日本語が通じない子どもたちが、急激に教室へ押し寄せています。
学校現場では、授業が止まり、教員や支援員が翻訳機を片手に奔走し、混乱の渦が日常になりつつあります。

そんな中で、外国人労働者を雇用する企業の皆様にとって、
「これは学校の問題」だと思っていませんか?

実はこの問題、企業にも直結しています。
なぜなら、教育が行き届かないことで、社員の子どもたちが社会から孤立し、
家庭のストレスが増え、結果として社員本人のパフォーマンスにも影響が出るからです。

ここ数年、在留資格「技術・人文知識・国際業務」「特定技能」「経営・管理」などの制度整備によって、
外国人の雇用はより身近なものとなりました。
しかしその一方で、「生活」「教育」の整備は大きく後れを取っているのが実情です。

行政書士として、私は日々、外国人の在留資格やその家族の相談に乗っています。
「学校に馴染めない」「日本語がわからないから先生に怒られる」「帰国したい」――
そんな子どもたちの声を直接聞くことも珍しくありません。

https://news.yahoo.co.jp/articles/579c15b5da2bdff14d3d6e7a2332b17674f6e269

では、企業にできることは何でしょうか?
それは、単なる雇用の受け皿としての役割から一歩進んで、
「教育インフラの一端を担う」意識を持つことです。

企業が社員とその家族の生活、そして教育を支える仕組みを作ることが、
結果的に、離職率の低下、生産性の向上、企業ブランドの向上につながります。

以下では、企業がどのように支援に関われるのか、
また、行政書士としてどのようにその支援を後押しできるのかを詳しく解説していきます。

1. はじめに:外国籍児童の急増がもたらす現実

今、日本の教育現場が静かにパンクし始めています。 その主な原因のひとつが、「日本語が話せない外国籍の子どもたちの急増」です。 教室で教師の言っていることがわからず、じっと座っていられない、あるいは突然教室から出て行ってしまう――そんな子どもたちの存在が、学校全体の学びの環境に大きな影響を与えています。

文部科学省の統計によれば、日本語指導が必要な児童生徒の数はこの10年で約1.9倍に増加しました。 授業が進まない、教員がマンツーマンで対応せざるを得ない、といった現場の悲鳴が各地から聞こえてきます。 しかし、もっと深刻なのは、その子どもたち自身が「置いていかれている」という現実です。

外国にルーツを持つ子どもたちが、日本の教育制度の中に適応するには、日本語の習得が絶対条件です。 しかし、支援体制が整っていない中では、日本語が話せないまま教室に在籍し、「ただ座っているだけ」という状況になりかねません。 それでは、本人の成長にも、クラス全体の学びにも悪影響を及ぼします。

今、教育現場だけでなく、企業や自治体、そして私たち行政書士を含めた支援体制全体が、この問題に真剣に向き合う必要があります。 本稿では、この問題の現状と背景、そして企業が果たすべき役割について、深く掘り下げていきます。

2. データが示す異常事態:10年で1.9倍の増加

文部科学省が発表したデータによると、日本語指導が必要な児童生徒数は2023年時点で69,123人。 これは約10年前の2008年(35,000人前後)と比べて、ほぼ1.9倍に増加した数字です。 このうち、外国籍の子どもは約8割を占めています。

この急激な増加の背景には、2015年の入管法改正による在留資格の緩和や、技能実習制度・特定技能制度の導入があります。 外国人労働者の受け入れが拡大した結果、その家族や子どもたちの来日も増えたのです。

一方で、教育現場の体制はこの変化に追いついていません。 日本語教育のための「特別の教育課程」制度があるものの、対応時間は年間10〜280単位と幅が広く、支援の質や量は自治体や学校によってまちまち。

現場では、そもそも日本語教育の専門人材が不足しており、制度があっても実行できないという声が多数です。 「制度はあるけど使えない」――これが現実なのです。

文科省は2026年度までに、日本語指導担当教員を”児童18人に1人”の割合で配置する方針ですが、現状はその足元にも及んでいないのが実情です。

このように、制度と現実のギャップがますます広がっており、教育現場の混乱は今後さらに加速する恐れがあります。

3. 日本語支援の限界:学校だけでは支えきれない

実際に現場で日本語支援を行っている「日本語支援員」の労働環境は、非常に過酷です。 1人の支援員が1日で3校以上を掛け持ち、昼食もとらずに移動するというケースも少なくありません。 公立学校は駅から遠い場所も多く、徒歩や自転車での移動が当たり前。 それでも報酬は非常に低く、専門性の高さに見合った待遇とは言えません。

さらに、最近では児童の出身国が多様化し、日本語と併せて母語による指導も必要とされるようになってきました。 しかし、母語対応ができる人材は限られており、現実的には「その国の言葉が話せるだけ」で支援員として採用されることも珍しくありません。

日本語支援員の業務は教育にとどまりません。 保護者との通訳や生活支援、場合によっては行政との橋渡しなど、ソーシャルワーカー的な役割を担うことも多いのです。

その結果、教育の質にバラつきが出てしまい、せっかく支援を受けても日本語力が向上しない子どもも少なくありません。 教える側に専門知識がないまま、場当たり的な対応になってしまっていることが問題なのです。

学校単体ではこの状況を乗り越えることは難しく、民間との連携や行政レベルでの仕組みの整備が急務です。

4. 雇用する企業にも無関係ではない理由

「これは学校の問題」と考えている企業経営者や人事担当者も多いかもしれません。 しかし、社員の子どもが教育現場で孤立しているということは、その家庭内にもストレスが生じ、それは最終的に社員本人の仕事にも影響を及ぼします。

家庭での日本語が不十分なまま育つと、子どもとの会話も限定的になり、学業や社会生活に対する理解やサポートが困難になります。 子どもが学校に適応できないと、親としての不安や悩みが蓄積され、企業でのパフォーマンス低下や離職リスクの上昇にもつながるのです。

また、教育が行き届かないまま思春期を迎えた外国籍の子どもたちは、学力格差や進路選択の困難さを抱え、将来的に社会的孤立を深める恐れがあります。 これは地域全体の課題であり、地域に根差す企業にとっても看過できるものではありません。

さらに、企業のイメージや採用競争力にも影響があります。 「外国人に優しい企業」「社員の家族にも配慮してくれる職場」としての姿勢を打ち出すことで、国内外からの信頼を得ることができます。

このような観点からも、教育支援は企業が果たすべき「真の支援」として重要なテーマなのです。

5. 外国人社員とその家族への企業支援の必要性

企業が外国人を雇用する際、多くは「就労」部分の支援にとどまりがちです。
ビザの手続きや住宅の手配、給与計算など、労務管理として最低限必要な対応には慣れてきた企業も増えました。
しかし、見落とされがちなのが「家族」への支援、特に教育面でのサポートです。

外国人社員の多くは、家族とともに日本で生活しています。
その子どもたちが日本語を習得できず、学校に適応できないままでいると、家庭内のストレスは増加します。
そしてそのストレスは、社員本人の仕事への集中力、継続勤務へのモチベーションに直結します。

だからこそ、企業は「就労支援」から一歩進んだ「生活・教育支援」の視点を持つことが求められます。
たとえば、以下のような取り組みが実践可能です:

  • 外国人社員とその家族向けの生活ガイドブック(多言語対応)の提供
  • 学齢期の子どもを持つ家庭に対する、日本語学習支援サービスとの連携
  • 地域の教育支援団体や行政との橋渡しを担う相談窓口の設置
  • オンラインでの日本語学習プラットフォームの社内導入

また、日本語に課題のある社員本人にも、日本語学習の機会を提供することで、仕事上のコミュニケーション力向上にもつながります。
社員全体の連携強化や安全対策にも効果があります。

企業が自社の人的資本を守るためには、社員だけでなく、その家族を丸ごと支援する視点が不可欠です。
それが結果的に、企業の成長と継続雇用にも寄与するのです。

6. 行政書士として見てきた現場の声と課題

私は行政書士として、在留資格手続きの相談を日々受けています。
その中で、子どもの教育問題が関係する場面は年々増えてきています。
たとえば、在留資格「家族滞在」「定住者」などで来日した子どもたちの中には、日本語教育が全く整っていない地域に住んでいるケースもあります。

その結果、「進学が難しい」「学校に馴染めない」などの理由で不登校や帰国を余儀なくされる家族もいます。
このような問題が積み重なると、親の就労にも影響を及ぼし、企業側も離職や人材ロスというリスクに直面することになります。

企業側からすれば「そこまでは知らなかった」という事例がほとんどですが、結果的にそれが大きなリスクに発展することも少なくありません。

また、外国人社員の家庭が行政手続きで困っているケースにもよく出会います。
情報不足、多言語対応の不足、地域差などが混在し、対応が後手になりがちです。

行政書士としてできることは、単に手続きを代行するだけでなく、外国人社員の生活全体を見渡し、トラブルを未然に防ぐ体制を企業と一緒に構築していくことだと考えています。

7. 国の制度と現場の乖離:個別最適化では限界

現在、日本の日本語教育支援体制は市町村単位で整備されています。
しかし、実際には自治体によって対応力に大きな差があり、格差が顕著に現れています。
教育委員会がしっかり支援体制を整えている地域もあれば、まったくノウハウがなく、支援員すら確保できない自治体もあります。

このような「属人的・地域依存型」の体制では、全国的な課題には対応しきれません。
特に、外国籍の子どもが集中している都市部や、工場地域などでは現場が完全にパンク状態です。

一方で、文部科学省は「18人に1人の日本語指導担当教員配置」などの目標を掲げていますが、それは現場に実効性を持たせるレベルの支援にはなっていません。

本来であれば、国が主導して全国一律の基準を設け、教育機関と企業・自治体が連携できる枠組みを整えるべきです。
例えば、以下のような取り組みが必要です:

  • 全国共通の日本語教育カリキュラムの作成
  • 各都道府県に多言語対応可能な教育支援センターの設置
  • 外国籍児童の受け入れ専門校や中間支援施設の整備

こうした体制が整えば、どの地域に住んでいても一定レベルの教育支援を受けられる社会になります。
教育支援の格差をなくすことは、ひいては人材育成・経済の持続可能性にもつながる国家課題です。

8. 企業が果たすべき責任と役割とは?

これまで述べてきた通り、外国籍の子どもたちの教育問題は、企業にとっても「他人事」ではありません。
雇用主としての責任、そして地域社会の一員としての責任を果たすために、企業が担うべき役割は明確です。

第一に、外国人材を「使う」という考え方から、「共に育てる」「長く働いてもらう」視点への転換が必要です。
教育支援は、社員とその家族の日本社会への定着を促進し、企業への忠誠心を高める投資と考えるべきです。

第二に、CSR(企業の社会的責任)の観点からも、教育支援は今後さらに重視されるテーマとなるでしょう。
特にSDGsの目標4「質の高い教育をみんなに」や、目標10「人や国の不平等をなくそう」にも直結する取り組みです。

実際に、先進的な企業では以下のような施策を始めています:

  • 外国人社員の子ども向けの放課後日本語教室の設置
  • 地域のNPOとの連携による教育支援基金の創設
  • 多文化共生をテーマとした社内研修の導入

このような取り組みは、企業ブランディングやリクルーティングにおいても有利に働きます。
外国人だけでなく、日本人社員にとっても「多様性を受け入れる企業文化」として魅力を感じられるでしょう。

教育支援を通じて、企業は「雇用する側」としての責任を果たすだけでなく、「地域と未来をつなぐ存在」として、新しい価値を創出することができるのです。

9. 私たち行政書士ができること

外国人雇用に関わる業務の中で、行政書士が担う役割は「ビザ申請」だけではありません。
むしろ、外国人社員やその家族が日本で安心して暮らし、働き、学べるようにするための“生活支援のコーディネーター”としての役割こそ、今後ますます重要になってきます。

在留資格の相談は、その家庭の構成、子どもの年齢や学校の状況、将来的な定住希望の有無など、多くの生活情報と密接に関係しています。
たとえば「家族滞在」から「定住者」への変更を検討する際、子どもの学校適応状況や地域での生活基盤が問われるケースもあります。

このとき、教育機関との連携、地域の支援団体の紹介、日本語学習の場の確保といった「行政と民間のつなぎ役」として行政書士がサポートできるのです。

また、企業に対しても、以下のような支援を行うことが可能です:

  • 外国人社員および家族の在留資格管理や法的アドバイス
  • 教育支援団体や自治体窓口との連絡・調整
  • 社内における外国人対応マニュアルの作成支援
  • CSRやSDGsを意識した多文化共生施策の設計支援

これらはすべて、企業の法令遵守と人材定着率の向上を支える施策でもあります。
教育と雇用を分断するのではなく、一体のものとして捉え、その橋渡しをする存在として、私たち行政書士の役割が今まさに求められているのです。

10. まとめ:教育支援が、企業の未来を変える

外国籍の子どもたちの教育支援の課題は、学校だけに押しつけるのではなく、企業・地域・行政が一体となって解決していくべき、社会全体の問題です。
そしてその解決の鍵を握っているのが、企業の「生活支援」への姿勢です。

日本語がわからないまま授業に取り残される子ども。
その家庭で、親もまた不安と孤独を抱えながら働いている――。
そうした現実に、企業が正面から向き合うことで、外国人材の雇用は単なる「労働力確保」から「持続可能な成長戦略」へと変わっていきます。

教育支援への投資は、企業の生産性向上、社員のエンゲージメント強化、さらには地域社会との信頼構築にもつながります。

私たちニセコビザ申請サポートセンターは、その実現のために必要な法的・制度的支援、関係機関との連携構築をトータルでサポートします。

今、企業に求められているのは「人材を雇う覚悟」ではなく、「人材とともに生きる覚悟」です。

外国人雇用に携わるすべての企業様にとって、このテーマは避けて通れないものになっています。
もし、自社でできることがわからない、何から始めれば良いかわからないという場合は、まずは私たち専門家にご相談ください。

未来の企業価値は、どれだけ多様な人材と、その家族の人生を大切にできるかで決まります。
教育支援に取り組むことは、その第一歩となるのです。