1. はじめに:三重県で起きた「外国人採用を巡る議論」とは
2025年12月、一見勝之三重県知事が「外国人職員の採用を取りやめる方向で検討している」と発言したことが、大きな波紋を呼びました。この発言に対し、県内の市長たちからは反対や懸念の声が相次いでいます。特に、鈴鹿市、桑名市、伊賀市の市長は明確に「外国人採用を継続する」と表明し、多様な人材の受け入れを積極的に進める姿勢を打ち出しました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/896cb71b2c7f7e7266b6852f62e010eaa97a6b9b
この一連の出来事は一見、地方自治体の内部的な議論に見えるかもしれません。しかし実際には、これは「日本社会がこれからどのような価値観で人材を受け入れ、共に生きていくのか」を示す象徴的な問題でもあります。そしてこのテーマは、民間企業にとっても無関係ではありません。
いま、日本では多くの業界が深刻な人材不足に直面しています。製造業、介護、建設、宿泊業などでは、すでに外国人労働者の存在が不可欠です。今回の三重県の一件は、そうした現場の実情と、行政の対応のギャップを浮き彫りにしたとも言えるでしょう。
本記事では、このニュースをきっかけに、企業経営者や人事担当者が知っておくべき「外国人採用の現状」と「法制度」、そして「今後の共生のあり方」について、行政書士の立場から具体的に解説していきます。
外国人採用は単なる人手不足の解消ではなく、組織の競争力そのものに直結するテーマです。今こそ、自社の採用・人材戦略を見直すタイミングかもしれません。
2. 外国人職員の採用、なぜ問題に?
今回の三重県知事の発言は、「公権力の行使にかかわる業務は原則として日本国籍を持つ者が担うべきだ」といった、古くからある考え方を前提としたものです。確かに、法的には公務員採用において日本国籍を要件とするケースは存在します。しかし、ここ20年で状況は大きく変わりつつあります。
鈴鹿市では、2000年度までは「日本国籍を有する者」に限定して市職員を採用していましたが、2001年度以降は永住者や特別永住者に門戸を開放し、事務職・技術職・保育士・保健師・労務職といった職種で外国籍住民も受験可能となりました。現在では実際に外国籍の市職員が活躍しています。
ここで重要なのは、日本国籍がないことが即「公務に適さない」とは限らないという現実です。多文化共生が求められる時代において、むしろ外国人職員だからこそ担える業務も増えてきました。
今回の知事発言に対して、複数の市長が反論したのは、そうした現場感覚との乖離を問題視したからです。「制度的に正しいか否か」だけではなく、「地域のニーズに即しているか」「共生社会を実現する姿勢があるか」が問われる時代に、制度的な後退は地方行政の信頼性にも関わります。
私たち行政書士が現場で見ていても、「制度と実態のズレ」に悩まされるケースは少なくありません。採用の自由度が広がっている反面、制度理解が追いついていない現場も多く、そこに不安や混乱が生まれているのです。
だからこそ今、行政・企業ともに「外国人採用の意義」と「制度の正しい理解」を深める必要があるのです。
3. 鈴鹿市・桑名市・伊賀市の市長たちの明確なスタンス
三重県知事の「外国人採用見直し」発言に対し、県内の複数の市長が迅速かつ明確に対抗姿勢を示しました。
まず、鈴鹿市の末松則子市長は、2026年1月6日の記者会見で「外国人の採用を廃止する考えはない」と断言。鈴鹿市では現在、68か国以上の出身者が居住しており、全人口のうち1万人以上が外国籍です。そのため、末松市長は「公務員を志望する外国人の学生のためにも門戸を開くべきだ」と述べ、地域の実情に即した採用方針の必要性を強調しました。
次に、桑名市の伊藤徳宇市長も、同日の記者会見で「共生の取り組みは変えない。採用も変えるつもりはない」と明言。外国人が6,000人近く住む製造業の街・桑名では、市役所の窓口に外国人スタッフを配置するなど、多文化対応を実務に取り入れてきました。「県の方針がどうであれ、我々は変えない」という強い意志が読み取れます。
さらに、伊賀市の稲森稔尚市長も年頭訓示の中で、「排除のメッセージとして受け取られることへの危機感」を示し、知事の方針に対して懸念を表明しました。
このように、三重県内の複数の自治体トップが声を揃えて「外国人を排除しない」という姿勢を貫いているのは、極めて重要なメッセージです。
特に企業経営者や人事担当者にとっては、「自治体が多様性を重視している」ことは、地域の労働環境や政策の方向性を判断する上での重要な材料となります。行政が多文化共生に前向きである地域は、企業にとっても外国人採用を進めやすい“追い風”となるのです。
4. なぜ今、地方自治体で「外国人の力」が求められているのか
地方自治体が今、外国籍人材の採用に積極的になる理由は、非常に現実的なものです。
一言でいえば、人手が足りないからです。
高齢化と人口減少が進むなか、地方では若年層の労働力確保が急務となっています。地域の産業を支えるためには、もはや日本人だけでは人手が回らず、外国人材の力が欠かせない状況です。
特に、製造業が盛んな桑名市では、外国人労働者が地域経済を支える存在になっています。また、外国人住民の割合が高い鈴鹿市では、行政サービスそのものも多言語化や多文化対応が求められており、そのためには外国人職員の採用が現実的な手段なのです。
また、単なる人手不足の補填ではなく、外国人材の採用が行政サービスの質を向上させる要因にもなっています。例えば、外国人住民に対して適切な支援を行うには、当事者の視点を持つ人材が不可欠です。桑名市のように窓口に外国人職員を配置する取り組みは、まさに現場ニーズに即した対応といえるでしょう。
これは企業でも同様です。外国人のお客様、外国人従業員、海外取引先が増える中で、多様なバックグラウンドを持つ人材が社内にいることは、大きな戦略的強みになります。
行政も企業も、「外国人材なしでは立ち行かない時代」に突入しています。であれば、採用を止める議論ではなく、どう活かすか・どう支えるかにフォーカスを当てるべきなのです。
5. 企業にも関係大アリ!このニュースから何を読み取るか
今回の三重県における「外国人採用見直し」の動きは、表面上は行政機関の話ですが、実は民間企業の人材戦略にも大きな影響を与えるテーマです。企業経営者や人事担当者にとっては、「公務員の採用基準」よりも、「社会全体として外国人をどのように受け入れ、共生していくか」という価値観の変化が重要な示唆を持っています。
なぜなら、行政が採用を止める流れになれば、それは「外国人は受け入れがたい存在」という社会的なメッセージとして誤解されかねず、企業活動にも少なからず影響を及ぼすからです。採用現場ではすでに「外国人を雇っても大丈夫なのか」「地域の理解は得られるか」といった声が聞かれています。だからこそ、鈴鹿市や桑名市、伊賀市のように「変わらず採用を続ける」と明言する自治体の姿勢は、企業にとっても安心材料となるのです。
実際、多くの企業で深刻な人材不足が続いています。特に中小企業や地方の事業所では、「採用をしたくても応募がこない」「若手が定着しない」という声が当たり前のように聞こえてきます。その一方で、外国人留学生や技能実習生、特定技能の資格を持った人材は、就職先を探している状況にあります。
ここで重要なのは、「外国人を採用するかどうか」ではなく、「どうやって適切に迎え入れるか」「どう育成し、定着させるか」という観点です。今後の企業経営は、単なる人数合わせの採用から、共生・多様性を前提とした人材戦略へと進化していく必要があります。
行政の姿勢がそれを後押しする存在になるか、逆風になるかは、企業にとっても非常に大きな問題です。今回の三重県の事例は、まさにその分岐点といえるでしょう。
6. 外国人雇用は「人手不足対策」だけじゃない
多くの企業が外国人材の雇用に目を向ける背景には、「人手不足を解消したい」という喫緊の課題があります。確かにそれも大事なポイントですが、外国人材を採用する価値はそれだけにとどまりません。むしろ、人手不足“以上”の経営的メリットが得られることに気づいている企業ほど、積極的に外国人雇用を進めています。
まず、外国人材は多様な視点をもたらしてくれます。海外の文化、商習慣、価値観を知るスタッフが社内にいることは、インバウンド対応や越境EC、海外展開を視野に入れる上で大きな強みとなります。特に観光業や飲食業、小売業などでは、外国人観光客への接客において、母語対応ができる人材の価値は非常に高まっています。
さらに、外国人材は日本の若者よりも高いモチベーションを持つケースが多く見られます。就労ビザを取得して働くというハードルを乗り越えてきた彼らは、「日本で働きたい」「キャリアを積みたい」という明確な目標を持っています。この意欲が職場の雰囲気に良い影響を与え、職場の活性化や生産性の向上にもつながるのです。
また、外国人材の受け入れを通じて、企業の組織風土そのものが柔軟になったという声もあります。異文化に対応する中で、マネジメントやコミュニケーションの在り方が見直され、結果的に日本人社員にとっても働きやすい職場になるという“副次的効果”が得られるのです。
このように、外国人雇用は単なる労働力確保の手段ではなく、企業が多様性を取り入れ、将来的な競争力を高める戦略的な一手となります。もし、まだ「外国人採用はうちには難しい」と感じている方がいれば、それは制度面の理解不足や、過去のネガティブなイメージに基づいた思い込みかもしれません。
まずは一歩踏み出して、可能性を広げることが重要です。
7. 行政書士の視点:採用前後で押さえるべき実務ポイント
外国人材の雇用には大きな可能性がある一方で、法的・制度的に複雑な側面も多くあります。制度理解が不十分なまま採用を進めてしまうと、企業にとって大きなリスクとなる可能性があります。ここでは、行政書士の視点から、採用前後で押さえておくべき基本的な実務ポイントをいくつかご紹介します。
まず第一に重要なのが、「在留資格の確認」です。外国人が日本で働くには、原則として就労可能な在留資格を有していなければなりません。たとえば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、専門知識を必要とする事務職やエンジニアなどに限定されており、単純労働は認められていません。これを知らずに、単純作業に従事させてしまうと、企業側が不法就労助長罪に問われるリスクもあります。
次に重要なのが、採用後の管理体制です。外国人材を受け入れる場合には、労働契約の明確化や労働条件通知書の母国語対応、労務管理における配慮などが求められます。例えば、賃金支払いのタイミングや残業の有無、福利厚生制度の内容など、曖昧なままにしてしまうと、後々トラブルの原因になりかねません。
さらに、就労ビザの更新や変更のタイミングにも注意が必要です。就労中に業務内容が変更になった場合、それが在留資格の範囲外であれば、入管への「在留資格変更許可申請」が必要です。これを怠ると、不法就労と見なされる可能性があります。
これらの実務対応は、初めて外国人を雇用する企業にとってはハードルが高く感じられるかもしれません。しかし、実際には行政書士がサポートすることで、多くの企業がスムーズに制度運用を行っています。私たちは、入管手続きだけでなく、雇用契約のチェックや社内整備までトータルで支援しています。
リスクを防ぎ、制度の枠内で最大限に外国人材の力を活用すること——それが行政書士の役割です。
8. 在留資格、採用条件、労務管理──“見落としがち”なリスクとは
外国人採用に関する相談で、企業の皆さまから最も多く寄せられるのが、「制度は知っているつもりだが、どこに落とし穴があるのかわからない」という不安です。確かに、制度の大枠は公開されており、ネットや書籍で情報を得ることもできます。しかし、実務で失敗が起きやすいのは、“見落としがちなポイント”なのです。
たとえば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で採用した外国人に、たまたま人手が足りなかったからといって工場のライン作業や倉庫整理をさせた場合、それは“資格外活動”と見なされ、重大な処分につながります。現場ではこうした「つい」の判断がトラブルを招きやすいのです。
また、労働条件通知書や雇用契約書の内容が日本語だけで書かれている場合、外国人労働者が十分に内容を理解できない可能性があります。その結果、「聞いていた話と違う」と誤解が生まれ、トラブルや退職につながるケースも少なくありません。多言語対応や通訳の配置は、採用後の信頼関係構築のために非常に重要です。
さらに、社会保険や税金の手続き、住民登録、銀行口座の開設支援など、生活インフラの整備も企業がある程度サポートすべき場面があります。これを怠ると、外国人材が短期間で離職してしまう原因になります。
最後に、「在留期限の管理」も意外と見落とされがちなポイントです。ビザの有効期限が迫っていることに気づかず、更新が間に合わなければ不法滞在となってしまいます。企業側がしっかりとスケジュールを把握し、更新手続きの支援を行う体制が必要です。
こうした細かな配慮が、外国人材の定着率と職場の安定性に直結します。 法制度を知っているだけでなく、実務でどう動くかが鍵となります。行政書士として、私たちはその「実務の橋渡し役」として、企業の現場に寄り添ったサポートを行っています。
9. 専門家に相談することで、企業にとって何が変わるのか
外国人材の採用に取り組もうとしたとき、多くの企業が最初に直面するのは「制度が複雑で、どこから手をつけていいかわからない」という壁です。入管法、労働基準法、雇用契約、在留資格、就労制限──一つひとつは理解できても、全体をつなげて運用しようとすると、予想以上に煩雑で時間も手間もかかります。
こうした現場の悩みに対し、私たち行政書士は、企業の“伴走者”として具体的な支援が可能です。
まず、採用前の段階では「この候補者を雇えるのか?」「どの在留資格が適切か?」といった判断において、的確なアドバイスができます。例えば、特定技能や技術・人文知識・国際業務などの在留資格が適用可能かどうかを判断し、必要な手続きとスケジュールを具体的に設計します。
採用決定後には、入管手続き(在留資格認定証明書交付申請など)を代行し、許可が下りるまで企業と連携しながら進めます。この段階での書類の不備や表現ミスは、審査遅延や不許可の原因になることもありますので、専門家の関与は非常に重要です。
さらに、採用後も継続して支援が可能です。在留期間の更新、活動内容の変更、配偶者ビザの取得支援、家族の帯同に関する相談など、外国人材のライフスタイルも視野に入れた支援を行うことで、企業と従業員の双方に安心をもたらします。
また、行政書士が間に入ることで、企業が「制度のグレーゾーンに足を踏み入れてしまうリスク」も大幅に減ります。意図せず違法な雇用形態になってしまうケースや、曖昧な労働条件が原因でトラブルに発展するケースを、未然に防ぐことができるのです。
近年では、外国人雇用に特化した社内体制を持たない中小企業でも、行政書士をパートナーとして活用し、安心して外国人採用を進めている例が増えています。単なる「手続き代行屋」としてではなく、人材活用の戦略パートナーとして、外国人雇用の成功を後押しする存在――それが、私たち行政書士の新しい役割だと考えています。
「何から始めればいいかわからない」と悩んだその瞬間こそが、専門家に相談すべき絶好のタイミングです。
10. まとめ:採用も経営も「多様性」を軸にした時代へ
三重県知事の「外国人職員採用見直し」発言をきっかけに、地元市長たちが即座に「採用は継続する」と明言した今回のニュースは、単なる行政内部の議論にとどまりません。私たち企業経営者や人事担当者が、これからの組織運営をどう考えていくか、何を優先すべきかを問いかける象徴的な出来事だと言えます。
もはや「外国人採用」は一部の業界や大企業だけの話ではありません。労働力不足が深刻化する中で、外国人材を活用することは、地域社会・業界全体の持続可能性に直結するテーマとなっています。
そして、単に人手を補うという発想から脱却し、外国人材の能力をどう活かし、組織の力に変えていくかという視点が、これからの経営には不可欠です。
今回のブログでは、外国人採用に関する制度や行政の動き、企業にとってのメリット、そして見落としやすいリスクへの対応策について、行政書士の立場から解説してきました。
最後に、改めてお伝えしたいのは、「制度は複雑でも、正しく活用すれば企業の未来を変える力がある」ということです。
私たちニセコビザ申請サポートセンターは、単に書類を整えるだけではなく、“採用から定着、活躍まで”を一貫してサポートする専門家として、企業と外国人材の架け橋になることを使命としています。
「このテーマは気になっていたけれど、なかなか一歩を踏み出せなかった」という経営者の方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度、お話を聞かせてください。
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