はじめに:なぜ今「外国人加害者の交通事故」が問題なのか
近年、インバウンド回復や技能実習・特定技能などの制度を背景に、日本国内における在留外国人の数は着実に増加しております。そしてそれに伴い、外国人ドライバーによる交通事故も増加傾向にあります。例えば2024年には、外国人運転者による事故が年間7,000件を超えるとの統計も報告されており、その中には「無保険」「逃亡」「言葉が通じない」といった通常の交通事故とは異なるトラブルが多く含まれております。
このようなケースでは、被害者側が適切な補償を受けられず泣き寝入り状態に陥ることも少なくなく、企業にとっても大きなリスクとなり得ます。そこで本稿では、行政書士という専門家の視点から、企業および個人がこの“外国人加害者”による交通事故に備えるための実践的マニュアルを整理いたします。
https://news.yahoo.co.jp/articles/3b985c2f691649a813ef9450eb8c2c0d7c974890
1.被害者を襲う「3つの絶望」:逃亡・無保険・言葉の壁
まず、外国人加害者による交通事故で被害者が直面しやすい3つの問題点を整理いたします。
1つ目に「逃亡」です。加害者が事故後、帰国または逃亡してしまえば、連絡が取れなくなり、損害賠償請求そのものが困難になります。
2つ目は「任意保険未加入」です。外国人ドライバーの中には、任意保険への加入率が低く、十分な補償を期待できないケースがあります。
3つ目は「言葉の壁」です。事故発生時・示談交渉時に意思疎通がうまく取れないと、対応に大きな時間的・精神的負担が生じるとともに、被害者が不利な立場に追いやられる可能性があります。
これらの問題は、一般的な交通事故と比べて“複雑さ”と“リスク”が格段に増していると言えます。
2.外国人加害者でも泣き寝入りしないために:法律の原則と適用
ここで重要なのは、加害者が外国人であっても、国内で発生した交通事故には日本の法律が適用されるという点です。例えば、通則法第17条により、外国人による行為でも日本の法令が適用されるケースがあることが確認されております。
つまり、被害者は「外国人だから仕方ない」と諦める必要はなく、日本の損害賠償制度を活用することが可能です。企業も個人も、この法的な前提を理解しておくことが、まず第一のステップとなります。
3.加害者が無保険でも諦めないための7つの救済策
加害者が任意保険未加入あるいは逃亡してしまった場合でも、被害者として取るべき救済手段が複数あります。以下、7つのポイントを整理いたします。
- 自賠責保険への被害者請求
人身事故であれば、加害者が加入している自賠責保険に直接請求できる可能性があります。 - 自身の保険(任意・医療・傷害・生命)からの給付
被害者自身が加入している保険に「相手が無保険・逃亡だった場合の特約」が付いていることがあります。確認しておく価値があります。 - 政府保障事業の活用
加害者が無保険・逃亡・所在不明の場合でも、国の交通事故被害者救済制度から補填を受けられる場合があります。 - 運行供用者責任の追及
事故車両の所有者(貸主、会社など)に対して、運行の供用者として賠償責任を追及できることがあります。 - 使用者責任の追及
加害者が勤務中、あるいは業務で運転していた場合、使用者(雇用主)に賠償責任が生じる可能性があります。 - 労災保険の活用
通勤中・業務中の事故であれば、労災保険を活用して補償を受けることが検討できます。 - 国・自治体の支援制度の活用
たとえば、交通遺児支援・重度障害者支援など、被害者救済のための相談機関・制度があります。被害の程度に応じて活用すべきです。
被害者が救済の選択肢を多く持つことを理解するだけでも、泣き寝入りを回避する大きな第一歩となります。
4.事故直後に取るべき具体的行動4ステップ
事故発生直後の初動が、その後の補償・法的対応の鍵となります。以下に4つのステップをまとめました。
- 警察へ通報し、事故証明書を取得する
必ず警察に通報し、正式な事故証明書を取得してください。これは後の手続きで重要な証拠となります。 - 加害者の氏名・保険情報・連絡先を確認・確保する
加害者が外国人であっても、在留資格・住所・連絡先・保険加入状況などを可能な限り確認・記録しておくことが大切です。 - 現場・車の損傷・目撃証言などを収集する
事故現場・車両・被害状況の写真を撮影し、可能であれば目撃者の連絡先を確保しましょう。証拠としての価値が高まります。 - 安易な示談に応じず、必ず専門家に相談する
示談を急いでしまうと、後の賠償請求・交渉が困難になります。まずは専門家(弁護士、行政書士)にご相談のうえ対応することをおすすめいたします。
この4ステップを正しく踏むことで、後の面倒な対応を避け、被害者としての補償可能性を高めることができます。
5.弁護士費用特約と「備え」としての保険の再確認
事故に備える意味で、保険内容の確認も欠かせません。特に「弁護士費用特約」の有無は、示談交渉をスムーズに進める上で大きな違いをもたらします。
この特約があると、保険会社が弁護士費用を負担してくれるため、被害者自身が負担を気にせず交渉・請求に臨むことが可能となります。また、自動車保険以外、火災保険・傷害保険にも付帯されていることがあるため、加入保険の内容を一度整理しておくことを肝要といたします。
ご主人様が企業・個人双方の支援をなさる際にも、この「保険・備え」という観点は強くお伝えいただければと思います。
6.企業経営者・人事担当者のための備え
特に企業が外国人を雇用し、社用車を貸与していたり、従業員に運転させたりする場合には、以下のような対策を講じておくことが非常に重要です。
- 採用時に運転歴・保険状況を必ず確認する
外国人従業員の運転歴、任意保険加入状況、在留資格・日本語能力などを確認し、運転業務をさせる際のリスクを事前に把握しておくことが必要です。 - 社用車貸出ルール・事故発生時の対応マニュアルを整備する
誰が、どの車を、どう運転・使用するかを明確化し、事故発生時の連絡体制・報告義務・保険確認の流れを社内マニュアル化しておくことで、企業リスクを低減できます。 - 従業員に任意保険加入を促す仕組みを作る
会社が任意保険加入を義務付ける、または加入補助を行うなど、従業員が安心して運転できる体制を整えることが、結果的に企業を守ることにつながります。 - 就業規則・社内規定を整備する
運転業務に関するリスク管理や保険未加入・無免許運転などへの対応ルールを、就業規則や社内規定として明文化しておくことが良策です。
このような準備を通じて、企業としての交通事故対応能力を高め、外国人ドライバーを含む運転業務に関する安心感を構築できます。
7.在日外国人ドライバー本人が知っておくべきこと
加害者となり得る在日外国人ドライバー本人にも理解していただきたい責任があります。以下のポイントを明確にしておきましょう。
- 任意保険には必ず加入すること
日本国内で運転する以上、事故を起こした際のリスクを考え、任意保険加入は必須であるとお伝えください。 - 事故対応を想定した日本語マニュアルを準備する
言葉の壁が事故後の対応を難しくする大きな要因です。事故時の対応フローを日本語・母語で準備しておくと安心です。 - 事故後に逃げると、刑事責任や強制送還のリスクがある
逃亡・無連絡は、単に賠償リスクを高めるだけでなく、刑事処分・在留資格取消・強制送還などの重い問題に発展する可能性があります。 - 信頼される外国人として日本社会で生きるために責任を理解する
運転を含めた日常行動において、責任感ある行動が信頼構築につながります。こうした理解を促すことも、企業活動において極めて意義深いです。
8.最後に:泣き寝入りしない社会のために
交通事故は、いつ誰に起きても決して不思議ではありません。特に、外国人ドライバーが関与するケースでは、普段想定しない「無保険」「逃亡」「言葉の壁」といったリスクが潜んでおります。
しかし、「泣き寝入り」は情報と備えの不足から起きるものです。企業も個人も、そして外国人ドライバー本人も、事故を起こさないための備え、起きてしまった後に損をしないための準備を、今この瞬間から始めていただければと存じます。
ニセコビザ申請サポートセンターでは、外国人向けサポート、企業向けリスクマネジメント支援まで、幅広く対応しております。どうぞお気軽にご相談くださいませ。
