はじめに:深刻化する外国人労働者の住居不足
2024年10月時点で、日本における外国人労働者数は約230万人に達しました。これは10年前と比較して約3倍という急増ぶりです。人手不足が深刻化する日本において、外国人労働者はもはや日本経済を支える不可欠な存在となっています。
しかし、この急速な増加の陰で、深刻な問題が横たわっています。それが「住居確保の困難さ」です。
Yahoo!ニュース(2026年2月19日配信)によれば、外国人が入居できる賃貸物件は全体のわずか15%程度。仲介大手エイブルホールディングスの調査では、全国で取り扱う17万5千件の賃貸住宅のうち、外国人が入居可能な物件は約2万6千件にとどまっています。
この記事では、ビザ申請・在留資格を専門とする行政書士の視点から、外国人労働者の住居問題の実態と、企業・外国人本人・不動産オーナーそれぞれができる解決策について詳しく解説します。
第1章:外国人労働者の住居問題の実態
1-1. 外国人が入居できる物件はわずか15%
不動産仲介大手のエイブルホールディングスが2024年7月時点で公表したデータによると、同社が全国で取り扱う約17万5千件の賃貸住宅のうち、外国人が入居できる物件は約15%にとどまっています。
これは、85%もの物件で外国人の入居が事実上制限されているということを意味します。
1-2. 家主の半数が外国人入居に拒否感
日本賃貸住宅管理協会が2022年度に実施したアンケート調査では、家主800人のうち「外国人の受け入れをしている」と回答したのはわずか約3割でした。
さらに注目すべきは、外国人への拒否感が「ある」と答えた家主が半数にのぼったという事実です。
1-3. 拒否の理由トップ3
家主が外国人入居を拒否する主な理由として、以下の3点が挙げられています:
①ゴミ出しや騒音などの生活ルールに関する不安
②家賃滞納への懸念
③外国語対応の難しさ
これらは決して根拠のない偏見ではなく、実際に過去にトラブルを経験した家主や、周囲からトラブル事例を聞いたことがある家主の「リスク回避」の心理から来ています。
第2章:行政書士として見る現場の実態
2-1. 「ビザは取れたけれど、住む場所がない」
私は日々、ビザ申請や在留資格の手続きをサポートしていますが、最も多い相談の一つが「在留資格は許可されたのに、住む場所が見つからない」というものです。
在留資格の申請には「住居の確保」が要件の一つとされることもあり、申請前に物件を探し始める方も多いのですが、不動産会社を何社回っても「外国人はNG」と断られ続けるケースが後を絶ちません。
2-2. 企業からの相談「優秀な人材を採用したのに…」
外国人を雇用する企業の人事担当者からも、深刻な相談が寄せられます。
「優秀な外国人材を採用できたのに、住む場所が見つからず、入社日が遅れている」
「不動産会社に何度も断られ、本人も会社も疲弊している」
「社宅を用意できない中小企業として、どうサポートすればいいかわからない」
特に中小企業の場合、大企業のように社宅や寮を用意することが難しく、外国人従業員が個人で賃貸物件を探さざるを得ない状況です。しかし、日本語が十分でない、保証人がいない、在留カードの提示だけでは信用してもらえないなど、様々な障壁があります。
2-3. 外国人本人の不安と困難
外国人本人からは、以下のような声が聞かれます:
「日本の賃貸契約のルールがわからない」
「保証人が必要と言われたが、日本に親族がいない」
「初期費用が高額すぎて驚いた」
「不動産会社で『外国人は無理』と言われ、理由も説明されなかった」
言葉の壁、文化の違い、制度の複雑さが重なり、住居探しは外国人にとって非常にストレスフルな経験となっています。
第3章:家主が抱える不安は正当か?
3-1. 生活ルールの違い
日本には独特のゴミ分別ルール、騒音に対する厳格な基準、共用部分の使い方など、外国人にとって理解しづらい生活習慣があります。
しかし、これらは「説明不足」が原因であることがほとんどです。適切に説明し、理解を促せば、多くの外国人はルールを守って生活します。
3-2. 家賃滞納リスク
家賃滞納については、実は日本人でも外国人でもリスクは存在します。
重要なのは、「国籍」ではなく「収入の安定性」「保証体制」です。正規雇用されている外国人労働者であれば、企業からの給与が安定しており、滞納リスクは決して高くありません。
また、現在は外国人向けの家賃保証会社も充実しており、適切な保証体制を整えることでリスクは大幅に軽減できます。
3-3. 言葉の壁
「外国語対応ができない」という不安は確かに存在します。
しかし、最近では多言語対応の不動産会社や、通訳サービスを提供する行政書士事務所も増えています。また、契約書の翻訳版を用意する、重要事項説明を多言語で行うなど、対応策は存在します。
第4章:企業ができる外国人従業員の住居サポート
4-1. 社宅・寮の提供
最も確実な方法は、企業が社宅や寮を提供することです。
大企業だけでなく、中小企業でも複数の外国人を雇用する場合は、一棟借り上げ型の社宅を検討する価値があります。
4-2. 不動産会社との連携
外国人雇用に理解のある不動産会社と提携し、物件情報を優先的に提供してもらう体制を作ることも有効です。
企業が「保証人」の役割を果たす、または企業名義で契約するという方法もあります。
4-3. 住居手当・初期費用補助
賃貸物件の初期費用(敷金・礼金・仲介手数料など)は、外国人にとって大きな負担です。
企業が初期費用の一部を補助する、または貸付制度を設けることで、従業員の経済的負担を軽減できます。
第5章:外国人本人ができる対策
5-1. 日本の賃貸契約の基礎知識を学ぶ
日本の賃貸契約には独特のルールがあります:
・敷金(退去時に返還される預け金)
・礼金(返還されない謝礼金)
・仲介手数料
・保証人または保証会社
・更新料(2年ごとが一般的)
これらを事前に理解しておくことで、スムーズな契約が可能になります。
5-2. 外国人向け不動産会社を利用する
最近では、外国人専門の不動産会社や、多言語対応している不動産会社が増えています。
これらの会社は外国人が入居可能な物件を多く取り扱っており、契約手続きもスムーズです。
5-3. 保証会社の活用
日本に保証人がいない場合でも、家賃保証会社を利用することで契約が可能になります。
外国人対応の保証会社も増えており、在留カードと収入証明があれば利用できるケースが多いです。
5-4. 生活ルールを積極的に学ぶ
入居前に、日本の生活ルール(ゴミ出し、騒音対策、共用部分の使い方など)を積極的に学ぶ姿勢を見せることで、家主の不安を軽減できます。
第6章:家主・不動産オーナーができること
6-1. 偏見を持たず、個別に判断する
「外国人だから」という理由で一律に拒否するのではなく、個別の状況を見て判断することが重要です。
正規雇用されている、保証体制がしっかりしている、日本語コミュニケーションが可能、などの条件を満たしていれば、安心して貸すことができます。
6-2. 生活ルールの多言語説明資料を用意する
ゴミ出しルール、騒音に関する注意事項などを、英語・中国語・ベトナム語などで用意しておくことで、トラブルを未然に防げます。
6-3. 緊急連絡体制の整備
何かあった時にすぐ連絡できる体制(管理会社、通訳サービス、行政書士など)を整えておくことで、家主の不安も軽減されます。
6-4. 外国人入居のメリットを理解する
外国人入居者は、実は以下のようなメリットもあります:
・長期居住の傾向がある(簡単に引っ越せないため)
・コミュニティを大切にする文化が多い
・空室リスクの軽減(外国人可物件は需要が高い)
第7章:今後の展望と必要な取り組み
7-1. 政策的な支援の必要性
国や自治体レベルでも、外国人の住居確保支援が必要です:
・外国人入居を受け入れる家主への補助金制度
・多言語対応の住宅相談窓口の設置
・トラブル時の調停サービスの充実
7-2. 不動産業界の意識改革
不動産業界全体で、外国人入居に対する理解を深め、対応力を高めることが求められます。
多言語対応、外国人向け物件情報の充実、保証体制の整備などが必要です。
7-3. 企業の責任と役割
外国人を雇用する企業には、「雇用したら終わり」ではなく、生活基盤の確保まで含めた責任があります。
住居サポートは、外国人材の定着率向上、生産性向上にも直結します。
7-4. 多文化共生社会への一歩
外国人労働者の住居問題は、単なる不動産の問題ではなく、日本が真の多文化共生社会を実現できるかどうかの試金石です。
「共に働き、共に暮らす」社会を実現するために、私たち一人ひとりができることがあります。
まとめ:住居確保は外国人雇用成功の鍵
外国人労働者が約230万人に達し、日本経済に不可欠な存在となった今、住居問題の解決は喫緊の課題です。
現状では外国人が入居できる物件はわずか15%に過ぎず、家主の半数が拒否感を持っているという厳しい現実があります。
しかし、この問題は「仕組み」と「理解」で解決できます:
【企業ができること】
・社宅・寮の提供
・住居手当・初期費用補助
・専門家との連携
【外国人本人ができること】
・日本の賃貸ルールの学習
・外国人向け不動産会社の利用
・保証会社の活用
【家主ができること】
・個別の状況での判断
・多言語説明資料の用意
・緊急連絡体制の整備
ビザ申請や在留資格取得は、外国人が日本で働き、暮らすための「スタートライン」です。しかし、本当のゴールは「安心して働き、暮らし続けられる環境」の実現です。
外国人従業員の住居確保でお困りの企業様、賃貸物件探しで苦労されている外国人の方、まずはお気軽にご相談ください。
専門家として、皆様の「働く場所」と「暮らす場所」の両方をサポートいたします。
参考記事:
「増加する外国人労働者、入居可能物件は15% 家主に多い拒否感」
朝日新聞(Yahoo!ニュース配信)2026年2月19日
https://news.yahoo.co.jp/articles/fc4e58bfcce963521809502cabe7f3fbb3ea44f4
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