1. はじめに:なぜ海外IT人材は日本を選ばないのか?

「アメリカが移民に厳しくなるなら、その分、日本が選ばれるはず」と考える方は少なくありません。
実際、トランプ前政権が外国人技術者向けビザの審査を厳格化したことにより、アメリカ就職のハードルは確かに上がっています。

ところが、日本の中小企業経営者を対象に行われた調査では、「海外の優秀なIT人材を獲得できるチャンスが広がる」と答えたのはわずか13%。
つまり、8割以上の企業は“日本が選ばれる国になる”という見通しを持っていないのです。

なぜ、せっかくの国際的な人材シフトの中で、日本は存在感を発揮できていないのでしょうか?
背景には、給与水準、生活環境、制度の煩雑さなど、いくつもの“見過ごせない要因”が潜んでいます。

この記事では、外国人材の採用を検討中、あるいはすでに苦戦している中小企業の皆さまに向けて、「なぜ日本は選ばれないのか」という根本的な課題を明らかにしながら、行政書士として現場で感じる実務的な改善ポイントをご紹介していきます。


2. 調査結果に見る「海外IT人材が日本に流れない現実」

海外人材紹介を手がけるZenken社が行った最新調査では、「トランプ政権の移民政策が厳しくなっても、日本企業にとって採用チャンスは増えない」と答えた中小企業経営者が、全体の4割以上を占めました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/c93f741961ac142b78d675117fc4b9a715ba5cbf

この結果は、日本の雇用環境が国際的に見て“選ばれにくい”ものになっているという現実を示しています。
実際、円安が進行し、円で受け取る給与の価値が下がることで、外国人から見た日本の報酬水準は大きく見劣りします。

また、日本はビザ制度や生活インフラ面でも他国に比べて柔軟性が乏しく、特に中小企業においては「採用してから在留資格の壁にぶつかる」といったケースも少なくありません。

「米国で就職できないから日本に来るだろう」といった期待は、すでに過去の話。
日本企業、特に中小企業が海外人材を本気で採用したいと考えるのであれば、制度対応や待遇面の改善に本腰を入れる必要があるのです。

3. 円安と給与水準の壁 ― 日本が選ばれにくい「お金」の事情

海外から日本にやってくるIT人材にとって、給与は当然ながら「円」で支払われます。
この点で、日本は大きなハンディを抱えています。

特に近年のように円安が長期化している状況では、同じ金額の給与でも、ドルやユーロなどと比較すると実質的な価値が大きく目減りします。
加えて、日本の名目GDP成長率や1人あたりの平均年収の伸びは、他の先進国と比べても控えめ。
たとえばアメリカやカナダ、シンガポールでは、同じITスキルでも年収が2倍以上になることも珍しくありません。

「日本で働くと損をする」
このような印象が広がってしまえば、いくら「人手不足だから来てほしい」と願っても、優秀な外国人材には届きません。

企業が待遇を大幅に引き上げるのは簡単ではありませんが、それに代わる魅力――たとえばキャリア支援、教育機会、家族の生活支援など――を提示する努力は可能です。

まずは「なぜ来てもらえないのか」を正しく理解し、企業として改善できることを一つひとつ積み重ねることが、長期的な人材獲得につながります。


4. アメリカのビザ規制強化は、日本にとって“好機”ではない

トランプ政権が再びH-1Bビザの基準を厳格化する動きを見せています。
これにより、一部では「アメリカに行けなくなった優秀なIT人材が日本を選ぶのでは」という期待も生まれました。

しかし、現実はそう単純ではありません。
ビザ制度の柔軟性や取得のしやすさ、生活面でのサポート体制、キャリアアップの可能性などを総合的に比較したとき、日本は他の英語圏先進国に後れを取っているのが現状です。

特にカナダやオーストラリアなどは、高度人材向けの移民政策を積極的に整備しており、外国人労働者にとっては「わかりやすく、安心して働ける国」として人気を集めています。
一方、日本では言語の壁、就労ビザの取得ハードル、生活インフラの不十分さが障壁となりがちです。

「アメリカに行けないから日本に来るだろう」という考えは、希望的観測にすぎません。
本当に人材を呼び込むには、日本が“選ばれる国”になるための根本的な制度設計と環境づくりが必要不可欠なのです。

5. 中小企業が楽観視できない理由

中小企業の経営者の中には、「海外IT人材が米国で就職しづらくなるなら、日本にもチャンスがあるはず」と考える方も少なくありません。
しかし、現場で外国人採用支援をしている立場から言わせていただくと、その見通しはかなり楽観的です。

実際にZenken社の調査でも、海外人材獲得のチャンスが「増える」と考えている企業はわずか13%。
つまり、大多数の企業が「今の日本では難しい」と感じているのです。

その背景には、中小企業特有の課題がいくつもあります。
まず、外国人採用に関する知識やノウハウが社内に蓄積されておらず、在留資格やビザ手続きについて正確に理解していないケースが多いこと。
また、採用後のフォロー体制が整っていないため、内定後にビザが下りずに断念したり、入社後すぐに離職してしまうこともあります。

さらに、採用戦略そのものが「誰かに紹介してもらえば何とかなる」という受け身の姿勢になっている企業も見受けられます。
こうした状況では、いくら求人を出しても、優秀な海外人材からは「選ばれない企業」のままなのです。

本気で採用を成功させたいのであれば、まずは制度を理解し、自社の体制を整えるところから始めなければなりません。


6. 採用以前に「在留資格」でつまずく企業の実態

「外国人を採用したい」と考える企業は増えています。
しかし、実際の現場では「在留資格が取れない」という理由で採用が成立しないケースが後を絶ちません。

私たち行政書士がよく受ける相談の一つに、
「内定を出したのにビザが下りず、結局採用できなかった」というものがあります。
原因はさまざまですが、最も多いのは「職務内容と在留資格の要件が合っていない」ことです。

たとえば、外国人が従事する業務が「単純労働」と見なされると、「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザでは許可が下りません。
逆に、要件に合致した業務内容でも、契約書等が曖昧だったり、説明資料が不足していたりすると、入管審査で不許可になるリスクが高まります。

つまり、採用の前提として「この業務にこの人材を、この条件で雇用することが、在留資格上問題ないか」を事前に確認しておく必要があるのです。

外国人材の採用は、単なる「人材確保」ではなく、法的な要件を満たすプロジェクト。
この観点を持たずに進めてしまうと、時間もコストも無駄になってしまいます。

だからこそ、採用活動の初期段階で専門家への相談を取り入れることが、結果的に成功への最短ルートになるのです。

7. 日本で働きたい外国人は“いる”、でも制度が障壁に

「日本で働きたい」と希望する外国人は、決して少なくありません。
特にアジア圏を中心に、日本の文化や治安、技術レベルに憧れを持つ優秀な人材が多く存在します。
実際、弊所にも「日本企業で働きたいが、ビザの取得が不安」「内定をもらったが手続きが難しい」という相談が数多く寄せられています。

問題は、そうしたポテンシャルのある人材が“採用までたどり着けない”という現実です。
理由の多くは、日本の制度の複雑さや企業側の理解不足。
たとえば、在留資格の区分や要件が細かく分かれており、申請書類の不備や記載ミスがあると、簡単に不許可になることもあります。

また、企業側が「紹介会社に任せておけば大丈夫」と考えているケースも少なくありません。
しかし、採用からビザ申請までは一貫したプロセスであり、企業自身が制度を正しく理解し、責任を持って準備を進めることが不可欠です。

今、日本で働きたいと思っている外国人は“いる”。
けれど、日本の採用システムやビザ制度が“受け入れる体制”として整っていなければ、せっかくの出会いも無駄になってしまいます。

外国人材の採用は「制度と信頼」で成り立つ時代。
今こそ、企業としての“受け入れ力”が問われています。


8. 行政書士から見た「採用成功企業」と「失敗企業」の違い

私たちが現場で関わる中で、外国人採用に成功している企業と、なかなか前に進めない企業には、明確な違いがあります。

成功している企業の多くは、まず「制度を理解すること」からスタートしています。
在留資格の要件を事前に確認し、必要な書類や契約内容を整理・整備。
職務内容についても、単に「エンジニアとして働いてもらう」ではなく、具体的な業務内容を明記した職務説明書(ジョブディスクリプション)を作成し、入管に説明できる体制を整えています。

さらに、外国人本人とのコミュニケーションにも力を入れています。
採用後の生活支援や、日本語の学習支援、キャリアのフォローアップなど、単なる「労働力」ではなく「チームの一員」として迎え入れる姿勢が根付いています。

一方で、失敗する企業の多くは「紹介会社に任せきり」「ビザ申請はとりあえずやってみる」という受け身の姿勢です。
結果として、在留資格が不許可となり、採用計画が白紙になるケースも少なくありません。

外国人材の採用は、制度対応と企業姿勢の“合わせ技”。
制度を理解し、誠実な受け入れ体制を整えてこそ、初めて本当の意味での「採用成功」にたどり着けるのです。

9. 今こそ見直すべき在留資格・就労管理体制

海外人材を本気で採用するのであれば、「制度の壁」を乗り越える準備が必要不可欠です。
その第一歩が、在留資格(ビザ)についての正確な理解と、就労に関する社内体制の整備です。

たとえば、外国人が働くために必要な「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格には、業務内容との適合性が厳密に求められます。
いくらスキルの高い外国人を採用しても、その職務がビザの条件に合っていなければ、許可は下りません。

また、申請に必要な書類の整備も重要です。
雇用契約書や業務内容の説明資料、会社概要、勤務場所の明示など、細かい部分まで求められるため、入管への提出前に専門家によるチェックが不可欠です。

さらに、採用後の「就労管理」も見落とせません。
勤務実態とビザ内容が合っているか、在留期限の管理はできているか、日本語や生活面でのフォローはどうか――これらが疎かになると、本人の在留資格の更新が難しくなったり、最悪の場合は企業が処分の対象となるリスクもあります。

「採用して終わり」ではなく、「採用してからが始まり」。
そう考え、社内に制度対応の意識と仕組みを根づかせることが、これからの外国人雇用には求められます。

行政書士として、私たちは在留資格の選定から申請、就労管理体制の整備まで、トータルで支援しています。
制度を味方につける準備は、今この瞬間から始めましょう。


10. まとめ:制度を知らずして採用成功なし

海外IT人材を取り巻く国際的な人材獲得競争は、年々激しさを増しています。
その中で、日本が選ばれる国になるためには、「制度の壁」をどう乗り越えるかが最大のポイントです。

外国人を採用するには、就労ビザの取得や在留資格の要件を満たすための準備が必要不可欠。
制度を知らずに採用活動を進めれば、内定を出してもビザが下りなかったり、採用しても短期間で退職されるなど、トラブルが多発します。

逆に、制度をしっかり理解し、企業としての受け入れ体制を整えている企業には、優秀な外国人材が自然と集まり、定着率も高くなります。
「信頼できる企業」として選ばれることが、最も重要な採用力につながるのです。

私たちニセコビザ申請サポートセンターは、採用前の在留資格チェックから、ビザ申請書類の作成、採用後の管理体制のアドバイスまで、ワンストップで支援を行っています。
単なる書類作成だけでなく、企業の未来に向けた「人材戦略の一環」として、制度を活用した採用支援が可能です。

今後、外国人材の採用を検討している企業の皆様。
採用を成功させる第一歩は、「制度を知ること」から始まります。
まずは一度、お気軽にご相談ください。