2025年6月、富士山へ向かう有料道路「富士スバルライン」で、外国人観光客を乗せた白タク車両が観光バスと衝突し、5人が重軽傷を負う事故が発生しました。

運転していたのは、パキスタン国籍の無職の男性(23歳)。東京・浅草から富士山5合目まで観光客を運び、報酬を得ていたことで、道路運送法違反(白タク行為)で逮捕されました。

https://www.sankei.com/article/20250902-YJCVI2JJPZKG7HDTSYNWOIEIZY

この事件は、単なる交通事故ではありません。
インバウンド需要が回復する中で、外国人による違法就労と、それを見逃す社会の脆さが浮き彫りになったケースです。

企業経営者や人事担当者、観光業に関わる皆様にとって、決して他人事ではありません。


1. 白タク行為とは?法律違反の重みを知る

「白タク」とは、国の許可を得ずに、有償で乗客を運送する違法行為のことです。

日本では以下の条件を満たしていなければ、報酬を得て人を運ぶことはできません:

  • 国土交通省の許可(一般旅客自動車運送事業)
  • 緑ナンバー(営業車両)の登録
  • 運転手の第二種運転免許
  • 保険や点検等の法令遵守体制

これらを無視して報酬を得た場合、最大3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます。

さらに、外国人が不法に報酬を得ていた場合は、「不法就労」「資格外活動」「在留資格取消」の対象にもなります。


2. 今回の事件が示す4つの問題点

この事件では、次のような問題が複合的に絡み合っていました:

  1. 無資格・無許可の白タク営業(道路運送法違反)
  2. 外国人による不法就労の疑い
  3. 違法業務中の重大事故(重軽傷者発生)
  4. 雇用者・依頼者がいた場合は不法就労助長の可能性

今後、事故の経緯や背景次第では、「誰が手配したのか」「報酬の支払い元は誰か」まで捜査が及ぶ可能性もあります。


3. 在留資格と就労制限:基本の理解が企業防衛の第一歩

外国人を採用・契約する企業が、まず理解すべきなのが「在留資格ごとの就労制限」です。

在留資格就労可否特記事項
留学×(※資格外活動許可があれば週28時間まで)
家族滞在×(※同上)
技能○(特定業種のみ可)
特定技能○(対象業務に限る)
永住・定住者○(制限なし)
観光(短期滞在)×(就労一切不可)

今回の加害者は「無職」と報じられていますが、仮に短期滞在や留学等の在留資格で報酬を得ていた場合、重大な違法行為となります。


4. 不法就労助長罪のリスク:雇用主・紹介者も対象に

外国人が就労できない在留資格で働いた場合、それを「手配・指示・容認」した個人・企業も処罰対象です。

不法就労助長罪(入管法73条の2)では、

  • 3年以下の懲役または300万円以下の罰金
  • 企業名が公表されるケースもあり
  • 悪質な場合は法人の代表者・責任者にも刑事責任

「知人に頼まれてちょっと送迎しただけ」
「何となく頼んだだけで在留資格までは見ていなかった」

このような“無意識の違反”も、結果として企業・雇用主の重大なリスクにつながります。


5. なぜ今、白タクが増えているのか?背景を理解する

外国人による白タク行為は、SNSや口コミを通じて密かに広がっています。
背景には以下のような要因があります:

  • 訪日外国人の増加(インバウンド回復)
  • 英語が通じる交通手段の少なさ
  • 「日本で稼ぎたい」短期滞在者の増加
  • コミュニティ内での非公式な仕事のやりとり

また、一部では「配車アプリの延長」感覚で個人送迎を行うケースもあり、法律知識の欠如と、監視体制の限界が問題となっています。


6. あなたの会社は大丈夫?見落としがちなリスクチェック

以下のようなケースは、要注意です:

  • 外国人を紹介されたが在留カードを確認していない
  • 「フリーランス」「業務委託」として契約し内容を曖昧にしている
  • 多言語対応の契約書や就業条件が整備されていない
  • 留学生をアルバイトとして週28時間以上働かせている
  • 「送迎業務」や「案内業務」を観光ビザの人に頼んでいる

いずれも、行政調査や捜査が入った場合に問題視されるポイントです。


7. 行政書士ができること:予防法務の視点で支援します

私たち行政書士は、外国人雇用や観光業に関するリスク管理をサポートできます。

  • 在留資格と業務内容の適正チェック
  • 多言語対応の契約書・誓約書作成
  • 雇用主向けのコンプライアンス指導
  • 不法就労・白タク行為に関する相談対応
  • 法務局・入管への届け出や相談の代行

事故が起きてからでは遅いのです。予防法務としての準備こそ、これからの企業経営に欠かせません。


8. 外国人本人への啓発と教育も不可欠

企業側の整備と同じくらい大切なのが、外国人本人への啓発です。

  • 在留資格の内容と制限の理解
  • 違法業務に巻き込まれない知識
  • 契約書の重要性とサインの意味
  • 就労許可を得るための手続きの周知

このような教育を、多言語で分かりやすく伝える仕組みづくりが、今後のインバウンド対策のカギになります。


9. 万が一の事故に備えて企業がすべきこと

事故や摘発が起きた場合の影響は深刻です:

  • 信用失墜・報道による企業イメージ悪化
  • 賠償責任・刑事責任のリスク
  • 外国人従業員・顧客からの信頼喪失

こうした事態に備え、今のうちに下記の整備をお勧めします:

✅ 在留カード・就労資格のチェック体制
✅ 契約書の整備と内容説明(母国語対応)
✅ 社内マニュアルや研修の実施
✅ 行政書士・社労士など専門家との連携体制


10. まとめ|“制度を知らなかった”では済まされない時代に

富士山での白タク事故は、日本に暮らす外国人の一部が「制度を正しく知らないまま働いている」現実を浮き彫りにしました。
そしてそれを見過ごす社会、企業側にも大きな課題があります。

これからさらにインバウンドが進む日本において、
「外国人との共存」は避けて通れないテーマです。

その第一歩は、「法律を守ること」
そして「命を守るための制度を正しく運用すること」です。

外国人を雇用している、あるいはこれから採用を検討している企業の皆さま、
ぜひ一度、在留資格や雇用管理体制を見直してみてください。

不安や疑問があれば、ニセコビザ申請サポートセンターまでお気軽にご相談ください。
企業を守り、外国人の未来を支えるのが、私たちの仕事です。