2026年2月24日、出入国在留管理庁が、在留資格「技術・人文知識・国際業務(技人国)」における重要な制度変更を行うという報道がされました。これは、3月9日から、技人国の外国人を派遣労働で受け入れる際、派遣元と派遣先の双方に誓約書の提出が義務付けられる、とのことです。

この制度変更は、外国人材の適正な雇用管理を強化するための重要な一歩です。しかし、施行まで時間がない中、多くの企業や外国人の方々が「何をすればいいのか」「自社は大丈夫か」と不安を感じていることと思います。

本記事では、行政書士として多くの外国人雇用案件に携わってきた経験から、今回の制度変更の背景、具体的な内容、企業が取るべき対応、そして外国人の方々が知っておくべきポイントを詳しく解説します。

なぜ今、誓約書義務化なのか?―深刻化する技人国の資格外活動

技術・人文知識・国際業務(通称:技人国)は、日本で最も利用者が多い就労系在留資格の一つです。理工系の技術職や、法律・経済・翻訳・通訳・海外取引などのホワイトカラー業務を対象とし、原則として大卒レベルの専門知識が求められます。

近年、人手不足を背景に技人国の在留資格を持つ外国人が急増しています。特に人材派遣業界では、技人国の外国人を派遣労働者として活用するケースが増えてきました。

しかし、ここに大きな問題が潜んでいました。

問題の実態:「専門職」が「単純労働」に従事している現実

出入国在留管理庁や自治体、そして私たち行政書士が現場で確認している実態は深刻です:

  • 派遣元が「技人国でも単純作業は可能」と誤った説明を行う
  • 派遣先で資材運搬、梱包、工場ラインでの単純作業に従事
  • 契約書には「システム開発補助」とあるが、実際は単なるデータ入力
  • 「専門業務」として契約しながら、大半が単純作業

こうしたケースは、明確な入管難民法違反(不法就労助長罪)に該当する可能性があります。

政府の動き:外国人政策の基本方針転換

政府は2026年1月23日、外国人政策の新たな基本方針を決定しました。その中で技人国について「受け入れ機関で専門的な業務に従事することを確保するための方策を検討」と明記されました。

さらに、自民党の外国人政策本部が1月にまとめた提言では「派遣先で専門的な業務に従事させることを、派遣元に受け入れ時に誓約させる」という具体的な方策が示されていました。

今回の誓約書義務化は、こうした政策転換の具体化です。

誓約書制度の具体的内容―何を誓約するのか?

3月9日から施行される誓約書制度の内容を詳しく見ていきましょう。

誓約書の提出義務者

  1. 派遣元企業(派遣会社)
    技人国の外国人を派遣する人材派遣会社
  2. 派遣先企業(受入企業)
    技人国の外国人を派遣労働者として受け入れる企業

双方が誓約書を提出することで、責任の所在を明確化します。

誓約書の内容

誓約書では、以下の点を確約することが想定されます:

専門的な業務に従事させること
派遣先において、技人国の在留資格で認められる専門的・技術的業務に従事させる

申請内容に虚偽がないこと
外国人が在留資格申請時に提出した業務内容や雇用条件に虚偽がない

就労内容を正確に理解していること
派遣元・派遣先の双方が、外国人の業務内容と在留資格の要件を正確に理解している

虚偽申請が判明した場合のリスク

誓約書に虚偽の記載があったり、実際には専門的業務に従事させていなかったりすることが判明した場合:

  • 外国人本人: 在留資格の取り消し、在留期間更新の不許可
  • 派遣元企業: 不法就労助長罪による刑事罰(3年以下の懲役または300万円以下の罰金)、事業許可への影響
  • 派遣先企業: 不法就労助長罪による刑事罰、取引先からの信用失墜、採用活動への悪影響

技人国で認められる業務・認められない業務の判断基準

誓約書を提出する前に、まず理解すべきは「技人国で何が認められ、何が認められないか」です。

技人国で認められる業務(専門的・技術的分野)

【理工系(技術)】

  • システム開発・設計・プログラミング
  • 機械設計・CAD業務
  • 品質管理(専門知識を要するもの)
  • 技術的な研究開発
  • 技術営業・技術サポート

【文系(人文知識)】

  • 経理・財務(専門的判断を伴うもの)
  • 法務・コンプライアンス業務
  • マーケティング戦略立案
  • 人事・労務管理(専門的業務)
  • 貿易実務・企画調整

【国際業務】

  • 翻訳・通訳
  • 海外取引の企画・調整・折衝
  • 語学教育
  • 国際的な広報・宣伝

技人国で認められない業務(単純労働)

× 製造ラインでの単純組立作業
× 資材・製品の運搬・搬入
× 清掃・片付け
× 単純なデータ入力(専門的判断を伴わない)
× 倉庫での仕分け・梱包
× 接客・販売(専門性を伴わない)
× 単純な事務作業

判断に迷う場合は、専門家に相談することをお勧めします。

派遣元企業が今すぐ取るべき対応

人材派遣会社として技人国の外国人を派遣している企業は、3月9日までに以下の対応が必要です。

1. 現在派遣中の技人国外国人の全件レビュー

□ 派遣中の技人国外国人のリストアップ
□ 各人の在留資格と派遣先での業務内容の確認
□ 契約書記載の業務と実際の業務の整合性チェック
□ 専門的業務と単純作業の比率確認

2. 派遣先企業との契約内容の見直し

□ 業務内容の明確化(具体的にどんな業務を行うか)
□ 専門性の確認(大卒レベルの知識・技能を要する業務か)
□ 契約書ひな型の改訂
□ 派遣先への説明・周知

3. 営業担当者・コーディネーターへの教育

□ 技人国の在留資格要件の理解
□ 認められる業務・認められない業務の判断基準
□ 誓約書制度の内容と重要性
□ 不法就労助長罪のリスク
□ 定期的な研修の実施

4. 誓約書提出プロセスの社内整備

□ 誓約書のフォーマット準備
□ 提出フロー・承認プロセスの構築
□ 記録・管理体制の整備
□ 期限管理システムの導入

5. リスク高案件への対応

現時点で「専門的業務とは言い難い」案件がある場合:

  • 速やかに業務内容の見直し
  • 派遣先との再契約・業務変更
  • 必要に応じて派遣終了・別の在留資格への変更検討
  • 行政書士等専門家への相談

派遣先企業が今すぐ取るべき対応

派遣労働者として技人国の外国人を受け入れている企業も、対応が必要です。

1. 受け入れている技人国外国人の業務内容確認

□ 現在受け入れている技人国外国人のリストアップ
□ 各人の実際の業務内容の確認(現場ヒアリング)
□ 派遣契約書との整合性チェック
□ 専門性の有無の判断

2. 現場管理者への周知徹底

□ 技人国の在留資格要件の説明
□ 単純作業への配置禁止の周知
□ 誓約書制度の説明
□ 違反時のリスク共有

3. 業務配置の見直し

専門的業務が確保できない場合:

  • 業務内容の再設計
  • 他の部署への配置転換
  • 派遣元との再協議
  • 受け入れ継続の可否判断

4. 派遣元との連携強化

□ 定期的な業務内容の報告
□ 問題発生時の速やかな相談
□ 契約内容と実態の乖離防止
□ 誓約書の共同確認

5. 社内体制の整備

□ 外国人派遣労働者管理責任者の明確化
□ 定期的なモニタリング体制
□ 相談窓口の設置
□ 記録・報告の仕組み構築

在日外国人の方へ―あなた自身が確認すべきこと

技人国の在留資格で派遣労働者として働いている外国人の皆さんへ。この制度変更は、あなた自身に直接関わる重要な問題です。

あなたの今の仕事を確認してください

以下の質問に答えてみてください:

  1. あなたの在留資格は「技術・人文知識・国際業務」ですか?
    → 在留カードを確認してください
  2. あなたは派遣労働者として働いていますか?
    → 雇用主が派遣会社で、別の企業で働いている場合が該当します
  3. あなたの今の仕事は、専門的な業務ですか?
    → 大学で学んだ知識や、専門的な技能を活かせていますか?
  4. 契約書に書かれた仕事と、実際の仕事は同じですか?
    → 「システム開発」と書いてあるのに、実際は単純なデータ入力だけ、ということはありませんか?
  5. 単純作業がメインになっていませんか?
    → 資材運搬、梱包、清掃、機械的な作業が業務時間の大半を占めていませんか?

「派遣会社が大丈夫と言った」は通用しません

残念ながら、一部の派遣会社は「技人国でも単純作業は可能」「少しくらい大丈夫」と誤った説明をすることがあります。

しかし、在留資格を失うのは、派遣会社ではなく、あなた自身です。

在留資格が取り消されると:

  • 日本に滞在できなくなる
  • 強制退去(国に送還される)
  • 5年〜10年間、日本に入国できなくなる
  • 日本での仕事やキャリアがすべて失われる

不安があれば、すぐに相談してください

「今の仕事が技人国で認められるか不安」
「契約と違う仕事ばかりさせられている」
「派遣会社に相談しても対応してくれない」

こうした不安があれば、すぐに専門家に相談してください。

相談先:

  • 行政書士(在留資格の専門家)
  • 外国人在留支援センター(FRESC)
  • 法テラス
  • 各自治体の外国人相談窓口
  • 労働基準監督署(労働条件の問題)

早めに相談すれば、解決の道があります。

誓約書制度の実務運用―いつ、どのように提出するのか

提出のタイミング

  1. 新規の在留資格認定証明書交付申請時
    海外から新たに技人国の外国人を派遣労働者として受け入れる場合
  2. 在留資格変更許可申請時
    他の在留資格から技人国に変更し、派遣労働に就く場合
  3. 在留期間更新許可申請時
    すでに技人国で派遣労働している外国人の更新時

提出先

出入国在留管理局(入管)への申請時に、他の必要書類とともに提出します。

誓約書の効力期間

在留期間と連動します。在留期間が更新される際、改めて誓約書の提出が必要になると考えられます。

記録の保管

派遣元・派遣先ともに、誓約書の写しを保管し、いつでも提示できるようにしておくことが推奨されます。

派遣と直接雇用―どちらが適切か?

今回の制度変更を機に、「派遣ではなく直接雇用に切り替えるべきか」と検討する企業も増えるでしょう。

派遣のメリット

  • 雇用調整の柔軟性
  • 採用・労務管理の負担軽減
  • 専門的なマッチング支援

派遣のデメリット(特に技人国)

  • 業務内容の制約が厳しい
  • 誓約書による管理負担
  • 派遣元・派遣先の責任分担の複雑さ
  • コンプライアンスリスクの増大

直接雇用のメリット

  • 業務配置の柔軟性(範囲内で)
  • 長期的な育成・定着
  • コミュニケーションの円滑化
  • 企業文化への浸透

直接雇用のデメリット

  • 採用・労務管理の負担
  • 在留資格申請の責任
  • 雇用リスクの負担

企業の事業特性、外国人材の活用方針、コンプライアンス体制などを総合的に判断して、最適な雇用形態を選択することが重要です。

よくある質問(FAQ)

Q1. 誓約書を提出しないとどうなりますか?
A. 在留資格の申請が不許可になる可能性が高いです。また、すでに就労している場合でも、更新時に不許可となる可能性があります。

Q2. 過去に派遣した技人国の外国人についても遡って提出が必要ですか?
A. 3月9日以降の申請(更新を含む)から適用される見込みです。すでに在留資格を取得している外国人について、直ちに提出が必要というわけではありませんが、次回の更新時には必要になります。

Q3. 誓約書のフォーマットは決まっていますか?
A. 出入国在留管理庁から正式なフォーマットが示されることが想定されます。施行日までに確認してください。

Q4. 派遣先が複数ある場合、すべての派遣先から誓約書が必要ですか?
A. はい、派遣先ごとに誓約書が必要になると考えられます。

Q5. 誓約書提出後に業務内容が変わった場合はどうすればいいですか?
A. 速やかに入管に報告し、必要に応じて在留資格変更許可申請や就労資格証明書交付申請を行う必要があります。

Q6. 技人国以外の在留資格(特定技能など)でも誓約書は必要ですか?
A. 今回の制度は技人国が対象です。他の在留資格については、それぞれの制度に従った手続きが必要です。

専門家に相談すべきタイミング

以下のような状況では、迷わず専門家(行政書士)に相談してください。

【派遣元企業】

  • 現在派遣中の技人国外国人の業務内容が適切か判断できない
  • 誓約書の記載内容に不安がある
  • 派遣先との契約内容をどう見直すべきか分からない
  • 社内体制をどう整備すべきか相談したい

【派遣先企業】

  • 受け入れている外国人の業務が技人国で認められるか不明
  • 派遣元から誓約書への署名を求められたが内容に不安
  • 業務配置を見直すべきか判断したい

【外国人個人】

  • 今の仕事が在留資格に合っているか不安
  • 契約と違う仕事をさせられている
  • 派遣会社に相談しても対応してくれない
  • 在留資格が取り消されないか心配

まとめ―適正な派遣労働の実現に向けて

3月9日からの誓約書義務化は、技人国における派遣労働の適正化に向けた重要な一歩です。

企業の皆様へ

この制度変更を、単なる「規制強化」と捉えるのではなく、「適正な外国人雇用管理を構築する機会」として前向きに取り組んでいただきたいと思います。

短期的には手間や負担が増えるかもしれません。しかし、長期的には:

  • 企業のコンプライアンス体制強化
  • 外国人材の定着率向上
  • 取引先・顧客からの信頼獲得
  • 持続可能な外国人雇用の実現

につながります。

外国人の皆様へ

あなたの在留資格と仕事内容を正しく理解し、自分自身を守ってください。不安があれば、早めに相談することが大切です。

私たちにできること

ニセコビザ申請サポートセンターは、行政書士として、私は外国人材と企業の「適正な雇用」を支えたいと思っています。

複雑な在留資格制度を分かりやすく説明し、企業と外国人の双方が安心して働ける環境づくりに貢献したい。

3月9日まで時間は限られていますが、今からでも準備は間に合います。

外国人雇用や在留資格についてのご相談は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。初回相談は無料です。

あなたの「これで大丈夫?」を「大丈夫です」に変えるお手伝いをいたします。

※本記事は2026年2月24日時点の以下の報道記事に情報に基づいています。最新情報は出入国在留管理庁の公式発表をご確認ください。

参考記事: https://news.yahoo.co.jp/articles/006e93bed42ff6f9fbf3bfdc35de9622a6c073ba