1. はじめに:外国人雇用を取り巻く制度が大きく変わろうとしている
2025年現在、日本における外国人雇用の制度が大きな転換点を迎えようとしています。
その中心にあるのが、高市政権が掲げる「外国人政策の適正化」です。
これは単なる受け入れ人数の調整ではなく、在留資格の見直しや、社会保障・医療制度との整合性、そして外国人との共生のあり方までを含めた包括的な制度再設計を意味します。
特に注目されているのが、「技術・人文知識・国際業務」、通称「技人国(ぎじんこく)」と呼ばれる在留資格に関する議論です。
この資格は、多くの企業が即戦力として外国人材を雇用するために利用しているものであり、現在日本に在留する外国人の中でも2番目に多い取得者数を誇ります。
https://news.yahoo.co.jp/articles/a00a73fde53f426a46379a4ae06389690fcbc891
これまで比較的自由度が高かった「技人国」ビザですが、今回の制度見直しにより、今後は取得要件や更新条件が大幅に厳格化される可能性があります。
また、受け入れ人数自体の制限、つまり「量的マネジメント」の導入も検討されており、企業の外国人採用戦略にも直結するテーマです。
本記事では、制度変更の背景とその狙いを丁寧に解説しながら、在日外国人本人、そして彼らを雇用する企業が知っておくべきポイントを、行政書士の視点からわかりやすくお伝えします。
2. 「技人国ビザ」ってなに?基礎からわかる在留資格のしくみ
「技人国」とは、「技術」「人文知識」「国際業務」という3つのカテゴリに該当する職種に従事する外国人が対象となる在留資格です。
例えば、
- 機械・電気・ITエンジニアなどの技術職
- 経理・法務・マーケティングなどの人文系業務
- 通訳・翻訳・語学教師・海外営業などの国際関連業務
といった職種が対象となり、いわゆる“ホワイトカラー”の分野で働く高度人材向けのビザです。
この在留資格の取得には、
- 日本または海外の大学等で該当分野の学位を取得していること
- または、同等の実務経験(通常10年以上)があること
- 加えて、職務内容が適切であること、素行不良がないこと など
が求められます。
「技人国」ビザの最大の特徴は、その柔軟性と長期的な就労可能性にあります。
最長5年までの在留が認められており、更新も可能なため、実質的には永続的な就労も可能です。
企業にとっては、他の在留資格(たとえば技能実習や特定技能)と比べて、労務管理や業務範囲の自由度が高く、戦略的に人材活用しやすい制度といえるでしょう。
しかし一方で、その自由度の高さが制度の「抜け道」となり、不適切な雇用事例も増えているのが実情です。
今後の制度改正では、この「技人国」ビザの在り方にメスが入る見通しであり、企業側の対応が急務となります。
3. なぜ今、外国人政策が見直されているのか?
外国人政策の見直しが急務とされている背景には、複数の要因が重なっています。
まず、在留外国人の急増です。
出入国在留管理庁の統計によれば、2025年6月時点で日本に在留する外国人は約396万人。
これは、10年前と比較して約1.8倍という急激な増加であり、今後もさらに増加が見込まれています。
国立社会保障・人口問題研究所の試算によると、2070年には日本の人口の約10.8%が外国人になる可能性があるとされています。
つまり、日本社会は今後ますます多国籍化・多文化化していく運命にあります。
一方で、その急増に制度が追いついていない現状があります。
具体的には、
- 在留資格の不正取得や運用のズレ
- 医療費や国民健康保険料の未払い問題
- 子ども手当など福祉制度の不適切受給
といった課題が浮き彫りになっています。
このまま放置すれば、日本人との間に「不公平感」が生まれ、社会的な分断を生むリスクもあります。
高市政権はこうした背景を踏まえ、「外国人が優遇されている」という誤解を解消するために、制度の適正化を急ぐ方針を打ち出しました。
その一環として、「技人国」などのビザ制度の運用強化が進められており、今後、企業に対する監督体制も厳格化される見通しです。
4. 「量的マネジメント」が意味する外国人雇用の上限設定
今回の制度改正案で特に注目されているのが、「外国人の量的マネジメント」という新たな仕組みです。
これは、ある地域や業界で外国人比率が一定以上に達した場合に、政府が受け入れ数の目標値や上限を設定し、バランスを調整するという制度です。
つまり、外国人の雇用や在留が「無制限」ではなくなり、地域や職種によっては「もう採用できない」「受け入れ枠が埋まっている」といったケースが出てくる可能性があるということです。
すでに政府内では、「在留資格ごとに受け入れ上限数を設定する」案が浮上しており、とくに急増している「技人国」資格がその対象になる可能性は高いと見られています。
たとえば、外国人比率が高いとされる都市部のIT業界や製造業、教育分野などでは、新たなビザ発給が制限される事態も考えられます。
企業としては、採用計画の大幅な見直しが必要になるでしょう。
また、既存の外国人社員についても、更新が認められにくくなる可能性もあり、長期雇用の見通しに不確実性が出てきます。
「量的マネジメント」が導入されれば、日本で働きたい外国人だけでなく、雇用する企業にとっても“選ばれる努力”が求められる時代に突入します。
ニセコビザ申請サポートセンターでは、こうした制度導入に向けて、企業が取るべき準備や戦略的な在留資格の選定、採用計画の立て方などをご提案しています。
まずは情報を正しく理解し、早めの対応を進めることが、今後の人材確保の鍵となります。
5. 「技人国」資格が厳格化される背景と企業への影響
「技人国」資格が厳格化される最大の理由は、この在留資格が本来想定していない形で利用されてきた実態が、行政側にもはっきりと把握されるようになった点にあります。
報道でもあった通り、埼玉県では「技人国」資格を持つ外国人を、専門職ではなく単純作業に従事させていた企業の代表者や人事責任者が、入管法違反の疑いで逮捕されました。
これは決して例外的なケースではなく、「名目は専門職、実態は現場作業」という運用が、これまで少なからず存在していたことを示しています。
「技人国」は、職務内容そのものが在留資格の根幹です。
学歴や職歴が条件を満たしていても、実際の業務が専門性を欠けば、在留資格違反となります。
この点を「多少現場に入るくらいなら問題ないだろう」「人手不足だから仕方ない」と安易に考えてしまう企業が多かったのも事実でしょう。
しかし今後は、申請時だけでなく、更新時・調査時においても、職務内容の実態がより厳しくチェックされる流れは避けられません。
企業側には、職務記述書(ジョブディスクリプション)の明確化や、日常業務の管理体制の整備が強く求められます。
行政書士として断言できるのは、「知らなかった」「昔からやっていた」は、もはや通用しない時代に入ったということです。
適切な在留資格管理を行わない企業は、今後、採用どころか事業継続そのものがリスクにさらされる可能性があります。
6. 医療費未払い問題と入国審査の関係とは?
外国人政策の議論において、必ず取り上げられるのが「医療費未払い問題」です。
政府は現在、医療機関で20万円以上の未収金がある外国人について、次回の入国審査を厳格化していますが、これを来年度から「1万円以上」に引き下げる方針が報じられています。
つまり、少額であっても未払いがある場合、再入国や在留に影響が出る可能性が高まるということです。
もっとも、統計を冷静に見れば、医療費未収金全体のうち外国人が占める割合は約1.5%に過ぎません。
実態としては、日本人による未収金の方が圧倒的に多いにもかかわらず、外国人に対する制度だけが強化される点には、政治的・世論的な背景があるといえるでしょう。
ここで重要なのは、「事実」と「国民感情」は必ずしも一致しない、という点です。
政府は制度の公平性そのものだけでなく、「不公平だと感じられている状況」を是正するために動いています。
企業としては、「個人の問題だから関係ない」と切り離して考えるのは危険です。
医療費未払いが原因で在留資格の更新や再入国に支障が出れば、突然、外国人社員が働けなくなる事態も起こり得ます。
今後は、外国人社員に対して、日本の医療制度や支払い義務を正しく説明し、必要に応じてフォローする姿勢が、企業のリスク管理として不可欠になるでしょう。
7. 健康保険料未納問題と今後の行政対応の方向性
医療費と並んで、もう一つ大きなテーマとなっているのが、外国人の国民健康保険料の未納問題です。
厚生労働省の調査では、外国人の国民健康保険料納付率は約63%とされ、日本人と比べて低い水準にあります。
この状況を受け、政府は制度面からの締め付けを段階的に強化する方針を明確にしています。
まず2025年4月から、海外から転入してくる外国人に対し、自治体の判断で最大1年分の保険料を事前に一括納付させる制度が導入されます。
さらに2027年6月からは、保険料を納付しない場合、在留資格の更新や変更を認めない仕組みが本格的に始まる予定です。
これは非常に大きな変更です。
これまで「保険料未納=行政上の問題」にとどまっていたものが、「在留資格そのものに直結する問題」へと格上げされるからです。
企業としても、外国人社員が制度を理解していないまま未納状態に陥れば、結果的に雇用継続が不可能になるリスクを抱えることになります。
特に中小企業では、「知らなかった」「説明していなかった」が致命傷になりかねません。
今後は、入社時のオリエンテーションや、定期的なフォローを通じて、社会保険・税・在留制度をセットで管理する体制づくりが不可欠です。
行政書士として、ここに関与できる余地はますます広がっていくと感じています。
8. 経団連の主張「外国人から選ばれる国」になるには?
一方で、経済界、とりわけ経団連は、単なる締め付け一辺倒の政策に警鐘を鳴らしています。
経団連が提言しているのは、「外国人を受け入れる国」から、「外国人に選ばれる国」への転換です。
世界的な人材獲得競争が激化する中で、日本が魅力を失えば、優秀な外国人材は他国へ流れてしまいます。
そのために必要なのが、
・行政手続きの透明化と迅速化
・多言語対応の拡充
・日本語教育や生活支援の強化
といった、受け入れ側の環境整備です。
制度を厳しくすること自体が悪いのではありません。
問題なのは、「厳しくするだけで、支援や説明が追いついていない」点にあります。
わたしたち行政書士の役割は、まさにこのギャップを埋めることにあります。
外国人本人に対しては制度を正しく説明し、企業に対してはリスクを回避する仕組みを設計する。
この両輪がなければ、日本は本当の意味で「選ばれる国」にはなれません。
これからの外国人雇用は、「安く雇える労働力」ではなく、「制度を理解した上で共に働くパートナー」という視点が不可欠です。
その実現のために、専門家をどう活用するかが、企業の将来を大きく左右するといえるでしょう。
9. 外国人採用企業が取るべき3つの対策
ここまで見てきた通り、外国人雇用を取り巻く制度は、今後数年で大きく変化していく見通しです。
「今まで通り」では通用しなくなる時代において、企業が継続的かつ合法的に外国人を雇用し続けるためには、今から備えておくことが不可欠です。
そこで、行政書士の視点から、外国人を採用・雇用する企業が取るべき重要な対策を、以下の3つに整理してお伝えします。
1. ビザ取得・更新要件の確認と職務内容の整合性の精査
もっとも重要なのは、「職務内容が在留資格の要件に合っているか」を定期的に見直すことです。
たとえば、「技人国」ビザであれば、実際の業務が“技術”や“人文知識”に該当していなければ、更新が認められないだけでなく、在留資格違反で企業側にも罰則が科されるリスクがあります。
申請書類や職務記述書(ジョブディスクリプション)と、現場の実務内容が食い違っていないか?
変更があれば届出や見直しはされているか?
日々の業務の中で曖昧になりがちな部分を、第三者の視点で確認することが大切です。
2. 医療費・保険料の適正支払いを促す社内制度の整備
医療費未払い問題や保険料未納に関する制度改正は、企業が直接的に罰則を受けるものではありません。
しかし、それによって外国人社員の在留資格や再入国が制限される事態は、事業継続に深刻な影響を及ぼします。
たとえば、更新直前になって「保険料を払っていなかった」と分かっても、すでに手遅れというケースも多くあります。
入社時のオリエンテーションに加え、定期的な確認やサポート体制(例:納付状況のチェックリストなど)を整備しておくことが、結果的に企業を守ることにつながります。
3. 入管法・制度変更に即応できる専門家との連携
外国人政策は、時の政権の方針や世論の動向によって、短期間で大きく変化する特徴があります。
2025年時点でも、既に2027年までに複数の制度変更が予定されています。
このような環境下で、すべての情報を自社で把握し続けるのは現実的ではありません。
行政書士のような専門家と定期的に情報を共有し、必要に応じてアドバイスを受ける体制を構築しておくことで、法的トラブルや制度違反のリスクを未然に防ぐことが可能です。
「何かあったら相談する」ではなく、「何も起きないように常に相談しておく」——これが、これからの時代のリスクマネジメントの基本です。
10. 行政書士として私たちができるサポートとは?
制度が大きく変わる今、行政書士の果たすべき役割はますます重要になっています。
ニセコビザ申請サポートセンターでは、外国人雇用に関するあらゆる法的手続きや相談に、ワンストップで対応しています。
具体的には、以下のようなサポートを提供しています。
1. 在留資格に関する各種申請手続き
- 技人国、特定技能、永住、家族滞在など各種ビザの申請・更新・変更手続き
- 職務内容と在留資格の整合性確認、書類作成のサポート
- 不許可対応(理由通知書への対応・再申請のアドバイス)
2. 入管対応・立入調査への備え
- 法務省や入管による調査に備えた事前チェック・模擬監査
- 外国人社員へのヒアリング・業務内容の棚卸し
- 不適切な雇用状態の是正指導・修正書類作成
3. 社内体制の整備と社員教育
- 外国人社員向けの制度説明研修
- 管理職・人事担当者向けの入管法・労務管理セミナー
- 医療費・保険料支払いに関する社内制度の整備支援
4. 制度変更に関する情報提供・継続的支援
- 法改正・制度変更に関する最新情報の定期提供
- 法律リスクの早期発見と、事前の対応策提案
- 顧問契約による継続的な法務サポート
「知らなかった」では済まされない時代に、専門家の力をうまく活用することが、企業経営における“安全装置”になります。
「外国人を雇っているが、制度に詳しくない」「申請が通るかどうか不安」「不適切な雇用状態になっていないか心配」
——そんなお悩みをお持ちの企業様は、どうぞお気軽にご相談ください。
御社の外国人雇用を、制度的・法務的に万全に整えるお手伝いをいたします。
