1. 技能実習制度の廃止と新制度「育成就労制度」とは?
日本で働く外国人労働者の制度が、2027年を目途に大きく変わろうとしています。現在の「技能実習制度」が廃止され、新たに「育成就労制度」が導入されるのです。
これまでの制度では、外国人が日本に滞在し働ける期間は最大5年。目的は「国際貢献」、つまり日本の技術を母国へ持ち帰ってもらうという建前のもと、実習を終えたら原則帰国というルールがありました。
しかし、制度の実態は人手不足を補うための労働力確保が主となり、制度本来の趣旨との乖離が問題視されてきました。こうした背景を受けて導入されるのが、新制度「育成就労制度」です。
https://news.yahoo.co.jp/articles/c8a37143881a8a8b9fdef998eb282e1b73e7056f
2. 「国際貢献」から「人手確保」へ――制度目的の明確な転換
新制度では、外国人が原則3年間の就労を終えると、「特定技能」資格へ移行する道が開かれます。これにより、希望すれば長期にわたって日本での就労が可能になります。
つまり、これまでの「短期滞在前提」から「長期定着可能」へと制度の方向性が大きく変わるのです。
制度の目的も「国際貢献」から「人材確保」へと明確に転換され、日本社会が抱える慢性的な人手不足への対策として位置づけられています。
3. 制度変更で何が変わる?企業が知っておくべき5つのポイント
今回の制度変更で、企業が理解しておくべきポイントは以下の5つです:
- 転職の自由化
従来は原則禁止されていた「転職」が可能になります。労働者はより良い条件を求めて職場を変える選択肢を持つことに。 - 長期的な就労が可能に
3年間の就労後、「特定技能」資格を取得すれば、さらに5年間の就労が認められ、場合によっては無期限の定住も可能に。 - 適正な労働環境の整備
労働時間や賃金など、労働法の順守がより厳しく求められるようになります。 - 支援機関の役割強化
外国人の生活支援・日本語教育・相談体制を整える支援機関との連携が不可欠に。 - 人材確保競争の激化
企業間、地域間での人材の取り合いが進むことが予想されます。
4. 地方企業に迫る人材流出のリスクとは?
特に地方において、制度変更の影響は大きくなります。
これまで地方企業は、転職が制限されていた技能実習制度のもとで、比較的安定して外国人労働者を受け入れることができていました。しかし転職が自由になれば、より高い賃金や生活の利便性を求めて都市部に人材が流れてしまう可能性が高まります。
実際、宮崎県で働く技能実習生からも「日本=東京というイメージしかなかった」という声が上がっており、都市志向の強さが浮き彫りになっています。
5. 実例紹介:宮崎の農園に見る技能実習生の貢献と課題
宮崎県えびの市の立久井農園では、16名のインドネシア人労働者が活躍しています。そのうち12名が技能実習生で、主に農作物の収穫や出荷業務に従事しています。
経営者の立久井さんは彼らを「とんでもない戦力」と表現。「彼らは日本人と同等以上に責任感があり、真面目に働いてくれる」と評価しています。
一方で、彼らが今後転職の自由を得ることで、都市部に移ることを選べば、地域農業の担い手が一気に失われるリスクもあるのです。
6. 制度変更に伴う法的留意点:企業が守るべき義務とは?
企業が新制度に対応する上で、法的な整備も欠かせません。
- 雇用契約の見直し:新制度対応の契約内容に変更が必要です。
- 転職支援の義務化:転職希望者に対して適切な情報提供と手続きを行う必要があります。
- 在留資格の適正管理:就労ビザの管理や更新手続きが求められます。
- ハラスメント対策:外国人が安心して働ける職場環境の整備。
ニセコビザ申請サポートセンターでは、これらの手続きの支援や制度運用のコンサルティングが可能です。事前準備を怠ると、労基署や入管からの指摘につながる恐れがあります。
7. 雇用維持の鍵は「待遇」と「人間関係」
制度が変わっても、外国人労働者が「ここで働き続けたい」と思うかどうかは、企業の姿勢にかかっています。
給与水準の見直しはもちろん、重要なのは人間関係。上司や同僚との信頼関係、生活面でのサポート、日本語学習への理解などが、定着率を左右します。
実際、「この会社はルールを守ってくれて、皆が優しいから働きやすい」と語る外国人の声もあります。制度以上に、日常の関係性が「残る・辞める」の分かれ目になります。
8. 外国人が「定着したくなる地域」になるために必要なこと
外国人が定着するためには、企業だけでなく「地域の受け入れ体制」が不可欠です。
- 日本語教室の提供
- 地域イベントへの招待
- 医療・行政サービスへのアクセス支援
- 差別のない文化の醸成
外国人労働者を「労働力」としてではなく、「地域の一員」として迎え入れる姿勢が、都市部に負けない魅力を作り出します。
制度変更により発生する事務負担を軽減し、法令違反のリスクを回避するために、ぜひ専門家の活用をご検討ください。
9. まとめ:変わる制度、変わる価値観。今こそ企業が取るべき行動
技能実習制度の廃止と育成就労制度の導入は、単なる制度の切り替えにとどまりません。
外国人が日本に長く働き、暮らすことを前提とした社会へとシフトする中で、企業に求められるのは「人として向き合う」姿勢です。
待遇だけでなく、心の通ったサポート、そして地域社会の温かい受け入れこそが、これからの外国人雇用の鍵を握ります。
人材確保に悩む企業の皆さま、今こそ「選ばれる企業」「選ばれる地域」を目指して、一歩踏み出すときです。