2024年7月、英語検定試験「TOEIC(トーイック)」において、過去最大規模の不正が明らかになりました。
試験を運営する「国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)」が発表したところによると、
2023年5月から2025年6月にかけて、計803人の不正受験が確認されました。
特に注目すべきは、この不正の多くが中国人組織による替え玉受験である疑いがあるという点です。
本記事では、事件の概要とともに、外国人を雇用する企業が抱えるリスクと
今後求められる対応策について、行政書士の視点から詳しく解説します。
替え玉事件の発端と背景
この事件の発端は、2024年5月、東京都板橋区のTOEIC試験会場にて、
中国籍の京都大学大学院生が替え玉受験をしようとして現行犯逮捕されたことでした。
O被告(27)は、「中国語で『試験を受けたら報酬を渡す』というメッセージが届いた」と供述しており、警視庁は中国人組織が背後に存在していた可能性が高いと見ています。
また、IIBCによると、不正受験者は大学院生と同じ、もしくは酷似した住所で申し込まれていたケースが多く、組織的な申し込み・実行が行われていたと推察されています。
不正の影響範囲と処分内容
今回の不正に関与したとされる803人に対しては、以下の措置が取られました。
- TOEICスコアの無効化
- 5年間の受験資格剥奪
スコアが無効化されることにより、就職活動や在留資格の申請などに影響が出る可能性があり、
また、企業側もスコアに基づいて採用していた場合には、信頼性の再確認が求められる事態となります。
外国人雇用企業にとってのリスク
外国人材を雇用する多くの企業が、英語スキルの証明としてTOEICスコアを重視しています。
特に、貿易業務、外資系企業、IT、観光・接客業などでは、「英語力があること」を採用基準とすることも少なくありません。
しかし、今回のような不正が横行してしまうと、企業は「正規のスコアかどうか」を見極めなければならない責任を負うことになります。
また、不正取得されたスコアを基にビザを申請した場合、在留資格の審査において問題とされる可能性もあり、企業としても慎重な対応が求められます。
企業が今、取り組むべき具体策
今回の件を教訓に、外国人材を採用・管理する企業は以下のような取り組みを検討すべきです。
1. 英語スコアの裏付け確認
スコアだけに頼らず、面接時に英語での簡易会話を行う、実務テストを設けるなどして
「実力が伴っているか」を直接確認しましょう。
2. 不正防止に関する意識づけ
外国人社員に対しても、日本の社会では不正が重大な問題として扱われることを
しっかりと伝える機会を設けることが大切です。
3. 採用フローの見直し
採用時にTOEICスコアを重視する場合は、受験日、申込者情報、会場なども確認することが推奨されます。また、本人に「どのようにスコアを取得したか」をヒアリングすることも有効です。
4. 行政書士との連携による法的リスクの確認
行政書士は、在留資格の取得や更新の場面で、英語スコアをどのように扱うべきか
法的観点からアドバイスすることができます。
信頼できる人材確保のために
外国人材の採用は、企業にとって大きな戦力となる一方で、文化や制度の違いがもたらすリスクも存在します。
TOEICスコアだけでなく、面談、業務実績、就労意欲、そして何よりも誠実さに目を向けることが
信頼できる人材採用の第一歩です。
今回の事件は、TOEICの制度そのものの問題というよりも、一部の不正利用によって真面目な受験者や企業までもが迷惑を被る構造が露呈したと言えるでしょう。
行政書士としてのサポート体制
当事務所では、外国人の在留資格申請や企業の雇用体制づくりに関するご相談を多数いただいております。
- TOEICスコアの取扱いに関する入管提出書類のチェック
- 書類の整合性確認
- 採用フローの見直し支援
- 雇用トラブルリスクの回避アドバイス
制度の変化や世間の動向に応じて、外国人雇用のあり方を定期的に見直すことが、
企業の持続的な成長につながります。
まとめ|採用は「スコア」より「信頼性」
TOEIC替え玉事件は、スコアの数字だけでは測れないリスクを改めて浮き彫りにしました。
企業が外国人材と信頼関係を築くためには、「何を見て判断するか」を見直す良い機会です。
不正を見抜く目を養うだけでなく、
正しく頑張っている外国人が報われる社会をつくるためにも、
公正で丁寧な採用・管理体制が求められます。
ご不明な点やお悩みがあれば、お気軽に行政書士にご相談ください。