目次
  1. はじめに:入管行政の大転換が始まっている
  2. 1. 「弁護士通知」制度とは?――14年続いた制度の概要
    1. 弁護士通知制度の成り立ち
    2. なぜこの制度が作られたのか?
  3. 2. なぜ廃止されるのか?――運用上の深刻な課題
    1. 逃亡事案の多発
    2. SNSでの拡散と抗議活動
    3. 日弁連の反論
  4. 3. 強制送還の現状――数字で見る日本の入管
    1. 不法残留者の実態
    2. 強制送還の件数
    3. 強制送還の法的根拠
  5. 4. 企業経営者・人事担当者が知っておくべきリスク
    1. 不法就労助長罪のリスク
    2. 企業が確認すべき3つのポイント
      1. ①在留カードの有効性
      2. ②在留資格の種類
      3. ③資格外活動許可の有無
  6. 5. 在留資格管理の実務――行政書士が教える確実な方法
    1. 在留カード管理のベストプラクティス
    2. デジタル管理の活用
  7. 6. 在留資格更新の注意点――更新不許可を防ぐために
    1. 更新不許可になりやすいケース
    2. 更新申請のタイミング
  8. 7. 今後の入管行政の方向性――厳格化は続く
    1. 「送還忌避者ゼロ」を目指す政府
    2. 企業に求められる対応
  9. 8. 在日外国人の方へ――自分の身を守るために
    1. 在留資格を失わないために
    2. トラブルが起きたら
  10. 9. 行政書士ができること――私たちのサポート内容
    1. 在留資格申請のトータルサポート
    2. 企業向けコンサルティング
    3. 私たちの強み
  11. 10. まとめ――変化する入管行政の中で企業・外国人が取るべき行動
    1. 今回のニュースのポイント
    2. 企業が今すぐすべきこと
    3. 在日外国人の方が気をつけること
    4. 最後に

はじめに:入管行政の大転換が始まっている

2026年1月26日、読売新聞が重要なニュースを報じました。出入国在留管理庁が、強制送還に関する「弁護士通知」制度を今年中にも廃止する方針を固めたというものです。

この動きは、一見すると法律実務の世界の話に聞こえるかもしれません。しかし、外国人を雇用する企業経営者や人事担当者、そして在日外国人の方々にとっては、決して他人事ではありません。

なぜなら、この制度変更は、入管行政全体が「厳格化」の方向に舵を切っている証だからです。

本記事では、行政書士として外国人の在留資格申請支援に長年携わってきた立場から、今回の制度変更の意味と、企業・外国人の方が今後取るべき対策について、わかりやすく解説します。

1. 「弁護士通知」制度とは?――14年続いた制度の概要

弁護士通知制度の成り立ち

「弁護士通知」制度は、2010年9月に民主党政権下で誕生しました。当時の法務省入国管理局と日本弁護士連合会(日弁連)が合意書を締結し、以下のような運用が始まったのです。

制度の内容:

  • 不法滞在などで強制送還される外国人の代理人弁護士に対し、原則2か月前に送還予定時期を通知
  • 通知内容は「○月第○週」という形式
  • 弁護士が希望した場合に限り通知される

なぜこの制度が作られたのか?

背景には、憲法第32条が保障する「裁判を受ける権利」があります。

強制送還の対象となった外国人は、送還の取り消しなどを求めて裁判を起こすことができます。しかし、送還予定時期が分からなければ、十分な準備ができないまま送還されてしまい、事実上、裁判を受ける権利が損なわれてしまいます。

この人権保護の観点から、弁護士通知制度が設けられました。

2. なぜ廃止されるのか?――運用上の深刻な課題

逃亡事案の多発

入管庁がこの制度を廃止する最大の理由は、通知後に外国人が逃亡するケースが相次いだことです。

データ:

  • 2019年以降、少なくとも7件の逃亡事案が発生
  • 2025年末時点で、そのうち5件は依然として逃亡中
  • 2025年は50件以上の通知が行われた

SNSでの拡散と抗議活動

さらに深刻なのは、送還予定時期がSNSで拡散され、入管窓口に大量の抗議電話が寄せられるケースです。

また、送還が中止になった場合、飛行機のキャンセル料が約300万円に達したケースもあったといいます。

日弁連の反論

一方、日本弁護士連合会は廃止に強く反対しています。

日弁連の主張:

  • すでに「例外」として直前通知が相次いでおり、合意違反の状況
  • 裁判を受ける権利の軽視
  • 人道的な観点からも問題

入管庁と日弁連の協議は現在も続いていますが、入管庁は廃止の意向を崩していません。

3. 強制送還の現状――数字で見る日本の入管

不法残留者の実態

2025年1月時点で、日本国内の不法残留者は約7万4800人。これは東京ドーム約1.5個分の人数に相当します。

強制送還の件数

2024年には約7600人が強制送還されました。これは1日平均約21人が送還されている計算です。

強制送還の法的根拠

強制送還は、出入国管理及び難民認定法(入管法)に基づいて行われます。

主な対象者:

  • 不法残留者(オーバーステイ)
  • 不法入国者
  • 不法上陸者
  • 在留資格取消処分を受けた者
  • 刑罰法令違反者

4. 企業経営者・人事担当者が知っておくべきリスク

不法就労助長罪のリスク

外国人雇用において最も注意すべきは、不法就労助長罪です。

入管法第73条の2
不法就労活動をさせた者、不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者は、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が科されます。

「知らなかった」は通用しません。在留カードの確認を怠った場合でも、罰則の対象となる可能性があります。

企業が確認すべき3つのポイント

外国人を雇用する際、企業が必ず確認すべきは以下の3点です:

①在留カードの有効性

  • 有効期限が切れていないか
  • 偽造カードではないか(出入国在留管理庁の公式アプリで確認可能)

②在留資格の種類

  • 就労が認められる在留資格か
  • 職種に制限はないか

③資格外活動許可の有無

  • 留学生や家族滞在者がアルバイトをする場合、資格外活動許可が必要
  • 週28時間以内(留学生の場合)の制限を守っているか

5. 在留資格管理の実務――行政書士が教える確実な方法

在留カード管理のベストプラクティス

入社時:

  • 在留カードの原本確認
  • コピーを取り、人事ファイルに保管
  • 出入国在留管理庁の在留カード等番号失効情報照会で真正性を確認

在職中:

  • 有効期限の3か月前にアラートを設定
  • 更新手続きの進捗を確認
  • 更新後の新しい在留カードを必ず確認

退職時:

  • 次の就職先が決まっているかを確認
  • 在留資格の変更が必要かアドバイス

デジタル管理の活用

最近では、在留カード管理システムを導入する企業も増えています。

主な機能:

  • 有効期限の自動アラート
  • 在留資格の種類と就労制限の自動判定
  • 資格外活動許可の労働時間管理

特に複数の外国人従業員を雇用する企業では、人的ミスを防ぐためにもシステム導入を検討する価値があります。

6. 在留資格更新の注意点――更新不許可を防ぐために

更新不許可になりやすいケース

在留資格の更新が不許可になるケースは、意外と多くあります。

主な理由:

  • 納税義務を果たしていない(住民税、年金、健康保険)
  • 在留資格に応じた活動をしていない
  • 素行不良(犯罪歴、交通違反の累積など)
  • 提出書類に虚偽がある

更新申請のタイミング

在留期限の3か月前から申請が可能です。余裕をもって準備しましょう。

推奨スケジュール:

  • 3か月前:必要書類の確認、収集開始
  • 2か月前:申請書の作成、書類の最終チェック
  • 1.5か月前:入管への申請

7. 今後の入管行政の方向性――厳格化は続く

「送還忌避者ゼロ」を目指す政府

政府は近年、「送還忌避者ゼロ」を目標に掲げ、入管行政の厳格化を進めています。

2023年の入管法改正では:

  • 3回目以降の難民認定申請者も送還可能に
  • 送還を拒否する者への罰則を強化

企業に求められる対応

入管行政が厳格化する中、企業には以下の対応が求められます:

コンプライアンス体制の強化:

  • 外国人雇用状況届出の確実な提出
  • 在留カード確認の徹底
  • 社内研修の実施

専門家の活用:

  • 行政書士による在留資格申請サポート
  • 定期的なコンサルティング
  • トラブル発生時の迅速な対応

8. 在日外国人の方へ――自分の身を守るために

在留資格を失わないために

在留資格を維持するためには、以下の点に注意が必要です:

①在留期限の厳守

  • 有効期限の3か月前には更新準備を開始
  • 更新を忘れると、1日でもオーバーステイになります

②在留資格に応じた活動

  • 就労ビザで認められた職種以外の仕事をしない
  • 留学生は資格外活動許可の範囲内でアルバイト

③納税義務の履行

  • 住民税、年金、健康保険をきちんと支払う
  • 支払いが困難な場合は、役所に相談を

トラブルが起きたら

もし在留資格に関してトラブルが起きた場合は、すぐに専門家に相談してください。

相談先:

  • 行政書士(在留資格の専門家)
  • 弁護士(訴訟が必要な場合)
  • 外国人在留総合インフォメーションセンター(入管庁)

9. 行政書士ができること――私たちのサポート内容

在留資格申請のトータルサポート

行政書士は、在留資格に関するあらゆる手続きをサポートします。

主な業務:

  • 在留資格認定証明書交付申請(海外から呼び寄せる場合)
  • 在留資格変更許可申請
  • 在留期間更新許可申請
  • 在留資格取得許可申請
  • 永住許可申請
  • 帰化許可申請

企業向けコンサルティング

企業に対しては、以下のようなサービスを提供しています:

体制構築支援:

  • 外国人雇用管理規程の作成
  • 在留カード確認フローの策定
  • 人事担当者向け研修

継続的サポート:

  • 定期的な在留状況の確認
  • 更新時期のリマインド
  • トラブル発生時の緊急対応

私たちの強み

単なる申請代行ではなく、企業が安心して外国人材と共に成長できる環境づくりをお手伝いします。

入管行政は複雑で、法改正も頻繁に行われます。専門家のサポートを受けることで、リスクを最小限に抑え、本業に集中できる環境を整えることができます。

10. まとめ――変化する入管行政の中で企業・外国人が取るべき行動

今回のニュースのポイント

  • 入管庁が「弁護士通知」制度を廃止する方針
  • 逃亡事案の多発が主な理由
  • 入管行政全体が厳格化の方向に

企業が今すぐすべきこと

✅ 外国人従業員の在留カード・在留期限を確認
✅ 在留資格管理の体制を見直す
✅ 必要に応じて行政書士などの専門家に相談

在日外国人の方が気をつけること

✅ 在留期限を絶対に守る
✅ 在留資格に応じた活動をする
✅ 納税義務をきちんと果たす
✅ 困ったときはすぐに専門家に相談

最後に

入管行政の変化は、時に厳しく感じられるかもしれません。しかし、正しい知識を持ち、適切な手続きを踏んでいれば、恐れることはありません。

外国人材は、日本経済にとってかけがえのない存在です。企業と外国人の方が、共に安心して働ける環境を作ることが、私たち行政書士の使命だと考えています。

少しでも不安なことがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。一緒に、最適な解決策を見つけていきましょう。


参考記事:
読売新聞オンライン「強制送還、弁護士宛て2か月前の通知を廃止へ…逃亡発生受け厳格化」
https://news.yahoo.co.jp/articles/ceb2aa2248c815c6b808459f133fb1f7154a1b56