高校授業料の無償化やオーバーツーリズム対策などの新たな財源確保を目的として、外国人に対する負担増が提案されています。

https://news.yahoo.co.jp/articles/ae2cad13d3b1f85c7f7fe551dc238819a37886ea

今回の見直しは訪日外国人向けの制度であるものの、在日外国人や彼らを雇用する企業にとっても無関係ではありません。

本記事では、行政書士の立場から、ニュースの概要と背景、今後の影響と企業が取るべき対応について詳しく解説します。


1. ニュースの概要:ビザ手数料と出国税の値上げ案とは?

現在、日本の短期ビザ(一回入国)の手数料は約3,000円。これは約50年間据え置かれており、先進国の中では極めて低水準です。

一方、欧米諸国ではビザの発行手数料は1万円から3万円が一般的。日本政府はこれに合わせた水準への引き上げを検討しています。

また、現在一律1,000円徴収されている「国際観光旅客税(通称:出国税)」も3,000円程度への引き上げが候補に挙がっており、これは日本人にも適用される予定です。

さらに、ビザなしでの渡航者を対象とした事前電子申請(アメリカのESTAに類似)にも、約6,000円の手数料を課す案が浮上しています。


2. 背景にあるのは「国内財源のひっ迫」

政府がこのような外国人向けの負担増を検討する背景には、国内の深刻な財源不足があります。

少子高齢化や物価高の中、国民への新たな税負担は政治的にも難しく、代替財源として「訪日外国人」が注目されているのです。

観光立国としての道を進める一方で、その管理・運営コスト(混雑対策、審査強化など)も大きくなっており、その負担を「受益者」である外国人旅行者に求めるという理屈です。

また、増収が見込めれば「高校授業料の無償化拡大」といった政策の財源にも充てる案が政府内で検討されています。


3. 企業・在日外国人への直接・間接的な影響

一見、観光客向けの制度改定に見えますが、在日外国人や彼らを雇用する企業にとっても、少なからず影響があります。

(1)再入国や家族の訪問時に負担増

在留外国人が一時帰国した後に再入国する際、あるいは家族が訪日する際にも、ビザ手数料や出国税の影響が出てきます。

例えば、親族が頻繁に日本に来る場合、数万円のビザ費用や出国税を毎回負担することになり、経済的・心理的ハードルが高くなる恐れがあります。

(2)企業の採用・人材戦略への影響

外国人を積極的に採用している企業では、内定者が渡航をためらったり、渡航費用を企業が一部負担する必要が出てくる可能性があります。

また、採用コストの上昇や定着率の低下といった間接的な影響も見逃せません。


4. 観光・小売業界の懸念も

百貨店や観光地で働く人々からは「外国人観光客の数が減少すれば、売上に大きく影響する」との声が上がっています。

特に高額商品を購入する傾向のある訪日観光客にとって、ビザや出国にかかるコストが大きくなれば、渡航そのものを控えるケースも予想されます。

現時点では「必要な財源確保」と「観光経済のバランス」をどう取るかが、政府の課題となっています。


5. 外国人雇用企業が取るべき対応策

行政書士として、外国人雇用企業に今から備えていただきたいポイントを挙げます。

(1)採用・就労ビザ手続きの計画的運用

今後の制度変更に備え、ビザの申請・更新スケジュールを見直し、余裕を持った対応が求められます。

また、初回渡航時にかかる手数料を見越して、費用補助や契約条件の見直しも検討材料となるでしょう。

(2)社内情報提供と外国人社員のサポート

制度改定の情報を定期的に共有し、外国人社員が安心して働ける環境を整えることが、離職防止や定着率向上につながります。

特に家族帯同している場合は、家族への影響も考慮し、必要に応じて相談窓口を設置することも一つの方法です。


6. 今後の動向と注目ポイント

現段階では正式決定には至っていませんが、2026年度の予算編成に向けた議論の中で、今後具体的な制度案が公表される見込みです。

注視すべきポイントは以下の通りです:

  • 改定内容の詳細(対象国、手数料の具体額、導入時期)
  • 企業団体・業界団体による意見提出の動き
  • 外国人本人からの反発や国際的評価への影響
  • 他の制度(技能実習、特定技能、永住)との連動性

7. 最後に:変化の時代に「知って備える」ことが企業の責任

外国人関連制度は、経済状況や社会情勢によって今後も柔軟に変化していく可能性があります。

企業としては、情報収集と対応準備を怠らず、変化に対応できる柔軟性を持つことが求められます。

また、制度が変わるたびに「知らなかった」「急な対応ができない」といった事態にならないよう、行政書士などの専門家と連携を取りながら、社内体制の整備を進めておくことが重要です。

外国人雇用に携わるすべての企業と人事担当者の皆様が、制度変更に惑わされることなく、安心して外国人材とともに歩める環境をつくっていくことを、心より願っています。