このたび福岡県久留米市で発生した建物倒壊事故により、インドネシア国籍の23歳の技能実習生、サクティ・ラーマダニ・サプトラさんが尊い命を落とされました。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。
そして、遠く離れた故郷で突然の訃報を受けたご家族、ご親族の皆さまの悲しみを思うと、
言葉にできないほどの無念と喪失感があることとお察しします。
「日本で経験を積んで、未来につなげてほしい」という家族の願いは、
この国で失われることのないよう、私たちが責任を持って受け止めるべきだと強く感じます。
1. 福岡で発生した死亡事故の概要
2025年7月、福岡県久留米市で解体中の鉄骨2階建て建物が倒壊する事故が発生しました。
作業にあたっていた6名のうち、異音に気づき避難できたのは3名。
残る3名が倒壊に巻き込まれ、うち2名──日本人会社員の吉谷さんと、
インドネシア出身の技能実習生サクティさんが命を落としました。
彼はまだ23歳。
日本で技術を学び、将来の夢のために頑張っていた最中だったといいます。
2. なぜ技能実習生が事故に巻き込まれるのか?
日本で働く技能実習生は、建設、農業、介護など、危険を伴う現場にも多く従事しています。
しかし、その裏には“言語の壁”“安全教育の不足”“現場の理解不足”といった課題が横たわっています。
- 日本語でしか説明されない安全マニュアル
- 危険を察知しても言い出せない職場の雰囲気
- 現場監督者が異文化理解に乏しい
こうした要素が重なれば、避けられたはずの事故も起きてしまいます。
3. 制度順守だけでは守れない命
企業の中には、「監理団体に任せているから大丈夫」「書類は提出済み」といった
“制度上の合格ライン”に安心してしまうケースもあります。
しかし、それだけで本当に現場が安全で、実習生が守られているでしょうか?
今回の事故は、「制度を守っていても命は守れない」ことを突きつけました。
だからこそ、企業自身が「制度」ではなく「現実」を見る姿勢が求められます。
4. 行政書士として見てきた現場と制度のギャップ
私たち行政書士は、技能実習や特定技能に関する書類作成や申請支援を行う中で、
数多くの受け入れ企業の「良かれと思った運用」が、
実際には実習生の理解や安全確保につながっていない事例を見てきました。
例えば──
- 翻訳されたマニュアルがあるが、読み合わせはしていない
- 安全講習を行ったが、実習生が理解できたか確認していない
- 問題があっても「自分の国のやり方」と一括され、改善につながらない
これらはすべて、事故の引き金になり得る“見えない危険”です。
5. 外国人労働者の命を守るための5つの具体策
では、受け入れ企業が事故を防ぐためにできる対策とは何か?
以下の5つは、どの業種でも取り入れ可能な現実的な取り組みです。
- 安全マニュアルの多言語化と読み合わせの実施
- 作業開始前の安全確認を“見て確認する”方式に変更
- 通訳者や現地出身者による安全講習の導入
- 「違和感を言える空気」を現場に作る研修実施
- 定期的な1on1ヒアリングの導入で現場の不安を可視化
これらの取り組みが事故を100%防ぐわけではありません。
ですが、命を守る“確率”を確実に高めることはできます。
6. 命を預かる責任を忘れない企業であるために
人手不足や経営課題に追われる日々の中で、
外国人労働者の存在が「労働力の補填」に偏っていないでしょうか?
彼ら・彼女らは「命ある一人の人間」です。
母国で信頼され、送り出され、日本で懸命に働いています。
受け入れる側の私たちは、その命を預かっているという意識を常に持つべきです。
7. 制度と現場の“間”を埋める支援を
行政書士は、書類対応だけでなく、制度と現場をつなぐ役割を担っています。
受け入れ計画の再設計、安全教育の翻訳・運用見直し、現場責任者向けの文化理解研修など、
企業ごとに必要な支援は異なります。
「制度上問題ない」と思っていたところに、現場の危機は潜んでいるかもしれません。
今一度、御社の実習生受け入れ体制を見直してみませんか?