山口県岩国市のプラスチック製造会社が、36協定(時間外・休日労働に関する協定)を適正に締結・届け出ずに、外国人技能実習生に長時間の時間外労働をさせたとして、労働基準法違反の疑いで書類送検されました。
このニュースは、外国人を雇用する企業や人事担当者にとって、決して他人事ではありません。表面的には36協定を提出していても、その内容や手続きに不備があれば「無効」とされるリスクがあるからです。
本記事では、この事例から学ぶべき教訓を、行政書士の視点からわかりやすく解説します。
■事案の概要 書類送検されたのは、岩国市にあるプラスチック製造会社とその課長。2023年1月、外国人技能実習生12人に対し、1日8時間または週40時間を超える時間外労働をさせていたにも関わらず、正当な36協定を届け出ていなかった疑いがもたれています。
協定自体は出されていたものの、労働者代表が「会社が一方的に選んだ人物」であり、労基署がその協定を無効と判断したことが決定的でした。最長で月89時間に及ぶ残業が確認されたとのことです。
■36協定とは何か? 36協定とは、労働基準法第36条に基づくもので、時間外・休日労働を行うためには労使間で協定を結び、労働基準監督署へ届け出る必要があります。
しかし、単に書面を出せば良いわけではありません。特に重要なのが「労働者代表の適正な選出」です。形式的・形骸化された選出では、協定そのものが無効とみなされる可能性があります。
■外国人技能実習生の労働環境とリスク 技能実習生は制度上、日本での実務を通じて技能を習得することを目的としていますが、実態としては「労働力」として扱われるケースも少なくありません。
彼らは言語や制度の理解が不十分であるため、自らの労働条件が違法であることに気付かない、あるいは訴える手段を持たない場合もあります。
そのため、企業側にはより丁寧で慎重な労務管理が求められます。
■行政書士の視点からのチェックポイント
- 労働者代表は、労働者全体から民主的に選出されていますか?
- 36協定の内容は、現実の労働時間と一致していますか?
- 技能実習生を含む外国人労働者への説明は、言語を含めて十分に行われていますか?
- 実際の労働状況は、第三者的な視点から見ても適正ですか?
■今、企業が取るべき対応とは? 外国人雇用の増加に伴い、企業にはより高度なコンプライアンス意識が求められます。まずは、36協定の手続き・運用方法を見直し、不備があれば早急に是正すること。
そして、外国人労働者に対しても、労働条件の説明や相談窓口の設置、第三者を交えたヒアリングなど、実態把握と予防策の強化が必要です。
■まとめ 36協定違反による書類送検は、企業にとって重大な信用問題に発展します。
「形式的な提出」ではなく、「実態に即した協定運用」と「適正な代表選出」が求められていることを改めて認識しましょう。
外国人を雇用する企業こそ、制度理解と運用力の高さが問われています。少しでも不安がある方は、ぜひ専門家にご相談ください。