1. はじめに:外国人が増える社会、どう受け入れる?
人口減少と少子高齢化が進む日本において、今後ますます多くの企業が「外国人労働者」を必要とする時代がやってきています。実際、すでに多くの業種・業界では人手不足が深刻で、外国人材の採用が経営の要となっている企業も珍しくありません。
しかし、採用して終わり、というわけではありません。実際には、「文化的な価値観の違い」「生活マナーの違い」「日本語の習得レベル」「地域住民との関係」など、外国人を受け入れる上での“見えにくい課題”に頭を悩ませている企業も多く見受けられます。
その一方で、東京都新宿区という地域では、外国人比率が14.5%という高い数値であるにもかかわらず、目立った対立やトラブルが少なく、「多文化共生がうまく機能している自治体」として高く評価されています。
なぜそれが可能なのでしょうか?
行政書士として、外国人のビザ取得支援や企業とのマッチング、トラブル防止のための指導を日々行っている立場から、新宿区の事例は非常に参考になると感じています。本記事では、企業の皆様にとってヒントとなるような、新宿区の共生戦略や、そこから導き出せる具体的なアクションをご紹介していきます。
https://news.yahoo.co.jp/articles/1c7abb942f235f8b52d9695d842b6cb4e3836409?page=1
2. 新宿区の現状:外国人比率14.5%でも好感度は上昇中
東京都新宿区は、2025年12月時点で人口約35万5807人。そのうち、実に5万1639人が外国人で、全体の14.5%を占めています。この割合は、全国の自治体の中でもトップクラスであり、しかも年々増加傾向にあります。
それにもかかわらず、地域住民の外国人に対する“印象”はむしろ改善されているのです。
2023年に新宿区が実施した「多文化共生実態調査」によると、「外国人が近所に住むことについてどう思うか」という質問に対し、「好ましい」と回答した日本人住民は38.9%。一方で「好ましくない」と答えたのはわずか10.8%。これは、前回2015年の調査と比べると、「好ましい」が16.8ポイント増加し、「好ましくない」が6.1ポイント減少した結果です。
この8年間で外国人の数は約1万3000人近く増加しているにもかかわらず、むしろ“共生”に対する理解と好感度が高まっている。この背景には、新宿区が粘り強く築いてきた地域との信頼関係と、行政・外国人コミュニティ・住民が一体となった取り組みがあるのです。
3. 多文化共生の鍵は「話し合い」と「地域との連携」
「多文化共生」とは、単なる“外国人を受け入れること”ではありません。
むしろ、文化的な違いや生活習慣の違いを認識した上で、いかに“お互いを理解し、歩み寄るか”というプロセスにこそ、本当の意味があります。
その点で、新宿区が一貫して重視してきたのが「現場での話し合い」です。
韓流ブーム以降、外国人観光客や住民が増えた新大久保地区では、一時期トラブルが多発していました。騒音・ゴミ・違法転貸など、地域住民の不満は爆発寸前。しかし、そこで諦めるのではなく、当時から区長や地域のリーダーたちが“直接顔を合わせて話すこと”を徹底してきたのです。
その象徴が「インターナショナル事業者交流会」。日本人・韓国人・ネパール人・バングラデシュ人など、多国籍の経営者や住民、行政関係者が一堂に会し、月1回のペースで課題を共有し、解決策を話し合っています。
この場では、防災・防犯だけでなく、「どうやってフェスを成功させるか」や「SNSの使い方」「外国人向けのルール周知方法」など、現場視点の意見が飛び交います。
企業でも同じことが言えます。外国人を雇用する上でトラブルを防ぎ、職場の一体感を高めるには、“現場での対話”と“日々の関係づくり”が必要不可欠です。
4. 外国人コミュニティの“自浄作用”と世代間継承の価値
もうひとつ、新宿区の多文化共生を支える大きな柱が、「外国人コミュニティ内での自浄作用と知恵の継承」です。
新宿区には、長年日本に住む韓国人、ミャンマー人、ネパール人などが多く存在しています。こうした“先輩外国人”たちは、自らが日本での生活に苦労しながら学んできたこと——たとえば、日本人との接し方、マナー、就労ルールなどを、後輩に伝える役割を担っているのです。
具体例として、ミャンマー人のマヘーマーさんは、90年代後半に来日後、自らの経験を活かして「日本ミャンマー・カルチャーセンター(JMCC)」を設立。若い留学生や新しく来日した労働者に対し、「日本社会の中で信頼を得る行動とは何か」を根気強く伝えています。
同様に、ネパール人のマッラさんは、ネパール語新聞を通じて「日本でのルールを守る重要性」や「コミュニティとしての責任感」について訴え続けています。実際、公園での無許可集会に対しても「それはネパール人全体の信頼を損なう行為だ」と毅然とした態度で指導したことは記憶に新しいところです。
こうした“内側からの指導”は、企業の教育現場でも大いに参考になります。
たとえば、同じ国籍の先輩従業員が、新人に対して
- 時間の感覚(例:5分前行動)
- あいさつの習慣
- 職場内での礼儀やチームワークの重視
などを伝えていくことで、企業全体の雰囲気やルールの理解が格段に深まります。
つまり、ただマニュアルを渡すのではなく、「文化をつなぐ人材」を活かすことが、円滑な職場環境の形成には欠かせないということです。
5. 日本人住民との信頼関係構築の裏側
外国人に対する日本人住民の好感度が高まっている背景には、偶然ではない「信頼の積み重ね」と「地道な交流の継続」があります。特に、新宿区に暮らす外国人たちは、“この街で共に生きる一員”として地域社会に積極的に関与してきました。
その象徴的な例が、ミャンマー人や韓国人経営者による清掃活動への参加です。毎月のように実施される町内の清掃に、地域の外国人たちが自主的に参加し、日本人住民と共に汗を流す姿は、非常に印象的です。また、ネパール人の商店主たちは、地域のイベントやフェスに商店街の一員として積極的に関わり、料理ブースやパフォーマンスを通じて日本人と交流を深めています。
こうした取り組みは単なる「参加」にとどまらず、「信頼される外国人」というイメージを一人ひとりが体現していくプロセスでもあります。結果として、「ミャンマー人なら真面目にルールを守る」「ネパール人は地域活動に協力的だ」といった、国籍単位でのポジティブな評価につながっていくのです。
これは、企業が外国人を雇用する際にも極めて重要な視点です。
たとえば、外国人従業員に地域の清掃や祭りへの参加を促すことで、住民との距離が縮まり、「あの会社の外国人はきちんとしている」と、企業全体の地域イメージが向上することも珍しくありません。さらに、そのような地域との接点が、従業員本人の“定着意識”にもつながり、離職率の低下にも効果を発揮します。
つまり、外国人雇用を成功させるためには、「社内の教育」だけでなく、「社外とのつながり」もセットで考えるべきだということです。
6. 新宿区の行政対応が企業にも示すヒント
新宿区の取り組みが注目される理由のひとつが、「行政が現場まで足を運び、具体的な行動を取っている」という点です。
たとえば、区の公式Webサイトでは、日本語を含む121言語に対応し、外国人が必要な情報にいつでもアクセスできる体制を整えています。また、新たに転入してきた外国人には、6か国語で作成された『新宿生活スタートブック』を配布。ゴミ出しのルール、公共交通の使い方、マイナンバー制度など、暮らしに直結する情報が詰め込まれています。
しかし、こうした“資料や制度”だけで終わらないのが新宿区の強みです。
実際には、区の担当職員が外国人コミュニティのイベントに顔を出し、ミャンマーの祭りやモスクの礼拝に同行しながら、「現場の空気」を感じ取ることを大切にしています。2025年夏には、百人町のモスクで礼拝者が増え、路上にあふれ出たという事案がありましたが、区職員がすぐに対応し、「公道での礼拝は控えてほしい」と指導者に要請。その結果、礼拝は2部制に変更され、混乱は起きませんでした。
このような“顔の見える関係”があるからこそ、行政と外国人コミュニティの間に信頼が生まれ、対話による問題解決が可能となっています。
この姿勢は、企業にもそのまま応用可能です。
たとえば、「雇ったあとは業務に任せきり」というスタンスでは、文化の違いやストレスから不満が蓄積し、突然の退職やトラブルにつながることもあります。そうではなく、「定期的な面談」「現場での対話」「日常的な雑談」など、コミュニケーションを通じて“顔が見える関係”を築くことが、結果的に定着と成長につながるのです。
行政の「現場主義」は、企業にとっても非常に有効なマネジメントの手法です。
7. 実践すべき3つの企業アクション
外国人雇用を成功させるために、制度や手続きだけでなく、「人と人とのつながり」を重視したアクションが求められます。ここでは、すぐにでも企業が取り組める実践策を3つご紹介します。
1. 就業規則や社内資料の多言語化
まず最も基本的な取り組みが、就業規則や雇用契約書、勤務ルールの「多言語対応」です。日本語が十分でない外国人にとって、日本語だけの規則書は非常に不親切です。内容を正確に理解できなければ、無意識のうちにルール違反をしてしまうこともあります。
英語、中国語、ベトナム語、ネパール語など、母語に合わせた翻訳資料を用意し、入社時に丁寧な説明を加えることで、トラブルの未然防止につながります。
2. 生活マナーや文化のギャップを埋める研修の実施
日本の職場文化には、時間厳守、報連相、上下関係の配慮など、独特のルールがあります。これを前提にしてしまうと、文化的な背景が異なる外国人は苦労しがちです。
そこで、社内で簡単な「日本の職場マナー研修」を実施することで、彼らの不安を解消し、職場でのストレスを軽減できます。できれば、先輩外国人社員を講師役にすることで、共感性の高い指導が可能になります。
3. 地域との接点づくり(清掃活動・地域イベントへの参加)
新宿区でも見られるように、地域住民との信頼関係は、外国人自身の行動から始まります。企業としても、地域の清掃活動や商店街のイベントに、外国人従業員を積極的に参加させることで、「この会社の外国人は信頼できる」という評価を得ることができます。
これは、単にイメージアップというだけでなく、従業員自身が「地域の一員である」という実感を持ち、より長く働こうという意欲にもつながっていきます。
このように、制度整備と同時に“人とのつながり”を重視した施策を講じることで、外国人雇用は一層スムーズに、そして価値あるものになります。
次章では、具体的に企業が注意すべき法的ポイントと、行政書士として提供できる支援内容についてお伝えします。
8. 外国人採用・雇用管理で企業がやるべきこと
外国人を雇用する際、企業が避けて通れないのが「在留資格(ビザ)に関する正しい知識と管理体制」です。特に、初めて外国人を採用する企業や中小企業では、制度の複雑さに戸惑い、「知らないうちに違法状態になっていた」というケースも少なくありません。
たとえば、「留学生アルバイト」の場合、法律で定められている就労時間は週28時間以内です。この制限を超えると、本人だけでなく雇用した企業側も処罰対象となり、最悪の場合、行政指導や採用停止措置を受けることになります。また、「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザを持つ外国人についても、職務内容がビザの内容に合致していなければ、在留資格違反となる可能性があります。
さらに、在留資格の更新手続きにおいても、提出書類の不備や手続きの遅れによって、本人が不法滞在になってしまうリスクもあります。こうした事態は、企業にとっても深刻なリスクを伴う問題です。
このようなトラブルを防ぐためにも、企業としては以下の3点を意識することが重要です。
- 採用前に「職種」と「在留資格」の適合性をしっかり確認する
- 就労状況や勤務時間を定期的に管理・チェックする
- 在留カードの有効期限や更新時期を忘れず把握しておく
法務的な視点と労務管理の両面からの対応が必要であり、ここでこそ、行政書士など専門家の関与が効果を発揮します。
9. 当事務所のサポート:就労ビザ、生活指導、地域連携
当事務所では、外国人雇用を検討・実施されている企業様を対象に、次のようなサポートを提供しております。
- 就労ビザの取得・更新支援
外国人が正しく働ける在留資格の取得・更新に向けた書類作成、申請同行、入管対応など、すべてお任せいただけます。職種に応じた適正な在留資格の選定も含めて、企業の人事担当者と連携しながらスムーズな運用をサポートします。 - 外国人従業員向けの生活マナー・文化研修
ゴミ出しや近隣マナー、電車の乗り方、あいさつの重要性など、日本独特の生活ルールや文化をわかりやすく伝える研修を実施。企業独自のルールと合わせて、入社初期に実施することで、トラブルの未然防止につながります。 - 地域連携サポート
外国人雇用による地域からの目を気にされている企業様に対し、地域住民や役所との橋渡し役としても活動しています。必要に応じて、商店街や町内会との調整、地域イベントへの参加支援など、企業のイメージアップにも貢献します。
「外国人採用に挑戦したいけれど、何から手をつけたらいいか分からない」
「トラブルが起きてからでは手遅れになりそうで不安だ」
そんな企業様からのご相談が、近年ますます増えてきました。
制度対応だけでなく、現場での支援や文化面での調整を含めた“つなぎ役”として、行政書士の立場からしっかりとサポートさせていただきます。
10. まとめ:受け入れから共生へ―“外国人と共にある社会”を築くために
新宿区のように、外国人比率が高くてもトラブルを未然に防ぎ、むしろ地域と外国人が信頼関係を築いて共生している例は、日本全国を見渡しても非常に先進的です。
その要因となっているのは、「文化の違いを受け入れ、丁寧に伝える姿勢」「話し合いをあきらめない現場主義」「外国人コミュニティ内部での自浄作用」といった、地道で一貫した取り組みの積み重ねです。
これは、企業にとっても大きな学びとなります。
外国人を「人手不足を補うための労働力」としてだけではなく、「組織の一員」「地域の一員」としてどう迎え入れるか。そこに企業の姿勢と、今後の持続的成長の鍵があるのではないでしょうか。
多文化共生の実現は、人手不足の解消だけでなく、企業のブランディング、地域社会との信頼、従業員の満足度といったさまざまな面でポジティブな効果をもたらします。
外国人雇用に不安を感じている方、すでに雇用を進めているけれど改善したい方。
ぜひ一度、私たちニセコビザ申請サポートセンターにご相談ください。
“雇う”から“共に働き、共に生きる”へ——
貴社と外国人従業員が、よりよい関係を築けるよう、全力でサポートいたします。
