はじめに:日本経済を支える「新たな現実」
2026年2月5日、京都市内で開催された第64回関西財界セミナー。関西経済連合会と関西経済同友会が主催するこのセミナーで、日本を代表する企業経営者たちが異口同音に語ったのは「外国人材なくして、もはや日本企業は成り立たない」という現実でした。
衆院選(2月8日投開票)では外国人政策が大きな争点となり、在留管理の厳格化や総量規制を掲げる政党もある中、経済の最前線にいる企業経営者たちの認識は全く異なるものでした。本記事では、関西財界セミナーで明らかになった日本企業の「本音」と、在日外国人や外国人雇用企業にとって今後ますます重要になるビザ申請・在留資格手続きのポイントを、行政書士の視点から詳しく解説します。
1. 関西財界セミナーで明らかになった「外国人材依存」の実態
1-1. 関西国際空港:従業員の13%が外国人
関西エアポートの三浦覚常務執行役員は、セミナーの中で「外国人の活躍なくして、空港の運営を支えることはできない」と明言しました。
関西国際空港で働く約1万8千人の従業員のうち、約2300人が外国人労働者です。これは全体の約13%に相当します。空港という日本の玄関口を支えているのは、まさに多国籍の人材なのです。
航空業界は24時間365日稼働する業種であり、グランドスタッフ、清掃、物流、飲食、小売など多様な職種で人材が必要です。日本人だけではこの膨大な人材ニーズを満たすことができず、外国人労働者が不可欠な存在となっています。
1-2. 建設業界:「外国人なくして成り立たない」
竹中工務店の来田一夫執行役員は、建設現場について「外国人なくして成り立たない状況」であり、外国人労働者が急増していると訴えました。
日本の建設業界は深刻な人手不足に直面しています。高齢化による技能労働者の減少、若年層の建設業離れなどが背景にあり、2024年には建設業就業者の約4人に1人が65歳以上という統計もあります。
このような状況下で、外国人技能実習生や特定技能外国人が建設現場を支える重要な戦力となっています。現場の作業員だけでなく、施工管理や設計分野でも外国人エンジニアの活躍が目立ち始めています。
1-3. 鉄道業界:メンテナンス分野で外国人採用を本格化
JR西日本の多田真規子取締役は、鉄道車両のメンテナンス分野でグループ会社が外国人社員の採用を開始したことを明かし、「将来の担い手として育成を重視している」と述べました。
鉄道は日本の社会インフラの根幹を支える産業です。しかし、車両メンテナンスのような高度な技術職においても人材不足が深刻化しており、外国人材の採用・育成が喫緊の課題となっているのです。
JR西日本のような大企業が外国人材の長期育成に本腰を入れ始めたことは、日本の雇用環境が大きく変化していることを象徴しています。
2. 経営層が語る「移民受け入れ」の必要性
2-1. 三菱UFJ銀行特別顧問:「移民10〜15%受け入れなければ成長はない」
三菱UFJ銀行の沖原隆宗特別顧問は、セミナーの中で踏み込んだ発言をしました。
「出生率や人口動態をみても、移民を10〜15%入れないと日本の成長はないと感じている」
日本の出生率は2023年に過去最低の1.20を記録し、少子高齢化は待ったなしの状況です。労働力人口の減少が続く中、経済成長を維持するためには外国人材の受け入れが不可欠だという認識が、金融業界のトップにも共有されているのです。
2-2. 大阪ガス:優秀な外国人の子供のための教育環境整備
大阪ガスの門脇あつ子執行役員は、「優秀な外国人の子供が学べるよう、インターナショナルスクールの整備などが必要」と指摘しました。
外国人材が日本で長期的に働き、定着するためには、本人の雇用環境だけでなく家族の生活環境も重要です。特に子供の教育は、外国人材が日本での就労を決断する上で最も重視する要素の一つです。
英語やその他の言語で教育を受けられる環境、母国の教育カリキュラムに沿った学習機会、大学進学のサポートなど、包括的な教育インフラの整備が求められています。
3. 企業経営の課題:日本型雇用制度と外国人材のミスマッチ
3-1. 三井住友トラストグループ:「55歳で給与が下がる制度は理解できない」
三井住友トラストグループの高倉透社長は、グループで働く外国人から「55歳や60歳で給与が下がる(日本の人事)制度は全く理解できない」との声が出ていることを明かしました。
日本企業の多くは、年功序列型の賃金制度を採用しており、一定年齢に達すると役職定年や再雇用制度により給与が大幅に下がる仕組みが一般的です。しかし、欧米をはじめとする多くの国では、年齢ではなく職務内容や成果に基づいて報酬が決まる「ジョブ型雇用」が主流です。
グローバル人材を本気で受け入れ、定着させるためには、日本企業の雇用慣行そのものを見直す必要があるという問題提起がなされたのです。
3-2. 外国人材が求める「公平で透明な評価制度」
外国人材の多くは、以下のような雇用環境を求めています。
- 年齢や勤続年数ではなく、能力と成果で評価される制度
- 昇進・昇給の基準が明確で透明性がある人事制度
- ワークライフバランスが尊重される働き方
- キャリアアップの機会が平等に与えられる環境
こうした期待と日本企業の現状にギャップがある限り、優秀な外国人材を引き留めることは難しくなります。
4. 衆院選での外国人政策の議論と経済界のスタンス
4-1. 政治の場での議論:厳格化と総量規制
2026年2月8日投開票の衆院選では、外国人政策が主要な争点の一つとなりました。
- 自民党:在留管理の厳格化を掲げる
- 一部政党:受け入れ人数や人口比率に上限を設ける「総量規制」を主張
- 一部政党:「移民政策の是正」を公約に掲げる
国民の間では、急激な外国人受け入れによる地域社会での摩擦や治安への懸念、社会保障制度への影響などを心配する声も根強くあります。
4-2. 経済界のスタンス:受け入れ拡大と環境整備の両立
一方、関西財界セミナーで示された経済界のスタンスは明確です。
「外国人材の受け入れは不可欠。ただし、日本社会に適応できるような環境整備を同時に進めるべき」
つまり、受け入れ数の制限よりも、受け入れた外国人が日本社会になじみ、地域と共生できるような仕組み作りこそが重要だという考え方です。
経済成長と社会の安定を両立させるためには、政治と経済界、そして市民社会が協力して、持続可能な外国人受け入れ政策を構築していく必要があります。
5. 在日外国人が知っておくべきビザ・在留資格の基礎知識
5-1. 在留資格の種類と就労可能範囲
日本で働く外国人は、必ず適切な在留資格を取得する必要があります。主な在留資格には以下のようなものがあります。
就労制限のない在留資格
- 永住者
- 日本人の配偶者等
- 永住者の配偶者等
- 定住者
就労が認められる在留資格(活動範囲に制限あり)
- 技術・人文知識・国際業務(いわゆる「就労ビザ」)
- 技能
- 特定技能(1号・2号)
- 技能実習
就労が原則認められない在留資格
- 留学
- 家族滞在
※資格外活動許可を得れば週28時間以内のアルバイトが可能
5-2. 在留資格の更新と変更
在留資格には有効期限があり、日本に継続して滞在するためには更新手続きが必要です。更新時期を逃すと不法滞在となり、強制退去の対象となる可能性があります。
また、転職や職務内容の変更により、現在の在留資格では対応できなくなる場合は、在留資格の変更申請が必要です。
5-3. 行政書士に相談するメリット
ビザ申請や在留資格の手続きは複雑で、必要書類も多岐にわたります。書類の不備や申請内容の不整合があると、不許可となるリスクがあります。
行政書士に相談することで、以下のようなメリットがあります。
- 最新の入管法令に基づいた正確な申請が可能
- 書類作成や翻訳のサポート
- 不許可リスクの事前診断
- 入国管理局とのやり取りの代行
- 万が一不許可になった場合の再申請サポート
6. 外国人を雇用する企業が押さえるべきポイント
6-1. 雇用前の確認事項
外国人を雇用する際は、以下の点を必ず確認しましょう。
- 在留カードの確認(在留資格、在留期限、就労制限の有無)
- 就労可能な業務内容と実際の業務内容の整合性
- パスポートの確認
在留資格に合わない業務に従事させた場合、企業側も「不法就労助長罪」に問われる可能性があります。
6-2. 雇用後の届出義務
外国人を雇用した場合、企業はハローワークに「外国人雇用状況届出」を提出する義務があります。また、在留資格によっては、入国管理局への届出も必要です。
6-3. 在留資格の変更・更新サポート
従業員の在留資格が更新時期を迎える際、企業としてサポートすることで、従業員の安心感と定着率が向上します。
- 更新時期の管理
- 必要書類(在職証明書、給与証明など)の発行
- 行政書士との連携
6-4. 外国人材の定着を促す職場環境づくり
関西財界セミナーでも指摘されたように、外国人材の定着には雇用制度や職場環境の整備が不可欠です。
- 評価基準の明確化と透明性の確保
- キャリアパスの提示
- 日本語教育や文化理解のサポート
- 多様性を尊重する企業文化の醸成
7. 今後の展望:外国人材との共生社会へ
7-1. 政策の方向性
政府は2019年に「特定技能」制度を創設し、外国人材の受け入れを拡大してきました。今後も人手不足が深刻化する分野での受け入れ拡大が予想されます。
一方で、地域社会での共生、社会保障制度の整備、教育環境の充実など、受け入れ体制の整備も並行して進められる必要があります。
7-2. 企業に求められる変革
関西財界セミナーでの議論が示すように、日本企業は外国人材を「一時的な労働力」としてではなく、「将来の担い手」として育成する視点が求められています。
- グローバルスタンダードに対応した人事制度の導入
- ダイバーシティ&インクルージョンの推進
- 外国人管理職の登用
- 多言語対応の社内環境整備
7-3. 在日外国人に期待される役割
在日外国人の皆さんには、日本社会の一員として以下のような役割が期待されています。
- 日本の法律や社会ルールの理解と遵守
- 地域コミュニティへの積極的な参加
- 日本語能力の向上
- 母国と日本の架け橋としての活躍
8. まとめ:ビザ申請・在留資格手続きの重要性が増す時代
関西財界セミナーで明らかになったのは、「外国人材なくして日本企業は成り立たない」という動かしがたい現実です。空港、建設、鉄道など、日本の基幹産業を支えているのは、多国籍の人材なのです。
政治の場では外国人政策の厳格化が議論されていますが、経済の最前線にいる企業経営者たちの認識は明確です。外国人材の受け入れと、彼らが安心して働ける環境整備こそが、日本経済の持続的成長に不可欠なのです。
在日外国人の皆様へ
日本での就労や生活を安定させるためには、適切なビザ・在留資格の取得と管理が何よりも重要です。在留資格の更新忘れや、業務内容と在留資格の不一致は、不法滞在や強制退去につながるリスクがあります。
少しでも不安や疑問がある場合は、専門家であるお近くの行政書士に相談することをお勧めします。
外国人を雇用する企業の経営者・人事担当者の皆様へ
外国人材の採用は、単なる人手不足の解消策ではなく、企業の国際競争力を高め、イノベーションを生み出す重要な経営戦略です。
適切なビザ・在留資格の管理、職場環境の整備、キャリア支援などを通じて、外国人材が安心して長期的に活躍できる環境を作ることが、企業の持続的成長につながります。
私たちニセコビザ申請サポートセンターは、ビザ申請や在留資格の専門家として、在日外国人の皆様と外国人雇用企業の皆様を全力でサポートいたします。ご相談は、どうぞお気軽にお問い合わせください。
日本はいま、外国人材との共生社会へと大きく舵を切っています。この変化を「脅威」ではなく「成長機会」と捉え、共に未来を創っていきましょう。
【参考記事】
「外国人材なくして成り立たず」異口同音の関西財界セミナー 移民受け入れ積極派も
https://news.yahoo.co.jp/articles/e17d2c926e55e3f747830f9e398fa028155cc9e3
