2026年1月23日、政府は新たな外国人政策「総合的対応策」を決定しました。「秩序ある共生」をキーワードに、在留資格審査の厳格化と社会統合政策を両立させる画期的な内容です。
在日外国人の方、そして外国人を雇用する企業の経営者・人事担当者の皆さまにとって、今後の生活・事業運営に大きく影響する重要政策を、行政書士の視点から徹底解説します。
1. 「秩序ある共生」とは?新政策の全体像
📌 政府の新方針「総合的対応策」
2026年1月23日、政府が決定した外国人政策「総合的対応策」は、日本の外国人受入政策における大きな転換点です。
小野田紀美外国人共生担当相の言葉:
“外国人にも社会の一員として責任ある行動を取ってもらい、国民、外国人の双方が安全安心に生活する社会の実現を目指す”
このメッセージには、新政策の本質が凝縮されています。
🔑 キーコンセプト:「秩序は社会の土台、多様性は社会の力」
この政策の最大の特徴は、以下の2つを両立させることです:
| 秩序(規制) | 共生(支援) |
|---|---|
|
|
従来は「共生」が強調されがちでしたが、新政策では「秩序」と「共生」は対立するものではなく、むしろ相互補完的だという考え方が示されています。
2. 在留資格審査の厳格化:何が変わるのか
🔍 厳格化される在留資格
今回の対応策で、特に以下の在留資格の審査が厳格化されます:
審査厳格化の対象
- 経営・管理ビザ
外国人起業家向けの在留資格。資本金要件や事業実態の確認が強化されます。 - 技術・人文知識・国際業務(技人国)ビザ
最も一般的な就労ビザ。業務内容と学歴・職歴の整合性確認が厳密に。
⚠️ 企業への影響
審査が厳格化されることで、企業が注意すべき点:
- 書類の正確性: 申請書類の不備や矛盾があると、不許可リスクが高まります
- 業務内容の明確化: 実際の業務が在留資格の活動範囲内であることの証明が重要
- 準備期間: 審査期間が長引く可能性も。余裕を持った申請計画が必要
- 更新時の注意: 初回許可より更新時の審査が厳しくなる傾向
📋 「不法滞在者ゼロプラン」とは
総合的対応策では、「不法滞在者ゼロプラン」の強力な推進も明記されています。
これは単なるスローガンではなく、具体的な取り締まり強化を意味します:
注意すべきケース:
- 在留期限の超過(オーバーステイ)
- 資格外活動(許可された活動範囲外の就労)
- 偽装結婚・偽装留学などの不正行為
- 在留資格取得後の活動実態がない場合
これらに該当すると、退去強制(強制送還)の対象となります。企業も、知らずに不法就労させてしまうと処罰の対象になりますので注意が必要です。
3. 日本語学習プログラムの創設と永住許可への影響
📚 新たな日本語学習プログラム
今回の対応策で最も注目されるのが、日本語や社会制度・ルールを学習するプログラムの創設検討です。
プログラムの内容(予定)
- 日本語能力の向上
- 日本の社会制度の理解
- 生活ルール(ごみ出し、騒音、交通ルールなど)
- 労働法規や権利義務の知識
- 緊急時の対応方法
🎓 永住許可への影響
極めて重要なポイントがあります:
⚠️ 重要な変更点
プログラムの受講や内容の理解を、永住者を含む在留資格の審査で考慮することを視野に入れ、対象資格を精査するとされています。
これは何を意味するのでしょうか?
永住許可申請への影響:
- 日本語能力が永住許可の要件に加わる可能性
- プログラム受講が申請の前提条件になる可能性
- 既に永住許可を持っている方の更新時にも影響する可能性
その他の在留資格への影響:
- 定住者、日本人の配偶者等の身分系在留資格
- 長期在留を前提とする就労資格
- 在留資格の変更・更新時の審査
💡 今から準備すべきこと
プログラムの詳細はこれから精査されますが、今からできることがあります:
✅ 外国人の方へのアドバイス
- 日本語能力試験(JLPT)のN3〜N2レベルを目指す
- 市区町村の日本語教室に参加する
- 地域のルールやマナーを学ぶ
- 日本の文化や習慣に関心を持つ
- 学習記録を残しておく(証明に役立つ可能性)
4. アウトリーチ(訪問支援)で何が変わる?
🚶♂️ 「アウトリーチ」とは
アウトリーチ(outreach)とは、「訪問支援」のこと。支援を必要とする人が窓口に来るのを待つのではなく、支援者が現場に出向いていく手法です。
今回の対応策では、以下のアウトリーチ事業が盛り込まれました:
アウトリーチの内容
- 訪問先: 外国人が集まる団地、企業、日本語学校、飲食店など
- 実施者: 自治体の相談員(多言語対応可能な専門スタッフ)
- 支援内容: 生活相談、ごみ出しルール指導、日本の社会制度説明
- 予算: 自治体への補助事業として国が費用を支援
🏢 企業へのメリット
外国人材を雇用する企業にとって、このアウトリーチ事業は大きなサポートになります:
| 課題 | アウトリーチによる解決 |
|---|---|
| 生活指導に手が回らない | 専門の相談員が企業を訪問して指導 |
| 多言語対応が困難 | 多言語対応スタッフが対応 |
| 地域トラブルの対応 | 事前に生活ルールを指導、トラブル予防 |
| 公的サービスの案内不足 | 医療、保険、教育などの情報提供 |
🏘️ 地域社会への効果
アウトリーチ事業は、地域住民と外国人住民の架け橋にもなります:
- 外国人住民による生活トラブルの減少
- 地域住民の不安や不満の解消
- 多文化共生の理解促進
- 地域コミュニティへの外国人の参加促進
これまで「言葉が通じない」「ルールを知らない」ことで生じていた摩擦が、訪問支援により減少することが期待されます。
5. 「共生」一辺倒から政策転換した背景
📊 データが示す現実
政策転換の背景には、明確なデータと民意があります。
産経新聞の全国1,741市区町村長アンケート:
- 54%が「地域の存続に外国人が欠かせない」と回答
- 70%(1,214自治体)が「住民との共生推進」を重視
一方で、以下のような問題も顕在化しています:
- 一部外国人による違法行為
- 生活ルール(ごみ出し、騒音など)の無視
- 不法滞在・資格外活動
- 地域住民とのトラブル
- 言葉の壁による意思疎通の困難
🏛️ 政治的な動き
政策転換の経緯を時系列で見てみましょう:
2025年7月
参院選直前、内閣官房に「外国人との秩序ある共生社会推進室」を新設。「共生」一辺倒から「秩序ある共生」へ転換。
2025年10月
高市早苗政権発足。外国人共生担当大臣を新設し、小野田紀美氏が就任。
2026年1月23日
「総合的対応策」を閣議決定。
この流れからわかるのは、外国人政策が重要な政治課題として認識され、明確な方向性が示されたということです。
🤝 「秩序」と「共生」は対立しない
政府の有識者会議が今月14日にまとめた意見書では、重要な指摘がされています:
“「秩序」と「共生」は対立するものではなく、「共生社会の推進に向けた施策を進めていくことが秩序維持にもつながっていく」”
つまり:
- ルールを守る秩序があるから、安心して共生できる
- 共生のための支援があるから、ルールを理解し守れる
- 両者は車の両輪のような関係
規制だけでも、支援だけでもダメ。バランスが重要なのです。
6. 企業が今すぐ取るべき対応策
この新政策を受けて、外国人材を雇用する企業が取るべき具体的アクションをお伝えします。
① 日本語教育サポートの強化
日本語能力が在留資格審査で重視される方向になります。企業としてできること:
具体的施策
- 社内日本語教室の開催(週1回など)
- オンライン日本語学習ツールの契約・提供
- 日本語能力試験(JLPT)受験費用の補助
- 業務時間内での学習時間の確保
- 日本語レベルに応じたキャリアパスの設定
② 生活指導・オリエンテーションの充実
「知らなかった」では済まされない時代に。入社時・定期的なオリエンテーションが重要です:
| 指導項目 | 内容例 |
|---|---|
| ごみ出しルール | 分別方法、収集日、出す時間・場所 |
| 騒音問題 | 夜間・早朝の生活音、楽器演奏、パーティー |
| 交通ルール | 自転車の交通ルール、駐車違反、飲酒運転禁止 |
| 公共マナー | 電車内のマナー、喫煙場所、列への並び方 |
| 緊急時対応 | 110番・119番、地震・災害時の行動 |
③ 在留資格管理の徹底
審査厳格化に対応するため、社内管理体制の見直しが必要です:
チェックリスト:
- ☐ 全外国人社員の在留期限を一覧管理
- ☐ 期限3ヶ月前にアラート通知
- ☐ 業務内容が在留資格の範囲内か定期確認
- ☐ 資格外活動許可の有無を確認
- ☐ 転職・異動時の在留資格適合性チェック
- ☐ 申請書類は専門家(行政書士)に依頼
④ 地域社会との連携
企業単独ではなく、地域と協力することが重要です:
- 自治体の外国人支援窓口との連携
- 地域の日本語教室の情報提供
- 地域イベントへの参加促進
- 自治会・町内会との情報交換
- アウトリーチ事業の活用
⑤ 相談窓口の設置・充実
外国人社員が困ったときに相談できる体制を:
相談窓口の要件
- 多言語対応(母国語で相談できる)
- プライバシー保護
- 気軽に相談できる雰囲気
- 専門家(行政書士、弁護士など)との連携
- 定期的な面談の実施
7. 外国人が知っておくべき重要ポイント
在日外国人の皆さまへ、新政策で特に重要なポイントをお伝えします。
① 日本語能力の重要性が増す
これまで以上に、日本語能力が在留資格審査で重視されます。
目標とする日本語レベル
- 最低限: 日本語能力試験(JLPT)N4レベル(日常会話)
- 推奨: N3レベル(日常生活に支障なし)
- 理想: N2レベル(ビジネス日本語)
- 永住申請: N2以上が有利になる可能性
② ルールを「知らなかった」では済まされない
今後、日本の社会ルールを学ぶプログラムが整備されます。「知らなかった」という言い訳は通用しなくなります。
特に重要なルール:
- 在留期限の厳守
1日でも超過すると不法滞在。必ず期限前に更新手続きを。 - 資格外活動の禁止
許可された活動以外の仕事はできません。アルバイトは資格外活動許可が必要。 - 住所変更の届出
引っ越したら14日以内に市区町村と入管に届出が必要。 - 再入国許可
日本を出国する際は、有効な在留カードとパスポートが必要。 - 生活ルール
ごみ出し、騒音、駐車など、地域のルールを守る。
③ 永住許可への影響
既に永住許可を持っている方も油断は禁物です。
⚠️ 永住許可取消しのリスク
- 重大な犯罪行為
- 在留カードの常時携帯義務違反(繰り返し)
- 住所届出義務違反
- 虚偽申請が判明した場合
今後、日本語能力やプログラム受講も考慮される可能性があります。継続的な学習と社会参加が重要です。
④ 困ったときは専門家に相談
問題が大きくなる前に、早めに相談することが大切です。
相談できる窓口
- 行政書士: ビザ・在留資格の専門家
- 弁護士: 法的トラブル、訴訟
- 自治体の外国人相談窓口: 生活全般
- 入管(出入国在留管理局): 在留資格の手続き
- 労働基準監督署: 職場のトラブル
- 警察: 犯罪被害、緊急時
⑤ 積極的な社会参加を
「秩序ある共生」は、外国人も日本社会の一員として責任ある行動を取ることを求めています。
- 地域のイベントや祭りに参加する
- 自治会・町内会の活動に協力する
- 日本人の友人を作る
- 日本の文化や習慣を学ぶ
- 困っている人がいたら助ける
単に「住む」だけでなく、「共に生きる」姿勢が大切です。
8. 行政書士が見る政策の本質と今後の展望
行政書士として外国人関連法務に携わる立場から、今回の政策の本質と今後の展望をお伝えします。
🔍 政策転換の本質:現実を直視した
今回の「秩序ある共生」政策は、これまでタブー視されがちだった問題に正面から向き合ったものです。
これまでの問題:
- 「共生」を強調するあまり、問題行動を指摘しにくい雰囲気
- 「外国人だから仕方ない」という甘え・諦め
- 地域住民の不安や不満が表面化しにくい
- ルール違反への対応が後手に回る
新政策の姿勢:
外国人も日本人も、同じルールを守る。それが真の共生だという明確なメッセージ。
📈 「二段階の前進」と評価される理由
関西国際大の毛受敏浩客員教授は「これまでの政策より二段階くらい前進した」と評価しています。その理由:
- 規制と支援の両立
単なる取り締まり強化ではなく、社会統合支援とセットになっている。 - 日本語教育の体系化
これまで各自治体任せだった日本語教育を、国として体系的に整備。 - 永住許可への反映
学習努力が在留資格審査に反映されることで、学習のインセンティブが生まれる。 - アウトリーチの制度化
「待ち」ではなく「攻め」の支援。問題が起きる前の予防。
⚖️ 課題:実効性をどう担保するか
一方で、政策の実効性には課題も残ります:
今後の課題
- 予算と人員: アウトリーチ事業には多くの人員が必要。予算確保は?
- 多言語対応: 100以上の母語に対応できるか?
- プログラム内容: どこまで義務化するか。バランスは?
- 既存の在留者: 既に日本にいる外国人への対応は?
- 企業の協力: 企業の協力をどう得るか?
🔮 想定される今後の展望(私見):2026年が転換点
2026年は、日本の外国人政策における大きな転換点になるでしょう。
短期的(1〜2年):
- 日本語学習プログラムの具体化
- アウトリーチ事業の本格展開
- 在留資格審査の実質的厳格化
中期的(3〜5年):
- 永住許可審査への日本語要件追加
- プログラム受講の義務化
- 地域社会との統合度合いの数値化
長期的(5年以上):
- 真の意味での多文化共生社会の実現
- 外国人の政治参加(地方参政権など)の議論
- 移民政策としての体系化
💼 専門家としてのアドバイス
最後に、行政書士として皆さまにアドバイスをお伝えします。
✅ 企業の皆さまへ
- 外国人材の「社会統合」を人材戦略に組み込む
- 日本語教育・生活支援はコストではなく投資
- 地域社会との連携を強化する
- 在留資格管理は専門家に任せる
✅ 外国人の皆さまへ
- 日本語学習を継続する(目標:N2レベル)
- 日本の社会ルールを積極的に学ぶ
- 地域社会に参加し、交流する
- 困ったことがあれば早めに相談する
- 在留期限は絶対に守る
最後に
「秩序ある共生」は、外国人も日本人も、お互いを尊重し合いながら、同じルールのもとで生きていく社会を目指すものです。
規制の強化は、決して外国人を排除するためではありません。
むしろ、ルールを守る外国人が安心して生活でき、地域社会に受け入れられる環境を作るためです。
企業も外国人も、この転換期を前向きに捉え、新しい共生社会の担い手となりましょう。
ご不明な点やご相談があれば、お気軽に専門家にお問い合わせください。
一緒に、より良い共生社会を築いていきましょう。
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