらうことが重要です。年1回程度の研修実施を推奨します。
5. 在日外国人の方へ:自分の身を守るために知っておくべきこと
在留期限は「絶対に守るべきライン」
「少しくらい過ぎても大丈夫だろう」という考えは絶対に禁物です。たった1日でも在留期限を過ぎれば、それは不法残留となり、法的なペナルティの対象となります。
更新は必ず期限の3ヶ月前から準備を
在留期間の更新申請は、期限の3ヶ月前から可能です。ギリギリになって慌てて申請すると、書類不備や追加資料の提出が間に合わず、結果的に不許可になるリスクが高まります。
仕事を変えるとき、結婚・離婚するときは要注意
転職や家族関係の変化は、在留資格の要件に直接影響します。必ず事前に専門家へ相談し、必要に応じて在留資格の変更手続きを行いましょう。
困ったときは一人で悩まず、必ず相談を
在留資格に関する悩みは、放置すればするほど事態が悪化します。行政書士、弁護士、自治体の外国人相談窓口など、信頼できる相談先に早めに連絡することが何よりも大切です。
6. 行政書士が果たす役割:あなたのパートナーとして
私たち行政書士は、ビザ申請・在留資格手続きの専門家として、以下のようなサポートを提供しています。
- 在留資格認定証明書交付申請(海外から呼び寄せる場合)
- 在留期間更新許可申請
- 在留資格変更許可申請
- 永住許可申請
- 帰化許可申請のサポート
- 企業向けコンプライアンス体制構築支援
単なる書類作成代行ではなく、お客様一人ひとりの状況を丁寧にヒアリングし、最適な戦略を一緒に考えるパートナーでありたいと考えています。
7. まとめ:適正な在留管理が、未来への投資になる
不法残留者数が減少傾向にあるとはいえ、依然として6万人を超える方々が法的に不安定な状況に置かれています。これは個人の問題であると同時に、社会全体で取り組むべき課題でもあります。
企業にとって、外国人材の適正な受入れと在留管理は、もはや「コンプライアンス対応」だけでなく、「持続可能な成長戦略」そのものです。
在日外国人の皆さまにとっても、適正な在留資格を維持することは、安心して働き、生活し、キャリアを築くための絶対条件です。
もし少しでも不安や疑問があれば、ぜひお気軽にご相談ください。私たちは、あなたの「安心できる未来」をともに創るパートナーです。
参考資料
- 出入国在留管理庁「本邦における不法残留者数について(令和8年1月1日現在)」
- Yahoo!ニュース記事:https://news.yahoo.co.jp/articles/1a050bc393d3dadb3c5df594c096c4682ae5a49d
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