1. はじめに:誤認逮捕が示した“法の理解不足”
2025年10月、岩手県で発生した「外国籍男性の誤認逮捕」事件が波紋を広げています。
旅券(パスポート)を所持していなかったことで入管難民法違反とされ、逮捕された外国人男性。
ところが、後に有効な在留カードが見つかり、わずか5時間で釈放。
警察は誤認逮捕を認め、謝罪する結果となりました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/d2d089639584862f71d0bf96a640a4d08ff065ef
この出来事は、日本に住む外国人や、外国人を雇用する企業にとって他人事ではありません。
なぜなら、制度への理解不足が、思わぬトラブルに直結するからです。
2. 事件の概要:岩手県警による誤認逮捕とは
岩手県九戸村に住む外国籍の男性が、旅券不携帯を理由に現行犯逮捕されました。
しかし、彼は有効な在留カードを所持しており、本来は旅券を携帯していなくても違法ではありません。
警察官がその法的知識を正しく理解していなかったため、逮捕という事態に至ったのです。
公安課も「捜査手法に問題があった」とコメントしており、制度理解の重要性が浮き彫りになりました。
3. 在留カードと旅券の役割と法的位置づけ
まず押さえておくべきは、「在留カード」と「旅券」はそれぞれ異なる法的役割を持つという点です。
- 在留カード:日本に中長期在留する外国人に交付される、日本の入管法に基づく身分証明書
- 旅券(パスポート):本人の出身国が発行する、国際的な身分証
在留カードを所持している外国人には、旅券の携帯義務はありません(入管難民法23条)。
4. 「携帯義務」は何を意味するのか?
在留カードを所持する外国人は、常時カードを携帯する義務があります。
一方で旅券の携帯義務は免除されているため、今回のような逮捕は明らかに誤りです。
企業側も、「社員に旅券を持たせているか」だけで判断するのはリスクがあります。
重要なのは、「在留資格が有効であるか」「在留カードが適切に管理されているか」です。
5. 外国人本人と企業側が注意すべきこと
今回の事件は、外国人本人だけでなく、企業側の在留管理にも警鐘を鳴らしています。
- 外国人本人は、在留カードの常時携帯と有効期限の管理を徹底する
- 企業側は、在留資格確認書類の定期的チェックや、更新期限のリマインド体制を整える
これらの対応が、本人と雇用主の双方を守ることにつながります。
6. なぜこのような誤認が起こるのか:制度の複雑さと教育の不足
制度そのものが複雑であるうえ、地方自治体や警察官など関係者全員が十分に教育を受けているとは限りません。
その結果、本来違反ではない行為が「違法」と判断されてしまう事態が起こりうるのです。
制度の周知と教育は急務であり、企業や外国人支援団体も含めた全体での理解促進が求められます。
7. 外国人社員を雇用する企業ができるリスク対策
企業ができる具体的なリスク対策は以下のとおりです。
- 入社時に在留カードのコピーを取得し、管理台帳で有効期限をチェック
- 更新時期のアラート通知を設定
- 外部の専門家(行政書士など)と連携して、在留資格の適正確認を行う
- 定期的な社内研修で、外国人社員と人事担当の意識向上を図る
8. 行政書士として伝えたい:トラブル回避のための在留管理術
私たちニセコビザ申請サポートセンターは、外国人の在留資格手続きや、企業の管理体制構築を日々支援しています。
経験上、「知らなかった」では済まされない場面が多々あります。
制度の変化や実務運用のポイントは、プロの視点でこまめにチェックし、情報共有することが大切です。
9. まとめ:制度理解が信頼と安全をつくる鍵
在留カードの効力や制度への理解が不十分だと、今回のような誤認逮捕が再び起きかねません。
外国人本人の安心、そして企業の法令遵守と社会的信頼を守るためにも、制度の正しい理解と管理が不可欠です。
専門家に相談することで、リスクを最小限に抑えた在留管理が可能になります。
まずは、自社の体制が「大丈夫か?」を見直してみませんか?