1. はじめに:外国人雇用と「日本語力」という新たな視点

ここ数年、少子高齢化による人手不足を背景に、製造業・建設業・介護などを中心に、外国人労働者の受け入れが加速しています。特定技能や技能実習といった制度を活用し、外国人材を積極的に採用する企業も増えていますが、その一方で「思っていたより意思疎通が難しい」「職場に馴染めないまま退職してしまった」といった声も少なくありません。

その原因の一つが「日本語能力のギャップ」です。実際のところ、雇用前に日本語能力について明確な基準を設けていない、もしくは在留資格に必要なレベルを把握していない企業も多い印象です。しかし、外国人労働者を迎え入れるうえで、日本語能力は極めて重要なポイントとなります。

特に「特定技能」や今後の「育成就労」といった制度では、日本語能力試験(JLPT)のN5~N3といったレベルが、在留資格の取得条件として明確に設定されています。つまり、採用したくてもその方が基準を満たしていなければ、そもそも日本に入国・就労できないというわけです。

さらに、職場における基本的な指示理解、安全確保、トラブル時の報告・相談といった日常業務においても、一定の日本語力は欠かせません。たとえば、「部品の交換をお願いします」といった指示を正確に理解できなければ、作業ミスや事故のリスクにもつながります。

今後、日本社会が本格的な「外国人材共生時代」を迎える中で、企業や人事担当者が“日本語能力”を軽視しては、雇用の成功はあり得ません。雇用前の段階から、どのような在留資格にどのレベルの日本語が求められるのかを把握し、採用基準に組み込むことが、トラブルの予防につながります。

行政書士として現場を見てきた経験からも、日本語力の認識不足が大きな問題となっているケースは多く見受けられます。本記事では、各在留資格における日本語要件を具体的に解説しながら、企業が取るべき実践的な対策をご紹介していきます。


2. 在留資格と日本語能力の関係:なぜ知っておくべきか

外国人を雇用する際には、「どの在留資格を取得するか」が最も重要なポイントですが、それと並んで重要なのが「その在留資格にどの程度の日本語力が求められているか」です。

例えば、特定技能1号の場合はN4相当の日本語能力が必須であり、さらにバス運転手や鉄道乗員のようにN3相当が求められる職種もあります。これは、業務中の安全確認や乗客とのやりとりが発生するため、高い日本語能力が必要だからです。

今後導入される「育成就労」制度では、さらに低いN5(英検3級程度)が基準となりますが、これは言い換えれば「ひらがな・カタカナが読める」「簡単な日常会話ができる」程度にとどまり、業務によっては全く不十分な場合もあります。

一方で、「技術・人文知識・国際業務」などの高度人材系の在留資格には、法的な日本語要件は設けられていません。しかし、実際の業務では契約書の読解、メール対応、会議での発言などが求められ、日本語スキルがなければパフォーマンスに大きく影響します。

問題なのは、企業側がこの違いを十分に把握していないケースが多いという点です。たとえば「外国人だから特定技能だろう」と思い込んでN4相当の基準だけを意識していたら、実は別の在留資格を必要とするケースだったということもあり得ます。結果として、「採用したのに在留資格が取得できなかった」という事態にもなりかねません。

また、既に在留資格を取得している外国人を採用する場合でも、その人の日本語能力と職務内容が一致していない場合、現場でのコミュニケーション不足や定着率の低下につながります。これは企業にとっても大きなコストロスです。

そのため、外国人雇用に取り組む際は「在留資格×日本語能力」をセットで考えることが、非常に重要なのです。企業側が正しい知識を持ち、制度の枠組みを理解したうえで採用活動を行うことが、安心・合法的な外国人雇用への第一歩となります。


3. N5〜N1の日本語能力とは?英検との比較でわかりやすく解説

日本語能力試験(JLPT)は、外国人がどの程度日本語を理解し、使えるかを測るための世界共通の指標です。試験はN5からN1まで5段階に分かれており、N5が最も初級、N1が最も上級です。

ここで重要なのが、「N4と言われてもどれくらいのレベルなのか、実際よくわからない」という声が企業の現場から多く聞かれること。そこで参考になるのが、日本人が馴染みのある英検(実用英語技能検定)との比較です。

  • N5:英検3級相当(中学卒業レベル)
    → 簡単な挨拶や自己紹介、短い会話ができる程度。業務指示には不安あり。
  • N4:英検準2級相当(高校中級レベル)
    → ゆっくり話せば、日常会話や簡単な業務指示は理解可能。
  • N3:英検2級相当(高校卒業レベル)
    → 会話スピードにもある程度対応でき、業務上の会話もこなせる。
  • N2以上
    → 実務文書の読解や会議での発言も可能。日本人社員と同レベルで業務ができる場合も。

つまり、N5やN4では、まだまだ実践的な日本語力としては不十分なケースが多く、業種によってはさらなるサポートが必要になります。

このスコアは、あくまで試験結果に過ぎず、「現場でどれだけ使えるか」とはまた別物である点も留意が必要です。試験に合格していても、現場でスムーズにやりとりができるかは、実際に話してみないとわからないこともあります。

そのため、採用前には試験のスコア確認だけでなく、簡単な日本語面接やコミュニケーションテストを行うことをおすすめします。弊所では、そういったチェック方法のアドバイスや、信頼できる日本語教育機関のご紹介も行っています。


4. 特定技能・育成就労で求められる日本語力とは

外国人雇用に関して、今もっとも注目されているのが「特定技能」と「育成就労」です。

まず、「特定技能1号」は、建設業・介護・農業・製造など14分野において、即戦力として外国人材を受け入れる制度です。この資格では、最低でも日本語能力試験N4相当のスコアが求められます。

N4とは、ゆっくりであれば日常会話ができるレベルですが、業務によってはまだまだフォローが必要です。特に注意すべきなのが、バスやタクシーの運転手、鉄道乗員などの職種ではN3相当(英検2級レベル)が必要になる点です。これは、お客様との会話、安全確認の業務が多いため、より高い日本語力が必要とされているからです。

次に、「育成就労」制度は、現在の技能実習制度を見直して令和9年度(2027年)からスタートする新制度で、最初からN5(英検3級程度)の取得が義務づけられる予定です。これは、制度として最低限の日本語力を担保しようという動きですが、あくまで「初級の初級」にすぎません。現場で活躍してもらうには、就労後のフォローが欠かせないレベルです。

さらに重要なのが、これらの在留資格は「入国前に日本語能力の証明が必要」であるという点です。つまり、採用活動を始める段階で、日本語力の基準を明確にしておかないと、せっかく採用したい人がいても「ビザが出ない」という問題が起きてしまいます。

弊所では、こうした在留資格ごとの日本語要件を踏まえたうえでの求人票の作成支援や、現地での採用活動のアドバイスも行っています。制度を理解し、採用の質を高めることで、外国人雇用の成功率は格段に上がります。


5. 帯同家族の在留資格と日本語要件の落とし穴

外国人労働者を雇用する際、「就労者本人」の在留資格や日本語能力にばかり目が向きがちですが、実はもう一つ見落とされやすいポイントがあります。それが「帯同する家族の日本語力」です。

「特定技能2号」に移行すると、配偶者や子どもを日本に呼び寄せることができる「家族帯同」が可能になります。ただし、帯同する家族が取得する「家族滞在」の在留資格には、日本語能力の要件が一切設けられていません。つまり、日本語を全く話せない状態でも入国・滞在が可能です。

ここで企業側にとって重要なのは、「家族の日本語力が、就労者本人の職場パフォーマンスに大きく影響を及ぼす」という視点です。たとえば、配偶者が日常生活に苦労していたり、子どもが学校に適応できずに不安定な状態になっていたりすると、就労者本人も仕事に集中できず、ストレスや離職の原因になることがあります。

また、地域の支援が行き届かない場合、家族が孤立し、生活に必要な情報や医療、教育へのアクセスが難しくなるケースもあります。これは結果的に「企業側の雇用責任」にも波及するリスクをはらんでいます。

実際に、帯同家族のサポートが不十分だったことから、せっかく育成した人材が帰国してしまったという事例も複数存在します。外国人雇用は、「本人さえ働ければOK」ではなく、その背後にある生活全体を見据えた対応が必要です。

行政書士としての立場からも、帯同家族に関する支援体制の整備は今後ますます重要になってくると考えています。当事務所では、企業と連携しながら、家族向けの生活ガイダンス、日本語教育、行政手続きのサポートなど、包括的な支援もご提案可能です。


6. 「社会内社会」が生むリスクとは:日本語教育の不在が招く課題

外国人労働者が増える中で、職場や地域社会において「日本語が通じない」「文化が違いすぎて理解し合えない」といった課題が顕在化しています。その背景には、日本語教育や生活支援の不在により、同国出身者が集まって独自のネットワークを形成する、いわゆる「社会内社会」の存在があります。

たとえば、ベトナムやクルド出身の労働者が、寮や職場、日常生活のすべてを母語のみで完結してしまう環境に置かれると、日本語を学ぶ動機が生まれず、地域社会との接点がほとんどないまま生活が続くことになります。

このような状況では、日本人従業員とのコミュニケーションがうまく取れず、業務指示の誤解や作業ミス、チームワークの乱れが生じやすくなります。さらに、地域住民との摩擦や孤立感の増大、行政サービスの活用不足といった問題にも発展しかねません。

本来、「共生社会の実現」を掲げる上で必要なのは、言語と文化の相互理解を促進することです。しかし現実には、外国人を迎え入れる体制が整っていないまま人手不足対策として雇用が進み、そのしわ寄せが現場に集中しているのです。

ドイツのように、言語教育や社会統合プログラムへの参加を義務化する仕組みは日本ではまだ整備されていません。つまり現時点では、企業や地域の自主的な取り組みに頼らざるを得ないのが実情です。

このような「社会内社会」が長期的に続けば、真の意味での共生は実現しません。企業としても、単に「雇う」だけでなく、言語教育や地域交流への支援を通じて、外国人が社会の一員として自立できるようサポートしていくことが求められています。


7. 企業側に求められる配慮と対応策:採用前・採用後にできること

外国人雇用を成功させるには、「採用して終わり」ではなく、「受け入れ体制の構築」が欠かせません。特に、日本語力に関しては、事前確認と継続的な支援の両方が求められます。

採用前に企業が実施すべき基本的な対応としては、以下の4点が挙げられます。

  1. 日本語能力試験のスコア確認
     → 在留資格ごとの日本語要件(N5〜N3など)に合致しているかを確認。
  2. 簡易面談での日本語ヒアリング
     → スコアに表れない実際の会話力をチェック。現場業務に耐えうるかを評価。
  3. 仕事内容と日本語力のマッチング
     → 安全に関わる作業や接客が含まれる場合は、N3以上を目安にすべきケースも。
  4. 在留資格申請の正確な手続き
     → 採用後に「ビザが通らない」とならないよう、事前の要件確認と申請代行が重要。

さらに、採用後においても次のような配慮が必要です。

  • 現場での簡単な日本語マニュアルや図解資料の整備
  • 社内研修での日本語支援(オンライン学習含む)
  • 生活面での支援:住居、役所手続き、医療機関の紹介など
  • 他国籍の社員がいる場合の多文化共生研修

これらの支援体制が整っている企業では、外国人労働者の定着率が明らかに高く、業務パフォーマンスの向上にもつながっています。

当事務所では、採用から在留資格取得、その後の定着支援まで一貫したサポートをご提供しています。「初めての外国人雇用で不安」という企業様も安心してご相談ください。


8. ドイツの事例から学ぶ社会統合へのヒント

ドイツは、移民国家として長年外国人労働者と向き合ってきた歴史を持っています。その中で、単なる「労働力」としてではなく、「社会の一員」として受け入れるための政策を積み重ねてきました。

その代表的な取り組みが、「統合コース」と呼ばれるプログラムです。これは、ドイツ語教育と並行して、ドイツの法律・文化・生活マナーなどを教えるもので、特定の在留資格を持つ外国人には参加が義務付けられています。さらに、参加費の大半は政府が負担し、修了証が就職や永住申請に有利に働く仕組みとなっています。

この制度の狙いは、外国人が自立し、地域社会に溶け込むこと。言語能力を身につけるだけでなく、価値観の共有を図ることで、摩擦や誤解を減らし、真の共生社会を目指しています。

一方、日本ではこうした制度がまだ存在せず、多くの場合、企業や地域の善意に頼る形になっています。今後は、国として統一的な社会統合政策を導入する必要があるでしょうが、それには時間がかかると見られています。

だからこそ、今企業に求められているのは、自主的な取り組みです。日本語学習の支援、生活オリエンテーションの実施、地域との橋渡しなど、できることは数多くあります。

私たちニセコビザ申請サポートセンターとしても、外国人雇用が単なる“人手確保”にとどまらず、社会を豊かにするものとなるよう、実務面から企業の取り組みをサポートしています。外国人材の受け入れを「責任ある形」で行いたいとお考えの企業様は、ぜひ一度ご相談ください。


9. 行政書士としての見解:制度だけではなく、現場対応が鍵

外国人雇用に関する制度は年々複雑化しており、行政書士の果たす役割もますます広がっています。単なる「在留資格申請の代行」ではなく、企業と外国人労働者双方の立場に立った、より実務的・現場的なサポートが求められる時代になっています。

特定技能や技能実習、今後の育成就労制度といった在留資格の取得には、法令の解釈と正確な手続きが不可欠です。ですが、実際に現場で発生する課題は、それだけにとどまりません。

たとえば、「採用した外国人が期待していた日本語力に達していない」「家族を呼び寄せたが、日本での生活に適応できず退職を希望している」といった、制度では対応しきれない問題が数多く存在します。

こうした問題に直面した際、「これは労務の話?それとも入管法の話?」と悩む企業担当者の方も少なくありません。私たちニセコビザ申請サポートセンターは、まさにこの“法務と現場の隙間”を埋める専門家として、日々企業のご相談に応じています。

また最近では、採用の初期段階から関わらせていただくケースも増えており、求人票の内容から在留資格との適合性、さらには現地面接のサポート、日本語力の事前確認方法まで、ワンストップで対応しています。

「うちは外国人雇用は初めてで不安だ」「法的リスクを最小限に抑えたい」「社内体制を整備したい」といった企業様には、制度だけでなく、現場の実情に即したカスタマイズ支援をご提供可能です。

法的知識と現場対応の両輪が揃ってはじめて、安心・安全な外国人雇用は実現できます。トラブルが起こる前に、まずは専門家にご相談ください。


10. まとめとご案内:外国人雇用を安心・合法に進めるために

外国人雇用は、ただ「人を採用する」だけでは完結しません。

在留資格の取得、日本語能力の確認、家族帯同の配慮、職場内の受け入れ体制、日本社会での生活支援まで、非常に多岐にわたる対応が求められます。それらがうまく機能しないと、外国人材は早期退職や孤立、最悪の場合、不法滞在や法令違反のリスクすら抱えることになります。

一方で、こうしたリスクを正しく理解し、しっかりと準備・支援を行えば、外国人労働者は長期的に企業の力となり、組織の多様性やイノベーションを支える存在になってくれます。

特に今後の日本では、「人手不足対策」としての外国人雇用ではなく、「共に働き、共に生きる仲間」としての共生の視点が欠かせません。

当事務所では、外国人雇用における初期段階のコンサルティングから、在留資格の選定・申請、雇用後の支援体制構築、日本語教育支援の紹介、トラブル予防のアドバイスに至るまで、総合的なサポートを提供しています。

初めての企業様も、すでに外国人を雇用しているが課題を感じている企業様も、まずはお気軽にご相談ください。ご相談は初回無料。法務と実務の両面から、御社の外国人雇用を支援いたします。