2026年4月6日、日本経済新聞の報道により、出入国在留管理庁が「企業内転勤」の在留資格審査を厳正化したことが明らかになりました。この変更は、外国人社員を雇用する企業、特に海外拠点から日本本社への転勤を予定している企業にとって、非常に重要な政策変更です。

本記事では、行政書士の視点から、今回の審査厳格化の背景、具体的な変更内容、企業が取るべき対応策、そして実務上の注意点について詳しく解説します。

■ 企業内転勤ビザとは?基本を理解する

企業内転勤ビザ(正式名称:在留資格「企業内転勤」)は、外国の事業所に勤務していた外国人職員が、日本にある本店・支店・関連会社などに転勤する際に取得する在留資格です。

【対象となる職種】
・経営管理業務
・技術業務(エンジニア、IT技術者など)
・人文知識業務(マーケティング、財務、法務など)
・国際業務(通訳、翻訳、語学指導など)

【主な要件】
・転勤前に外国の事業所で1年以上の勤務経験があること
・日本で従事する業務が、上記の職種に該当すること
・日本人が従事する場合と同等額以上の報酬を受けること

■ なぜ今、審査が厳格化されたのか?

今回の審査厳格化の背景には、高市早苗政権が掲げる「在留外国人の適切な管理」という政策方針があります。

【政府の狙い】

  1. 在留資格の適正利用の確保
  2. 不正な在留を防止
  3. 外国人受け入れの透明性向上

近年、在留資格制度を悪用したケースや、実態と異なる申請が散見されることから、政府は在留資格審査全般の厳格化を進めています。企業内転勤ビザは、その第一歩と位置づけられています。

■ 具体的に何が変わったのか?審査の厳格化ポイント

2026年4月からの運用見直しにより、以下の点が厳格化されました。

【変更点1:来日前の勤務先に関する証明資料の提出】
従来は雇用契約書や在職証明書など、基本的な書類で審査が進むケースが多くありました。しかし今後は、以下のような詳細な資料が求められる可能性が高まります。

・給与明細(直近1年分)
・勤怠記録・出勤簿
・業務内容を示す具体的な資料(プロジェクト報告書、業務日報など)
・所属部署の組織図
・海外事業所の登記簿や営業許可証

【変更点2:本人の勤務実態に関する調査の強化】
書類だけでなく、実態調査が強化されます。具体的には:

・海外拠点への照会・確認
・本人へのヒアリング(場合により面接)
・過去の出入国記録との整合性確認
・SNSやオンライン上の情報との照合

【変更点3:審査期間の長期化】
審査が厳密になることで、審査期間が従来よりも長くなる可能性があります。標準処理期間(1〜3ヶ月)を超えるケースも想定されます。

■ 企業が今すぐ取るべき5つの対応策

【対応策1:社内の申請体制を見直す】
・ビザ申請の担当者を明確化
・海外拠点との連絡窓口を整備
・申請スケジュールの管理体制を構築

【対応策2:証拠資料の事前準備と保管】
・雇用契約書、給与明細などの原本を確実に保管
・業務内容を証明できる資料(メール、報告書など)をデータ化
・海外拠点の登記や許可証のコピーを常備

【対応策3:申請スケジュールの前倒し】
・従来より1〜2ヶ月早めに準備を開始
・余裕を持った転勤時期の設定
・ビザ取得前の渡航を避けるリスク管理

【対応策4:専門家との連携強化】
・行政書士や弁護士への早期相談
・定期的な法改正情報の収集
・社内研修の実施(人事担当者向け)

【対応策5:海外拠点への周知徹底】
・本社から海外拠点へ新しい審査基準を通知
・必要書類リストの共有
・英語・現地語での説明資料作成

■ 申請時に注意すべき実務上のポイント

【ポイント1:職務内容の一貫性】
海外での職務と日本での職務に一貫性があることを明確に示す必要があります。職種が大きく変わる場合、企業内転勤ではなく、別の在留資格(技術・人文知識・国際業務など)が適切な場合もあります。

【ポイント2:給与水準の妥当性】
日本人と同等以上の報酬であることが求められます。低すぎる給与設定は審査上マイナスになります。

【ポイント3:企業の信頼性】
・企業規模、事業内容、財務状況なども審査対象
・上場企業や優良企業は審査がスムーズな傾向
・新設企業や小規模企業は追加資料を求められやすい

【ポイント4:書類の正確性】
・誤字、記載ミス、矛盾は厳禁
・翻訳文書は正確性が重要(翻訳証明を添付)
・すべての書類の日付、署名を確認

■ よくある質問(FAQ)

Q1:現在申請中の案件も影響を受けますか?
A:2026年4月以降に審査が進行している案件については、新しい基準が適用される可能性があります。追加資料の提出を求められる場合もあります。

Q2:すでに企業内転勤ビザで在留している社員の更新も厳しくなりますか?
A:更新申請時にも、現在の勤務実態を証明する資料の提出が強化される可能性があります。

Q3:他の就労ビザにも影響はありますか?
A:政府は在留資格審査全般の厳格化を進めているため、技術・人文知識・国際業務、経営・管理などの在留資格にも波及する可能性があります。

Q4:審査が厳しくなったら、取得が難しくなりますか?
A:適切な書類を準備し、実態に即した申請を行えば、取得自体は可能です。ただし、準備に時間がかかること、審査期間が長くなることは覚悟が必要です。

■ 今後の展望:グローバル人材受け入れ政策の方向性

日本政府は「開かれた日本」を掲げながらも、在留管理の適正化を重視する姿勢を強めています。今後予想されるのは:

・他の就労ビザへの審査厳格化の拡大
・在留外国人のモニタリング強化
・雇用企業への指導・監督の強化
・優良企業認定制度の拡充(カテゴリー1・2企業の優遇)

企業にとっては、コンプライアンス体制の整備が、優秀なグローバル人材を確保するための必須条件となります。

■ まとめ:企業が目指すべきは「適正な受け入れ体制の構築」

今回の企業内転勤ビザの審査厳格化は、決して外国人受け入れを否定するものではありません。むしろ、適正な手続きを踏んだ企業が、安心して外国人社員を受け入れられる環境を整備するための措置と捉えるべきです。

【企業が今、すべきこと】
✓ 最新の審査基準を理解する
✓ 社内の申請体制を整備する
✓ 証拠資料の準備と管理を徹底する
✓ 専門家との連携を強化する
✓ 海外拠点との情報共有を密にする

外国人社員の受け入れは、企業のグローバル展開において不可欠な戦略です。適切な準備とプロフェッショナルなサポートがあれば、この変化を乗り越えることは十分可能です。

ビザ申請や在留資格でお困りの際は、実務経験豊富な行政書士にご相談ください。最新の法令と実務に精通した専門家が、貴社のグローバル人材戦略をサポートいたします。

【参考】
・日本経済新聞 2026年4月6日「企業の外国人転勤者、来日前の勤務証明必要に 政府の在留審査厳正に」
・出入国在留管理庁ウェブサイト
・入管法関連法令

【記事元URL】
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA061A20W6A400C2000000/