1. はじめに:育成就労制度とは?その背景にある社会課題
2027年4月(令和9年)から、外国人材の受け入れを目的とした新たな制度「育成就労」が本格スタートします。この制度は、長らく問題視されてきた技能実習制度に代わるものであり、外国人が日本で就労しながら段階的にスキルを身につけることを目的としています。
育成就労は、2年間で約42万人、特定技能制度と合わせておよそ123万人の外国人労働者を受け入れる見込みです。この数字は、日本社会が深刻な人手不足に直面している現実と、それを補完する制度整備の必要性を象徴しています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/cbe77cc9b98ee23d41a149c4dd9dad2fc22ec834
現在、日本では少子高齢化により労働力人口が急激に減少しています。特に建設・製造・介護・外食産業などは、人材確保が極めて困難な状況にあり、「外国人労働者なしには成り立たない」業種も少なくありません。これまでは技能実習制度を活用してきましたが、実習生の待遇問題や不透明な制度運用が国際的にも批判を浴びてきました。
こうした社会背景を受け、政府は「教育」と「雇用」を明確に分け、透明性と適正な労働環境を確保する制度として育成就労制度の導入を決定しました。
外国人雇用に関わる企業や人事担当者にとって、この新制度への正しい理解と適応は、今後の採用戦略において不可欠です。本記事では、育成就労制度の全体像と制度設計の意図、企業に求められる対応について、行政書士の視点からわかりやすく解説していきます。
2. 技能実習制度との違い|「育成就労」の特徴を徹底比較
長らく外国人労働力の柱だった「技能実習制度」は、表向きには“国際貢献”という建前で、発展途上国からの実習生に技能を移転する制度とされてきました。しかし実態は「労働力の確保」としての役割が大きく、制度と現場との乖離が深刻化。低賃金、劣悪な労働環境、人権侵害などの問題が指摘されてきました。
これに対し「育成就労制度」は、制度目的を明確に「人材育成と就労支援」に定めており、以下のような大きな違いがあります:
- 制度の目的: 技能実習が“国際貢献”を建前とするのに対し、育成就労は“就労前提”の制度設計
- キャリア設計: 育成就労は、特定技能への移行を前提とし、3年間で段階的にスキルを習得するモデル
- 転籍の柔軟性: 育成就労では、一定条件下での転職(転籍)が可能になり、労働者保護が強化
- 管理体制: 受入企業に対し、教育計画の策定義務や生活支援体制の整備が求められる
これにより、制度の“透明性”と“働きやすさ”が格段に向上し、国際的な信頼回復にもつながると期待されています。
企業にとっても、単なる人手不足の解消ではなく、育成型雇用による長期的な戦力確保を見据えた制度活用が求められる時代に入ったといえるでしょう。
3. 受け入れ上限42万人の根拠と分野別内訳のポイント
政府が今回示した素案では、育成就労制度による外国人の受け入れ上限を「令和9年度から2年間で約42万6,000人」と明示しました。これは技能実習制度に代わる制度としては初の“受け入れ人数の上限設定”であり、制度の透明性を高める大きな一歩といえます。
この上限は、以下の要素を踏まえて試算されています:
- 各業界の人手不足見込み(2029年3月末まで)
- ITやDXによる生産性向上の見通し
- 国内人材の確保可能性
- 特定技能制度による受け入れ見込み
そのうえで、「それでもなお不足する労働力」を育成就労制度で補うという考え方です。
分野別に見ると、特に人材不足が深刻な業種が上位を占めています:
- 建設:12万3,500人
- 工業製品製造:11万9,700人
- 飲食料品製造:6万1,400人
- 林業:500人(最少)
これは、まさに“現場のリアルな労働力需要”を反映した数字であり、各分野における受入体制の整備が急務であることを物語っています。
今後は、分野ごとの上限をどのように運用するか、実態に即した人材配置ができるかが鍵となります。
4. 特定技能との関係|育成→特定技能への移行の仕組みとは?
育成就労制度は単独で完結する制度ではなく、明確に「特定技能1号への移行」を前提とした“ステップアップ型制度”として設計されています。
具体的には、育成就労で3年間の就労とスキル習得を経た後、試験等を経て特定技能1号へ移行し、さらに条件を満たせば特定技能2号での長期滞在・家族帯同も可能になります。
この「育成就労 → 特定技能1号 → 特定技能2号」という流れは、外国人にとっては長期キャリアを見据えた就労プランを描くことが可能となり、企業にとっても育てた人材を継続雇用できるという大きなメリットがあります。
制度面では、育成就労の段階での教育・評価が極めて重要になります。企業には:
- 教育計画書の作成
- 評価制度の運用
- 移行時の在留資格変更手続き
などが求められ、行政書士をはじめとする専門家の関与が不可欠になります。
また、企業側に「育成就労の3年間で終わらせる」という考えがあると、人材流出を招きやすく、せっかくの制度活用が逆効果になる可能性も。
中長期での人材活用を前提に、制度の趣旨に沿った運用を行うことが、企業の競争力を高める鍵となります。
5. 建設・製造業・飲食業など、企業への実務的影響とは
育成就労制度は、制度の設計だけでなく、企業の“現場対応”に大きな変化をもたらします。特に、今回の受け入れ上限数で最も多くの枠を割り当てられている建設業、製造業、飲食業界では、これまで以上に実務的な準備が求められます。
以下は、企業が直面する主な影響と対応ポイントです:
- 教育体制の整備義務
育成就労では、「教育」を主眼に置くため、企業はスキル習得計画を作成し、定期的に進捗を確認する必要があります。単なる現場任せでは不十分であり、教育担当者の配置や研修マニュアルの整備が必須です。 - 生活支援の提供
外国人が安心して就労・生活できるよう、住居の確保、生活オリエンテーション、医療アクセス、通訳支援などの体制を構築する必要があります。 - コンプライアンス対応の強化
厚労省や入管庁の指導・監査が強化される中、就労時間の管理、賃金支払い、社会保険加入の徹底が求められます。不正があれば、受け入れ停止処分など重大なペナルティが科される可能性も。 - 専門家との連携が不可欠に
新制度では、在留資格の申請、転籍の可否判断、キャリア移行の手続きなど、専門的な判断が必要な場面が多数存在します。行政書士や社労士との連携体制を持つことで、制度に準拠したスムーズな受け入れが実現します。
育成就労制度は、外国人材を「育てて活用する」時代の幕開けです。単なる労働力としてではなく、「将来の戦力」としてどう育成するか。その視点を持てるかどうかが、企業の人材戦略を大きく左右することになります。
6. 外国人雇用に関する法制度・在留資格の整理ポイント
育成就労制度を適切に活用するには、「法制度」と「在留資格」に関する正しい理解が欠かせません。制度が変われば、求められる対応も変わります。特に人事・総務担当者が押さえておくべき法的ポイントは以下のとおりです。
まず、育成就労は「在留資格制度」の一環であり、入管法に基づいて運用されます。受入企業は出入国在留管理庁の審査を経て、「適正な監理体制」があると認められなければなりません。つまり、誰でも簡単に外国人を雇用できる制度ではなく、法令を熟知し、適切に運用する責任があります。
次に重要なのが、「在留資格の種類と範囲」の理解です。育成就労は新たな在留資格として創設され、就労可能な業務内容が厳格に定められます。たとえば、建設分野で育成就労の在留資格を取得した人が、飲食業で働くことはできません。この“職種の限定”は、企業にとって採用・配属の柔軟性に制限があることを意味します。
さらに、在留資格の更新・変更のタイミングでは、評価・研修・勤務状況などの資料を求められるケースもあり、記録の整備と証拠の保存も非常に重要です。
法的リスクとして特に注意すべきは「不法就労助長罪」です。知らずに資格外の業務をさせてしまった場合でも、企業側に罰則が科されることがあります。そのため、雇用開始時から就労期間中まで、継続的な管理と見直しが求められます。
ニセコビザ申請サポートセンターでは、こうした在留資格関連のアドバイスや書類作成・申請代行を通じて、企業が制度に違反することなく、安心して外国人材を雇用できる環境をサポートしています。
7. 企業が整備すべき労務・教育・生活支援体制とは?
育成就労制度を活用する企業にとって、重要なのは“採用したら終わり”ではなく、“採用してからがスタート”であるという視点です。制度上、受け入れ企業には外国人労働者への「育成責任」が課せられており、それを実現するための社内体制の整備が求められます。
まず必要なのが、労務管理の徹底です。雇用契約書の作成には、業務内容、労働時間、賃金、休日など、詳細かつ明確な記載が必要です。また、在留資格に合致した内容でなければなりません。これに加え、勤務記録や給与支払い実績、社保加入状況などのエビデンスも定期的に整備しておく必要があります。
次に求められるのが、教育体制の整備です。育成就労では「段階的スキルアップ」が前提ですから、定期的な研修の実施、指導担当者の配置、教育計画書の策定と実施記録が求められます。ここで曖昧な対応をしてしまうと、特定技能への移行時にトラブルの原因となりかねません。
そして忘れてはならないのが、生活支援体制の構築です。外国人材が安心して働くには、生活面でのサポートも重要です。住居の紹介、行政手続きの補助、通訳・翻訳支援、トラブル時の相談窓口の設置など、単なる業務支援ではなく「人としての生活基盤」までをサポートする視点が求められます。
これらの体制を内製化するのが難しい場合は、行政書士や社労士といった専門家と連携することで、過不足なく制度対応が可能になります。
8. 当事務所のサポート領域|制度設計・申請・トラブル対応まで
育成就労制度は従来の制度と比較しても要件が複雑化しており、制度の趣旨を理解しながら正しく対応しなければ、制度違反や行政指導のリスクも高まります。そのため、初期段階から行政書士など専門家のサポートを受けることが、安定した外国人雇用の第一歩となります。
ニセコビザ申請サポートセンターが提供できる主な支援内容は以下のとおりです:
- 受け入れ企業の適格性診断と体制構築支援
- 育成就労に関する在留資格の申請書類作成・提出代行
- 教育計画書、労務管理体制の構築支援
- 特定技能への移行時の書類整備と手続き支援
- 入管対応・改善指導への助言・代理対応
特に、制度運用が始まったばかりの初期段階では、企業・人事担当者が見落としやすい“落とし穴”が数多く存在します。「制度には詳しくないが採用したい」「不許可にならないようにしたい」といったニーズに対して、現場と制度をつなぐ存在として当事務所が機能を果たします。
また、外国人側との言語ギャップや文化的な違いに配慮した書類設計・説明も必要な場面があり、そこでも行政書士の経験が活きます。
自社のリソースだけでは限界を感じる場合、外部の専門家と早期に連携することで、無理なく制度活用し、トラブルを未然に防ぐ体制が整います。
9. 外国人材にとっての育成就労|「選ばれる国・職場」とは何か?
育成就労制度の本質的な目的は、“外国人材が日本で働き、成長し、活躍できる社会の実現”です。つまり、外国人の立場から見た「働きやすさ」や「将来展望のあるキャリア設計」がなければ、制度そのものが形骸化してしまいます。
過去の技能実習制度では、「過剰な拘束」「転職の自由なし」「劣悪な住環境」などが問題視され、日本という国のイメージを損ねる事例が少なくありませんでした。
育成就労制度では、外国人本人にもより高い“主体性”が求められると同時に、「選ばれる職場づくり」を実現できる企業が生き残っていく時代です。
たとえば、
- 公平で分かりやすい評価制度
- 昇給やキャリアアップの明確な仕組み
- 日本語学習や資格取得支援
- 家族との面会や生活支援の充実
といった配慮がなされている企業には、自然と優秀な外国人材が集まってきます。
また、SNSや母国のネットメディアで情報が広く共有される今、企業の評判は国境を超えて伝わります。だからこそ、“制度を守るだけ”ではなく、“働きたくなる企業づくり”こそが、今後の外国人雇用の競争力となるのです。
育成就労制度をただの人材確保の手段にとどめず、企業ブランディングやダイバーシティ推進の一環として位置づけることが、真に制度を活かす道だといえるでしょう。
10. まとめ:新制度に適応する企業こそ、人材不足時代を生き抜ける
育成就労制度と特定技能制度を合わせた外国人材受け入れの枠組みは、今後の日本社会にとって“持続可能な労働力戦略”の柱となるものです。
123万人という大規模な受け入れ見込みの中で、「選ばれる企業」と「選ばれない企業」の二極化が進むことは間違いありません。だからこそ、今この制度が始まる初期段階で、しっかりと準備を整えることが、今後10年、20年の人材戦略に大きな影響を与えるのです。
制度は変化します。しかし、その制度をどう活かすかは企業次第。法令を守るのは当然として、そのうえで外国人材が安心して働き、成長できる環境を整えることが、企業の信頼と価値を高めていきます。
ニセコビザ申請サポートセンターは、行政書士として、私たちは制度設計から実務支援、入管対応、外国人との信頼関係構築まで、トータルでのサポートを行っています。
「制度が複雑でよく分からない」 「初めてなので一から教えてほしい」 「既に採用しているが不安がある」
そんな企業様は、ぜひ一度ご相談ください。制度に強い専門家とともに、外国人雇用の新時代を一歩先へ進みましょう。
