はじめに 外国人雇用のルールが大きく動き出しました
2026年4月13日、厚生労働省は労働政策審議会の部会において、外国人雇用に関する事業主向け指針を見直す方針を正式に示しました。不法就労の防止を目的とし、企業に対してこれまで以上に適正な雇用管理を求める内容です。5月の部会で改定案が諮問される予定であり、今後数か月のうちに新しいルールが適用される見込みです。
外国人を雇用する企業の経営者や人事担当者の方にとって、この指針見直しは「今すぐ」対応を検討すべき重要なテーマです。本記事では、今回の改定のポイントをわかりやすく解説し、企業が取るべき具体的なアクションをまとめます。
外国人雇用の事業主向け指針とは 現行ルールの基本をおさらい
外国人雇用に関する事業主向け指針とは、厚生労働省が企業に対して示している、外国人労働者の採用・雇用管理に関するガイドラインです。
現行の指針には、以下のような内容が盛り込まれています。
・外国人を採用する際の注意事項
・差別的な取り扱いの禁止
・労働条件の明示義務
・安全衛生の確保
・適正な労働条件の確保に関する措置
この指針は法的な拘束力こそありませんが、厚生労働省が事業主に対して「こうした対応をしてください」と求める、実務上の重要な指標です。入管法や労働基準法とセットで理解しておく必要があります。
2026年4月 厚労省が示した指針見直しの3つのポイント
今回の見直しにおいて、厚労省が示した主な方向性は以下の3点です。
ポイント1 「適切な雇用管理は事業主の責務」と明記
これまでも企業には適正な雇用管理が求められていましたが、今回の改定では「不法就労防止の観点からも、適切な雇用管理は事業主の責務である」と、指針の中に明確に記載される見通しです。
これは単なる文言の追加ではありません。「事業主の責務」と明記されることで、企業側の管理責任がより重く位置づけられることになります。万が一、雇用している外国人が不法就労状態であった場合、企業が「知らなかった」「確認していなかった」という弁解では済まされにくくなるということです。
ポイント2 届け出義務違反に対する罰金の周知強化
外国人雇用状況の届け出制度は、事業主に対し、外国人を雇い入れたとき、また離職したときに、ハローワーク(公共職業安定所)への届け出を義務付けるものです。
現行の制度でも、虚偽の届け出をしたり、届け出を怠った場合には30万円以下の罰金が科されることになっています。しかし、この罰則規定を知らない事業主が少なくないという実態があります。
今回の見直しでは、罰金規定の存在を指針の中に明記し、広く周知を図る方針です。「知らなかった」では許されない時代が、名実ともに到来するといえるでしょう。
ポイント3 在留カード確認時に専用アプリの使用を推奨
外国人を雇用する際、在留カードの確認は基本中の基本です。しかし、近年は在留カードの偽造が巧妙化しており、目視だけでは本物と偽物の区別がつきにくいケースが増えています。
こうした状況を受け、厚労省は在留カードの真偽を確認できる出入国在留管理庁の専用アプリの使用を推奨する方針を示しました。このアプリを使えば、ICチップの情報を読み取ることで、在留カードが本物かどうかを確認できます。
企業の人事担当者は、このアプリの導入を早めに検討しておくべきでしょう。
外国人雇用状況の届け出制度とは 届け出の方法と対象を詳しく解説
改めて、外国人雇用状況の届け出制度について整理します。
届け出が必要なタイミング
・外国人を雇い入れたとき
・外国人が離職したとき
届け出先
・管轄のハローワーク(公共職業安定所)
届け出の内容
・氏名
・在留資格
・在留期間
・生年月日
・性別
・国籍・地域
・資格外活動許可の有無 など
届け出の期限
・雇用保険の被保険者の場合:雇用保険の届け出と同時
・雇用保険の被保険者でない場合:雇い入れ・離職の翌月末日まで
届け出を怠った場合の罰則
・30万円以下の罰金
この届け出は、特別永住者を除くすべての外国人労働者が対象です。アルバイトやパートタイムの外国人も含まれますので、注意が必要です。
在留カードの確認方法 偽造を見抜く専用アプリの使い方
在留カードの確認は、外国人を雇用するすべての企業にとって不可欠なプロセスです。確認の際には、以下の点をチェックしましょう。
目視で確認すべきポイント
・在留資格の種類と、従事させる業務が合致しているか
・在留期間が有効か(期限切れになっていないか)
・就労制限の有無の記載
専用アプリを使った確認
出入国在留管理庁が提供する「在留カード等読取アプリケーション」を利用すると、在留カードのICチップに記録されている情報を読み取ることができます。これにより、カードの偽造や改ざんの有無を確認できます。
アプリはスマートフォンで利用でき、NFC機能を使ってICチップの情報を読み取ります。操作は簡単で、特別な知識がなくても使える仕組みになっています。
今回の指針見直しでこのアプリの使用が公式に推奨されることになりますので、まだ導入していない企業は、これを機にぜひ活用を始めてください。
企業が今すぐ取り組むべき外国人雇用管理の5つのアクション
今回の指針見直しを踏まえ、企業が早急に取り組むべきことをまとめます。
- 雇用している外国人の在留資格・在留期間を再確認する
すでに雇用している外国人従業員の在留カードを改めてチェックし、在留資格と業務内容の整合性、在留期間の有効性を確認してください。 - 在留カード確認アプリを導入する
出入国在留管理庁が提供する専用アプリをスマートフォンにインストールし、在留カードの確認フローに組み込みましょう。 - ハローワークへの届け出状況を棚卸しする
過去の届け出に漏れがないか、記載内容に誤りがないかを確認してください。特に、パート・アルバイトの外国人の届け出は見落としがちです。 - 社内の雇用管理マニュアルを更新する
指針の改定内容を反映した社内マニュアルを整備し、採用担当者だけでなく、現場の管理者にも共有しましょう。 - 専門家に相談する
在留資格の確認方法や届け出手続きに不安がある場合は、行政書士などの専門家に早めに相談することをおすすめします。法改正や指針見直しの最新情報を把握している専門家からのアドバイスは、企業のリスク管理に直結します。
在日外国人の方へ 雇用管理の適正化はあなたを守るルールです
今回の指針見直しは、外国人の方ご自身にとっても重要なニュースです。
雇用管理が適正化されるということは、不法就労の温床となりやすい「曖昧な雇用環境」が減り、正当な在留資格を持って働いている外国人の権利がより守られるということを意味します。
もし、お勤め先の企業から在留カードの提示を求められた場合は、適正な雇用管理の一環ですので、安心して対応してください。逆に、在留カードの確認をまったく行わない企業で働いている場合は、注意が必要かもしれません。
ご自身の在留資格に不安がある方、在留期間の更新手続きがわからない方は、行政書士にご相談いただければ、適切なアドバイスをさせていただきます。
今後のスケジュール 指針改定はいつ施行される?
厚労省は、2026年5月の労働政策審議会部会に指針改定案を諮問する予定です。部会での審議を経て、正式に改定指針が公布・施行される見込みです。
今回の部会では大きな異論は出なかったと報道されていますので、おおむねこの方向性で改定が進むと考えられます。企業は5月の改定案の内容が明らかになる前に、自社の体制を見直しておくことが賢明です。
まとめ 外国人雇用の適正管理は企業の信頼と外国人材の安心をつくる
今回の厚労省による外国人雇用指針の見直しは、外国人を雇用する企業にとって、雇用管理体制を再点検する良い機会です。
・「適切な雇用管理は事業主の責務」であることが明記される
・届け出義務違反には30万円以下の罰金がある
・在留カードの確認には専用アプリの活用が推奨される
これらのポイントを押さえたうえで、自社の体制を今のうちに整備しておきましょう。
ビザ申請・在留資格に関する手続きでお困りのことがあれば、行政書士にお気軽にご相談ください。外国人材が安心して働ける環境づくりを、一緒にサポートいたします。
出典:外国人雇用の管理適正化を 厚労省、事業主向け指針見直しへ(共同通信/Yahoo!ニュース)
https://news.yahoo.co.jp/articles/de05bff812f54a58761655ebb3fb7e213d159872
